7-064 明日のために

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152 名前:明日のために 1/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:54:25 参加者名簿を見ながら、郭嘉は考える。 線を引かれているのは死亡者の名前。 魏の将が、多すぎるのだ。 特に夏侯姓が目立つ。 呼ばれた順番が近いから、洛陽を出た直後に広範囲を攻撃できる武器で狙われたのか? 夏侯氏に恨みがある者の仕業か、あるいは…裏切り? 夏侯姓を持つ生存者―夏侯惇、夏侯淵、夏侯覇―の名前をちらりと見る。 いや、夏侯一族とは限らない。同じ魏将であることを利用して、隙を突いて、一気に…。 北へ行く道すがら、魏の誰かから情報の一つでも頂ければ好都合。 そう思ってここ、陳留へとやってきたが考えが甘かったか? 「あれは…満寵殿?」 陳羣に言われて郭嘉もそちらを見る。 一人の男がうずくまっている。確かに満寵だ。 「満寵殿!」 満寵はひどく苦しみのたうち回っていた。あまりの苦しみように陳羣が駆け寄る。 「満寵殿、どうなさいました!満寵殿!!」 陳羣には、満寵が一瞬笑ったように見えた。 うれしそうに? かなしそうに? 「伏せろ!!」 郭嘉が叫び、チーフスペシャルが火を吹く。 伏せる陳羣、跳び退く満寵。二人の間を銃弾が駆け抜ける。 満寵が郭嘉をぎらりとした瞳で見た。その手には刃。 ---- 153 名前:明日のために 2/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:55:52 満寵は郭嘉に肉薄する。 「陳羣殿!」 郭嘉の叫びに陳羣は弾かれたように膝を突いて身体を起こしザックに手を突っ込む。 来るはずの閃光に備えて郭嘉は手を翳す。 が。 「馬鹿野郎!陳羣っ!!」 陳羣は、凍り付いていた。閃光弾を握りしめたまま。    ―本当にいいのか、これを使ってしまって―    ―取り返しのつかないことが起きるのでは―    ―…まさ…たまさ…た…さ…たまさいたま― 「ぐ、はっ…!」 満寵の刃が閃き郭嘉の脇腹の肉を抉る。 郭嘉は銃を取り落とす。 瞬間、未来を見通すと言われた瞳と今はガラスのように虚ろな瞳が交差する。 「わあああああああああああああ!!」 一拍遅れて飛沫いた鮮血に、陳羣の恐怖に似た躊躇いも飛んだ。 絶叫。炸裂する閃光が両者の瞳の中くらくらと瞬く。 震える膝を叱咤して陳羣は郭嘉に駆け寄りその腕をひっ掴む。 光。熱を持つ傷。流れ出ていく命の滴。 自分の腕を掴む陳羣の手。 感じるのはただそれだけ。 …痛いな。そんなに強く掴まなくったっていいのに… …何をするにも、容赦ないなこの人… そんなことを思いながら、郭嘉は意識を手放した。 ---- 154 名前:明日のために 3/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:57:17 「申し訳ありません…!」 何度も何度も謝る陳羣にいちいち返事をするのも面倒だった。 別にいいよ、と一度だけ言って、後は黙って思考を巡らせていた。 満寵の変貌も気になったが、陳羣の様子も同じくらい気になった。 確かに陳羣は中央で政に関わるのが仕事だった。自分ほど前線馴れはしていないだろう。 だが先程のあの様子は異様だった。 躊躇う、なんて可愛いものではなく、もっと本能に刻まれた禁忌のような― 自分の水を使って郭嘉の傷を浄め、袖を破り止血に使う。 名家に生まれたとはいえ決して豊かではなく、 徐州にいたころなどは特に苦労をしていた陳羣はこれらの手当を器用にこなしたが それで罪悪感が晴れることはなかった。 「…すみません。申し訳ありません。私の責任です…!」 脇腹の傷は致命傷ではなさそうだが大分失血してしまったようだ。 また郭嘉は元来身体の強い方ではない。傷口から厄介な病を得てしまうかもしれない。 ひたすら謝り、郭嘉の顔色もいくらか落ち着いた頃、陳羣はぽつりと言った。 「…これは、貴方が持っていてくださいませんか」 郭嘉は片眉を微かに上げて陳羣を見た。 傷は左の脇腹だ。確かに右手で弾を投げる程度なら支障はない。 ---- 155 名前:明日のために 4/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:58:29 「私が持っているのでは、またいざという時に貴方にご迷惑がかかるかも…」 「あんた、武器も持たずにどうやって生き延びるつもりだ」 鋭い口調で郭嘉が陳羣を遮った。 