7-217 生存願望

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305 名前:生存願望 1/5 投稿日:2006/09/02(土) 17:30:46 沛国譙([言焦])県 曹操を初めとする多くの曹・夏侯一族の故郷に、曹熊はいた。 曹熊もまた例外ならぬ譙の人である。とはいえ、譙にいたのは幼い頃の一時期だけであり、以降は鄴([業β])の地で育っていった。 だから曹熊にはわからない。今自分がいる豪勢な生家が、父・曹操が生まれ育った桃仙院だとは。 昨日の惨劇を、曹熊は頭の中で繰り返していた。 張虎、夏侯淵、銃、銃声、血、死、曹仁、曹洪、銃、銃声、夏侯淵、曹仁、斧、弓、矢、銃声、死、死、銃、手、死、死、死、死――― 両手に持つ拳銃が、小刻みに震えていた。 拳銃は曹熊が今まで見たこともない形状のものだったが、それは見れば見るほど優美であり、握り心地も悪くはなかった。 ベレッタM92F、夏侯淵の袋にあった説明書には、そう書かれていた。曹熊にはよくわからない説明が続いたが、様には、離れた敵を殺すためのものだということだった。 夏侯淵も曹仁も、この銃から発射された弾丸に死んだ。片方は曹仁が撃ち、片方は自分が撃った。 震えがますます大きくなる。拳銃を持つ手も、震えているのがはっきりとわかる。恐怖が頭の中を支配している。 息が荒くなる。円状の赤い穴を思い出し、吐き気がこみ上げてくる。張虎の最後も思い出す。自分は彼を、置き去りにして逃げた。 曹彰の顔を思い出す。もしあの時兄が自分に近づいてきたならば、自分はおそらく二発目を撃っていただろう。 あの時逃げ出さず、説明をすれば、きっと兄は理解してくれたはずだ。だがあの時の自分に、そんな余裕はなかった。すべてのものが、恐怖の対象だった。 戻ろうか? いや、もう無理だ。潁川にまだいるとは考えにくいし、今さら会ったところで、兄は自分を許してはくれないだろう。 下手すれば、逆に殺されてしまうのではないか? ---- 306 名前:生存願望 2/5 投稿日:2006/09/02(土) 17:32:17 震えは未だに収まらない。 阿会喃はどうしているのだろうか? 阿会喃の黒い笑顔を思い出す。阿会喃といた時間は、とても楽しかった。もう戻ることはないであろう時間だ。 いったい誰が信頼できるというのか? 阿会喃は狂って去ってしまった。夏侯淵は平気で親族を襲った。自分ですら、張虎を見捨てて逃げ、曹仁のとどめを刺したのだ。 もはや信頼すべきは、他の誰かではない。この漆黒の銃だけだ。 生き残るには、この銃だけが頼りなのだ。 震えを止めようと、銃を強く握る。握りしめれば握りしめるほど、銃は存在感を示した。 震えは幾分かは止まった。曹熊の心には、かすかながら強い意志が生じていた。大丈夫だ。この銃があるかぎり、自分はやれる。やれる――― 顔を見上げた。もう何時までも、うじうじしてはいられなかった。 が、見上げた先の光景に、曹熊の意志はいとも簡単に砕かれた。 恐怖が走り、急いで銃を構え上げようとしたが、その前に首に尖った先端が突きつけられた。それは槍だった。 「取引だ」 何者かが目の前に立っていた。言葉は静かだったが、眼には狂気の色が浮かんでいた。 ---- 307 名前:生存願望 3/5 投稿日:2006/09/02(土) 17:33:04 「と、と、取引?」 恐怖のため、声はろくに出せなかったし、やっとのことで出てきたものは震えていた。 「そうだ。その武器をよこせば、命は助けてやろう」 槍の先端が、首に触れた。心臓が張り裂けそうだった。 「な、なんのために……?」 意味のない質問が、口から飛び出た。聞かずともわかる。これは殺人道具だ。何を言っているのか、自分は。 だが男からの返答は、予想外のものだった。 「貴様も元の世界に戻りたいだろう? そのためだ」 元の世界と聞いて、阿会喃と張虎の顔を思い浮かべてしまったが、そちらではなく、 病に悩まされ続け、そのために父の葬儀に行けなかったのを、兄に咎められ自殺したあの世界だ。 あまりいい思い出はない。それでも、この世界よりかは遙かにましだ。 「も、戻れるのか?」 「ああ戻れるさ。劉協を倒せばいい」 劉協、つまりは献帝だ。曹熊は失望が身を包んでいくのを感じた。 何を言ってるのか。できっこない。元の世界で、自分が曹丕に対抗するようなものだ。 「だがその前に、董卓を殺さなければならん。あいつもまた元凶のひとりだからなぁ」 男の眼の狂気の色は、ますます濃厚になっていた。 曹熊の記憶では、すでに董卓の名前は死亡者放送に挙がっている。死んだ人間を、どう殺すというのか。 それに、董卓が元凶とはなんだ? 董卓は参加者だ。 「一応名を聞いておこうか。私が三公となった暁には、貴様を虎賁中郎将にしてやろう」 「そ、そ、曹、熊」 「曹熊か。忌まわしい奴と姓が同じなのが気にくわんが、まあいいだろう。それをよこせ」 拳銃は相変わらず曹熊の手に握られている。ただ、銃口が下を向いてしまっていた。 