7-062

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146 名前:1/4 投稿日:2006/07/14(金) 00:26:35 「ちっ……まったく、まずい相手にぶち当たったもんだ」 大木を背にしつつ、甘寧は自嘲気味に呟く。 荊州は博望。複雑な地形のこの地で、宵闇の中甘寧はばったり徐晃と遭遇してしまったのだ。 当然戦闘となり、今は闇に包まれた森の中でお互いに探りあいをしているというわけである。 息さえ迂闊にできない。お互い使えば的となる懐中電灯は使えないのだから、後は気配を読み取ることで仕掛けるしかなかった。 この戦闘だけに限って言えば、甘寧の方が有利ではある。 甘寧の武器はザウエルP228。M-11とも呼ばれる高性能拳銃で、30m以内ならば精度の高い命中率を誇る。 対して徐晃の武器は刀だった。一対一で森林での戦いならわずかながら飛び道具持ちのほうが有利ではあろうが……。 「ありゃ、やべえ。下手すりゃ木ごと真っ二つだ」 徐晃の剣には、強い剣気を感じた。あれは相当の業物だ。持ち主ではない俺でさえはっとしてしまった。 「……」 時折吹く風で草木がなびくたび、緊張感が増す。戦い慣れていない人間なら平常心をあっさり失ってしまうだろう。 いや、奴に出会うまで身体の勘を失わせていた俺も戦いに呑まれていたのか? 「むう、しかしどうすっかね」 奴はおそらく50歩圏内にはいる。大きく動けるとは思わないので、おそらく木を背にして反対側、つまり俺の南側にいるはずだが。 白兵戦は……ダメだ。木に隠れながら突っ込んでこられると分が悪い。 それにこの9mm弾では、急所にぶち込まない限り一撃では仕留められない。 徐晃なら手足に数発喰らってもそのまま突撃してきてばっさり、ともなりかねない。 「……やれやれ、ちとカッとなってたか。俺も焼きが回ったな」 ---- 147 名前:2/4 投稿日:2006/07/14(金) 00:28:12 徐晃は慎重に木々の間を縫って歩いていた。 手には鞘に収めた名刀。いつでも斬れるように抜いておきたいが、月光で刀身が目立ってしまっては元も子もない。 気付かれずに近づき、叩っ切る。逃げる選択肢などない。なにせ、武器は変われどあれだけの猛将と戦う機会などそうはないからだ。 徐晃もまた、強者と戦えることを純粋に喜んでいたわけである。 (拙者の目指す道は、武の追求ただ一点也。甘寧殿、いざ一介の武人として勝負いたしましょうぞ) 武器──天叢雲剣を手にして、余計な音を立てないように草を払って進む。 不思議な剣だ。剣閃にほとんど音を立てずにすむし、まるで草が自ら斬られるように真っ二つになっていく。 そして慎重に歩を詰めていき、徐晃は相手を発見した。 (居ましたな、甘寧殿) 大木の陰に、衣服の端が見えている。気配も感じる。あの木の裏に隠れているようだ。常人なら気付けはしないだろう。 (どちらにしても、貴殿の殺気が漏れ出しておりますが。……さらばでござる、拙者の一撃を受けなされ) 柄に手をかける。こちらの殺気が伝わらないように。あくまで無心で。 「……っ!!」 激烈な居合い抜きの一撃が振るわれ、甘寧のいた大木は両断された。 ---- 148 名前:3/4 投稿日:2006/07/14(金) 00:30:24 「……」 「ぐ……な、なんと」 徐晃渾身の一撃が振るわれた後、刹那の間に銃声が三発発射された。 その弾丸は正確に徐晃の身体を突き抜け、臓腑を抉った。 「なるほど、拙者が未熟でしたな。……これならば敗北も致し方ない」 「そんなことねーよ。俺だって多分そうしてたし、斬撃が斬り落としだったり木が倒れてきたらそこまでだ」 下帯一丁の甘寧が複雑そうな顔で語る。 「衣服を木の枝にに引っ掛け撒餌とし、自らは伏せた形で……ぐっ、狙撃の体勢とは。殺気が漏れるのもわざとでござるか」 「ああ。俺ならどうするか考えた上での策だ。あんたは多分気取られる前に一撃の体勢……背後から大木ごと俺を斬れる最短距離で来ると思った」 真っ二つにされた甘寧の衣服が舞い散っていく。 「……いや、呉随一の猛将と同じ行動を取れるとは、悪くない」 片膝を突きそうになりながら、辛うじて全身を支え、苦悶の表情の中に笑みを作りながら、徐晃は剣を構える。 「さあ、勝負はまだ終わっておらん。拙者を地に伏せさせた時が貴殿の勝利でござろう」 「……わかった、いいだろう」 甘寧は再び銃を構える。 「もし殿にお会いしたら……戦いの最中で結構でござる、徐公明は殿に仕えて幸せだったと伝えてくだされ」 「面倒なこと押し付けやがるな、あんたも」 「ふふ、それくらいは問題ないでござろう。それに貴殿なら愚痴を言いつつもやる事はやってみせる人物のはず」 甘寧が苦笑いする。それを見て、最後の力を込めて徐晃は駆けた。 「されば……徐公明、参りますぞ!!」 ---- 149 名前:4/4 投稿日:2006/07/14(金) 00:31:57 「……ふう」 月光を浴びながら、甘寧は川縁で一息ついていた。 「ったく、面倒なこと押し付けんなっての」 言いながら、遺品となった剣を手にしてみる。 「いい剣だな……」 徐晃のザックにあった説明書には、邪気を払う剣と書かれていた。 確かに、少しばかり空気に呑まれそうだった自分の心も晴らしてくれたような気もする。 「まあ、結局殺り合うって点では同じだけどな」 試しに一閃。重さをさほど感じない。 確か会場には張遼もいたはずだ。あのヤローともう一遍戦ってみるのもいい。 張飛や関羽と戦うのも悪くない。三国無双の呂布だっている。 そう考えると、少しわくわくしてきた。徐晃の目指した事もこんな感じだったのだろう。 「よっしゃ」 気合を入れて立ち上がる、ほぼ全裸の甘寧。 「俺と戦えるくらい強い奴、豪傑、いつでも受けて立ってやるぜ!!」 月明かりを一身に受けて拳を上げる彼の姿は、まるで某拳王様のようだったとか何とか。 【徐晃 死亡確認】 【張遼 生存確認】 @甘寧【シグ・ザウエルP228、天叢雲剣】 ※この世界で最強の武将になることを目指します。

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