7-029

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63 名前:1/3 投稿日:2006/07/09(日) 21:01:03 「っは、はぁ、はぁ、……はぁ……」 足ががくがくしてもうこれ以上は走れない。 彼は倒れこむように座り込み、近くの木に身を預けた。 息が整わない。血の色が目の前をちらつく。 あれが。あれが呂布か。 自分の生きた時代には既に伝説となっていた猛将。 己が国にも猛将、勇将と呼ばれる存在は数多く居たし、自分もその末席くらいには名を連ねているつもりで居た。 桁が違う。 ―――あれはそんな生易しい言葉で表現できる存在じゃない。 気迫が違う。 ―――自分が何人束になっても勝てるとは思えなかった。 世界が、違う。 ―――まさに声を掛けようとしていた孫呉の仲間、呂範が目の前で斬り殺されたと言うのに、 ただひたすら逃げる事しか出来なかった。 それが恥ずかしいとさえ思えない。あれは違う生き物なんだ。人間が敵う相手じゃない。 凌統は長い息をつき、拳を握り締めた。 まだ震えが、止まらない。 ---- 64 名前:2/3 投稿日:2006/07/09(日) 21:04:27 「うわーっ!? ちょ、ちょっと、やめろ! どけ! どけってば!!  誰か助けろ! 助けて!? ぎゃああぁ」 突然悲鳴が聞こえて、凌統は身を竦ませた。 ……しかし、どことなく間抜けな雰囲気の悲鳴である。 それに、同じ方向から聞こえてくる……あれは獣の鳴き声、というか犬? さほどの危険はなさそうだと判断して、凌統は相手に気付かれないように、身を隠しながらそっと覗き込んだ。 なんだあれ。 感じていた緊張が急激に緩んでいく。 文官だろうか、自分とさほど変わらない年頃と見える青年が、大きな白い犬にのしかかられて半泣きでわめいていた。 もう一匹、仔犬がその周りを楽しそうに跳ね回っている。 放っておこうか、と思ったそのとき、頭の中に何か奇妙な既視感がよぎった。 犬。犬の母子。 姫様。握り締めた栗色の髪。 姫様の死体。陵辱の痕。 お上。復讐。復讐――― 「そ、そこ! 誰か居るんだろう!? 見てないで助けろ! 人の心が有るのなら!」 自分の中で膨れ上がりかけた何かが、上擦った青年の声で四散する。 気配は殺してたはずなのに、こんな文官(たぶん)に悟られるとは…… 内心ちょっと凹みつつ凌統は木陰から出た。もちろん、警戒は怠っていない。 しかしその途端、 「うわっ!? 何だッ?」 さっきまで青年にのしかかっていた大きな犬が自分の方に飛びついてきた。 一瞬血の気が引いたが、ぺろぺろ顔を舐められ、どうやら犬は自分に危害を加えるつもりは無いらしいと悟る。 少し遅れて、その辺を跳ね回っていた仔犬も、体ごとぶつかってくる。 しっぽをちぎれんばかりに振って目をきらきらさせながらである。 ……何で俺いきなりこんなに懐かれてんの? ---- 65 名前:3/3 投稿日:2006/07/09(日) 21:09:55 「あー。とりあえず礼を言う。私は馬謖、字を幼常。お前は?」 「……凌統。字は公績」 礼を言う、と言っている割には態度デカいなこいつ。 ふんぞり返っている文官っぽい青年、改め馬謖を眺めて凌統は曖昧な笑みを浮かべた。 後ろには犬が2匹。何の因果か、すっかり懐かれてしまったようである。 「ふん。見たところそれなりに腕もたつようだ。私と行動を共にする事を許そう」 なんだこいつ。心底なんだこいつ。 あっけにとられて馬謖の顔を見つめた。 ふっ、と妙に得意げな笑みを浮かべられ、凌統は完璧に呆れた。 自分も知力に自信はないが、ここまでの馬鹿にはつきあってられん! くるっと身を翻し立ち去ろうとすると、がしっと腕を掴まれ危うくコケそうになった。 「拾ったなら責任を持って面倒を見ろ! それが君子の行いというものだ!」 「拾ってない! 犬は拾ってもいいけど貴様は拾ってないわボケ!」 「拾え!」 「嫌だ!!」 「いま私を拾うと素敵な配給物のオマケつき!」 「要ら……それ何?」 うっかり目の前に突き出された黒っぽい板に興味を示してしまったのが、凌統の運の尽きだった。 <<既視感を追う旅/2名>>凌統【???、犬の母子】馬謖【探知機】 ※どさくさでパーティ化。近づく人間を察知できます
