7-200 狂戦士

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224 名前:狂戦士 1/7 投稿日:2006/08/22(火) 17:23:26 目の前の男は、張郃の質問には答えず、ただ笑っていた。 「ひゃぁ~はっ! ははっ!」 込められた意味などないであろう、狂気の笑い声。 初めて会った時は、狂人とも馬鹿とも、あるいは、もしかしたらと思わせるだけの人物に見えた。 今はどこからどう見ても、狂気の塊だ。 話しかけるのは無駄とわかった。張郃は斬鉄剣の柄に手をかけ、距離を縮めていく。ゆっくりと、少しずつ。 張角は笑い続けるばかりで、その場を動かない。瞳はゆらゆらと、不気味に揺れ動いていた。 一定の距離まで詰めると、張郃は大きく一歩を踏み出した。同時に柄にかけた手を、前へ振り出す。刀身は滑車を付けられたかのように、鞘を滑り出て行った。 一閃。張角のいる空間を、横薙ぎに斬る。 「ひゃはっ!」 頭上から、声が聞こえた。張郃が声に反応するよりも速く、斜めに伸びる黒く太い鞭のようなものが視界の中央を占めていた。 脚だ―――わかった時には、顔面を蹴られていた。踏ん張ることもできず、体が倒れていく。衝撃からやや遅れて、鼻を中心に痛みが広がっていった。 まるで鋼の棍棒を、強力の猛者に叩きつけられたかのようだった。頭の中を、かき混ぜられるかのような感覚が続く。視界が真っ黒になり、意識が朦朧とする。 あり得ない。刀を振り出すまで、確かに張角は静止していたはずだ。その後の一瞬で、頭上まで跳躍するなど、あり得ない。 「ひゃっ! はは、ハはははハははハハは、ヒャーハァアアアアア!」 視界が瞬時に戻った。薄暗い空から、大きな水滴が絶え間なく落ち続けていた。 張角は? 「ひゃぁあああぁぁああああぁぁあぁぁぁぁぁあああ!!」 もはや笑え声とは言えない、張角の声。張郃からは、どんどんと遠ざかっているようだった。おそらく、駄馬の走りなら追いつけそうな速さで。 張郃は、揺れる頭を押さえながら立ち上がった。足になかなか力を保てず、立つだけでもかなり手間取った。 張角の姿は、もう見えない。ただ狂気の声だけは、途切れ途切れに聞き取ることができた。 張角の過ぎ去っていった場所、それは荀攸のいる家に違いなかった。 ---- 225 名前:狂戦士 2/7 投稿日:2006/08/22(火) 17:25:30 荀攸がこの書の内容がでたらめであることを考える。 首輪の解体は、理論上、可能であるとこの書は述べている。だが理論とは、この書によって導き出された理論だ。 荀攸には理論が正しいかどうかなんてわからない。荀攸が読めたのはほんの一部であるし、すべてを読み込んだところで、首輪が未知の道具であることには変わりはない。 この書はもともと、献帝が用意した支給品だ。これを我らに渡すというのは、自分を殺してくれと言っているようなものではないのか? 普通に考えれば、首輪を解体できるはずがない。藁をもすがる思いでこの書にありつく我らを見て、献帝がほくそ笑むためのものではないのか? わからない。だが、これ以外には――― 「荀攸!!!」 ---- 226 名前:狂戦士 3/7 投稿日:2006/08/22(火) 17:26:39 突然名前を叫ばれ、荀攸の思考は中断された。張郃の声ではない。近づいてくる狂気の声だった。 「ハ! ひゃははははああああああああ!! じゅん、ひゃはぁあぁ、ゆう、はハハアハは、ころ、ああハは、コロ、はああハハはハハハッ、コロス! ひゃぁああああ、ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 書の横に置いていたデリンジャーを左手に取り、立ち上がりながら扉へ銃口を向ける。 張郃は無事なのだろうか? 彼にはわかった事を伝えなければならない。 声は近づいてくる。人間の速さではないように思えるのだが、聞こえてくる足音は人間のものだった。 