7-130 甘寧帰郷

336 名前:甘寧帰郷 1/5 投稿日:2006/07/24(月) 14:51:57
「おお懐かしき蜀の地よ」
甘寧は荊州から永安に入り、永安から成都へと向かっていた。
狙いはもちろん蜀の猛将。蜀といえば、なんといっても天下に名高い五虎大将。
張飛は天下無双と呼ばれた呂布に次ぐというし、関羽も張飛と実力はほぼ僅差だという。
馬超は呂布にも劣らぬと言われ、黄忠は漢中にて魏の猛将夏侯淵を討ち取り、趙雲の単騎駆けは呉の内でも語り継がれていた。
「くくく……虎に今から会えるかと思えば、全身がざわついてくるぜ」
実際には五虎の誰一人として蜀の地にはいないのだが、もちろん甘寧はそんな事は知らない。

劉璋は成都城の城壁の上にいた。
かつての自分の本拠地であり、劉備に降伏した後は劉備の本拠地となったこの地。
城壁から内を見れば、劉璋の時代にはなかった、劉備一族が建てたのであろう豪勢な宮殿が存在していた。
とうてい、入る気にはなれない。
―――この成都は、かつて私のものだったというのに、劉備が来て、好き勝手に荒らしてしまった。
―――もう二度と、あんな奴などには渡しはせん。いや、自分以外の、誰一人として。
「なにやら、半裸の男が城に近づいてきますが……」
外を見張っていた王累がそう言った。立ち上がって見れば、確かに下帯一丁の男が歩いている。
右手には拳銃を持ち、背中に背負ったザックから長い刀剣のようなものが見えていた。
どこかで見たような、気もしないでもない。
「この成都に入ろうものなら、誰であろうが殺す」
劉璋は自動拳銃コルト・ガバメントを手に取ると、男の方向へと、引き金を引いた。


337 名前:甘寧帰郷 2/5 投稿日:2006/07/24(月) 14:57:48
城壁の上に、影が見えた。
逆光のせいで見えにくいが、確かに人型をしていた。
見ながら城に向かって歩いていると、影が3つに増えた。
そのうちの1人が、なにやら腕を伸ばしたかのように見えた。
ぱん
銃声だ。
「この成都から、即刻立ち去れぃ!!」
遠く城の方から、声が聞こえた。きっと3人の影のうち1人がしゃべってるのだ。
「これ以上近寄れば、今度は当てるぞ!」
今度は、当てる? 何言ってんだこの腑抜けは。
ここから城まで、ざっと100メートルはあるか。たぶん、その三分の一くらいの距離にならなきゃ、まぐれでも銃弾は当たりはしないだろう。
拳銃の射程はさほど長くないとシグ・ザウエル付随の説明書にも書いてあったし、素人の射撃ならなおさらだ。
もちろん相手が持っている銃が拳銃とは限らない。しかし、この距離まで撃てるほどの銃なら、すでに当ててきているはずだ。
当てられないから、あのような脅しをするのだ。
へっ、大したことねえ。
しかし3人の内で、やたら図体がでかい奴がいる。たぶん、自分より大きいだろう。
五虎はみな偉丈夫だと聞いてるが、ひょっとして、あれがそうじゃないか?
行く価値は、あるな。
甘寧は城へ近づいていった。


338 名前:甘寧帰郷 3/5 投稿日:2006/07/24(月) 14:59:13
「あやつ、城へ近づいてくるぞ!? 銃声が聞こえなかったのか!」
男は劉璋の威嚇射撃に一端脚を止めたが、すぐに、平然と歩き出した。
「この距離じゃあ、当たらないとわかっているのでしょう」
と、王累が言う。かつて劉璋に諫言を受け入れてもらえず、その結果死んだというのに、まったく恨みもせず付いてくれてきた忠義の士だった。
「相手が持っているのも同じ形の銃ですから、有効射程は同程度のはず。
こっちには城壁に上にいるぶん有利ですが…………」
男は黙々と歩いてくる。あくまで平然と、慎重でも焦ってもいない歩き。そうして銃弾が当たるか当たらないかの距離まで歩き、止まった。
「なあおい! そこのでかい奴!」
張任のことだろう。劉璋、王累と並んでいては、まるで子供と大人の差だった。
「あんたの名前なんていう!?」
名前?
そんなこと聞いて、何になるのかと劉璋は思ったが、張任は返した。
「我は蜀郡の張任! 貴様は誰だ!」
「俺かぁ!? 俺は巴郡の甘寧っつうんだ! 知ってるか!?」
なに、甘寧だと!?
かつて長江沿岸を荒らし回った川賊であり、自分が父の跡を継いだ時には反逆者に荷担した人物であった。
その後は黄祖の客将となったが孫権に降り、戦場で大いに活躍したと聞く。
「この成都に何用があって来たのだ!」
今度は劉璋が聞く。
「そりゃ、殺し合いのために決まってんだろ!」
甘寧は、銃口をこちらに向けていた。


