7-107 虞翻と夏侯覇


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259 名前:虞翻と夏侯覇 1/4 投稿日:2006/07/19(水) 22:29:18
虞翻は荊州の道を歩いていた。
その道は左右を100メートル半ほどの崖に挟まれた谷間の道で、幅は5~8メートルだが、
その両脇には少し小柄な男性の肩くらいの背の茂みがあるため、実際にまともに歩けるのは石畳で舗装された、人二人が詰めて並び歩けるくらいの範囲しかない。
だが、隠れ歩くには茂みの方がいいであろう。
なので虞翻は右方の茂みの中に身を落としつつ、慎重に辺りを見回しながら移動していた。
最初は驚異のカードの数々に喜々として馬鹿騒ぎしていたのだが、しばらくして彼はいくらか冷静になっていた。
いくらカードが凄かろうと、後ろから撃たれてしまえば、まったくもって意味をなさない。
そう思えば馬鹿騒ぎしていた自分が恥ずかしくなった。あそこで銃とやらを持った誰かに気がつかれ、忍び寄られて撃たれれば全てがお終いだった。
隙を見せたら負けだ……しかし一人でいれば隙が多い……ちと揚州へ行って仲間を捜し、最後に裏切ることにしよう。
というわけで虞翻はこの道を進んでいたわけだが、
―――しかしどうも、誰かに視られている気がする。
後ろを振り向く。誰もいない。耳をすます。物音は聞こえない。拾った小石をいくつか茂みに投げる。反応なし。
が、視られている感じはぬぐい去れない。
その後も虞翻は歩いては止まり、止まっては石を投げ、石を投げては歩いた。

その様子を、崖上の夏侯覇はほくそ笑みながら見ていた。
なんと馬鹿なヤツだろう。崖の上の危険性にも気付かないなど。
まあ、あの男は文官風だ。最前線では戦わない文官に、このような危険を知らないのも無理はない。
その危険とは、戦場においてはだいたいが落石か矢雨だが、今夏侯覇が持っているのは狙撃銃だった。
その茂みの中じゃあ、後ろからは見えずとも上からじゃよく見えるぜ。
よし、あいつが標的だ。俺のドラグノフの、最初の標的だ。
スコープの標準に標的の頭頂部を会わせ、夏侯覇は引き金を引いた。

「あ、カード落とした」
ひらひらと茂みの中を舞いながら、カードは地面へ落ちていく。
そのカードは、ブラック・マジシャンという、真っ黒な衣と頭巾を被った妖術使いの絵が描かれているものだった。
虞翻は慌てて落ちていくカードを取ろうと前屈みにしゃがむと、途端に、空から銃声が聞こえた。


260 名前:虞翻と夏侯覇 2/4 投稿日:2006/07/19(水) 22:30:31
その銃声が発されると同時に、上から鋭い何かが右足太股をかすめていったのを虞翻は感じた。
「なっ!?」
反射的に上を見上げる。下から見える崖岸に、何か細長い物を持って立っている人の影が見えた。
逆光のために見えづらいが、間違いなくあれが狙撃者であろう。
虞翻は落としたカードは諦めることにして、そのまま走り始めた。
真っ直ぐ全速力、時々左右にずれる。茂みのせいで走りにくいが、中央の舗装された道では軌道が読まれやすい。
茂みの中に完全に隠れて移動するという手もあったが、そのためには体勢をほとんど這うくらいにまで低くする必要があり、遅い。
自分が隠れた時、敵が素早くその隠れた位置付近に撃ち込めば、当たってしまうだろう。
虞翻の判断は正しかった。遙か上方からは移動する標的はやはり狙いにくいらしく、銃声が二発なったが、後方の草葉を散らせるだけにすんだ。
「さて………」
虞翻は残り四枚のカードの内、青眼の白竜という物を取り出した。
(出でよ、青眼の白竜!)
青眼の白竜。虞翻が見るにその絵は竜ではなく白い巨大トカゲのような怪物だが、ともかく、虞翻は心の内で念じた。
しかし、何も起こらなかった。ただ銃声が二回聞こえ、一発は虞翻の右肩を貫いた。右手で持っていた青眼の白竜のカードが落ちる。
思わぬ痛みと衝撃に、虞翻は倒れかけたが、ここで倒れても格好の標的になるだけである。踏ん張り、何とか走り続けた。
「がっ……! 糞っ、何で出ない!」
虞翻は右肩の痛みと右腕を流れる生暖かく不愉快な感触に耐えながらも、思考した。
思い当たった結論は、おそらく、声に出さなかったからということだった。
虞翻は左手で、ブラック・マジシャン・ガールのカードを取り出す。
絵は最初に落としたブラック・マジシャンと同じ格好をした小娘で、そのブラック・マジシャンがいれば強くなれるようだったが、ともかく、虞翻は叫んだ。
「出でよ、ブラック・マジシャン・ガール!」
しかし当然、妖術使いの小娘は現れない。銃声が鳴り、弾丸がブラック・マジシャン・ガールのカードに穴を空けた。
「な、なんでだぁぁああ!!」
虞翻はわけもわからず、走り続けた。
再び銃声がなり、弾丸が虞翻の頬を削った。


