7-242 (・(エ)・)

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88 名前:(・(エ)・) 1/6 投稿日:2006/10/20(金) 17:49:14 曹熊が鄴城を目前にした時、血がべっとり付いた獲物を、血まみれの誰かが引っ提げて城門を出てきた。 とっさに曹熊は木の影に身を潜め、その人物を見た。 武骨。彼を一単語で表すと、こうなる。 巨漢で、服の上からでも大きく膨れ上がっているかのような筋骨がわかり、角張った威圧的な顔は、並の人には見つめることすらもままならないだろう。 張遼、字を文遠。その人に違いなかった。 張遼が去るまで待ち続け、曹熊は城内に入った。 曹熊が育った地であり、曹熊の第一の居場所だった都市は、廃墟へと化していた。 大雨のせいだろう、所々引ききっていない水が見え、地面はぬかるんでいた。 もう決して戻ることはできないのだと、宣言されているように思えて、曹熊はしばらく立ちすくんだ。 それからしばらく歩いていくと、銅雀台の前に横たわる于禁の死体を発見した。 土手っ腹を刺されていた。 吐き気と目眩に襲われながら、曹熊は血に染まった張遼の武器を思い出していた。 ああ張遼、君もなのか。 秩序を重んじる気骨の人ですらも、この遊戯に沈んでしまうのか。 于禁の死体の先、より銅雀台に近づいた所に、大きな血溜まりがあった。 血溜まりから血の点線が伸びており、銅雀台の階段を上っていった。 血は明らかに致死量を越えていた。 上りたくない。 父の死を知った時以来の、嫌な予感がする。 あの時は予感通り、自殺するはめになった。 上りたくない。でも…… 上らなきゃいけない気がする。 曹熊の足は、まるで機械人形のように血痕を追っていった。 ---- 89 名前:(・(エ)・) 2/6 投稿日:2006/10/20(金) 17:50:40 台上では、二人の兄が隣り合って死んでいた。 曹丕は肩を貫かれ額を抉られ、 曹植は全身穴だらけ。 曹丕の体はひどく冷たかったが、 曹植の体はほんのり暖かかった。 そして二人で微笑み合っていた。 堪えようもない吐き気に、曹熊は死体の側に汚物を散らす。 なぜ笑っている? このどうしようもない狂った世界で、なぜ兄上達は笑っているのだ? 死を受容して? 死に気付かなくて? 自分は、阿会喃や張虎といた頃は無邪気に笑っていられた。 何も知らなかったから。 何もわかってなかったから。 今の自分は知っているし、わかっている。それに開き直ることは、無理な性分だ。 だから絶対に、死を目の前に微笑むことはできない。 ---- 90 名前:(・(エ)・) 3/6 投稿日:2006/10/20(金) 17:51:37 二人の傍らに、まるで墓標のように三角の木箱と白い札のようなものが置かれているのに気付く。 木箱の端には金属の棒が突き出ており、また黒と白の短い突起もあった。 棒に手を伸ばすと、空間が揺らめいたかのような不思議な音が鳴り、驚いて手を引っ込める。 な、な、な、なにこれ? 数十秒間様子を見たが、何も起こらない。恐る恐る、再び手を伸ばす。 音が鳴る。鳴り続ける。手を動かす。音階が変わる。 楽器? 楽器ならばと、何か奏でようと試み、ゆらゆらと棒の周囲に手を動かす。 まったく慣れない作業で、最初は赤ん坊のぐずり声のような雑音であったが、続けるうちにかろうじて音楽の形を成していった。 曹熊は下手な歌声を、下手な楽に乗せた。 かつて阿会喃と張虎とともに歌った、わらべ歌。  あるーひっ  もりのーなかっ  くまさーんにっ  でああったっ  はなさーくも そこまで歌った所で、曹熊は唐突にテルミンを投げ出した。 大きさに比べて全然重くない楽器は、簡単に銅雀台の外まで飛んでいき、はるか下まで落ちていった。 誰も復唱してくれない。 誰も斉唱してくれない。 自分だけの下手な独唱に、いったい何の意味があるというのか。 絶望にまみれながら、次に白い札を手に取る。 黒い平面、その横や下に付いている押せる部分、側面には上下左右できる部分や穴などがあった。 それらをいじくり回しているうちに、パシャン、と札の裏の一部が開いた。びっくりして札を取り落としかけてしまう。 