7-221 星

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327 名前:星 1/3 投稿日:2006/09/12(火) 19:51:07 瞼にうっすらと感じる日の光に、曹丕は目を覚ました。 胸にある暖かな感触。 曹幹が自分にしがみつくように眠っている。 体が、頭が重い。 何も動かせないが、意識だけが妙にはっきりしている。 「…、…か…、…」 胸にある、暖かな感触。 戦いの中で、自分を正気に繋ぎ留めて来た唯一のもの。 大切な。 「…そ…」 口が、喉が上手く動かない。だが動かさなければならないのだ。 「曹幹…」 やっと、声が出せた。 それを聞いて、曹幹が弾かれたように飛び起きる。 「とうさま…!」 泣いているのか、笑っているのかわからない表情。 曹幹はほとんど半裸の状態だった。 恐らく、服は自分の傷をふさぐのに使ってしまったのだろう。 本人の体は、泥でぐしゃぐしゃだ。 幼い弟にここまでさせてしまった自分を情けないと思った。 …そして、その思いに報いることが出来ないことも。 「とうさま、だいじょうぶですか…だいじょうぶですか」 心配そうに曹丕を覗き込んでくる、あどけない瞳。 自分は笑顔でそれに応えられただろうか。 ---- 328 名前:星 2/3 投稿日:2006/09/12(火) 19:52:00 医者と言っていた男はどうしたのだろう。昨夜の記憶は酷く曖昧だ。 水に煽られた冷たさ。 肩を貫かれた熱さ。 …あと覚えている物は、雨と、風と、銃声の音。 ここはどこなのだろう。曹幹の顔しか見えない。 傷は痛まない。ただ、酷く眠い。 だが、眠る前にしなければならないことは、よくわかっていた。 「…曹幹」 ゆっくりと、曹丕は声を出す。 「よく、聞きなさい。」 「とうさま」 「曹操を探しなさい。私達の父だ」 「…とうさま?とうさまは、もうひとりおられるのですか?」 「父を、探しなさい。必ず、お前を守って、くれる」 曹幹が何か言っているが、よく聞こえない。 胸にある、暖かな感触。 それだけが曹幹の存在を示している。 「私は…星になる。空からお前を守る」 「ほしに」 いつか話した。 星になりたいと、曹幹は笑って言った。 だが、駄目だ。お前は駄目なのだ。 「お前は生きなさい。お前の側にいてくれる人と共に」 「…とうさま?」 「お前は、生きなさい」 そうだ、この想いは 「生きなさい」 この子供を守りたいという想いは 「とうさま…とうさま?」 この身が滅びても、星のように美しく煌くことだろう。 ---- 329 名前:星 3/3 投稿日:2006/09/12(火) 19:53:08 やがて曹丕は何も答えなくなった。 体は見るも無残であったが、その表情は眠るように安らかだった。 『遠い輝きよりも、こうして触れあえる距離の方が得難いものなのだよ』 いつか言われた言葉を思い出しながら、曹幹は空を仰いだ。 夜になれば、星が出る。 ――とうさまは、そこにおられる。 とうさまのたましいは。 こぼれた涙をぬぐい、曹幹は立ち上がった。 『曹操を探しなさい』 とうさまの、最期の言葉を守るために。 @曹幹【吹毛剣】 ※現在地は銅雀台。 水が引いてきたので、曹操を探しに移動を始めます。 (あてはないのでとりあえず北に向かいます) 【曹丕 死亡確認】

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