7-193 やわらかな手

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173 名前:やわらかな手 1/4 投稿日:2006/08/15(火) 00:31:58 張燕から矢を受けた沮授は、その場に崩れ落ちた。 殺してくれという懇願を聞き入れず、張燕は去った。 肩の傷口から焼けるような痛みと熱さが、そのまま体に回っていった。 毒だ。 ろくに体を動かすことも出来ない。ただ唸り声を上げ、土を掻き毟るだけ。 (ああ…これがご子息を見捨てた罰なのだ) 沮授はもはや死を待つのみであった。 何も出来ぬまま、じりじりと時間だけが過ぎていく。 無限に続くかのような苦しみ。 苦しい、熱い、殿、申し訳ありません、申し訳ありません、 死にたい、死ななければ、殿、殿、殺してくれ、…誰か!!! 朦朧としていく意識の中で最後に見たのは、空から落ちる大粒の雫であった。 ---- 174 名前:やわらかな手 2/4 投稿日:2006/08/15(火) 00:34:55 ふと、暖かな感触に意識が浮上した。 なんだろう…額に、髪に、頭に感じる優しくて、柔らかな…。 重い瞼を懸命に開く。 「…気がつかれましたか?」 目の前に広がる、優しい微笑み。 見たことの無い女性だ。まさか…天女?自分は死んだのか? いや…目を凝らせば、赤く照らされた土の天井が見える。 洞窟で火を焚いている…のだろうか? 「…あなた…は…」 「蔡文姫と申します。あちらはホウ統様、劉封様」 女性は小首をかしげ、視線を横に動かす。 その方向になんとか首を動かすと、焚き火ごしに2人の男がぼんやり見えた。 「あなた…たち、が…たすけてくだ、さったの、か」 「…助けてなどないよ…雨の中から、洞窟に移しただけだからね」 それでも、あのまま道端で死体になるよりよほどいい。 女性は自分の頭を膝に乗せ、優しく頭を撫でてくれていた。 母親が子供にするように。 「お前さん、毒をくらったね。悪いが…私達に出来ることはもう何も無い」 「…でしょう、な…」 冷酷な現実を突きつけられる。だが下手に慰められるより、よほど良いと思った。 「その…せめて、何か…言い残したいことは…?」 若い男が自分のほうに膝を寄せてきた。 ---- 175 名前:やわらかな手 3/4 投稿日:2006/08/15(火) 00:35:51 「……」 ゆっくりと、頭を撫で続ける手が気持ち良い。死を待つだけの自分には過ぎた対応だ。 不思議なことに、苦しみはだいぶ和らいでいた。毒が抜けたわけでもないのに。 きっと頭を撫でる手が、優しいからだ。 それはもう良いのだと、罪を赦すと言ってくれている様で。 沮授は目を瞑り、ひとつ息を吐いた。 「…私は沮授と申します」 しっかりと声に出せたので、安心して続ける。 「袁紹様に仕えておりました…ですが、私は殿のご子息を守ることをせず、自身の保身に勤めてしまった」 思い出す。あの時、身を挺してご子息を守っていれば。 …少なくともこんな後悔をすることはなかっただろうに。 「私の死は当然の物です。これは、罰なのです」 「違う、あなたは悪くない!悪いのは献帝だ!」 若者が声を荒げる。ありがとう…でも、もう良いのだ。 「ただ、殿に申し訳ございませんと。…殿のご無事をお祈りしておりますと…お伝え下さい」 「わかりました、必ず」 若者の力強い返答に安心する。 ああ、良かった。 本当に、良かった。 ---- 176 名前:やわらかな手 4/4 投稿日:2006/08/15(火) 00:37:30 安心したら、なんだか気が抜けた。 「申し訳ない…このまま、少し休ませていただいてもよろしいでしょうか」 やわらかな手が、あまりにも気持ちが良くて。 「ええ…おやすみなさい」 蔡文姫が微笑んだので、ほっとして目を閉じる。 「ありがとう…おやすみ」 <<親子の面影+α/三名>> @蔡文姫【塩胡椒入り麻袋×5】 @劉封【ボウガン・矢×20、塩胡椒入り麻袋×5】 @ホウ統【ワイヤーギミック搭載手袋、塩胡椒入り麻袋×5】 ※常山の洞窟で雨宿り中。 【沮授 死亡確認】

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