数十秒して、開けた場所に何かを入れるらしいことをわかった曹熊は、辺りを見回した。 足下に小さい盤上のものが、何枚も並べられていることに気付く。 盤の中にはさらに円盤が入っており、それぞれ模様が描かれている。 全て回収し、そのうち一つを札に入れた。 が、何も起こらない。開けた部分を閉じても、何も起こらない。 またいじくり回す。 すると突然、黒かった平面が光り輝きだした。 ---- 91 名前:(・(エ)・) 4/6 投稿日:2006/10/20(金) 17:52:49 動く絵だとか操作方法だとか車だとかマフィアだとか、最初はわけがわからなかったが、やっていくうちに慣れてきた。 ようには、街中でやりたい放題できる遊びらしい。 道行く人を、殴り殺す刺し殺す斬り殺す撃ち殺す焼き殺す轢き殺す殺す殺す殺す殺す殺す。 見ろ! 人がゴミのようだ! あっはっはっはっはっはっはう………… 再び嘔吐。胃の中のものは先程吐ききっていたので、黄色い胃酸だけが出てくる。 最悪だ。 狂った遊戯の中で、さらに何を好んで狂った遊戯をしなければならないのだ。 目眩が激しい。 どこかで休まなくちゃ……とふらふら歩き出して、曹植の死体を踏み悲鳴を上げる。 もう嫌だ。もうだめだ。 いっそ死のう。殺されるのが嫌なら、自分から死んだ方がいい。あの時のように。 この高い銅雀台だ。飛び降りれば、すぐ死ねる。 曹熊は台の縁までふらついていった。 そしてぼろぼろになった都を見収める。 僕ごときの死に場所には、ちょうどいいじゃないか…… さあ死のう。 空中に片足を進め出す。 コツ……コツ…… ---- 92 名前:(・(エ)・) 5/6 投稿日:2006/10/20(金) 17:54:27 ……足音? 敵だ! 自殺することなど飛ぶように忘れ去り、曹熊は慌ただしく身構えた。 やばい、殺される! いや、今のPSP拳法を習得している僕に、かなう相手などいるものか! ……PSP拳法って何だ? 僕は何を思っている? ああ、こうしている合間にもどんどん迫ってくる。 ここはとりあえずガン=カタで……でも拳銃一丁じゃ120%の力を出せるかどうか…… ああ、敵が来る! とりあえず撃て! 撃ってしまえ! 曹熊は階段の前まで駆け寄り、そして上り来る人物を見た。 髭が長く、長すぎて混乱している曹熊にはそれしか認識できなかった。 髭男に銃口を向けて、曹熊は乱射する。 しかし撃つ前から髭男は伏せ、巨大な武器を盾代わりに前へかざしていた。 1、2、3……14、15、16 装填数が0になってからも、曹熊は引き金を引き続けた。髭男が弩らしきものを構えるのを見て、初めて反動と銃声がないのに気付く。 殺す気だ。あいつも僕を殺す気だ。 曹熊は堪らず逃げ出した。 銅雀台の左右には閣道があり、金鳳台か氷井台へと続いている。その閣道向かって走って行った。 ---- 93 名前:(・(エ)・) 6/6 投稿日:2006/10/20(金) 17:56:17 階上の、脆弱な男の銃弾は、関羽の巨大なる体をかすりもしない。 関羽は諸葛弩を構え、階上の男目掛けて数本放った。 だが男は逃げ出し、矢は当たらない。 しばらく様子を見たが、一向に男は戻ってこない。関羽は立ち上がり、再び階段を上る。 台上では、二人の男が死んでいた。 一人はひどく冷たく、もう一人はほんのり暖かい。 あの脆弱な男が殺したのか、階下で死んでいた于禁が殺したのかどうかはわからないが、二人の死亡時刻はかけ離れているようだ。 よく見てみると、この二人の死体の顔は似ている。目尻や輪郭がそっくりだ。 そして、微笑み合っているように見える。 兄弟なのだろうか? ともすれば、仲の良い兄弟だっただろう…… 関羽は二人のために短く黙祷した。 黙祷後、辺りに何もないのを確認すると、関羽は銅雀台を下りていった。 @曹熊[錯乱]【ベレッタM92F(残弾30) PSP】 ※どこかへ走り去っていきました。 ※プレイしてたのはグランド・セフト・オート @関羽[全身打撲(治癒中)]【方天画戟、猛毒付き諸葛弩(残り矢17本)・手榴弾×3】 ※汝南、新野を回り益州へ。

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