7-183 午睡と空腹と暴発と

「7-183 午睡と空腹と暴発と」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

7-183 午睡と空腹と暴発と」(2007/11/17 (土) 18:08:19) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

121 名前:午睡と空腹と暴発と 1/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:28:11 陳到は未だ陳留を彷徨っていた。 一時は、劉備を求めて蜀の地へ向かおうとも思ったのだが、 潁川に入ってすぐ、その考えを改めた。 あのお方ならば、天命の地である蜀よりも、義兄弟たちと杯を交わした 楼桑村に向かうかもしれない。そう思って、引き返した。 現在地は、陳留北部。あと少し北に向かえば、朝歌に入る。 (大地が狭まっているとはいえ・・・やはりタク県までは遠いな・・・) 湿った土の上を、そろりそろりと、ほんの少しの音も出さぬよう、 気配を殺して歩く。 さく。さく。小さく、土が鳴る。 ぐう。 「・・・」 そんな彼の努力を嘲笑うかのように、胃袋が不満の声を上げた。 そう言えば、朝から何も口にしていない。 (腹減ったなー・・・) 支給された食物は、昨日の内に食べきってしまった。 水はまだ残ってはいるが、十分とは言いがたい。 無くなったのならそれはそれで、兎でも狩ればいいと思っていたのだが、 それが中々見当たらなく。 考えの甘かった自分を悔いた。 (いざとなったら・・・草でも食うか。仕方ない) ふと、上を見上げる。西南の方角に、黒雲が渦巻いていた。 嫌な空だ。 (ひと雨来そうだな。・・・なら水だけは平気そうだ) 残り半分をきった水筒を軽く振る。 中で、水の暴れる音がした。 ---- 122 名前:午睡と空腹と暴発と 2/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:28:58 ふと、一歩を踏み出したときだ。 ほんの少し先の空間。其処に、異質な気配を感じた。 動いては居ない。驚くほど静かだ。 しかし、それは確実に其処に居た。 ガン鬼の銃とやらを構え、気配を消しながら、ゆっくりと。 その気配のほうに近寄る。 心臓がどくどくと、喚いていた。 (煩い。落ち着け・・・) ゆっくりと。 ゆっくりと、近づく。 巨木の近く、陰と光が交錯する場所。 静かに息衝く人影を見つけた。 (誰だ) もう少し。ほんの少し、近づく。 男だ。ガタイの良い男が、巨木に寄りかかり座っている。 髪が短い。よく見ると、片方の耳と、小指が破損していた。 男は、くうくうと静かに寝息を立てている。 薄汚れた鼠が、その周りを徘徊していた。 息が、詰まる。 (う、于禁・・・!?) 見覚えがあった。 曹魏の誉れ高き五大将が一人。于禁文則が其処に居た。 ---- 123 名前:午睡と空腹と暴発と 3/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:29:39 (どうしたらいいんだ) 進むべきか。引くべきか。 無駄な戦いはしたくない。できるだけ、安全に。確実に。 しかし、今眼前の男は眠っていた。 小指の破損した右手に、小さな刀を握ってはいるものの、 まるで危機感も無く、静かに寝息を立てている。 一歩、近づいた。 ―――目覚めそうに無い。 また一歩。銃を構えたまま、気配を殺して。 一歩。 手を伸ばせば触れられる距離まで来た。 まだ、瞳は開かない。 銃身を固定したまま、湿った地面に眼を落とした。 自分の銃よりも長く、巨大な銃が無造作に放られている。 彼の武器だろうか。少し、銃身が曲がっているようにも見えた。 大木に凭れかかる身体を見る。 左腕に絡まった袋から、支給された食物が零れ出ていた。 ごくん。喉が鳴る。腹も、ぐるぐると呻いた。 右手に銃を構えたまま、左手が、大地へと下がっていった。 長筒に触れる。ひんやりと、冷たい。 (使い方は同じか?) 持ち上げた。 自分の銃を仕舞い、その長筒――AK47カラシニコフを構えて、三歩ほど下がる。 どくん。 どくん。 心臓が鳴る。 煩い。周りの音が、かき消された。 引き金に手をかける。手が、少しだけ震えた。 ---- 124 名前:午睡と空腹と暴発と 4/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:30:15 (大丈夫だ) もう一歩、下がる。 どくん。 どくん。 ―――どくん。 (やれる。全然殺れる。大丈夫だ。大丈夫―――) 于禁は目覚めない。 静かに息づく。生きて、いる。 劉備様を散々に苦しめた魏将の一人だ。罪悪感など感じない。 それでも、曹魏の名高い武将をこの手で、という興奮が陳到の手を震えさせた。 心臓が騒ぐ。戦場の空気とは、また違う匂いだ。 一度だけ、大きく息を吸った。 長筒を構えなおした。これは、試し撃ちだ。 動かない的なら、外す筈も無い。この長筒の威力を知るには、うってつけだ。 