「どう、って…」 「あんたは生きてくつもりがあんのか」 「…………。」 「答えろ!」 陳羣は、答えられない。 「甘ったれんじゃねえ!!」 郭嘉の拳が陳羣の頬を打った。傷に痛みが走る。 脂汗が額に浮かんだが郭嘉は意地でも痛そうな顔はせずに立っている。 陳羣は目を見開いたまま、そんな郭嘉を見ている。 「生きてくつもりがないんなら、今俺がてめえを殺してやる!俺が生き延びるためにな!!」 郭嘉の手が陳羣の首に伸びた。そのまま絞める。 郭嘉は、本気だ。 「か、くっ…か…っ…!」 「確かに俺は死に損ないだよ。武器も無くしたしかなり血も流れちまったしな。  でも今のあんたよりは絶対に生き延びる自信がある!だってな俺は、俺は、」 陳羣は酸素を求めてもがく。 こうして首を絞められてみれば、陳羣もまた浅ましく生に縋っている。 血を吐くような郭嘉の叫び。 「俺は、生きていたい…!」 …生きて、いたかった。 郭嘉の手が離れた。 陳羣はまだ荒い呼吸を繰り返している。 ---- 156 名前:明日のために 5/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:59:31 酷い頭痛と目眩の中、陳羣はようやく解ったような気がした。 自分は、どこかでもう諦めてはいなかったか。 どうせ、今回も(今回も?)生き延びることは出来まいと。 だけど、だけどやっぱり自分は、死にたくない。 …生きていたいのだ。 「…生き、ますよ」 精一杯に力を込めた眼差しで、陳羣も郭嘉を見返した。 「…生き延びてやりますよ、絶対に。  少なくとも…貴方よりは、長く」 郭嘉はにやりと笑う。 「上等」 陳羣も、笑い返した。 「ええ」 ザックから閃光弾を二つ出し、郭嘉に手渡す。 「半分だけ、持っていてください。  私が生き延びるためにね」 それを受け取った郭嘉は皮肉っぽく笑って、こう切り替えした。 「陳羣殿も、せいぜい仕事してくださいよ。  俺が生き延びるためにさ」 互いに明日を、生き抜くために。 <<不品行と品行方正/2名>> 郭嘉[左脇腹負傷、失血]【閃光弾×2】陳羣【閃光弾×2】 ※郭嘉の銃は満寵に奪われました。 ※幽州を目指します。
152 名前:明日のために 1/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:54:25 参加者名簿を見ながら、郭嘉は考える。 線を引かれているのは死亡者の名前。 魏の将が、多すぎるのだ。 特に夏侯姓が目立つ。 呼ばれた順番が近いから、洛陽を出た直後に広範囲を攻撃できる武器で狙われたのか? 夏侯氏に恨みがある者の仕業か、あるいは…裏切り? 夏侯姓を持つ生存者―夏侯惇、夏侯淵、夏侯覇―の名前をちらりと見る。 いや、夏侯一族とは限らない。同じ魏将であることを利用して、隙を突いて、一気に…。 北へ行く道すがら、魏の誰かから情報の一つでも頂ければ好都合。 そう思ってここ、陳留へとやってきたが考えが甘かったか? 「あれは…満寵殿?」 陳羣に言われて郭嘉もそちらを見る。 一人の男がうずくまっている。確かに満寵だ。 「満寵殿!」 満寵はひどく苦しみのたうち回っていた。あまりの苦しみように陳羣が駆け寄る。 「満寵殿、どうなさいました!満寵殿!!」 陳羣には、満寵が一瞬笑ったように見えた。 うれしそうに? かなしそうに? 「伏せろ!!」 郭嘉が叫び、チーフスペシャルが火を吹く。 伏せる陳羣、跳び退く満寵。二人の間を銃弾が駆け抜ける。 満寵が郭嘉をぎらりとした瞳で見た。その手には刃。 ---- 153 名前:明日のために 2/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:55:52 満寵は郭嘉に肉薄する。 「陳羣殿!」 郭嘉の叫びに陳羣は弾かれたように膝を突いて身体を起こしザックに手を突っ込む。 来るはずの閃光に備えて郭嘉は手を翳す。 が。 「馬鹿野郎!陳羣っ!!」 陳羣は、凍り付いていた。閃光弾を握りしめたまま。    ―本当にいいのか、これを使ってしまって―    ―取り返しのつかないことが起きるのでは―    ―…まさ…たまさ…た…さ…たまさいたま― 「ぐ、はっ…!」 満寵の刃が閃き郭嘉の脇腹の肉を抉る。 郭嘉は銃を取り落とす。 瞬間、未来を見通すと言われた瞳と今はガラスのように虚ろな瞳が交差する。 「わあああああああああああああ!!」 