7-147 虚空の炎雨

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396 名前:虚空の炎雨 1/5 投稿日:2006/07/27(木) 22:32:38 ゴオウ、ゴオウ。 許都が燃える。 かつての栄華を飲み込んで、炎があたかも龍神の如く、暴れる。 浄化と破壊の音が、此の場所まで聞こえるような気が、した。 ---- 397 名前:虚空の炎雨 2/5 投稿日:2006/07/27(木) 22:33:26 于禁は許都近くの林の中に居た。 此処からは、許という都の、その雄大なる姿が一望できる。 ――嗚呼。 燃えている。 かつての自分の邸宅も、友の姿が脳裏に未だ残る道々も、天子の寛いだ宮殿も。 全てが。 ゴウゴウと、燃えてゆく。 知らぬ間に、于禁の両目からは、なにやら熱いものが流れ出していた。 何がかなしいのかは、分からない。強いて言えば、全てがかなしいのだろうが。 それはもう、悲しくて、哀しくて。 愛しくて、仕方がなかった。 ふらりと、足が前に向かう。無防備に。一歩、一歩。 ――嗚呼。 熱い。 近付く度に、熱波が全身を襲う。 されども、足を止める気がしなかった。 ---- 398 名前:虚空の炎雨 3/5 投稿日:2006/07/27(木) 22:34:07 炎上していない南門から、都に侵入することは出来た。 一歩一歩、踏み締めながら道なりを歩く。 (燃えてんのかな。) 自分の家も。 所々に仕掛けられている罠に足を取られながらも、于禁は前へ進んだ。 かつては、魏の都として大層賑わったこの街が、今は彼以外の何者の存在も 許しては居なかった。 何も無い所から矢が飛んできたり、落とし穴が掘られていたりはしていたが、 やはり人影は見当たらない。罠の製作者も、どうやらすでに許を発ったようだ。 頬をしとどに濡らしながら、于禁は自らの家を探した。 (帰りたい。) 帰りたい。都に、許に、家に。家族の、曹公の下に。 いつだったかも、そう願った。 それは確かに叶ったけれど。 叶ったのだけれど。 ---- 399 名前:虚空の炎雨 4/5 投稿日:2006/07/27(木) 22:34:45 邸宅は無事だった。 それはまるで、天が彼を祝福でもしているかのごとく、その一角だけが 炎の被害から逃れていた。 周囲の熱に侵されながら、扉を開け、内部へと侵入する。 そこには、変わらぬ我が家の光景が広がっていた。 居間の机も、褥の様相も。 全て、于禁が[死んだ]ときのままだ。 違うのは、ただ妻も子も、誰の存在も其処には無い。それだけ。 (ただいま。) ただいま。帰ってきたぞ、懐かしき我が家。 今度はそう、嘲られる事無く、恥辱に伏せる事無く。 (ただいま。) 生暖かい床に座り込んで、于禁は泣いた。 赤色が窓から、差し込んできていた――――・・・。 ---- 400 名前:虚空の炎雨 5/6 ※増えますスマソ 投稿日:2006/07/27(木) 22:36:57 「そんな。」 燃え上がる許昌の無残な姿を見て、荀攸は低く搾り出すように呻いた。 許の街、許昌。我らが都。雄大なる、魏の都が。 燃えている。 「そんな。典韋殿、そんな…許が、都が…。」 「落ち着かれませい公達殿」 「殿は、叔父上は…?そんな…そ、んな、まさか…。」 荀攸は明らかに取り乱していた。 焦りが、彼の足を前へと進ませる。 その無防備な体を、典韋は右腕を掴む事で制止した。 ---- 401 名前:虚空の炎雨 6/6 投稿日:2006/07/27(木) 22:38:18 「公達殿、先程の放送ではまだ、殿も文若殿も呼ばれてはおりませぬ。  さればもはや、お二人はこの燃え上がる許には  いらっしゃらぬのではございませぬか?」 「ああ…。」 「危険ですぞ、公達殿。」 何処に敵が居るか、分からない。 炎の轟音は、典韋の耳を鈍らせるには至らなかったが、それでも 辺りの気配を消し去るには、十分すぎるほどだった。 それを知ってか知らずか、荀攸はまた一歩、前へと足を進める。 「罠を仕掛けたのは叔父上かもしれない。」 洛陽を出てすぐの、狂気に塗れた叔父の姿が思い浮かぶ。 典韋に助けてもらわなければ、確実に死んでいただろう。荀彧は本気だった。 「叔父上だとしたら…。」 私が、止めなければ。 荀攸は、強迫観念にも似た決意を持って、前を見据えていた。 「公達殿…。」 荀攸の決意は、典韋にも理解できた。 典韋にとて、納得がいかぬのだ。あの、お優しい文若殿が、あのように。 それに、どうしたって頭の悪い自分は、この見た目は愚鈍そうだが、 実は誰よりも頭の切れる軍師に、着いていく他無いのだ。着いて行きたいと、思っている。 「分かり申した。…しかし、誰も居ないと分かれば、すぐに許を離れましょう。  どう考えても、此処は目立ちすぎます。炎に惹かれて、人が集まって来ぬとは  限りませんですからな。」 「ああ、分かっているよ典韋殿。あなたはお優しいな…。  本当に、お優しい・・・・・・。」 二人は、炎の周りの少ない南門から、許昌内部へと向かった。 そこでは獣が噎び泣いているとも知らずに。 ---- 402 名前:虚空の炎雨 結果 投稿日:2006/07/27(木) 22:38:49 <<決意胸に秘め/2名>> 『現在地 豫州・許昌内部・南門付近』 @典韋【煙幕弾×4】&荀攸【デリンジャー】 ※許昌内部に潜入。于禁には気付いていません。 @于禁【AK47カラシニコフ、山刀】 『現在地 豫州・許昌内部・西側于禁宅』 ※自宅で泣いていますが、誰かの気配には敏感です。 ※曹丕、虞翻を中心に、恨みのある将を狙います。 ※曹操、張遼、張コウ相手には友好的です。

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