至近距離に居る。眠っている。 (大丈夫だ) 殺せる。 周囲の温度が下がった。代わりに、自分の熱は上昇する。 長筒がぬめる。血が、付着しているのだろう。 汗が出てきた。嫌な汗だ。 気にしない。ただ、眼前の静かな空間だけを見据えて。 引き金を、引いた。 ---- 125 名前:午睡と空腹と暴発と 5/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:31:11 「!?」 突然、至近距離で響き渡った爆発音に、于禁は驚愕して跳ね起きた。 泡沫の夢を拭い取られた不快感も余所に、山刀を構える。 と、同時に、傍らに置いたはずのカラシニコフが消えていることに気づいた。 (くそっ!やられたか!?) 周囲に気を張る。・・・が、どのような気配もしない。 ただ、ほんの少し前方で、黒い煙が湧き出ていた。 (・・・何なんだ) 恐る恐る、かつ大胆にそれの方へと向かう。 (うわっ・・・) その死体は、首から上と、両腕が損失していた。 血は出ていない。傷口は焼き焦げたようで、いっそ綺麗なまでに醜かった。 首輪が爆発したようだ。 これではこの男が誰だったのかすら、分からなかった。 辺りを見渡す。 なにやら黒い金属の破片と、男のものであろう肉片が周囲一面に、 爆発の際に吹っ飛んだのだろう袋が、右手に見えた。 手にとってみる。半分以上焼き焦げていた。 振ってみると、新式の筆と黒筒がぽろりと零れ落ちた。 ・・・それ以外は燃え尽きるか、崩れてしまっている。 焦げた水筒が悪臭を放っていた。 近くに、自らの支給品であった銃は落ちていない。 犯人は、盗るだけ盗ってもう逃げたのかもしれない。ため息が出た。 短くなってしまった髪をかき上げながら、死体のほうを見る。 (・・・ま、足し引き零・・・か?取りあえずこの黒筒は貰ってくがよ・・・) 心の中でぶつくさ言いながら、足はしっかりとこの場を離れようと動く。北へ、都へと。 (誰なのか知らねーが・・・自殺なら人の居ない所でしろよな!) 二日続けて熟睡中を叩き起こされた于禁は、果てしなく不機嫌だった。 恐るるべきは、無知。 もしくは、運。 ---- 126 名前:午睡と空腹と暴発と 結果 投稿日:2006/08/08(火) 00:32:32 【陳到 死亡確認】 @于禁[左耳破損、右手小指喪失、全身軽傷、洗脳?] 【山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3、ガン鬼の銃(陰陽弾×50)】 『現在地 エン州・陳留・朝歌との境目付近』 ※まっすぐギョウに向かっています。 ※曹丕を中心に恨みのある将を狙います。 ※曹操、張遼、張コウ相手には友好的です。 が・・・。
121 名前:午睡と空腹と暴発と 1/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:28:11 陳到は未だ陳留を彷徨っていた。 一時は、劉備を求めて蜀の地へ向かおうとも思ったのだが、 潁川に入ってすぐ、その考えを改めた。 あのお方ならば、天命の地である蜀よりも、義兄弟たちと杯を交わした 楼桑村に向かうかもしれない。そう思って、引き返した。 現在地は、陳留北部。あと少し北に向かえば、朝歌に入る。 (大地が狭まっているとはいえ・・・やはりタク県までは遠いな・・・) 湿った土の上を、そろりそろりと、ほんの少しの音も出さぬよう、 気配を殺して歩く。 さく。さく。小さく、土が鳴る。 ぐう。 「・・・」 そんな彼の努力を嘲笑うかのように、胃袋が不満の声を上げた。 そう言えば、朝から何も口にしていない。 (腹減ったなー・・・) 支給された食物は、昨日の内に食べきってしまった。 水はまだ残ってはいるが、十分とは言いがたい。 無くなったのならそれはそれで、兎でも狩ればいいと思っていたのだが、 それが中々見当たらなく。 考えの甘かった自分を悔いた。 (いざとなったら・・・草でも食うか。仕方ない) ふと、上を見上げる。西南の方角に、黒雲が渦巻いていた。 嫌な空だ。 (ひと雨来そうだな。・・・なら水だけは平気そうだ) 残り半分をきった水筒を軽く振る。 中で、水の暴れる音がした。 ---- 122 名前:午睡と空腹と暴発と 2/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:28:58 ふと、一歩を踏み出したときだ。 ほんの少し先の空間。其処に、異質な気配を感じた。 動いては居ない。驚くほど静かだ。 しかし、それは確実に其処に居た。 ガン鬼の銃とやらを構え、気配を消しながら、ゆっくりと。 その気配のほうに近寄る。 心臓がどくどくと、喚いていた。 (煩い。落ち着け・・・) ゆっくりと。 ゆっくりと、近づく。 巨木の近く、陰と光が交錯する場所。 静かに息衝く人影を見つけた。 (誰だ) もう少し。ほんの少し、近づく。 男だ。ガタイの良い男が、巨木に寄りかかり座っている。 髪が短い。よく見ると、片方の耳と、小指が破損していた。 男は、くうくうと静かに寝息を立てている。 