咆哮は続く。鼓膜が破れそうだ。声が大きすぎて、豪雨の音はほとんど聞こえなくなった。 扉が、吹き飛んだ。 「――っ!?」 思わず驚きの声を上げようとしたが、声になっていかった。自分はもう、ほとんどしゃべれないのだと実感する。 扉は木っ端をまき散らしながら、大きく前へ、大人の身長を軽く越えるくらい飛び、倒れた。風が巻き起こり、木っ端は空中を舞った。 扉がはまっていた枠に、黄色の服を着た男が立っていた。 眼は荀攸に睨み殺すように向けられていたが、口は大きく曲がっていた。 勲功を稼ごうとする猛者が、戦場で敵大将を見つけたときのような表情がこれに近いだろうか。狂喜と殺意に満ちあふれている。 恐怖と、ここで死んではいけないと思う使命感に、荀攸は撃った。男の胸に、穴が上下に二つ連なった。 それでも男は、表情を変えることもなく、自分の撃たれた胸を見ることもなく、ただ少し、体が衝撃に揺れただけだった。 男は大きく裂けんばかりに口を開けた。よく見ると、口の端が赤くなっていた。すでに裂けていたらしい。 何かを叫ぼうとしたようだが、声帯が機能していないのか、声は出なかった。 デリンジャーの装弾数は2発で、すでに撃ってしまった。荀攸は急いで装填しようとする。 しかし片手だけの荀攸に、装填は当然手間取る。銃身を回転させることもままならない。 ようやく一発を詰め終えた時には、男の右腕が荀攸の右頬を殴りつけていた。 ---- 227 名前:狂戦士 4/7 投稿日:2006/08/22(火) 17:27:45 荀攸はろくに殴られたことはなかったが、それでも、この力は人間離れしているとわかった。 そもそも、いったい何時の間に近づいたというのか? いや、男は荀攸がまさに銃口に弾を込めようとしていたときにはすでに動いていた。それで、込め終えた時には、もう殴れる距離にあった。三秒もない。 荀攸と扉までの距離はそう遠くはない。しかし、あり得ない。 倒れようとしていた荀攸の腹に、鋭い衝撃が走った。膝蹴りだろうか。荀攸は、自分が地面から離れるのがわかった。 血が喉を逆流していく。それを吐く前に男は荀攸の服を掴かみ、床に投げ落としていた。 背中が床に叩きつけられると同時に、血が口から溢れて噴き出る。 自分の右頬に穴が空いており、そこからも血が流れ出ているのもわかった。歯が頬を貫いていたのだろう。 全身を、痛みが波打っていた。体を動かす力はほとんどなかったが、左腕だけわずかに持ち上げることができた。 男は、始め荀攸をじっと見下ろしていた。顔はあの表情に固まったままだ。ただ、荀攸と同じように、口から血が溢れていた。 やがて右足を上げると、荀攸を踏みつけた。狂った笑いを浮かべたまま、何度も、なんども。 左膝を踏みつけた。右肩を踏みつけた。胸を踏みつけた。腹を踏みつけた。顔を踏もうと腹から足を持ち上げた。 ―――荀攸の顔は、踏みつけられることはなかった。 その代わり、男の首から血が飛び出し、びしゃびしゃと、雨のように荀攸に降り注いだ。 狂気の顔は、いつのまにか消えていた。 男の体は傾いていった。男の右足も、傾いていった。 「荀攸殿」 男が倒れた音と、誰かの声を同時に聞く。意識も視界もすでに消えかかっていたか、誰がいるかは、判別がつく。 伝えなければならなかったが、声は出すのは不可能だった。荀攸はもう、呼吸をしていない。 左手が濡れている。自分の血か、男の血かはわからない。 伝えなければならない。 ---- 228 名前:狂戦士 5/7 投稿日:2006/08/22(火) 17:28:52 張角は荀攸を踏みつけるのに夢中で、張郃がすぐ側に近づいていたことに気付かなかったらしい。あるいは、どうでもよかったのかもしれない。 斬鉄剣を振り払う。張角の首が飛んだ。かつて四十万の信徒を従えた張角の、あっけない最後だった。 張郃は張角の首からほとばしる血の噴水を、少しの間、目を細めて眺めていた。 「荀攸殿」 荀攸の顔を見る。