7-114 第二の侵入者

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279 名前:第二の侵入者 1/5 投稿日:2006/07/21(金) 00:06:18 顔良は歩いていた。 右腕は肘から先が吹き飛んでおり、その傷口は焼けて閉じている。 顔もひどい有様だった。右目は完熟した卵のように固まり、頬は溶けた蝋のように垂れており、 口は端がくっついて開かず、髪はほとんどが燃えて焼けた頭部の皮膚が晒されていた。 服は焦げてところどころに大小さまざまな穴が空き、その穴の先に膨れ上がった皮膚が見えている。 足取りはもつれ、左右に不安定にふらつき、転びかけ、まともに前にも進めていない。 それでも顔良は歩いていた。 東、陳留、曹操、殺す 方向も地図も確かめないまま、ただがむしゃらに進んでいても陳留へ着けるはずはない。 しかし。顔良の朧気な思考の中では、彼は東の陳留へ歩いていた。 陳留、曹操がいる所、曹操、宦官の孫、乞食の息子、袁家の敵、倒すべき敵、 曹操、殺す、関羽、殺す、曹操に味方するやつ、みんな、殺す そのうち顔良の左目に、城が見えた。 大きい城だ。 外壁には竜や鳳凰などの幾多の模様が描かれており、中にわずかに見える高い建物は、その頂点に金の大玉が載せられていた。 曹操、このような城、帝を差し置いて、悪逆無道、不義不忠、絶対悪、死すべき敵 もはや彼の思考には、前世と今生、正常と異常の区別が付いていなかった。 ここは陳留でもなく、曹操が立てた城でもなく、漢の首都・洛陽だった。中に見えるのは、漢の宮殿である。 そして、今まさに、胡車児侵入騒動が中で巻き起こっていた。 曹操、殺す、俺が、殺す、この城、ぶち壊す 顔良にもっとも近い城門、東門の門番はマシンガンを持った文官一人しかおらず、城門も門番が城に戻るために開けたままだった。 普段は最低でも4人が配備されているのだが、今は胡車児のため分散していたのだ。 顔良はその門に近づいた。そしてその文官を見た。 あれは、誰だ、長い髭、赤い顔、青龍偃月刀、あれは、関羽! 実際にはそれは呉碩というかつて劉備・董承とともに曹操暗殺を計画した一人だったが、 しかし、顔良には関羽でしかなく、マシンガンは青龍偃月刀だった。 関羽、殺す、恨み、晴らす ---- 280 名前:第二の侵入者 2/5 投稿日:2006/07/21(金) 00:07:32 「ウォオオオオオオオ!!」 呉碩は一瞬、虎の雄叫びを聞いたのかと思った。虎? 洛陽に? 雄叫びの聞こえた方を向く。虎ではなかった。しかし、恐怖感は虎に会う以上だった。 それはまさに怪物だった。全身が赤く、溶けかかり、あるいはふくれた、怪物だった。 顔良の左腕が、呉碩の顔面にめり込んだ。その衝撃に顔骨をへこませ、マシンガンを取り落とし、呉碩は地に倒れる。 馬鹿な―――あの首輪は参加者のものだ――なぜ、どうして、こんな立て続けに―― 顔良が呉碩の顔面を、右足で思いっきり踏みつけた。骨が割れる音と、肉が潰れる音が合い混じる。呉碩は息絶えた。 顔良はマシンガンを拾う。顔良にとってさっきまで関羽が握っていた青龍偃月刀だったが、関羽が話した途端、マシンガンの姿に変貌していた。 「て、敵襲ーーー!!」 ようやく城壁の上の見張りが、顔良の来訪を叫んだ。見張りもまた、侵入者探しに人を取られていたのだ。 顔良は見張りに向かってマシンガンを撃ち、瞬く間に見張り――名をチュウ輯、顔良には張遼に見えた――を殺した。 こうして顔良は、洛陽城の中に足を踏み入れた。ちょうどその頃、胡車児の首は吹っ飛んでいた。 城内東門前には、敵はまったくといっていいほどいなかった。 胡車児探しのさい、最初に根ほり葉ほり探されたのが城内東門前であり、そこにいないとわかるや別の場所へ検索しに行っていたからである。 チュウ輯の叫びも、ほとんど届いていないだろう。 顔良はまっすぐと突き進み、曹操がいるであろう中央の宮殿へ急いだ。 曹操め、待ってろ。必ずこの顔良が見つけ出して、ぶっ殺してやる! この時彼の足取りはしっかりしており、思考も幾分か正常になっていた (もっとも、ここが曹操の城で、いるのは曹操とその配下だという妄想はそのままだったが)。 門前での殺戮が、もとより戦い好きだった顔良を刺激を与えたのだろう。 中央に近づくにつれ、敵も顔良の存在に気付いてきた。 ―――なんだ!? 侵入者は死んだのではなかったのか! ―――いや、別の参加者のようだが ―――なんてこった、なぜ侵入者が二人も! 管理局は何をしている! ---- 281 名前:第二の侵入者 3/5 投稿日:2006/07/21(金) 00:08:30 やがて、銃を持った武官が顔良の前を立ちふさがる。 しかし顔良のその姿と、マシンガンの威力に圧倒され―――軒並みいる文武百官には、内部反乱を防ぐため 重役と門番以外に高威力の武器を持たせていなかった――皆死んでいった。 もちろん顔良も無傷というわけには行かなかった。顔はますます酷い状態になっていったし、ある弾丸は脳に至る直前で止まっていた。 