63 名前:1/3 投稿日:2006/07/09(日) 21:01:03 「っは、はぁ、はぁ、……はぁ……」 足ががくがくしてもうこれ以上は走れない。 彼は倒れこむように座り込み、近くの木に身を預けた。 息が整わない。血の色が目の前をちらつく。 あれが。あれが呂布か。 自分の生きた時代には既に伝説となっていた猛将。 己が国にも猛将、勇将と呼ばれる存在は数多く居たし、自分もその末席くらいには名を連ねているつもりで居た。 桁が違う。 ―――あれはそんな生易しい言葉で表現できる存在じゃない。 気迫が違う。 ―――自分が何人束になっても勝てるとは思えなかった。 世界が、違う。 ―――まさに声を掛けようとしていた孫呉の仲間、呂範が目の前で斬り殺されたと言うのに、 ただひたすら逃げる事しか出来なかった。 それが恥ずかしいとさえ思えない。あれは違う生き物なんだ。人間が敵う相手じゃない。 凌統は長い息をつき、拳を握り締めた。 まだ震えが、止まらない。 ---- 64 名前:2/3 投稿日:2006/07/09(日) 21:04:27 「うわーっ!? ちょ、ちょっと、やめろ! どけ! どけってば!!  誰か助けろ! 助けて!? ぎゃああぁ」 突然悲鳴が聞こえて、凌統は身を竦ませた。 ……しかし、どことなく間抜けな雰囲気の悲鳴である。 それに、同じ方向から聞こえてくる……あれは獣の鳴き声、というか犬? さほどの危険はなさそうだと判断して、凌統は相手に気付かれないように、身を隠しながらそっと覗き込んだ。 なんだあれ。 感じていた緊張が急激に緩んでいく。 文官だろうか、自分とさほど変わらない年頃と見える青年が、大きな白い犬にのしかかられて半泣きでわめいていた。 もう一匹、仔犬がその周りを楽しそうに跳ね回っている。 放っておこうか、と思ったそのとき、頭の中に何か奇妙な既視感がよぎった。 犬。犬の母子。 姫様。握り締めた栗色の髪。 姫様の死体。陵辱の痕。 お上。復讐。復讐――― 「そ、そこ! 誰か居るんだろう!? 見てないで助けろ! 人の心が有るのなら!」 自分の中で膨れ上がりかけた何かが、上擦った青年の声で四散する。 気配は殺してたはずなのに、こんな文官(たぶん)に悟られるとは…… 内心ちょっと凹みつつ凌統は木陰から出た。もちろん、警戒は怠っていない。 しかしその途端、 「うわっ!? 何だッ?」 さっきまで青年にのしかかっていた大きな犬が自分の方に飛びついてきた。 一瞬血の気が引いたが、ぺろぺろ顔を舐められ、どうやら犬は自分に危害を加えるつもりは無いらしいと悟る。 少し遅れて、その辺を跳ね回っていた仔犬も、体ごとぶつかってくる。 しっぽをちぎれんばかりに振って目をきらきらさせながらである。 ……何で俺いきなりこんなに懐かれてんの? ---- 65 名前:3/3 投稿日:2006/07/09(日) 21:09:55 「あー。とりあえず礼を言う。私は馬謖、字を幼常。お前は?」 「……凌統。字は公績」 礼を言う、と言っている割には態度デカいなこいつ。 ふんぞり返っている文官っぽい青年、改め馬謖を眺めて凌統は曖昧な笑みを浮かべた。 後ろには犬が2匹。何の因果か、すっかり懐かれてしまったようである。 「ふん。見たところそれなりに腕もたつようだ。私と行動を共にする事を許そう」 なんだこいつ。心底なんだこいつ。 あっけにとられて馬謖の顔を見つめた。 ふっ、と妙に得意げな笑みを浮かべられ、凌統は完璧に呆れた。 自分も知力に自信はないが、ここまでの馬鹿にはつきあってられん! くるっと身を翻し立ち去ろうとすると、がしっと腕を掴まれ危うくコケそうになった。 「拾ったなら責任を持って面倒を見ろ! それが君子の行いというものだ!」 「拾ってない! 犬は拾ってもいいけど貴様は拾ってないわボケ!」 「拾え!」 「嫌だ!!」 「いま私を拾うと素敵な配給物のオマケつき!」 「要ら……それ何?」 うっかり目の前に突き出された黒っぽい板に興味を示してしまったのが、凌統の運の尽きだった。 ≪既視感を追う旅/2名≫ 凌統【???、犬の母子】&馬謖【探知機】 ※どさくさでパーティ化。近づく人間を察知できます

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