口から血が吹きこぼれつづけている状態で、頬にはいくつかの穴が空いていた。床の血だまりに、白い歯が混ざっていた。 体の各所が、奇妙にへこんでいる。まるで砂場に鉄球を落とした跡のようだ。 返事はない。この様子じゃ、呼吸すらしていない。ただ死んでいないことは、眼球がかすかに動いていることからわかる。 残った左手が、床に血文字を書いていた。 『小』『黒』『甘』 指はずいぶん震えていて、一見字ともわからない字であったが、おそらくそう書いていた。 書き終えると、左手はもう動かなくなった。 「小さく、黒く、甘い?」 顔を見ると、荀攸は肯定するかのように目を閉じた。表情は苦々しくも、どことなく穏やかだった。 ---- 229 名前:狂戦士 6/7 投稿日:2006/08/22(火) 17:30:14 「この書は………この文字はなんだ?」 書は墨染めでもしたかのような、真っ黒な表紙で、その表紙に白い見知らぬ文字列が書かれていた。 中をぱらぱらとめくると、やはり読めない文字が出てきたが、それは数枚で終わり、やがて張郃にも見知った文字が現れる。文章だった。 「張角が書いたのか?」 本人は日記のつもりで書いたようだったが、今日の分だけで終わってしまっている。 「もし誰かがこれを拾うことあれば、私の志を継いでいただけることを願い、歩む道をここに綴る」 張郃は一字一字を、丁寧に音読していった。そう読んでいくと、威厳すら感じさせた張角の姿が思い浮かぶ。 序文にはかつて張郃に言った論と同じような文章が綴られてあった。 「私は何故だか判らぬが、自身の死後しばらくの世の動きを記憶している」 それは奇妙なことだ。もっとも、自分達がここにいることそのものが奇妙なのだが。 「まずは荀彧、荀攸、司馬懿、陳羣らなど後世の清流派の者を求めこれより移動する………」 ―――荀攸。荀攸の名前がここにある。 張角は自分に蹴り一発を入れただけで、さっさと家の方へ向かってしまった。荀攸がいることを、わかっていたに違いない。 ではなぜ、仲間として求めるはずだった荀攸を殺害したのか? 他に何も書かれていないことを確認すると、書を閉じ、再び表紙を見た。文字列を中心に、表紙から禍々しい気配が放たれているように感じられた。 あの脅威の身体能力も疑問だ。足の速さや力の強さはもちろん、胸を撃たれてまったく影響なく動けるとは、どこをどう考えてもおかしい。 とりあえず二つの書とデリンジャーを自分の荷物に加え、張郃は家から出て行った。誰かに張角の叫び声を聞かれている可能性がある。 「小さく、黒く、甘い」 雨はもう豪雨とは言えず、ぱらぱらと降る程度になっていた。空はより暗さを増し、夜に なりかかっていることがわかる。 「全員殺すか、帝を殺すか」 荀攸の話した、荀彧のことを思い出す。荀彧の狂気は、張角の狂気とは違う。ごく冷静で、それでいて狂っているのだ。 なぜ冷静でいられるのか? 荀彧は、何かを知っているのか? おそらく彼は、豫州にはもういないだろう。三日も同じ地域を探し続けるとは考えにくい。 まずは、豫州を抜けなければ――― ---- 231 名前:狂戦士 7/7 修正 荀彧じゃない…… 投稿日:2006/08/22(火) 17:33:25 @張コウ[顔面負傷、全身軽傷]【斬鉄剣(腰伸び)、デリンジャー、首輪解体新書?、DEATH NOTE】 ※豫州以外のどこかの州へ向かいます ※DEATH NOTEに参加者の名前を綴った場合、その人物を殺さなければならないという激しい強迫観念に囚われ、身体能力は大幅に増加します。 ※DEATH NOTEの持ち主でなくなったあとも影響は継続します。 ※一度誰かが書いたあとに、他の誰かが拾っても影響はありません。 ※ただ新たに名前を書き込むか、もう一つのノートに名前を書き込まれれば、持ち主に同上の影響が出ます。 【張角 荀攸 死亡確認】

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