薄汚れた鼠が、その周りを徘徊していた。 息が、詰まる。 (う、于禁・・・!?) 見覚えがあった。 曹魏の誉れ高き五大将が一人。于禁文則が其処に居た。 ---- 123 名前:午睡と空腹と暴発と 3/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:29:39 (どうしたらいいんだ) 進むべきか。引くべきか。 無駄な戦いはしたくない。できるだけ、安全に。確実に。 しかし、今眼前の男は眠っていた。 小指の破損した右手に、小さな刀を握ってはいるものの、 まるで危機感も無く、静かに寝息を立てている。 一歩、近づいた。 ―――目覚めそうに無い。 また一歩。銃を構えたまま、気配を殺して。 一歩。 手を伸ばせば触れられる距離まで来た。 まだ、瞳は開かない。 銃身を固定したまま、湿った地面に眼を落とした。 自分の銃よりも長く、巨大な銃が無造作に放られている。 彼の武器だろうか。少し、銃身が曲がっているようにも見えた。 大木に凭れかかる身体を見る。 左腕に絡まった袋から、支給された食物が零れ出ていた。 ごくん。喉が鳴る。腹も、ぐるぐると呻いた。 右手に銃を構えたまま、左手が、大地へと下がっていった。 長筒に触れる。ひんやりと、冷たい。 (使い方は同じか?) 持ち上げた。 自分の銃を仕舞い、その長筒――AK47カラシニコフを構えて、三歩ほど下がる。 どくん。 どくん。 心臓が鳴る。 煩い。周りの音が、かき消された。 引き金に手をかける。手が、少しだけ震えた。 ---- 124 名前:午睡と空腹と暴発と 4/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:30:15 (大丈夫だ) もう一歩、下がる。 どくん。 どくん。 ―――どくん。 (やれる。全然殺れる。大丈夫だ。大丈夫―――) 于禁は目覚めない。 静かに息づく。生きて、いる。 劉備様を散々に苦しめた魏将の一人だ。罪悪感など感じない。 それでも、曹魏の名高い武将をこの手で、という興奮が陳到の手を震えさせた。 心臓が騒ぐ。戦場の空気とは、また違う匂いだ。 一度だけ、大きく息を吸った。 長筒を構えなおした。これは、試し撃ちだ。 動かない的なら、外す筈も無い。この長筒の威力を知るには、うってつけだ。 至近距離に居る。眠っている。 (大丈夫だ) 殺せる。 周囲の温度が下がった。代わりに、自分の熱は上昇する。 長筒がぬめる。血が、付着しているのだろう。 汗が出てきた。嫌な汗だ。 気にしない。ただ、眼前の静かな空間だけを見据えて。 引き金を、引いた。 ---- 125 名前:午睡と空腹と暴発と 5/5 投稿日:2006/08/08(火) 00:31:11 「!?」 突然、至近距離で響き渡った爆発音に、于禁は驚愕して跳ね起きた。 泡沫の夢を拭い取られた不快感も余所に、山刀を構える。 と、同時に、傍らに置いたはずのカラシニコフが消えていることに気づいた。 (くそっ!やられたか!?) 周囲に気を張る。・・・が、どのような気配もしない。 ただ、ほんの少し前方で、黒い煙が湧き出ていた。 (・・・何なんだ) 恐る恐る、かつ大胆にそれの方へと向かう。 (うわっ・・・) その死体は、首から上と、両腕が損失していた。 血は出ていない。傷口は焼き焦げたようで、いっそ綺麗なまでに醜かった。 首輪が爆発したようだ。 これではこの男が誰だったのかすら、分からなかった。 辺りを見渡す。 なにやら黒い金属の破片と、男のものであろう肉片が周囲一面に、 爆発の際に吹っ飛んだのだろう袋が、右手に見えた。 手にとってみる。半分以上焼き焦げていた。 振ってみると、新式の筆と黒筒がぽろりと零れ落ちた。 ・・・それ以外は燃え尽きるか、崩れてしまっている。 焦げた水筒が悪臭を放っていた。 近くに、自らの支給品であった銃は落ちていない。 犯人は、盗るだけ盗ってもう逃げたのかもしれない。ため息が出た。 短くなってしまった髪をかき上げながら、死体のほうを見る。 (・・・ま、足し引き零・・・か?取りあえずこの黒筒は貰ってくがよ・・・) 心の中でぶつくさ言いながら、足はしっかりとこの場を離れようと動く。北へ、都へと。 (誰なのか知らねーが・・・自殺なら人の居ない所でしろよな!) 二日続けて熟睡中を叩き起こされた于禁は、果てしなく不機嫌だった。 恐るるべきは、無知。 もしくは、運。 ---- 126 名前:午睡と空腹と暴発と 結果 投稿日:2006/08/08(火) 00:32:32 【陳到 死亡確認】 @于禁[左耳破損、右手小指喪失、全身軽傷、洗脳?] 【山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3、ガン鬼の銃(陰陽弾×50)】 『現在地 エン州・陳留・朝歌との境目付近』 ※まっすぐギョウに向かっています。 ※曹丕を中心に恨みのある将を狙います。 ※曹操、張遼、張コウ相手には友好的です。 が・・・。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。