7-238 Reminder Of The Past

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62 名前:Reminder Of The Past 1/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:39:55 泣いたら駄目だと自分に言い聞かすのだが、苦しそうな姿を見ていると自然に涙が浮かぶ。 元々感受性の強い方ではあったが、その実どこか達観して冷め切った己が存在した。 長かった人生で泣くことなどほとんどなかった。ましてや人のためにだなんて! 手を握ると、弱々しい力で握り替えしてくる。 額に浮かぶ汗の粒が彼の衰弱を物語っているかのようで、 もともと頑強とは言い難い小柄な身体はすっかり痩せ細ってしまっている。 陸機は両手で顔を覆った。 黙っているとネガティヴな思考に支配されそうで、 他のことを考えようと努力するのだがなかなかままならない。 「大丈夫ですよ、すぐ治るから。今、尚香殿が薬草を探しに行ってますから。  だから、もうすぐですよ」 自分に言い聞かせるように、幾度もそう呟いた。 ---- 63 名前:Reminder Of The Past 2/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:40:38 風土病の類だと呂蒙は言った。 「でも、なぜ曹操殿だけ」 「彼は中原の人間だ。  俺たち三人は南の出身で、こちらの風土に慣れているから平気だが、  他の地域の者は、この湿潤な気候に慣れずに水で体調を悪くする者が多いんだ。  ほら、お前は産まれて無かったかも知れんが、聞いたことぐらいはあるだろう。  赤壁で曹軍を苦しめた風土病の話を」 高熱を発している彼のために、 孫尚香は高熱に効く薬草を採ってくると出かけて行った。 残ったふたりは交替で冷水を汲んでくる。 布巾で額を拭う。そうする度に、先程まではうっすらと瞳を開けて問いかけに答えていたものの、 今は昏睡状態に陥っていた。 ---- 64 名前:Reminder Of The Past 3/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:41:18 意識の無い曹操の横に、陸機は放心して座り込む。 怖い。心底怖かった。彼が亡くなったらどうしよう。 自分が死ぬ時でさえ人事のように醒めていた己とも思えぬ初めての感情に、 陸機の感情は千々に乱れていた。 「お前が狼狽えてどうするんだ。しっかりしろ」 そんな陸機に歯がゆさを覚えるらしく、呂蒙は苛立たしげに吐き捨てる。 「だって阿蒙さん! 仕方ないじゃないですか!」 「だからってお前が焦ってどうすんだ?」 「冷たいですよ、冷たい、阿蒙さんは冷たい!」 「甘えんじゃねえ!」(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・ 陸機は目を見開いて呂蒙を見やった。 頬はじんじんと痛んでいるが、心はもっと痛かった。 きしきしと、何かがきしんでいるかのようで、壊れてしまいそうだ。 「お前が冷静にならないでどうするんだ。ガキじゃないなら落ち着け」 荒げた息を押さえつけるようにした呂蒙の言葉に、陸機は思わず涙を零す。 「す、すみません、俺、確かに慌てて、どうしたらいいかわからなくて、でも」 でも。 でも、怖いんです。 ---- 65 名前:Reminder Of The Past 4/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:43:00 わけのわからぬ世界に未練などひとつも無いと思っていた。 誰かに見つかって無惨に殺されるもよし、 行き倒れて土に還るもよし、 どうせ一度処刑された命なのだから、どうにでもなれと初めてから投げていた。 しかし、信頼出来る仲間に巡り会え、 敬愛の余り批判すら加えたことのある人に出会え、 ましてや父子のように接して貰い、別の感情が芽生えたとしか考えられないのだ。 死にたくない。 いや、死なせたくない。 初めて覚える生への執着に、陸機は戸惑い、憂えていた。 「泣くな」 「は、はい。俺、なきばせん」 「鼻水をぬぐえ、みっともない。いいか、よく聞けよ。  この人がそう簡単に死ぬわけないだろうが。  俺含めて殺そうと狙っていた奴が五万といたにも関わらず、  のうのうと生き延び続けた乱世の奸雄だぞ?」 そうだ。