7-203 崩れた硝子の絵 ひろい集める夢

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242 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 1/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:46:47 4日目、朝。 様子がおかしくなった後にぱたりと倒れた馬謖を縛り上げた後、彼の目覚めを待つことにした凌統と関興だったが、 「起きないな」 「起きませんね……」 一夜が明けても馬謖は未だ爆睡中であった。 しかも大変幸せそうな寝顔。ヨダレ垂らして緩んだ笑み、むにゃむにゃとよくわからない寝言。 凌統と関興の額に青筋が立っていても、責めるのは酷というものだ。 「凌統殿、馬謖殿亀甲縛りにしていいですか?」 「よし、やれ」 すぐに森の中に入っていった関興はほどなくして帰還した。 なんだかムチムチした蔓を両手に抱えて、コレ縛るのにいいんですよ、と得意げに言う。 そして凌統が目を見張るほどの速度で、宣言したとおりに馬謖を亀甲縛りにした。 倒錯的というか馬鹿丸出しというか微妙な姿勢にされ、馬謖がうなされ始める。 「出来ました凌統殿。自信作です」 「……へー……」 明らかに玄人の手による亀甲縛りであることにツッコむべきかやめとくべきか。 あんまりその世界には関わりたくないので考えるのを放棄して、凌統はつま先で馬謖をつっついてみる。 「おい、いいかげん起きろ」 「うぅ…先生蝋燭だけは………………あ、朝?」 変な寝言と共に馬謖起床。関興が彼の頭上にかがみこんでにっこり笑う。 「ごきげんよう、お兄様」 「……朝一なのに関興が私にツッコミを要求する、しかも亀甲縛り。凌統助けて」 「縄が曲がっていてよ、お兄様」 「いやいやいや、綺麗な亀甲縛りにしてとか言ってないから。というかやっぱりお前らこういうの趣味だな!?  私って実は狼の群れに放り込まれた美味しそうな子羊なんだな!?」 ---- 243 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 2/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:47:34 縛られたままずりずりと後ずさる馬謖が、ふと何かに気付いたようにきょろきょろと辺りを見回した。 「……あれ? 孟獲殿と祝融殿は?」 わざととぼけているようには見えない彼の様子に、凌統と関興は目を見合わせた。 どっちが言うんです? お前行け。いや凌統殿どうぞ。 目と目の会話の末、重い溜め息をついて凌統が馬謖の前に立った。 おもむろに銃剣を突きつける。 「うわっ? 何だいきなり、危ないだろう」 「……お前の、その服についてる血。誰のか本当に分からないのか」 「血? げっ、何だこれ。あぁ分かった! お前らの鼻血だな!?  縛られた私を見て吹いたんだろう! 嗚呼、同性すら惑わせてしまうこの美貌、まさしく罪だな!」 冷えた刃がぴたりと馬謖の首に当てられる。頚動脈の真上。 ほんの少し凌統が手を動かすだけで、またひとつ簡単に骸ができる。 「……なんだ凌統、そんな怖い顔をして……本気で怒っ」 「孟獲殿の血だ。お前が殺した」 理解できない、と言いたげに馬謖が目を瞬かせた。 「毒で動けない上に降伏を宣言した孟獲殿の首をお前が掻っ切った血だ」 「……はは、まさか。お前冗談が下手だな」 「馬謖殿。残念ながら冗談じゃありません。覚えていないのですか?」 責める色はないけれど、悲痛な関興の視線。そして温度を感じさせない凌統の視線。 「……私、が?」 「もう一度聞く。本当に覚えていないのか?」 小さく口を開きかけて、馬謖は視線を落とした。 凌統の銃剣を握る手に力がこもる。その手はほんの僅かに震えていた。 ---- 244 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 3/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:48:32 「…………現実味が無かった」 蚊の鳴くようなほそい声で馬謖が呟いた。 「書に記された出来事のように、現実味が無かった。  目が覚めたから、あぁやっぱり夢だったと思ったんだ。環境のせいで見た変な悪夢だと」 「その前は? 関興殿に斬りかかったのは覚えてるのか」 「……覚えている。