7-162 栄華の墓所


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42 名前:栄華の墓所 1/2[sage] 投稿日:2006/07/30(日) 23:41:23
―――ようやく魏郡に入った。
人の多そうなエン州を避け、河南から河内を通り、朝歌を突っ切って、
曹丕は、ただひたすらにギョウを目指していた。
此処まで来れば、あとはもう急く事もない。
ギョウは目と鼻の先である。
小さくか弱い手を引いて、前へ前へと、少しばかり速度を落としながら、進む。
「とうさま!」
傍らの小さな影が、嬉しそうな声を上げた。
街が、見えてきたのだ。
小高い丘の上から見下ろすその広大な姿は、その雄雄しさも、美しさも、
何もかもがきらきらと眼前に輝いていて。
思わず涙が零れそうになる程に、強く曹丕の胸を打った。
――ああこの街は、この空は。
風は、大地は、水の流れや、鳥の囁きは。
「わたしの、国だ・・・。」


それは、司馬孚らが北へ向かった、ほんの数刻後の事であった。


43 名前:栄華の墓所 2/2[sage] 投稿日:2006/07/30(日) 23:43:48
都内は、閑散としていた。
かつては、喧しいほど民衆の声が賑やかだった道々は、
ただ小鳥たちが突き抉るのみであり、文武百官が凱旋した中央道には、
冷ややかな風が吹きすさぶだけである。
曹丕は、自らの邸宅や宮廷には決して向かわず、中心部よりやや離れた
民家に居を構えた。
――自分が恨まれていることなど、十重に承知している。
「とうさま、みぎかたはだいじょうぶですか?」
静かに扉を閉め、床に腰を下ろすと、傍らのぬくもりが、小さくか細い声で、
そう問いかけてきた。
右肩の弾痕は、未だ完治していない。それどころか、悪化してきている。
肩より上に、右手が上がらなかった。
それでも、末の弟に心配をかけたくない一心で、大丈夫だよと嘘をついた。
「お前こそ、疲れてはいないか?必死で駆けて来たからな。
 ほんの少ししか、眠れていないだろう。」
「これくらい、へいきです。」
そう胸を張る曹幹の姿が、逞しくもあり、微笑ましくもあり。
このぬくもりがあれば、自分は決して自分を失うことはないであろう、という事を、
再び確認した。
あたたかい感情が、胸に広がる。
かつて、この国の主として、この都を闊歩していたときには感じることの出来なかった充足感が、
このような異常時になって漸く感じられるとは、なんとも皮肉なことである。
曹丕は笑いながら、弟の頭を優しく撫でた。
「少し、眠ろうか。ずっと歩いてきた。眠らないと、体が持たないからな。」
太陽が昇りきてから眠りに着くとは、なんとも可笑しな話だが。


―――――空は、雲ひとつない蒼天であった。


44 名前:栄華の墓所 結果[sage] 投稿日:2006/07/30(日) 23:44:26
<<パパじゃないよお兄ちゃんだよ/2名>> 『現在地 冀州・魏郡・ギョウ内民家』
曹丕[右肩負傷・手当て不完全、疲労]【スコーピオン(残弾19発)】曹幹【白い鳩】
※しばらくは民家内で休息。
※曹丕の傷はだんだん悪化してきています。
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