彼は決して弱くはない。 彼ほど悪運の強い人間もいないと、文献を漁っては、呆れ混じりに感嘆したのは自分ではないか。 「そうれすね」 「目の回りもぐちゃぐちゃだぞ……まったく、お前って奴は」 ---- 66 名前:Reminder Of The Past 5/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:44:01 出来の悪い弟にでも向けるような優しい瞳でそう言った呂蒙だったが、 次の瞬間まるで別人のように表情を変えた。 静かにしろと片手で合図すると、目を細めて木々の向こうを凝視する。 「誰かいる」 「尚香さんじゃないんれすか?」 「違う。男だ。……いや、男でもないかもしれん。  ……耳だ。頭に、猫の耳がついている」 向こうは未だこちらには気付いていない。 しかし、何かを求めてうろうろしていることは間違いない。 『萌えキャラは殺し尽くしてやる……』 風に乗って、彼が呟いているらしき言葉が聞こえてくる。 その不気味極まりない声を聞く度に陸機は身体を震わせた。 「逃げるぞ」 「で、でも! 曹操殿は!」 「しっ! 大声出すな。俺が背負う。この紐で身体を固定してくれ」 ここに置いていけとうわごとのように言う曹操を黙らせ、 陸機は泣きながら彼を呂蒙の背に乗せて、捻りはちまきでくくりつけた。 ---- 67 名前:Reminder Of The Past 6/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:45:11 「尚香殿がまだ」 「彼女は馬鹿じゃない。おまけにお前よりよっぽど強い。  だから、大丈夫だ」 ちろるちょこきなこ味をひとつその場に置く。その横に棒で字を書いた。  桂陽デ待ツ 猫耳 キヲツケロ  三人は猫耳の影から遠ざかるように駆けだした。       << ふたりの詩人とひとりのアモー/3名>> 曹操[高熱、意識混濁、呂蒙に背負われ中]【チロルチョコ(残り83個)】陸機【液体ムヒ】 呂蒙[曹操背負い中]【捻りはちまき】 @孫尚香【シャンプー】 ※薬草探し中 @潘璋【備前長船】 ※萌えキャラ探し中 ※現在全員廬陵郡にいます。 ※呂蒙、曹操、陸機は桂陽に逃げようとしています。 ※潘璋は萌えキャラに出会い次第殺すつもりです。
62 名前:Reminder Of The Past 1/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:39:55 泣いたら駄目だと自分に言い聞かすのだが、苦しそうな姿を見ていると自然に涙が浮かぶ。 元々感受性の強い方ではあったが、その実どこか達観して冷め切った己が存在した。 長かった人生で泣くことなどほとんどなかった。ましてや人のためにだなんて! 手を握ると、弱々しい力で握り替えしてくる。 額に浮かぶ汗の粒が彼の衰弱を物語っているかのようで、 もともと頑強とは言い難い小柄な身体はすっかり痩せ細ってしまっている。 陸機は両手で顔を覆った。 黙っているとネガティヴな思考に支配されそうで、 他のことを考えようと努力するのだがなかなかままならない。 「大丈夫ですよ、すぐ治るから。今、尚香殿が薬草を探しに行ってますから。  だから、もうすぐですよ」 自分に言い聞かせるように、幾度もそう呟いた。 ---- 63 名前:Reminder Of The Past 2/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:40:38 風土病の類だと呂蒙は言った。 「でも、なぜ曹操殿だけ」 「彼は中原の人間だ。  俺たち三人は南の出身で、こちらの風土に慣れているから平気だが、  他の地域の者は、この湿潤な気候に慣れずに水で体調を悪くする者が多いんだ。  ほら、お前は産まれて無かったかも知れんが、聞いたことぐらいはあるだろう。  赤壁で曹軍を苦しめた風土病の話を」 高熱を発している彼のために、 孫尚香は高熱に効く薬草を採ってくると出かけて行った。 残ったふたりは交替で冷水を汲んでくる。 布巾で額を拭う。そうする度に、先程まではうっすらと瞳を開けて問いかけに答えていたものの、 今は昏睡状態に陥っていた。 ---- 64 名前:Reminder Of The Past 3/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:41:18 意識の無い曹操の横に、陸機は放心して座り込む。 