339 名前:甘寧帰郷 4/5 投稿日:2006/07/24(月) 15:00:59
張任と聞いて、甘寧は少しがっかりした。
なんだ、五虎じゃねーのかよ。五虎はどこにいるんだよ。
それでも、張任といえば劉璋軍の中でも最も優れた名将であったとも聞く。
その武勇と機知で持って、劉備の軍師を殺し、ラク城にて劉備軍を一年以上食い止めた実績がある。
少しは楽しめそうだな。
甘寧は右手に持っていたシグ・ザウエルを、城壁の上へ発砲した。
発砲すると同時に、全速力で城へ走っていく。
もとより当てるつもりはなかったが、弾丸は当たらなかったようだ。
丸顔の、でっぷり太った男が、慌てて拳銃を構え直している。
甘寧は走りながら二発目を城壁の上へ撃った。太った男は銃声に怖がり、後ろへ飛び退く。
銃声を聞いてから避けようとしても、意味ねーだろうが。
その後も走りながら、断続的に太った男を狙って撃つ。これは当てるためというより、銃を撃たせないためだった。男は怖がって、銃声が聞こえるたび後退していった。
ふん、臆病者め。
太った男のそばに、張任がいなくなっているのに気が付いたのは、城まで十歩ほどという所だった。
甘寧は速度を落とさない。が、いよいよ城の入り口をまたごうとするその瞬間になって、甘寧は左手背中の刀を抜きながら、脚を一歩で停止させた。
鞘はザックに固定してあったので、ザックから出しざま刀身が現れる。それを、前方斜め左―――城壁の裏にいた黒い影に振り下ろした。
刃と刃がぶつかり合う音が、甘寧の耳に長く響いた。
「やっぱり待ち伏せしてたな、張任さんよお」
甘寧の持つ天叢雲剣を、張任のが受け止めていた。
「残念だが、あんたの負けだ」
「勝負は……まだ決まっておらん!」
その時張任は気付いていなかった。甘寧のが、三尖両刃刀の刃のなかに、沈むように食い込んでいることに―――
時が進むごとに、その食い込みが、深くなっていくことに―――
気付いた時には、音もなく三尖両刃刀は両断され、反応もできないまま、天叢雲剣が張任を深々と斬り付けていた。


340 名前:甘寧帰郷 5/5 投稿日:2006/07/24(月) 15:04:09
劉璋は、がたがたと震えながらコルト・ガバメントを構えていた。
銃口の先は、城壁上と城内を結ぶ階段の階下にいる、甘寧という男だった。
甘寧は実に簡単に張任を斬り殺してのけたのだ。
張任は劉璋の知るかぎり、自分の配下の中では最も武勇に優れていたし、
劉備だって一年以上防いでくれたし、判断力にも長けて、頼りがいのある人物だった。
このゲームが始まって、張任に出会えた時の喜びは、どれほどのものだったか。
その張任が、いともあっけなく、殺された。
甘寧は、斬り殺したあとは間髪を入れず、拳銃を階上の劉璋へ構えた。
「思い出した。あんた、劉璋だな。相変わらず、暗愚って言葉そのものの顔だ」
そして引き金を引いた。劉璋は何もできずに、立ち尽くしていた。

「殿っ!」
それまで、劉璋のそばに立っていただけの文官風の男が突然、劉璋を押しのけて前に飛び出した。
なので劉璋の顔面に命中するはずだった弾丸は、その男の胸元に当たることになった。
男は撃たれると同時に、何か、黒い物を投げつけていた。それは甘寧の頭に向かってきたが、軽く首を振って避けた。
続けてもう一発撃ち込んだ。文官風の男の頭部に命中し、男は死んだ。
さらにもう一発……を撃ち込もうとして止めた。
なぜならば劉璋は、王累に押しのけられたせいで、体勢を崩し、脚がもつれ、とたとたと外側へふらつき、つまずき、城外へと落ちる所だったから―――
少し間が空いて、肉がつぶれる音が甘寧の耳に届いた。
「なんて無惨な主従なんだ……………」

思ったよりも張任はあっけなかったな。
まあこの、天叢雲剣の反則的な切れ味のせいだが。
次はどこに行こうか。五虎大将は成都にいないのなら、益州のどこにもいない気がする。
「やっぱ、中原とかにみんな集まってんのか? あー、面倒だなぁ」
甘寧は劉璋の持っていたのコルト・ガバメント、王累の投げつけた点穴針を拾うと、北へと歩いていった。

@甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣、コルト・ガバメント、点穴針】
※雍州経由で中原へ向かいます。猛将優先。

【張任 王累 劉璋 死亡確認】
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最終更新:2007年11月17日 21:17
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