7-120 腰弓姫のささやかな決意

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300 名前:弓腰姫のささやかな決意1/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:47:46 孫尚香は己のことを強いと思っていた。 武芸を好む男勝りの性格で、父が面白がってそれを煽ったものだから 女の子らしい遊びにまったく興味を示さず、 幼い頃から棒を振り回し、兄たちと一緒になって遊んでいた。 お付きの女官に武装させ、自らは弓を担いで鍛錬に励む彼女は ”弓腰姫”なる通称を与えられた。 しかし母の嘆きを余所に、尚香はその名に誇りすら感じていた。 ……私はただの女の子じゃない。 守られ、時に奪われ、男の影にあり翻弄される人生なんてまっぴらよ。 私は、私なりに人生を切り開いていきたいの。 この奇妙な世界に身を置いていることに気が付いたとき、 彼女は少しだけ高揚感を覚えたのだ。 はじめから皆が同じ出発点に立っているこの世界なら、 もしかしたら自分なりの道を行くことが可能かも知れない。 例えそれが血塗られたものであろうとも、 女である身を幾度嘆いたかもわからぬ己にとっては、歓迎すべき世であるに違いないと。 ---- 301 名前:弓腰姫のささやかな決意2/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:48:21 「文台の娘であったか。言われてみれば、目元のあたりが良く似ている」 目の前に孫堅の娘がいると知った小柄な中年男が、 瞳を優しく細めてどそう話しかけてきた瞬間、 不覚にも尚香の目から涙がこぼれた。 私は強いのに。 強いはずなのに。 父とはまるで似ても似つかないこの小柄な男のどこかに父の面影を見て、尚香は泣いた。 このゲームが始まってこの方、恐怖を感じたことなぞなかった。 左手には役に立たない支給品を抱え、右手には突然の襲撃に備えて切っ先が尖った棒きれを持ち、 ひたすら彷徨ってここまでやってきたのだけれど、まったく平気だった。 それどころか、開放感めいたものすら感じていたのに。 ……父さま。 父さまは今どこにいるのだろう。 ---- 302 名前:弓腰姫のささやかな決意3/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:48:58 その時だった。 ぴーえすぴー!と叫ぶ男が乱入してきて、風のように暴れては立ち去っていったのだ。 それぞれが軽い怪我を負った四人は、呆然としたまま顔を見合わせた。 「なんだったんだ!? 狂人ですかね?」 「今の男、張遼にとても似ていたのだが……」 「え! 張遼って泣く子も黙る遼来来のですか? うわー! サイン貰っておくんだった」 「おい陸機! おまえ、一応呉の臣下だった身だろう。敵の張遼にサインを貰うなぞ言語道断だぞ!」 「阿蒙さんってばカタイなー。こんな世界で敵味方って、関係ないですよね?」 「その通りだ。呂蒙よ、お主は少し狭量ではないか?」 「う……」 漫才のような掛け合いを始めた三人をあっけにとられて見つめていた尚香に気付いたのか、 ひょろりと背の高い若者が身体を彼女に向けてにこやかな笑みを見せた。 「こんにちは、お嬢さん。僕たちが来たからもう大丈夫ですよ。泣きやんでくださいね!   俺は陸機っていいます。祖父は陸遜で、父は陸抗なんですが、知ってますか?」 知ってるもなにも陸遜は兄の配下だった男だ。 「こいつは陸遜の孫だ。残念ながら俺が生きている時には生まれていなかったようだが」 横に立っていた呂蒙が耳元でこっそり囁いてくる。 なるほど、後代の人間というわけらしい。 異なる世代が一同に会しているとは、ここはまったく不思議な世界だ。 ---- 303 名前:弓腰姫のささやかな決意4/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:49:33 「そして、こちらは凄いんですよ。じゃーん! なんと曹操殿でーす!」 「曹操って、あの曹操??」 マジで? 本物??  陸機の紹介を聞き、唖然としてまじまじと小柄な男を見てしまった。 伝え聞く噂から恐ろしげな偉丈夫を想像していたのだが、 目の前にいる男は正反対の容姿をしている。 曹操はそっと手を差し出してきた。手の平には小さな四角い物体。 誘われるままに紙を開いて中味を口に入れる。 *・゜゚・*:.。..。.:*・゜なんともいえない芳醇な香り゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* とっても甘いの! 疲れがあっというのに取れたみたいヽ(´▽`)ノ 「ちろるちょこだ。おなごは甘いものが好きであろう」 「曹操殿も好きですよね! もちろん僕も好きですよ」 「おい、陸機、俺だって好きだぞ!」 「えー! 阿蒙さんは阿蒙さんらしく、甘味より書物が好きとか言ってくださいよ」 「なんだよそれ……」 四人は一粒ずつちろるちょこを食べた。 「私の支給物はあんまり役に立たないものだけど……みんな、よろしくね」 どこか父に似た空気を持つこの人についていこうと尚香は心に決めた。 <<ふたりの詩人とひとりのアモーと弓腰姫/4名>> @曹操[軽い打撲]【チロルチョコ(残り84個)】 @陸機[頭部より少量の出血]【液体ムヒ】 @呂蒙[鼻を負傷]【捻りはちまき】 @孫尚香[かすり傷]【シャンプー】 ※現在下[丕β]城近くにいます。さらに南下予定です。  孫尚香の発案により、全員武器として棒を持っています。
