7-118 炎と曹丕と短歌行


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294 名前:炎と曹丕と短歌行 1/3 投稿日:2006/07/21(金) 23:43:35
曹丕はその後も幾度かうつらうつらしかけた。
極度の疲労と緊張。
傍らの曹幹が与えてくれる、不思議な安堵感。
先程の夢が残した不安感。
そんなものに揺さぶられながら曹丕は夜を過ごす。

軽く目頭を押さえ、静かに参加者名簿を手に取る。
ただぼんやりしていたのではまた居眠りをしてしまいそうだ。
懐かしい名前を見ながら、遠い日の光景に思いを馳せる。
彰はあの屈託のない笑顔でよく手合わせしようと言ってきた。
植はそんな彰から逃げるように私の後ろに隠れたりもした。
そしてよく二人で詩を吟じたりもした。
熊は身体が弱かったが、とても優しく素直だった。その笑顔が好きだった。
幼い頃は、母の見守る庭で共に遊んだりもした。
いつから、その距離は遠くなったのだろう―。

…いつから遠くなったのだ、ではない。
自分から遠ざけたのだ。
それは曹丕が一番良く解っている。
時は流れ、いつまでも子供のままではいられる筈もなく、
また父もいつまでも健在なわけもなく、浮上する後継者問題。
いつの間にやら派閥が出来あがり、彼らはただの兄弟ではいられなくなった。
確かに、後継者になりたかった…とは思う。


295 名前:炎と曹丕と短歌行 2/3 投稿日:2006/07/21(金) 23:44:55
でもそれは金の服が着たかったからではなく、ただ…。

父の顔が浮かんだ。
何故か悲しくなって、曹丕は思考を中断した。

皇帝以外の者が強い権力を持てば、
それは王朝の滅びに直結すると歴史が証明している。
だから彼はかつての王朝と同じ轍を踏まぬよう、皇族―つまり彼の弟たちを遠ざけた。
為政者としての自分の判断が間違っていたとは思わない。
…では、今弟たちの名を見てよぎるこの寂寥感は何なのだろう。
そして今、末の弟を守るこの自分の腕は何なのだろう?
弟に膝を貸している今のこの自分を見たら、仲達や長文は私を叱るだろうか。
或いは失望するだろうか?


許昌が燃えている。
事故や計略、襲撃と思うより前に、
『父に拒絶されている』と思った自分の女々しさが忌々しい。
肩の傷や疲労、そしてあの悪夢のせいで弱気になっているのだろうか。
炎上していない南門からなら入ることも出来そうだが
出てくることも可能とは限らないし、
こんな状態では父が許昌にいるとは考え難い。
ならば…ギョウか。

死亡者放送が聞こえてくる。
曹丕は曹幹の手を握りながら北へと向かう。
たったこれだけの時間で、どれだけの人間が死んだのか。


296 名前:炎と曹丕と短歌行 3/3 投稿日:2006/07/21(金) 23:46:09
「仰いで帷幕を見 伏して几筵を見る…」
呟くように詠う曹丕。
それは父を亡くした時に詠った詩だ。
今は父を亡くした訳ではない。
だが燃える都とすれ違いの旅路は、
曹丕の心をこの詩を詠った日の様に彷徨わせる。

 …とうさまには魔王がみえないの…
 …あれはたなびく霧だ…
 いっそ滑稽なほどにすれ違う父と子。

「…我独り孤独 この百離を思う
 憂心はなはだ疚しく 我を良く知るもの無し…」

どこまでもすれ違う父と子。
この空の下、父もまた同じ「短歌行」を詠っているというのに。



<<パパじゃないよお兄ちゃんだよ/2名>>
曹丕[右肩負傷・手当て不完全、疲労]【スコーピオン(残弾19発)】曹幹【白い鳩】
※現在地は許昌。ギョウを目指します。
※曹丕の傷はきちんと手当てをしないと悪化していきそうです。
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