嫌だ―――この銃だけは、この拳銃だけは、嫌だ、嫌だ――― 「あ、あなたの名は?」 少しでも時間を稼ごうと、曹熊は適当な問いを発す。 「聞いて何になる?」 首に痛みが生じ、生暖かいものが首筋を流れていくのを感じた。槍の切っ先が皮膚に刺さっているのだろう。 「だが名乗ろうか。私は袁術。過去の皇帝、未来の三公だ」 袁術、群雄の一人。皇帝を名乗り、呂布や父に手酷くやられた奴だと曹熊は記憶している。 三公になるというのは、皇帝になるのを懲りたからだろうか? ---- 308 名前:生存願望 4/5 投稿日:2006/09/02(土) 17:34:15 「え、え、え、袁術、殿」 曹熊の声はひどく上ずっていた。 「私も、協力、させていた、だきません、か? りゅ、劉協を、倒すのを」 たったそれだけのことを言うのに、劉協はひどく疲れた。恐怖と緊張が、絶え間なく曹熊を責め続ける。 「ほう、いいだろう。貴様は後将軍に格上げだ。だが、董卓を倒すのも手伝ってもらうぞ」 かすかに顎を下げて、承諾の意を表す。 「そうか、なら、そうだ。劉協や董卓だけじゃない。曹操を倒すのも手伝ってもらおう」 いきなり父の名が出てきたので、曹熊は驚いた。 「そ、曹操、ですか?」 「そうだ」 袁術は満足そうに頷いた。 「あやつもまた私の運命を狂わせたものだ。あと孫策も許せなんな。あの糞餓鬼は、恩を忘れて裏切りおった。 ああ、妾の子の袁紹も忘れられん。それに、呂布、劉備、劉表、楊奉に韓暹、雷薄に陳蘭、董卓が入朝した原因の宦官共も………」 孫策はとっくに死んでいる。劉表以降は参加すらしていない。だが袁術は本気のようだった。眼は狂気に染まっている。本気で狂っている。 「すべて手伝ってくれるな!? 曹熊!」 いきなり袁術は叫んだ。曹熊は、頷くことだけしかできない。 「よろしい。ならばまずそれを渡したまえ」 ああ、曹熊は思った。もう、もう終わりだ。 「何をしている。ぐずぐずするな!」 目を落とせば、槍のするどい刃と、その下で震えている両手と拳銃が見えた。 もう終わりだ。むなしい反抗をしても、この槍に刺されるだけだ。曹丕に咎められたときのように、諦めてしまおう。 左手を拳銃から放すと、右手で拳銃を袁術のほうへ投げ落とす動作を行った。それで拳銃は、袁術の足下に転がるはずだった―――銃は右手に残っていた。 そして左手は、槍の刃を掴んでいた。鋭い痛みが手に走った。袁術は、信じられないように目を見開いている。曹熊自身でも、信じられなかった 「―――何を!!」 袁術は一瞬たじろいだが、すぐに槍を突こうとしたようだ。だが曹熊に捕まれた槍は、すぐには動かない。その時にはもう、銃口は袁術に向いていた。 引き金を引くと、渇いた音が鳴った。槍から力が抜けるのを曹熊は感じ、左手を放した。赤い手の平が見えた。 もう一度撃った。それから、急いで走り始めた。 ---- 309 名前:生存願望 5/5 投稿日:2006/09/02(土) 17:36:07 豫州譙県。曹操の出身地。 曹操配下の猛将は、ここにいる可能性が高いと踏んで呂布と諸葛瑾はこの地を踏んだ。 各地を探しているうちに、ある家門から、男が飛び出して走り出ていくのを目撃した。男は呂布達には気付かず、すぐに去っていった。 見かけ貧弱そうな人物だったので、呂布は放っておいたが、とりあえずその家には入ることにした。 譙のうちではおそらく一番豪勢で、広い家だった。中を進むと、奢侈で優美な室内に、男が横たわっていた。体の下に、血だまりを作っている。 男の体から、消え入りそうな声が聞こえてきた。 「劉協、董卓、劉協、曹操、袁紹、孫策、劉協、劉備、呂布、劉表、董卓、袁紹、劉協」 近寄ると、男は腰を二発撃たれており、顔は青ざめていた。眼はうつろに中空を見据え、口だけはぱくぱくと動き続けていた。 「韓暹、劉協、楊奉、雷薄、劉備、曹操、袁紹、劉協、董卓、陳蘭、張譲、劉協、呂布」 呂布の名前を最後に発し、男の口は動かなくなった。呂布の手から男の胸まで、偃月刀が伸びている。 偃月刀を引き抜き、呂布は振り返った。諸葛瑾の長い顔が、じっと呂布を見つめている。 「なんだ、驢馬」 「いえ………」 再び死んだ男の顔を見る。袁術だと思われたが、どうでもいいことだった。 「もう譙には誰もいなさそうだな」 「とりあえず冀州に向かいましょう。幽州が禁止区域になったのですから、関羽殿達がいるかもしれません」 そうだな、と呂布は賛同した。 呂布は諸葛瑾を肩に担ぎ上げると、そのまま譙を出ていった。 @曹熊[錯乱]【ベレッタM92F】 ※どこかへ走り去っていきました。 <<カミキリムシとオナモミ/2名>> 呂布[肩の物体により速度低下]【関羽の青龍偃月刀、日本号、ドラグノフ・スナイパーライフル】諸葛瑾【なし】 ※関羽達と戦う為、冀州を目指します。現在地は豫州譙県付近。 ※また、呂布は貂蝉と陳宮を殺した人間が判明した場合、優先的に狙います。 【袁術 死亡確認】

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