7-253 人間だから

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167 名前:人間だから 1/5 投稿日:2006/11/28(火) 13:14:11 何故だろう。 今日の月は何故あんなにぼやけた光を放っているのだろう。 何故自分は今震えているのだろう。 別段寒くはないのに。 「堪えるな」 大きな暖かい手が、励ますように曹彰の肩を二、三度叩いた。 堪える?自分は今、堪えているのか? 「堪えずに、泣けばいい」 そう言われて初めて理解した。自分は今、泣きたいのだ。 今目頭に熱く溜まっているのは涙なのだとようやく分かった。 父を連想させる袁紹の手が彼の肩を力強く叩く度、 不思議な程素直に涙が溢れた。 後継者問題で揉め、拗れ、恨みもした兄弟だったのに、 その死を知った今は悲しみしか沸き上がって来ず 思い出されるのは共に無邪気に遊んだ幼い日々ばかりで、 曹彰は何故かそれを狡いと思った。 その懐かしい光景には気弱げに微笑む曹熊の姿もある。 多分人を、しかも血族を殺したのだろう曹熊。 しかし、そんな光景を目の当たりにしていてもやはり曹彰には信じられない。 曹熊が人を殺すなど。 仮に真実曹熊が手を汚していたとしても、きっと何か事情があったのだろうと思う。 ---- 168 名前:人間だから 2/5 投稿日:2006/11/28(火) 13:15:04 自分でも分かっている。 自分は馬鹿なんだろう。 そして自分もあまり分かっていなかった事だが、 自分は結構兄弟たちが好きなのだろう。 歯を食いしばり、声を上げず泣く曹彰の髪をぐしゃぐしゃと撫でながら 袁紹もまた頬を涙で濡らしていた。 次々と仲間を、身内を失っていくこの若武者の境遇と自分の境遇をどこか重ねながら、 袁紹はまた彼を実の子のようにも思い始めていた。 子を慈しみ、労り、痛みを思い共に涙する。 身内に対して深い愛情を持って接するこの男は、確かに君主には向くまい。 天を掴むためには、この男はあまりに人間すぎたのだ。 しかしその人間臭さが今の曹彰にとって大きな救いとなっていた。 仲間であろうと血族であろうと、殺さなければ殺されるこの世界。 誰もが人間らしさを忘れてしまったように思えるこの狂った世界で、 迷い、思い悩み、呆れるほど人間らしい袁紹がいる。 ---- 169 名前:人間だから 3/5 投稿日:2006/11/28(火) 13:15:54 泣いてもいいのだ。 天子になった存在であろうとも、 すれ違ったまま終わった命であっても、 その死が悲しければ泣いていいのだ。 殺伐とした争いの日々も嘘ではないけれど、 幼い頃のあの優しい日々だって嘘ではないのだから。 袁紹といると、それを素直に認め、泣くことが出来た。 『旦那!』 「誰だ!」 村正の鋭い囁きと袁紹の誰何の声が重なった。 動揺していた曹彰は僅かに反応が遅れたが、 木々の陰、闇に紛れて確かに誰かがいる。 「いや、失礼。決して危害を加えるつもりはありません」 その声は柔和だが朗々としており、物腰は柔らかだが堂々とした貫禄があった。 瞳には知性の煌めきがあり、居住まいには武人の風格もある。 一目で只者ではないと分かった。 そしてその腰に下げている刀もかなりの業物のようだ。 村正に緊張が走ったのを袁紹も手のひらに感じる。 しかし不思議と警戒心を抱かせない男だった。 その瞳があまりに優しく、穏やかだからだろうか。 ---- 170 名前:人間だから 4/5 投稿日:2006/11/28(火) 13:16:56 魯粛と名乗ったその男は人を捜しているのだと言った。 自分たちと似た目的に親近感を覚え、彼らは互いに情報を交換する。 「曹幹だって?」 魯粛らが出会い、探しているという幼子の名を聞いて曹彰は驚く。 曹彰の名を聞いて魯粛も驚いた。 「では、曹操殿のご子息にして、曹幹君のお兄様にあたるわけで?」 「ああ。多分、弟なんだろうな…」 腹違いの兄弟たちの顔と名前を思い出そうとするが、何分数が多すぎる。 嫡子も庶子も養子も親族の子らも一緒に育ったので、 誰がどのような続柄に当たるのかすら正直あやふやだった。 「まあしかし、親族であることには間違いないだろう。  そういう事情なら、共に捜した方が良くはないか?  曹幹君を託した者たちが魏の者ならば、その者たちもお前の顔見知りかもしれん」 袁紹の言葉で、とりあえず彼らは行動を共にすることを決めた。 「それでその幹と、幹と一緒にいるはずの奴らはどっちにいるんだ?」 「…あっち?」 「何で疑問形なんだよ!」 途端におどおどし始めた魯粛に曹彰が容赦なく突っ込む。 ---- 171 名前:人間だから 5/5 投稿日:2006/11/28(火) 13:22:14 揚州を目指していたはずが幽州へたどり着いてしまったという前科を持つ 魯粛の超絶方向感覚が炸裂する。 「あ、いやいや、こっちだって言ってたかな?」 「だから何で疑問形なんだよ!」 周囲をきょろきょろと見回したり地図をくるくる回してみたりしている魯粛を見て 曹彰は駄目だこりゃ、と嘆息する。 「…まあ、とにかく捜すか…  とりあえずどっちを目指す?」 「…どっちにしよう?」 袁紹は頭を抱えて迷っている。 曹彰は村正とほぼ同じタイミングで、深い溜息をついた。 <<迷走する捜索隊/3名>> 袁紹【妖刀村正】 曹彰【双剣の片方(やや刃こぼれ)、ごむ風船】 魯粛【圧切長谷部】 ※曹操、荀イク、曹熊、張飛、<<不品行と品行方正と忘れ形見>>を捜しています。 ※また魯粛は<<皇帝とナース>>との再合流も一応目指しています。 ※現在地は司隷。本人たちはとりあえず南を目指しているつもり?

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