261 名前:虞翻と夏侯覇 3/5 投稿日:2006/07/19(水) 22:35:38
標的が何やら叫んでいた。悲鳴とは違う種類の声だが、それでも十分恐怖と焦りは感じ取れた。
そうだ、喚け、騒げ、藻掻け、そして死ね。
引き金を引く。乾いた音と呼応するかのように、標的がばったりと茂みの中へ倒れ隠れた。
同時に、標的が持っていたザックが前方中空に浮かんだ。倒れた拍子に、ザックが勢いよく腕から抜けたのだろう。そのうちザックも前方の茂みへ消える。
よし、もう何発か……標的の倒れた付近へ立て続けに撃った。五発、六発、七発、八発……
銃声が止んでしばらくしても、もう茂みの中から出てくる者はいなかった。
少し物足りない気がしたが、いい訓練にはなった。さて、次の標的探しにでも―――

「はぁ」
虞翻は茂みの中でため息を付いていた。まさかこんな何の役にも立たないエセ物を掴ませるとは、主催者も何を考えているのか。
さて、もう敵は行ったか?
まあ万が一ことを考え、もうしばらく隠れていよう。
カードは迷った末、取っておくことにした。サンダーストームと死者蘇生。相手に信じ込ませることさえできれば、脅しや取引には使える。
……いい加減、敵は行ったか?
茂みの中から、少し顔を除かせた。もう敵の影は見当たらない。  
「はぁ……」
立ち上がりながら先程より深いため息を付いた。自分は結局、偽物の宝物に舞い踊っていた愚者に過ぎなかったのだ。
自分がこうして生き残れたのも、単なる運に過ぎない。
銃声が鳴り、その弾丸が虞翻の頬を削り抜けたちょうどその時、虞翻は草に足を取られ、転んだ。
転びながらも虞翻は考えた。敵に自分を、死んだと思いこませて撤退させることはできないか?
視界の左端に、石畳の道が見えた。あそこを横切り、左側の茂みに隠れれば―――
虞翻は倒れながらも、前方上空へザックを放り投げた。なるべく高く、遠くへ。