一拍遅れて飛沫いた鮮血に、陳羣の恐怖に似た躊躇いも飛んだ。 絶叫。炸裂する閃光が両者の瞳の中くらくらと瞬く。 震える膝を叱咤して陳羣は郭嘉に駆け寄りその腕をひっ掴む。 光。熱を持つ傷。流れ出ていく命の滴。 自分の腕を掴む陳羣の手。 感じるのはただそれだけ。 …痛いな。そんなに強く掴まなくったっていいのに… …何をするにも、容赦ないなこの人… そんなことを思いながら、郭嘉は意識を手放した。 ---- 154 名前:明日のために 3/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:57:17 「申し訳ありません…!」 何度も何度も謝る陳羣にいちいち返事をするのも面倒だった。 別にいいよ、と一度だけ言って、後は黙って思考を巡らせていた。 満寵の変貌も気になったが、陳羣の様子も同じくらい気になった。 確かに陳羣は中央で政に関わるのが仕事だった。自分ほど前線馴れはしていないだろう。 だが先程のあの様子は異様だった。 躊躇う、なんて可愛いものではなく、もっと本能に刻まれた禁忌のような― 自分の水を使って郭嘉の傷を浄め、袖を破り止血に使う。 名家に生まれたとはいえ決して豊かではなく、 徐州にいたころなどは特に苦労をしていた陳羣はこれらの手当を器用にこなしたが それで罪悪感が晴れることはなかった。 「…すみません。申し訳ありません。私の責任です…!」 脇腹の傷は致命傷ではなさそうだが大分失血してしまったようだ。 また郭嘉は元来身体の強い方ではない。傷口から厄介な病を得てしまうかもしれない。 ひたすら謝り、郭嘉の顔色もいくらか落ち着いた頃、陳羣はぽつりと言った。 「…これは、貴方が持っていてくださいませんか」 郭嘉は片眉を微かに上げて陳羣を見た。 傷は左の脇腹だ。確かに右手で弾を投げる程度なら支障はない。 ---- 155 名前:明日のために 4/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:58:29 「私が持っているのでは、またいざという時に貴方にご迷惑がかかるかも…」 「あんた、武器も持たずにどうやって生き延びるつもりだ」 鋭い口調で郭嘉が陳羣を遮った。 「どう、って…」 「あんたは生きてくつもりがあんのか」 「…………。」 「答えろ!」 陳羣は、答えられない。 「甘ったれんじゃねえ!!」 郭嘉の拳が陳羣の頬を打った。傷に痛みが走る。 脂汗が額に浮かんだが郭嘉は意地でも痛そうな顔はせずに立っている。 陳羣は目を見開いたまま、そんな郭嘉を見ている。 「生きてくつもりがないんなら、今俺がてめえを殺してやる!俺が生き延びるためにな!!」 郭嘉の手が陳羣の首に伸びた。そのまま絞める。 郭嘉は、本気だ。 「か、くっ…か…っ…!」 「確かに俺は死に損ないだよ。武器も無くしたしかなり血も流れちまったしな。  でも今のあんたよりは絶対に生き延びる自信がある!だってな俺は、俺は、」 陳羣は酸素を求めてもがく。 こうして首を絞められてみれば、陳羣もまた浅ましく生に縋っている。 血を吐くような郭嘉の叫び。 「俺は、生きていたい…!」 …生きて、いたかった。 郭嘉の手が離れた。 陳羣はまだ荒い呼吸を繰り返している。 ---- 156 名前:明日のために 5/5 投稿日:2006/07/14(金) 03:59:31 酷い頭痛と目眩の中、陳羣はようやく解ったような気がした。 自分は、どこかでもう諦めてはいなかったか。 どうせ、今回も(今回も?)生き延びることは出来まいと。 だけど、だけどやっぱり自分は、死にたくない。 …生きていたいのだ。 「…生き、ますよ」 精一杯に力を込めた眼差しで、陳羣も郭嘉を見返した。 「…生き延びてやりますよ、絶対に。  少なくとも…貴方よりは、長く」 郭嘉はにやりと笑う。 「上等」 陳羣も、笑い返した。 「ええ」 ザックから閃光弾を二つ出し、郭嘉に手渡す。 「半分だけ、持っていてください。  私が生き延びるためにね」 それを受け取った郭嘉は皮肉っぽく笑って、こう切り替えした。 「陳羣殿も、せいぜい仕事してくださいよ。  俺が生き延びるためにさ」 互いに明日を、生き抜くために。 ≪不品行と品行方正/2名≫ 郭嘉[左脇腹負傷、失血]【閃光弾×2】&陳羣【閃光弾×2】 ※郭嘉の銃は満寵に奪われました。 ※幽州を目指します。

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