目が覚めたとき縛られてるから変とは思ったが、夢だと思いたかった」 「お前さ、この遊戯に乗ったとか、殺したくて殺した訳じゃないってことか?」 「当然だ。私はそこまで愚かじゃない」 若干愚かな自覚はあると?と口をはさもうとする関興の鼻に無言で裏拳を食らわせて、 凌統はおもむろに刃を下げると、馬謖の戒めをぶちぶちと切った。 亀甲縛りが解けて関興が残念そうな顔をしたのは、とりあえず無視した。 座り込んだ姿勢のまま疑問符を顔に浮かべる馬謖の前に屈みこむ。 「原因に心当たりはあるか?」 「……関係があるかはどうか分からないが、変な夢を良く見る。さっきも見た」 「そういえばうなされてましたね馬謖殿」 鼻血を垂らしながらも平然と復帰して話に混ざってくる関興。 うなされてたのは亀甲縛りのせいじゃないのかと指摘したいのを我慢して、凌統は話の続きを促す。 「誰かが――誰かは判らないのだが、自分の為に沢山人を殺してくれって、私に語りかけるんだ。  その声を聞いてたら、なんだか嫌な物が頭の中を渦巻いて、自分が自分じゃなくなるみたいだった」 「う~ん。なんか憑いてませんか馬謖殿」 「やっぱりそう思うか!? お祓いしてもらったほうがいいかな私!」 「最近の道士はぼったくりとか詐欺が多いから気をつけたほうがいいですよ~、  呂蒙もそれで父上祓えずに死んじゃったみたいですから。個人的にはざまあみろですけど」 「それで! どんな夢だって!?」 こんな所で呂蒙殿の運の悪さが発覚するとは、と内心頭を抱えつつ、 横道に逸れていきそうな話を凌統が強引に軌道修正する。 ---- 245 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 4/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:49:50 「あとは……。この前もちょっと話したけど、暗い部屋で文官がいっぱい寝てたって話」 「あぁ、この前言ってましたね馬謖殿」 「そこでな、何だか知らないが目が覚めたんだ。夢の中でだから本当には覚めてない訳だけど。  なんでこんなところで寝かされてるんだろうって思った……んだと思う。歩き回ってるんだ」 「ふんふん、で?」 あんまり関係なさそうだなぁと思いながらも凌統は一応続きを促す。 「そしたら壁に……あぁ、そうだ、この探知機の大きいのみたいなのが掛かってて、  そのすぐ下に何かこう、釦のようなものが沢山きれいに並んでるのを見つけたんだ、確か」 「でかい探知機?」 「地図じゃなくて表みたいなのや私の知らない言語の文字らしきものが浮かんでいたな。  試しに釦を適当にいろいろ押してみたんだが」 「いくら夢でもだな、そんなよく分からんモン普通触るか?」 「私はお前と違って知的好奇心が豊富だからな!  そしたら何かびーっ、びーっ、って音が鳴ってだな」 「……馬謖殿、それ何かやばいことしちゃった感じなんじゃ」 「私の夢で私が何をしようと勝手だろう?  その探知機もどきの画面に四角いのがいっぱい浮かんできて……中には読めるものもあったな。  記憶制御とか、第何回とか、なんだか意味が良く分からなかったが。確かこの記号が沢山あった」 そう言って馬謖は地面にその『記号』を書いた。 “error” 「お前ら意味分かる?」 「俺は知らないけど」 「僕も見たことないです」 「まぁ当然そうだろうな。このきらめく才知溢れる私ですら分からないのにお前らに分かったら奇怪だ」 お前の夢ン中の妄想記号なんて誰がわかるか。馬謖をどつきたい衝動をこらえ、凌統はさらに続きを促した。 ---- 246 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 5/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:50:33 「その音に釣られてかは知らんが、人が沢山ばたばた駆けつけてくるのが聞こえて、  もともと寝てた場所に滑り込んで寝たフリした。そこで夢は終わりだけど、同じのを何度も見る」 「何度も?」 「あぁ。もう3回以上同じの見てるから、覚えてしまった」 「う~ん……何か意味があるんでしょうかねぇ」 一同は腕を組んで考え込み、すぐに「ただの変な夢じゃないか?」「まぁそれもそうだな」「ですね」という結論に達した。 諦めが早すぎるだろうと突っ込みを入れる人材は残念ながらここには居らず、 とっとと朝食食おうという方向に話が進む。 「林檎と山葡萄を見つけたんですけど、どっちがいいですか」 「俺は葡萄。つか何で全然旬が違う実が同時に生ってるんだろうな」 「私は林檎がいい。