体に多数の穴を開け、しかしそれでも、無限の狂気と強靱な肉体で持って耐えていた。 張遼、楽進、于禁、徐晃、李典、李通、臧覇、呂虔、曹仁、曹洪…… 曹操軍名将猛将と謳われたお前等も、しょせんこの程度かぁ!! 顔良は実際に献帝の臣を、妄想で曹操の将を、それぞれ殺し進みながら、やがて宮廷の大門をくぐり抜けた。 そして顔良は、宮殿内部への門の警備、王子服と呉子蘭(顔良には夏侯惇と夏侯淵に見えた)と対峙した。 二人はそれぞれ、地面に固定したロケット砲と重機関銃で待ちかまえていた。 顔良は2人に見えないように建物の影に潜み、不意に飛び出してマシンガンを乱射した。 呉子蘭は真っ先に即死し、王子服はロケット砲を一発放ったもの続いて死んだ。 ロケット弾は顔良には当たらなかったものの、背後の建物に命中し、大きな爆発を起こした。 当然顔良や他周辺の武官にも衝撃がくらい、武官のほとんどは爆発に死に、顔良は背中を焼き焦がし、背骨が不自然に折れ曲がった。 内臓への負担も激しく、顔良は転がり回ったあとに多量の血を吐いた。視界がぼやけ、足に力が入らなかった。大きな爆発音のためか、聴覚を失った。 爆風が止んだ後、武官達は我に返り銃を撃った。顔良は転がりながらそれを回避しようとしたが、何発かが胴体に入り込んだ。血を吐く。 顔良は撃たれながら、残った力でマシンガンを乱射した。大きな反動にまた血を吐く。 しかし辺りは、ほとんどが死んだか逃げ出したか、静寂になった。 すでに顔良は肉体は限界を越えていた。全身が穴だらけになっており、元の火傷など生やさしいものに見える。 ---- 282 名前:第二の侵入者 4/5 投稿日:2006/07/21(金) 00:11:58 死なぬ、曹操、貴様を殺すまで………!! 強靱な肉体がぼろぼろになっても、無限の狂気は健在だった。 狂気をもって、肉体に叱咤する。こんなところで朽ち果てるな。曹操だ。曹操を倒すのだ。 ずるずると、顔良の体は動いていった。殿への階段の段差を利用し、三肢を駆使して立ち上がる。 筋肉がつぶれる音がし、腕からのこり少ない血が噴水のように噴き出した。 曹操……曹操……曹操…… 階段を足の筋肉を破壊しながら登り、入り口の門を開ける。門を開けるのも、限界以上の力を引き出さなくてはならなかった。 ゆっくり、ゆっくりと開く門。中からの、照明の光が外に漏れ出る。やがて、勢いづいた門は、自然と全開まで開いていった。 ―――扉を中心に、弧を描いて何十人もの銃を携えた近衛兵が並んでいた。 そして真っ直ぐ先、はるか段上の上、献帝は微笑を浮かべながら玉座に座っていた。側には女性2人と、武官1人が立っていた。 曹操! いた! 女を側に! 侍らせて! 中央に! 玉座に! 不忠にも! あの豪傑は! 許チョか! いや! 関係ない! 狙いは! 曹操のみ! 食らえ! 死ね! ここまでだ! 曹操! 顔良は引き金に手をかけた。が、次の瞬間には、散らばった幾多の肉の塊へと化していた。 「単独でここまで来れたことを褒めて遣わそう」 献帝は相変わらず微笑みながら、顔良だった塊の数々を見下げていた。 「顔良に威侯と諡を与えよう。次の戦いも頑張るのだぞ」 側にいる董承が、心配そうに言葉をかける。 「奴1人がために、王子服を始めかなりの文武百官が殺されました。 このままでは、次の侵入者があったのでは……」 「それもまた楽しくはないか?」 献帝の悪戯な笑みに、困惑する董承。何を言っておられる? この方は 「し、しかし………」 「まあ、冗談だ。 しかし胡車児や顔良のような、首輪の生存信号も死亡信号も出さないような参加者がいる場合、警備を厳重にした方がいいな」 董承はまだ不安だったが、それ以上追求しても意味がないだろう。なので、次の疑問を口にした。 ---- 283 名前:第二の侵入者 5/5 投稿日:2006/07/21(金) 00:13:24 「なぜ、首輪の機能が停止してしまったのでしょうか?」 この騒動の、唯一にして重大の謎はそれだ。なぜ、まだ二日目にして2人も首輪の機能を止めることができたのか? 「火だ」 ポツリと、献帝が口にした。 「胡車児は洛陽城を出たあと、許攸に遭遇し、火炎放射器で攻撃された。避けたようだが、その時に火が首輪に接触したのだろう。 顔良はというと、これは馬超に手榴弾を投げられたグループの唯一の生き残りだ。相当焼け爛れていたようだし、首輪にも火が当たっていたと見て間違いない」 なんともあっけない結論だった。火だって? 「そんな簡単に……道具制作部の連中は、何を………」 「まあ、そう支障があるわけでもない。自ら禁止区域へ進む奴もそうおらんはずだ。 しかし、そのことに万が一でもこの事に気がついた奴は、こちらとて容赦はせん……」 献帝の顔から笑みが消え、不気味な光が瞳に宿った。 「なあ、伏寿、曹節?」 2人の皇后は、かすかに微笑み、献帝に同意した。 かくして、ようやく侵入者騒動は終止符をうたれた。 【顔良 死亡確認】

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