「7-124 餞」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「7-124 餞」(2007/03/13 (火) 02:25:27) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
310 名前:餞 1/4 投稿日:2006/07/23(日) 00:49:07
「お前か!ずっと俺の後をコソコソ尾けてやがったのは!」
「うわっ!」
良かった、幽霊じゃなかった。
安堵と、その反動からくる苛立ちは怒りになり張飛はその男の首を掴んで釣り上げた。
「てめえ一体何どういうつもりだ!」
「ちょ、ま、待ってください、張飛殿!」
名前を呼ばれて張飛は首を傾げる。はて、知り合いだっただろうか?
「わ、私は陳羣、字長文ですっ。お忘れですか、張飛殿っ」
首を掴まれながら陳羣は一応名乗ってみた。
だが張飛のことだ、きっと覚えていないだろう。
そもそも個人的に付き合いがあったわけでもない。
陳羣は半ば絶望的な気持ちでこれからどうするべきかを考えていた。
「う~ん…そう言われてみればどっかで…」
ああ、張飛殿。思い出す努力をしてくださるとは望外の喜びです…。
でも考え込むのは私の首を掴むその手を離してからにしてくださいませんか…。
陳羣は失神した。
「や~、悪い悪い」
張飛は笑って陳羣の背中をばんばんと叩きまくり、陳羣は軽快に吹っ飛んだ。
やはり笑いながら、張飛は猫でも扱うように陳羣を掴んで引き起こす。
----
311 名前:餞 2/4 投稿日:2006/07/23(日) 00:50:09
劉備陣営にいた頃は全くといっていいほど付き合いはなかったが、
こうして顔をつき合わせてみると、こういう「悪気はない」人というのは
本っ…当に厄介なのだと骨身に染みる。
当面の誤解は解けたようだが、何故劉備陣営を離れた、などと聞かれて
進言が容れられなかったからとは何となく言えず、
父が病に伏したので、と答えた。半分は本当だ。
「俺様を尾けてきたんじゃなきゃ、お前、こんなところで何してんだ?」
「…同行者の容態が思わしくなくて…
飲み水と、何か食べられそうなものを探しに」
俯く陳羣。気まずい沈黙が場を支配する。張飛が非常に苦手とする状況だった。
「…あ~、畜生!ちょっと待ってろ!」
考え込むのは苦手な質だ。張飛は走り、帰ってきた時には両手に桃を持っていた。
「本当は俺たち兄弟のもんだけどよ。特別にくれてやるよ」
「…ありがとうございます」
ほんのりと色づいた桃は甘く爽やかな匂いがした。
豪放な張飛の意外に繊細な心遣いに陳羣は感謝し、また驚いた。
「俺たち兄弟の門出を祝ってくれた桃だ。
旅立ちの時にゃ丁度花盛りで、そりゃあ綺麗で、いい香りがして」
----
312 名前:餞 3/4 投稿日:2006/07/23(日) 00:51:09
張飛の笑顔は子供のように無邪気だ。
「きっと今度も俺たち兄弟のために綺麗な花を咲かせてくれてると思ってた。
でも今、あの桃園には一杯実がなってる」
祝福の花よりも命を繋ぐ実を。彼ら兄弟が生きるために。
「腹一杯喰って、精一杯生きろってことなんだろ。
この妙ちくりんな世界でも」
張飛はやはり手加減なしに陳羣の肩を叩いた。
叩かれた場所がじんと痛む。生きている証拠だと思った。
「だからお互い頑張ろうや。俺も兄者たちのために頑張る。
何をどう頑張るかは良くわかんねえけど、それは兄者たちが考えてくれるだろ。
俺はそれを信じる」
一点の曇りもない潔さ。張飛にとってはこの世界律も大した問題ではないのだ。
ただ信じる兄弟のため。いつだって、張飛は張飛だ。
「お前も頑張れや!」
陳羣は笑って桃を受け取った。こんなに清々しい『頑張れ』は初めてだと思った。
だるい身体に桃の甘みが心地よかった。
陳羣は薬草を探してきたり汗を拭いたりと細々と働き、
几帳面で勤勉な陳羣の性格を郭嘉は初めてありがたいと思った。
「郭嘉殿、何か欲しいものはありますか」
「…俺を暖めてくれる可愛い女の子…」
----
313 名前:餞 4/4 投稿日:2006/07/23(日) 00:52:38
陳羣は例の眉間に皺の寄った顔で何かを言いかけたが、
無言で郭嘉の足をさすって暖めた。
額は燃えるように熱いのに、足は凍るように冷たかった。
北の大地に吹く風と、熱に浮かされる身体が郭嘉の記憶を呼び覚ます。
あれほど強く生きると叫んだ瞳。
未来を見る瞳は過去をも見つめ、今は空しく伏せられて。
その瞳は何を見ているのか。陳羣はまだ知らない。
(何故ここに陳羣殿が?)
張飛がこの桃園にいる理由は解った。義兄たちとの思い出の場所のようだ。
だが陳羣がここにいる理由が解らない。
出身地ではなかったと思うし、特に思い入れのある土地とも思えない。
気紛れに行き先を決めるような人物でもない。
(何か、あるな)
賈クの勘が告げていた。幾度も彼を危機から救ってきた勘が。
張飛がここにいる理由も掴めたし、義兄と合流するまではここに留まるだろう。
賈クは、そっと陳羣の後を追った。
<<不品行と品行方正/2名>>
郭嘉[左脇腹負傷、失血、発熱]【閃光弾×2】陳羣【閃光弾×2】
※現在は楼桑村付近。目的地は遼西。記憶が戻りつつある?
@張飛【鉈】
※現在地は楼桑村。義兄たちを待ちます。関羽はまだ来ていません。
@賈ク【光学迷彩スーツ】
※ストーキング対象を<<不品行と品行方正>>に変更。