300 名前:弓腰姫のささやかな決意1/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:47:46 孫尚香は己のことを強いと思っていた。 武芸を好む男勝りの性格で、父が面白がってそれを煽ったものだから 女の子らしい遊びにまったく興味を示さず、 幼い頃から棒を振り回し、兄たちと一緒になって遊んでいた。 お付きの女官に武装させ、自らは弓を担いで鍛錬に励む彼女は ”弓腰姫”なる通称を与えられた。 しかし母の嘆きを余所に、尚香はその名に誇りすら感じていた。 ……私はただの女の子じゃない。 守られ、時に奪われ、男の影にあり翻弄される人生なんてまっぴらよ。 私は、私なりに人生を切り開いていきたいの。 この奇妙な世界に身を置いていることに気が付いたとき、 彼女は少しだけ高揚感を覚えたのだ。 はじめから皆が同じ出発点に立っているこの世界なら、 もしかしたら自分なりの道を行くことが可能かも知れない。 例えそれが血塗られたものであろうとも、 女である身を幾度嘆いたかもわからぬ己にとっては、歓迎すべき世であるに違いないと。 ---- 301 名前:弓腰姫のささやかな決意2/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:48:21 「文台の娘であったか。言われてみれば、目元のあたりが良く似ている」 目の前に孫堅の娘がいると知った小柄な中年男が、 瞳を優しく細めてどそう話しかけてきた瞬間、 不覚にも尚香の目から涙がこぼれた。 私は強いのに。 強いはずなのに。 父とはまるで似ても似つかないこの小柄な男のどこかに父の面影を見て、尚香は泣いた。 このゲームが始まってこの方、恐怖を感じたことなぞなかった。 左手には役に立たない支給品を抱え、右手には突然の襲撃に備えて切っ先が尖った棒きれを持ち、 ひたすら彷徨ってここまでやってきたのだけれど、まったく平気だった。 それどころか、開放感めいたものすら感じていたのに。 ……父さま。 父さまは今どこにいるのだろう。 ---- 302 名前:弓腰姫のささやかな決意3/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:48:58 その時だった。 ぴーえすぴー!と叫ぶ男が乱入してきて、風のように暴れては立ち去っていったのだ。 それぞれが軽い怪我を負った四人は、呆然としたまま顔を見合わせた。 「なんだったんだ!? 狂人ですかね?」 「今の男、張遼にとても似ていたのだが……」 「え! 張遼って泣く子も黙る遼来来のですか? うわー! サイン貰っておくんだった」 「おい陸機! おまえ、一応呉の臣下だった身だろう。敵の張遼にサインを貰うなぞ言語道断だぞ!」 「阿蒙さんってばカタイなー。こんな世界で敵味方って、関係ないですよね?」 「その通りだ。呂蒙よ、お主は少し狭量ではないか?」 「う……」 漫才のような掛け合いを始めた三人をあっけにとられて見つめていた尚香に気付いたのか、 ひょろりと背の高い若者が身体を彼女に向けてにこやかな笑みを見せた。 「こんにちは、お嬢さん。僕たちが来たからもう大丈夫ですよ。泣きやんでくださいね!   俺は陸機っていいます。祖父は陸遜で、父は陸抗なんですが、知ってますか?」 知ってるもなにも陸遜は兄の配下だった男だ。 「こいつは陸遜の孫だ。残念ながら俺が生きている時には生まれていなかったようだが」 横に立っていた呂蒙が耳元でこっそり囁いてくる。 なるほど、後代の人間というわけらしい。 異なる世代が一同に会しているとは、ここはまったく不思議な世界だ。 ---- 303 名前:弓腰姫のささやかな決意4/4 投稿日:2006/07/22(土) 12:49:33 「そして、こちらは凄いんですよ。じゃーん! なんと曹操殿でーす!」 「曹操って、あの曹操??」 マジで? 本物??  陸機の紹介を聞き、唖然としてまじまじと小柄な男を見てしまった。 伝え聞く噂から恐ろしげな偉丈夫を想像していたのだが、 目の前にいる男は正反対の容姿をしている。 曹操はそっと手を差し出してきた。手の平には小さな四角い物体。 誘われるままに紙を開いて中味を口に入れる。 .*・゜゚・*:.。..。.:*・゜なんともいえない芳醇な香り゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* とっても甘いの! 疲れがあっというのに取れたみたいヽ(´▽`)ノ 「ちろるちょこだ。おなごは甘いものが好きであろう」 「曹操殿も好きですよね! もちろん僕も好きですよ」 「おい、陸機、俺だって好きだぞ!」 「えー! 阿蒙さんは阿蒙さんらしく、甘味より書物が好きとか言ってくださいよ」 「なんだよそれ……」 四人は一粒ずつちろるちょこを食べた。 「私の支給物はあんまり役に立たないものだけど……みんな、よろしくね」 どこか父に似た空気を持つこの人についていこうと尚香は心に決めた。 <<ふたりの詩人とひとりのアモーと弓腰姫/4名>> @曹操[軽い打撲]【チロルチョコ(残り84個)】 @陸機[頭部より少量の出血]【液体ムヒ】 @呂蒙[鼻を負傷]【捻りはちまき】 @孫尚香[かすり傷]【シャンプー】 ※現在下[丕β]城近くにいます。さらに南下予定です。  孫尚香の発案により、全員武器として棒を持っています。

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