7-198 抵抗と諦め

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208 名前:抵抗と諦め 1/3 投稿日:2006/08/18(金) 13:19:17 ようやく長安に着いた。 すでに日は暮れかけ、どこかで烏が穏やかに鳴いている。 劉備は近くの木陰で一時を休むことにし、座り込んだ。 この分では、楼桑村まであと二日はかかりそうだ。 すでに参加者の半分近くが死んでいる最中、その時間はとてつもなく長いものに見えた。 まあ、雲長も、翼徳も、そう簡単には死なねえだろう。 幸いなことに、劉備の配下だったものではまだ王平しか死んでいない。 別れた三人に、趙雲・黄忠・馬超、それに劉禅も諸葛亮も、少なくとも今日の朝までは生きていることがわかっている。 だが、今も参加者の誰かが死んでいることは明白だ。蜀将も、いつだれが死ぬかは見当もつかない。 特に、漢升の爺さんはやべぇな。あの人ほとんど向こう見ずに突っ込むから…… 劉備は立ち上がった。 これからは雍州を抜け司州・并州を通る。休んでいる暇は、もうない。 歩こう。まずは西へ。 と、歩き始めようとして持ち上がった劉備の右脚は、そのまま空中へ固定されてしまった。 右頬のすぐ横を、かすかな音と共に鋭い物が通り抜けていった。直後にドスッ、と鈍い音がし、横目を向くと、背後の木に短剣が深々と刺さっていた。 「玄徳様、ようやくお会いできましたな」 老人がいつの間にか、劉備の前に現れていた。柔和な顔つきで、一見なんの変哲もない老人に見えたが、瞳はぎらぎらと輝いていた。 「こんな人目の着く所で、休めんでいてはいかんですぞ」 「………冗談じゃねぇぞ、おい」 ---- 209 名前:抵抗と諦め 2/3 投稿日:2006/08/18(金) 13:24:55 「わしはちょうど、荊州の魏興におったんですが、玄徳様の姿を見つけましてね」 とりあえず劉備と黄忠老人は、近くの林の中に移動し、話し合うことにした。 「なら、そんときに声をかけてくれたっていいじゃねえか。なんでわざわざ付けてきて、あんなことを……」 「いやぁ、驚かそうと思いましてな。機会を窺っていたんですよ。いい教訓にも、なりましたでしょう?」 だからって、主君に刃物を投げつけるな。 という言葉を飲み込み、代わりに黄忠に自分の今まで置かれた状況を話すことにした。 劉封たちのこと、甘寧や夏侯惇のこと、関羽と張飛と合流したいことなどをあらかた話し、黄忠の意見を聞く。 つまり、付いてきてくれ、ということなのだが。 「わしは付いていていきませんぞ」 ときっぱり言われた。 「なんでぇ? 漢升も、この状況に置かれたままで、いいと思わねえだろ? ほら、五虎将みんなで集まって、ドーンと献帝を」 「無理ですな」 黄忠の表情は、もう柔和ではなかった。眼光がより激しさを増している。 「たしかにこの殺し合いは、狂っています。残忍で、凶悪で、許すまじき悪行でしょう」 より苛烈になっていく眼とは裏腹に、口調は淡々としていた。 「ですが、我々が対抗できる術など、どこにありますか? 命運をねじ曲げ死者を復活させ、凝縮した中華の地を創り出し、未知の道具を備え付けている。 そして我々の命は、この首輪によってあやつらに握られているのです。神をもごとき所行に、いったいどう対抗すればいいと?」 そこまで言い終えると、急にもとの穏やかな顔つきにもどり、 「生き延びようと思うなら、時を無駄にしないことですぞ」 鋭い眼光が、劉備を刺していた。劉備は言葉に詰まり、咄嗟に反論できずにいた。 「では、わしは荊州に戻るとします」 黄忠は背を向けて、南へ歩き始めた。その背には、有無を言わせぬ決意が漂っていた。 劉備は叫んだ。 「漢升!」 黄忠は立ち止まり、やや間を空けてから「なんですか?」と振り向いた。 「俺は、受け入れねえぞ! 絶対に諦めないからな! 神だろうが不可能だろうが、絶対に抜け出してやる!」 黄忠の顔が、少しだけほころんだように見えたが、すぐに向き直り、再び歩き去っていった。 ---- 210 名前:抵抗と諦め 3/3 投稿日:2006/08/18(金) 13:26:38 黄忠の様子は、すいぶん変わってしまったかのように見える。 今までがむしゃらに突き進んでいたはずが、今は老人らしく達観、いや諦観してしまっている。 人は、変わる。 あるいは子龍も、孟起も、すでにゲームに乗って誰かを殺しているのかもしれない。この狂った状況下なのだ。何もおかしくない。 では雲長は? 翼徳は? ………あいつらに限っては、それは、ないか。 周りを見渡して、闇が覆い初めていることに気が付く。 そうだ、速く行かなければ。あいつらと、絶対にここから脱出してやる。 魏興に戻ると、暗闇の中、人が黄忠の視界を通り過ぎていった。 体が黒いので、一瞬服と荷物が浮いているのと思ったが、どうやら南蛮人のようだ。 手に、鋭そうな剣を持って、なにやら呟きながら走っていく。走って移動だなんて、元気なことだ。 サバイバルナイフだけでは心細いので、追いかけて武器を奪おうかとも思ったが、やめることにした。 今は、なるべく戦いたくない。 劉備の叫びがいつまでも、頭の中で反芻されていた。 @劉備【李典棍、塩胡椒入り麻袋×5】 ※現在地は長安。楼桑村へ向かいます。 @黄忠【サバイバルナイフ】 ※ゲームに乗りますが、殺し合いには消極的。現在地は魏興。 @阿会喃【DEATH NOTE(残り9ページ)・エクスカリパー・大般老長光】 ※司馬懿のおおまかな位置がわかるようです。益州へ。

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