262 名前:虞翻と夏侯覇 4/5 投稿日:2006/07/19(水) 22:36:38
そのまま茂みの中へ倒れるも、倒れきる直前、地面に足と手を付けて胴体を浮かばせることに成功した。
そのまま手と足をバネに、虞翻は左へ飛び跳ねた。飛び跳ねたといってもごく低空だが、地面についた後も勢いを殺さず転がり続けた。
右側の茂みを抜ける直前になって、虞翻は両足を着いていったん止まり、再び左へ跳ねた。
そうして空中で狭い石畳の道を横切り、左側の茂みへ落ちた。直後にザックが落ちる音がし、その少し後に何発もの銃声が鳴り渡った。
いずれも右側の茂みにしか弾丸は落ちなかった。
様には空中のザックに敵の注目をそらせ、その間に石畳の道を横切ったのだ。
視界にちらと移る影に気付かれたなら、ザックなどに気を留めないようなら、まず虞翻は死んでいた。
敵がよほど注意深く、右側の茂みだけではなく左側にも撃っていたらなら、虞翻は死んでいた。
瞬時に策を思いついたのは虞翻の機知だが、その策には博打要素が多分に入っていた。
博打嫌いな虞翻にとっては極めて不愉快な策だった。もう二度と、こんな策は使わない。
「さて、と」
敵が戻ってくるかもしれない可能性を考慮して、虞翻は石畳の道を急いで走っていった。揚州には使える奴がいるといいが………

―――誰だ、こいつは
標的を殺し終え、次の標的を探そうと崖岸から振り返ると、夏侯覇から8メートルほどか、その大男は立っていた。
おおよそ夏侯覇が今まで見てきた猛者の誰よりも、その男は勝っていた。
それは屈強な体であり、屈強な体からにじみ出る威圧感であり、殺気だった。
右手に青龍が刻まれている、大きな偃月刀を携え、夏侯覇を見据えている。
その瞳には狂気が宿っているように見えた、しかしよく見れば、それは狂気なのではない。
この男は狂っているのではなく、正常なのだ。ごく正常の状態で、俺を殺そうとしている。
「あんたが誰だか知らんが―――」
男の目がピクッと動いた、
「―――俺が持っているのは銃だ。献帝の護衛が使っていた、あの武器だ。比べてあんたは接近用武器。距離から考えるに、俺の方が有利だ。
あんたは俺を殺そうとしてるようだが、悪いことは言わない、やめておいた方がいい」
知らず夏侯覇は、戦いを避ける方向へ話を持っていっていた。本当に有利なら、即座に撃てばいい。それはわかっているのだが、男の威圧感に完全に呑まれていた。


263 名前:虞翻と夏侯覇 5/5 投稿日:2006/07/19(水) 22:37:44
「それだけか」
男が呟き、偃月刀を構えた。殺気がますます濃くなり、夏侯覇の背には冷や汗が流れていた。
やられる―――ヤらなきゃ、ヤられる。
恐怖が夏侯覇を駆り立て、指に引き金を引かせた。銃声とともに弾丸が飛び出す。が、弾丸の軌道に、すでに男はいなかった。なんだ、どこだ!?
見失ったのは一瞬で、視界の左よりに男はいた。しかし、すでに遅すぎた。夏侯覇はもはや、男の攻撃範囲の中に入っていた。
―――なんだこいつは―――なんなんだ―――
男は偃月刀を振り、夏侯覇は事切れた。間をおいて、夏侯覇の首は胴体からずり落ち、崖下へ落ちていった。
男、呂布は残った胴体から銃を取り上げると、胴体はバランスを崩し、首を追うようにまた崖下へ落ちた。
呂布は崖下を見下げる。石畳の道を何者かが走っていたが、呂布の視界からはもう消えかけていた。
しかし、荊州には人がいなかった。まだこの雑魚一人だ。
あの男は東へ向かっているのか? 東には、骨のある奴も少しはいるかもしれんな。

@虞翻【遊戯王カード(2枚)】
現在地は荊州。揚州へ向かっています。

@呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル】
※現在地は荊州。東へ向かいます。

【夏侯覇 死亡確認】


264 名前:虞翻と夏侯覇 訂正 投稿日:2006/07/19(水) 22:42:47
すみません、>>263訂正です

@虞翻[右肩被弾、頬軽傷]【遊戯王カード(2枚)】
現在地は荊州。揚州へ向かっています。

@呂布【関羽の青龍偃月刀、ドラグノフ・スナイパーライフル】
※現在地は荊州。東へ向かいます。

【夏侯覇 死亡確認】
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