7-196 空の雫

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198 名前:空の雫 1/6 投稿日:2006/08/18(金) 03:20:22 許都。 簡易に埋葬した典韋の墓の前で、追悼を表する荀攸。 その後ろから、何の感慨もなくその姿を眺める張コウ。 もうそろそろ、日が沈む頃だろうか。 (いつまで、ここにいるつもりなのか・・・) 心の中で荀攸に毒づきながらため息をつき、張コウは空を見上げた。 天に快晴の予感を感じさせる陽光の面影はすでになく、逆に豪雨をこの身に突き刺してくる。 雨は体力を奪い、時に病をもたらす。 手当てすることすら不完全なこの地で、雨中に長くいるのは決していい判断とはいえない。 特に、重傷を負っている荀攸なら当然の事だ。 (そんな事がわからない旬軍師ではないはずだが・・・。  それとも、悪来典韋とはそれほどまでに人間的な魅力的のある男だったのか?) 自分が曹操に下った時、すでに典韋はこの世の人間ではなかったが 話を聞いた限りでは、なるほど、確かに魅力的だ、とも思える。 だが、その追悼に付き合って自分や武器まで雨にぬらしたくはない。 手に持つバッグが雨に濡れるのを一瞥し、張コウは何度目かのため息をついた。 (?・・・この袋(バッグ)・・・そういえば) 「旬軍師。一つ、聞きたいことがある」 「何、か・・・?」 呼びかけに答え、荀攸が振り返る。その顔は血の気を失い、真っ青になっていた。 (これは・・・少し雨に打たれすぎたか・・・) 「ああ、いや・・・オレの支給品・・・まあオレのではないが・・・まあ、とにかく支給品の事だが」 荀攸の顔色を見て少し狼狽するが、張コウはまた落ち着いたように言葉を返す。 「オレが今持っている道具の中に書物がある。読もうとしたんだが、オレの学では無理だった。  そこで、だ。あるいは旬軍師なら、と思ってな」 ---- 199 名前:空の雫 2/6 投稿日:2006/08/18(金) 03:21:10 「それは・・・重要な物なのですか・・・?」 「読めないオレには判断できない。が、気になる絵柄を見つけてな。  ・・・まあ、続く話は場所を変えてしよう。雨の中で書を出すわけにもいかない。  いい具合に火事も収まった。どこぞの家でも借りるとしよう」 張コウは歩きながら、荀攸に向かい『ついて来い』というように指を出す。 その張コウについていく前に、もう一度荀攸は典韋の墓へ左手を出し、追悼した。 「ひゃっ、ひゃはっひゃはははっ!1人見つけたぞ!ヒャーハッハッハァッ!」 許都の外から発せられた、その狂った笑い声は、豪雨の音にかき消された。 「先ほどの書物と言ったのはこれの事だ」 近くの焼失していない民家へ移動し火で服を乾かした後 張コウはバッグから首輪解体新書?を取り出す。 そしてそのまま少しページをめくり、彼が言った『気になる絵柄』の部分を荀攸に突きつけた。 「どうだ?この絵柄・・・見覚えはないか?」 「・・・これは・・・」 その絵柄を見た時、ふと無意識に荀攸は首に手をやる。 その仕草を見て、張コウはニヤリと笑いながらこう言った。 「そうだ。この絵は、オレ達に付いているこの忌々しい首輪そのものだ」 「何か、つかめそうか?」 「・・・」 左手で器用に首輪解体新書?のページをめくる荀攸にそう言葉をかけるが その張コウに返事は返ってこない。 (やれやれ・・・まあ、書の中身がわかってくれればありがたい事だが) ---- 200 名前:空の雫 3/6 投稿日:2006/08/18(金) 03:22:04 絵で模している以上、少なくともこの書は首輪に関する事が書かれているのだろう。 外し方がわかればベストだが、弱点、あるいは爆破方法がわかるだけでも十分だ。 そしてわかるかどうかは、目の前の荀攸にかかっている。 (・・・よく考えれば、大した人だ) 荀攸を眺めながら、張コウはそう考える。 右腕を飛ばされたというものの、書を読むことができる。 当然痛みは筆舌に尽くしがたいものがあるだろうが、それでも歯を食いしばっている。 常人には考えられない精神力・・・と言ったところだろうか。 失血し豪雨に打たれろくな治療もなく、おそらく命の火はもう永くはないのだろうが。 (最大限命が持ったとしてあと二日・・・か?) 自分は医者ではないが、だいたいその程度だと目星は付く。 もっとも、人間とは丈夫な様でもろく、もろい様で丈夫だ。 頭を軽くぶつけただけで死ぬ時もあれば、刃物で十回刺されても生き延びる事もある。 目星は付いたものの、荀攸の精神力ならば死を撥ね退けることができるかもしれない。 それと同時に、二日を待たず逝ってしまうかもしれない。 それは自分とて同じ事で、次の瞬間いきなり銃で頭を打ち抜かれるかも・・・。 と、そう考えた時だった。 「・・・はっ・・・・・・ひゃっ・・・は・・・」 (・・・ん?) ふと、張コウは壁に眼を向ける。 (笑い声か?) 雨の音に隠れていたが、確かに笑い声のような物が聞こえた。 それも、かなり禍々しい種類の物が。 「はは・・・ひゃははっ・・・・1人・・・」 危険を感じ耳を澄ますと、今度ははっきりと聞こえる。 ---- 201 名前:空の雫 4/6 投稿日:2006/08/18(金) 03:23:17 しかも、会った事のある男の聞き覚えのある笑い声が。 張コウは舌打ちしながら立ち上がり、荀攸に向かい先ほどと同じ言葉をかける。 「何か、つかめそうか?」 「・・・」 「聞いているんだが。返事くらいはしてもらいたいもんだな、旬軍師!」 少し声を荒げる。その数秒後に、真っ青な顔の荀攸からか細い声で返事が聞こえた。 「・・・難解です。私でも、全て読む事はできない・・・ですが」 「・・・ですが?」 「・・・ある程度の事はつかめます。もう少し読めれば・・・」 「そうか。邪魔して悪かった。引き続き、お願いする」 そう言いながら、張コウは斬鉄剣片手に家のドアに手をかえ、外に出た。 平時と同じほど俊敏には動けないが、雨は己の姿を隠してくれる。 (銃で狙う事はできない・・・オレの怪我も大した事はない。  相手が打撃用の武器ならば、こちらに分がある) 斬鉄剣を構え、先ほどより良く聞こえる笑い声の方へ向かう。 荀攸を助ける気などない。圧倒的に有利な立場だから、自分から出向いただけだ。 殺せず逃がしてしまうにせよ、時間かせぎになれば荀攸の解読もより進む。 打算的な考えを浮かべながら、張コウは笑い声を発する男から距離を置いたところに立つ。 「1人か・・・同じ黄巾賊の仲間を見つけろ、と言ったはずだが?・・・張角」 「ひゃはッ!」 今は玩具の刀ではない。腰は伸びているが、本当の刀だ。 そして、張角の武器が銃だとしても、今の状況では使えない。いや使わないだろう。 恐ろしいのは妖術だけ。それも本当にあるとすればの話だ。 だが、油断は微塵もない。油断して死んだ男をその目でしっかり見ているのだから。 ---- 202 名前:空の雫 5/6 投稿日:2006/08/18(金) 03:25:59 反面教師であったが、そう考えると徐庶はいい教訓を残してくれたと感じる。 (それにしても・・・) 今の張角の姿。かつて感じた王の威風などカケラも感じられない。 徐庶や于禁は狂っても仕方ないと思っていたが、まさか張角までとは。 王の威風を感じさせた張角が、絶望や憤怒でこうなるとは考えにくい。 荀攸から聞いた話でも、荀イクも狂ってしまったという。 徐庶、于禁、荀イク、そして張角。 これほどの人間が異常であっては、裏に何かあるのか?と勘ぐってしまう。 「どいつも、こいつも・・・」 ツバを吐きながら、張コウはそう毒づいた。 なくした右腕の痛みにこらえながら、荀攸は首輪解体新書?についてわかった事をまとめる。 首輪の解体は確かに可能。 だがそれには何人かに支給された武器、道具などを利用しなければならない。 そのうちの一つは『小さくて黒い、甘い物』。 わかったのはこれだけだ。 しかも、その事柄すら間違っている可能性もある。 これ以上は、他に読める人間に頼るしかない。 出来れば今すぐにでも張コウにも伝えたいのだが、今この場に彼はいない。 おそらく、痛いほど心地悪い笑い声を発した敵の撃退に向かったのだろう。 (不思議だ・・・) 今の自分の感覚は妙に鋭敏だ。 雨の中だというのに、笑い声の音一つ一つが感じ取れた。 もっともそのぶん言葉は自由に出なくなってきている。 張コウに尋ねられたときも、思うように喋る事ができなかった。 ---- 203 名前:空の雫 6/6 投稿日:2006/08/18(金) 03:26:34 否応なく迫る『死』が、自分をそうさせているのかもしれない。 (・・・だが、私はまだ・・・死ねない・・・叔父上を止めるまで・・・!) 達成するまで、あるいは死を凌駕するのかもしれない決意が、荀攸の胸にあった。 <<決意を新たに/2名>> 『現在地 豫州・許都内部・南側の民家』 @張コウ[全身軽傷]【斬鉄剣(腰伸び)】 &荀攸[つま先負傷(手当て済み。走れます)、右腕喪失、失血]【デリンジャー、首輪解体新書?】 ※荀イクの捜索、説得が目的です。 ※荀攸は民家の中、張コウはそこから少し離れた広場へ。 @張角【DEATH NOTE】 『現在地 豫州・許都内部・南側の広場』 ※DEATH NOTEに参加者の名前を綴った場合、その人物を殺さなければならないという激しい強迫観念に囚われます 。 ※仲間として探すはずだった荀彧、荀攸、司馬懿、陳羣を殺すことしか考えていません 。 ※荀攸がいる民家から少し離れた広場で張コウと対峙。最優先目的は荀攸の殺害。 ※紙飛行機にされたDEATH NOTEのページ1枚は放置されたままです 。

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