7-224 喪失

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350 名前:喪失 1/3 投稿日:2006/09/20(水) 15:13:46 妙才 子考 子廉 かつて夏侯惇が親しんできたその三人は、死んでいた。 「嘘だろ」 夏侯惇の呟きは、献帝のいかにも楽しげな声にかき消された。 死を楽しみ、生を嘲笑う声。 「爽やかな朝だ……? ふざけるな!!」 思わず空に向かって叫ぶ。献帝の忌々しき声は、どういうことが空から響いてくる。 天子の分際で、自分が天になったとでも思っているのか。 だが空は見えない。青い竹の葉が、空を遮っていた。夏侯惇は、気分が暗くなっていくのを感じた。 夏侯惇への返答は、当然ない。献帝の禁止エリアの説明が続くだけである。 やがてその声も止んだ。荊州襄陽の竹林は、またもとの静寂に包まれた。 「なんでだよ、おい……」 気分は暗く淀んでいても、悲しみはすぐには湧かなかった。 「死んだ」と、ただそれだけ言われても、実感が湧かない。元の世界で、夏侯淵の戦死を知った時もそうだった。 「妙才、子考、子廉……」 死んだ友の名を言ってみる。かつて、彼等に呼びかけた時のように。 すると、徐々に三人に関する記憶が浮かんできた。幼いときの頃から、曹操の重鎮として名を馳せていた頃まで、ぽつぽつと。 やがて堰を切ったかのように、記憶が走馬燈のように思考を駆け巡った。ありとあらゆる、懐かしき思い出が、頭中に広がっていく。 同時に、抑えきれない感情も湧き上がってくる。 「なんでだよ……なんで……」 目の奥が熱い。胸が苦しい。体から血が引いていく。目の前が薄暗くなる。 悲しい。 夏侯惇は普段、くよくよ悩み悲しむことはない。それでも、彼等の死はあまりにも悲しすぎた。 ---- 351 名前:喪失 2/3 投稿日:2006/09/20(水) 15:23:18 「そんなにおかしいか?」 唐突に、背後から声が聞こえた。聞き覚えのない声だ。 「人が死ぬことが」 夏侯惇は振り向かない。 だんだんと近づいてくる人物がいたことは、放送の途中からわかっている。 声から推測して、もう数歩の所にいるのもわかっている。見知らぬ誰か、危険人物の可能性はあるだろう。 それでも、振り向かない。 ただ立ち尽くしている。 「あんたは誰が死んだ? 親か子か、主君か部下か、兄弟か親友か」 歴戦の武人の背中は、そうとは思えないほど気力を感じさせないものだった。精も気もなく、.立ち尽くすさまは、端から見れば幽霊のように見えるかもしれない。 しばらくの間ののち、夏侯惇は口を開いた。 「兄弟のような、親友のような、いや……もっと……」 男への返答というより、自分自身に聞かせるような声だった。 それきりまた、竹林に沈黙が訪れる。竹の葉の囁きもなく、時間が止まったかのようになる。 「なぁ、そうだろう? 俺達は」 上を見る。相変わらず、空は見えない。それでも先程とは違って、葉と葉の隙間から洩れる光が、ちりばめられた宝玉のように見えた。 「俺達はずっとそうだった。悪ガキだった頃から、死ぬまで、ずっとそうだったんだ」 夏侯惇は歩き出した。最初はおぼつかない足取りだったが、だんだんと、確かなものへとなっていく。 「だから……」 林を抜け出ると、強い光が全身を打った。 両目を細め、前を見る。 空は雲一つなく、地は輝きに溢れていた。 「孟徳、必ずお前は―――」 ---- 352 名前:喪失 3/3 投稿日:2006/09/20(水) 15:27:26 諸葛亮は袋がタケノコで満杯になると、採集をやめ臥竜岡へ帰ることにした。 歩きながら、先程会った男について考える。 死を、悲しんでいた男だ。 もちろん諸葛亮も死は悲しい。徐庶の死は、彼の心に影をさした。 違うのは、割り切ってしまうかそうでないかだ。 死は悲しい。だが、仕方のないことだ、と諸葛亮は思っている。 人は日々死んでいく。元の世界でもこの世界でも。違うのは、戦争や飢餓、病により死ぬのか、意味のない殺し合いで死ぬのかだ。 ―――どうも今の自分と、あの書の中の自分は相違があるようだな 史記・漢書に似た『魏書』『蜀書』『呉書』 歴史の大筋や自分に関係ある出来事以外は削られているようだが、おそらく、後世の歴史書だ。 その中の諸葛亮伝に書かれている自分の姿。 最初に読んだ時から思っていたが、やはり違う。 三回訪問されて劉備に付いていくこともそうだが、 皆に大いに慕われた、というほど自分はそんな徳のある人間とは思えないし、 晩年、執拗とまでいえるほど北伐を行っているが、これには首を傾げるばかりだ。 元来『割り切る』性格の自分がすることではない、と諸葛亮は思う。 同時に、人は変わる、という考えも浮かんでくる。 劉備という人間の器に触れて、自分は変わっていったのでないか? 「劉備ねぇ」 頭を掻きながら呟き、諸葛亮は臥竜岡へ帰っていった。 @夏侯惇【金属バット】 ※現在地は襄陽臥竜岡近く。豫州へ向かいます。 @諸葛亮【諸葛亮伝(色んな諸葛亮が満載。諸葛亮と直接関係ない事柄については書かれていない)】 ※現在地は臥竜岡。基本的に自分から動く気はないようですが、協力を求められれば動くこともありそうです。

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