怖い。心底怖かった。彼が亡くなったらどうしよう。 自分が死ぬ時でさえ人事のように醒めていた己とも思えぬ初めての感情に、 陸機の感情は千々に乱れていた。 「お前が狼狽えてどうするんだ。しっかりしろ」 そんな陸機に歯がゆさを覚えるらしく、呂蒙は苛立たしげに吐き捨てる。 「だって阿蒙さん! 仕方ないじゃないですか!」 「だからってお前が焦ってどうすんだ?」 「冷たいですよ、冷たい、阿蒙さんは冷たい!」 「甘えんじゃねえ!」(((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・ 陸機は目を見開いて呂蒙を見やった。 頬はじんじんと痛んでいるが、心はもっと痛かった。 きしきしと、何かがきしんでいるかのようで、壊れてしまいそうだ。 「お前が冷静にならないでどうするんだ。ガキじゃないなら落ち着け」 荒げた息を押さえつけるようにした呂蒙の言葉に、陸機は思わず涙を零す。 「す、すみません、俺、確かに慌てて、どうしたらいいかわからなくて、でも」 でも。 でも、怖いんです。 ---- 65 名前:Reminder Of The Past 4/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:43:00 わけのわからぬ世界に未練などひとつも無いと思っていた。 誰かに見つかって無惨に殺されるもよし、 行き倒れて土に還るもよし、 どうせ一度処刑された命なのだから、どうにでもなれと初めてから投げていた。 しかし、信頼出来る仲間に巡り会え、 敬愛の余り批判すら加えたことのある人に出会え、 ましてや父子のように接して貰い、別の感情が芽生えたとしか考えられないのだ。 死にたくない。 いや、死なせたくない。 初めて覚える生への執着に、陸機は戸惑い、憂えていた。 「泣くな」 「は、はい。俺、なきばせん」 「鼻水をぬぐえ、みっともない。いいか、よく聞けよ。  この人がそう簡単に死ぬわけないだろうが。  俺含めて殺そうと狙っていた奴が五万といたにも関わらず、  のうのうと生き延び続けた乱世の奸雄だぞ?」 そうだ。彼は決して弱くはない。 彼ほど悪運の強い人間もいないと、文献を漁っては、呆れ混じりに感嘆したのは自分ではないか。 「そうれすね」 「目の回りもぐちゃぐちゃだぞ……まったく、お前って奴は」 ---- 66 名前:Reminder Of The Past 5/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:44:01 出来の悪い弟にでも向けるような優しい瞳でそう言った呂蒙だったが、 次の瞬間まるで別人のように表情を変えた。 静かにしろと片手で合図すると、目を細めて木々の向こうを凝視する。 「誰かいる」 「尚香さんじゃないんれすか?」 「違う。男だ。……いや、男でもないかもしれん。  ……耳だ。頭に、猫の耳がついている」 向こうは未だこちらには気付いていない。 しかし、何かを求めてうろうろしていることは間違いない。 『萌えキャラは殺し尽くしてやる……』 風に乗って、彼が呟いているらしき言葉が聞こえてくる。 その不気味極まりない声を聞く度に陸機は身体を震わせた。 「逃げるぞ」 「で、でも! 曹操殿は!」 「しっ! 大声出すな。俺が背負う。この紐で身体を固定してくれ」 ここに置いていけとうわごとのように言う曹操を黙らせ、 陸機は泣きながら彼を呂蒙の背に乗せて、捻りはちまきでくくりつけた。 ---- 67 名前:Reminder Of The Past 6/6 投稿日:2006/10/15(日) 17:45:11 「尚香殿がまだ」 「彼女は馬鹿じゃない。おまけにお前よりよっぽど強い。  だから、大丈夫だ」 ちろるちょこきなこ味をひとつその場に置く。その横に棒で字を書いた。  桂陽デ待ツ 猫耳 キヲツケロ  三人は猫耳の影から遠ざかるように駆けだした。       << ふたりの詩人とひとりのアモー/3名>> 曹操[高熱、意識混濁、呂蒙に背負われ中]【チロルチョコ(残り65個)】陸機【液体ムヒ】 呂蒙[曹操背負い中]【捻りはちまき】 @孫尚香【シャンプー】 ※薬草探し中 @潘璋【備前長船】 ※萌えキャラ探し中 ※現在全員廬陵郡にいます。 ※呂蒙、曹操、陸機は桂陽に逃げようとしています。 ※潘璋は萌えキャラに出会い次第殺すつもりです。

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