あ、そうだ、凌統、私が手に負えないほどおかしくなったら殺してくれ」 「……へっ?」 朝食の献立のついでにさらりとおかしな事を言い出した馬謖に、関興が危うく果物を取り落としかける。 「その時は出来るだけ楽に死ねるように頼む。首刎ねるのは勘弁してくれ。  あれって斬られた後数秒間意識あるんだぞ。凄い辛いぞ知らんだろ」 ふふん、と自慢げに良く分からない知識を披露され、 「ちょ、馬謖殿、突然そんなグロい話やめてくださいよしかも食事前!」 半泣きで関興がぼやく。 ふぅ、と凌統は溜息をついて、馬謖の後頭部を銃剣でゴンとどついた。 「……いたいぞ」 「言われずとも殺してやるよ、そんときは。ついでに弔ってやるから安心しろ」 「うん、ありがとう。それを聞いて安心した……が、なんだか腹立たしいな」 「どうして欲しいんだお前は……」 「あの馬謖殿、僕には頼んでくれないんですか」 「お前は無駄にいたぶってくれそうだから嫌」 ---- 247 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 6/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:51:08 朝食モードに入った3人は、それぞれ好みの果物をぱくつきながら今後の方向について話し合った。 「お前が寝てる間に放送があったんだが……周瑜様が亡くなられた。  これで幸か不幸か行き先は諸葛亮殿に絞られちゃった訳だ」 仔犬の背を撫でながら凌統が言った。平然と話しているように見えるが、 内心の動揺を押し隠しきれてはいない。仔犬が主人の顔を覗き込み、慰めるようにくぅんと喉を鳴らした。 「あれ、呂蒙や陸遜に天誅案はどうしたんですか」 凹み気味の凌統に代わって、馬謖が関興の脳天に木製ブーメランを振り下ろした。 「お前にとっては仇でも凌統にとっては戦友や上司だろう。少しは頭と気を使え」 「……うう、まさか馬謖殿にそんなもっともらしい説教される日が来るとは思いませんでした、僕」 割と失礼な感想を漏らしつつもちょっぴりは反省しているらしい関興を横目に、凌統が口を開いた。 「あと馬謖、お前『戦いたくない』って言う相手に斬りかかる習性があるような気がするが、自分ではどう思ってる?」 「習性って私は動物扱いか? ……言われてみればそんな気もするな」 「あ、そういえばそうですね! 僕も無駄な戦いはしたくむぐっ?」 凌統に横から勢いよく口を塞がれ、もごもごと関興がもがいた。 「(馬鹿かお前! その言葉が起爆剤になるかもと分かってて口にするな!)」 「(あっ。すいません)」 肝心の馬謖は突然じゃれついてきた母犬に翻弄されて笑い転げていた。関興の言葉は耳に入らなかったようだ。 凌統の命令によるものだが、母犬のファインプレーである。 「ひゃ、ひゃははは、舐めるな! 舐めるなってあははっ」 仔犬も加わってじゃれあいはじめた大変平和な図を眺め、凌統と関興は目を見合わせた。 「……とりあえず馬謖殿の前で厭戦的なことは言わない、誰かに会ったときも言わせない、でいいですかね?」 「そうだな。で諸葛亮殿を探す、と」 「そして諸葛亮先生を亀甲縛りにする、と」 「うん、俺もうそろそろ疲れてきたんだけど。馬謖よりむしろお前斬っていい?」 「泣いて斬るのは馬謖殿がお勧めですが」 「いや、泣かないから」 ---- 248 名前:崩れた硝子の絵 ひろい集める夢 7/7 投稿日:2006/08/24(木) 09:52:29 <<既視感を追う旅/3名>> 凌統【銃剣、犬の母子】馬謖【探知機】関興【ラッキーストライク(煙草)、ジッポライター、ブーメラン、サーマルゴーグル】 ※荊州南部と楊州南部の堺。目的が諸葛亮の捜索に絞られたため、進路を西に変更。  荊州と益州の境辺りまで行ってから北上します。祝融は避けて通ります。速度はまったり ※近くに人間が居れば凌統か関興がこっそり偵察しつつ、諸葛亮との合流を目指します ※探知機で近づく人間を察知可能。馬謖が直接認識した相手は以後も場所の特定が可能 ※「むむむ、そういえば何で私ら孔明先生探してるんだっけ?」「何がむむむだ! 言い出したのお前だろ!? 献帝に対抗するって!」 「あ、忘れてた……」「はわわ、既視感も最近本当に追ってないですね凌統殿」「何がはわわだ!! やかましい!」「ももも、それにし ても孔明先生どこにいるんだろう」「何がもも……もももって何だよ本当に」

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