7-106 運の王様

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254 名前:運の王様 1/5 投稿日:2006/07/19(水) 03:15:39 夜が明けて、二度目の放送を聞いてなお、袁尚と劉禅は林から脱出できずにいた。 というのも、視界が少しでも開けている場所に移動するとそこにはすでに劉諶が待ち構えており、 これはまずいと反対側に回れば、やはりそこにも劉諶が回り込んでいるのである。 「まったくどうなっているんだ。何故奴にこうも我々の位置が知れてしまうんだ!!」 「はあ。でも正確に分かっているわけではないですよ。  もし正確に位置を知る術があるなら、我々はとっくにあの諸葛弩でハリネズミですから」 「なら!! 一体なんだってこうも回り込まれるんだ!!!」 随分イライラが溜まっているのか、袁尚は身を潜めるものにしては少々大きすぎる声で怒鳴る。 劉禅はとにかく落ち着かせようとバナナを一本勧めた。 袁尚はそれに乱暴に噛りつく。一気に3分の1ほどが口の中に消えた。 が、皮ごと食べてしまって非常に苦い顔になる。 「まあまあ落ち着いて。  あれは多分家系的なものでしてね、私たちは並より少々運がいいんですよ。  私の父なんてそれで何度も命拾いしましてね」 「ちょっと待て、私たちだと? あの男はお前の一族なのか?」 「あれ、言ってませんでしたか。あれは不肖の息子です」 さも当然のように、しかもにっこり笑顔でそんなことを言われたものだから、 袁尚は手に持っていた食べかけのバナナを落としてしまい、さらにその後盛大なため息をついた。 つまり何か。自分はちょっと過激な親子喧嘩に巻き込まれただけなのか。 ---- 255 名前:運の王様 2/5 投稿日:2006/07/19(水) 03:16:22 「おい劉禅。お前俺に服従するといったな。  その証明にオトリになってあの男の気を引け!!」 「そんな御無体な。袁尚殿は私に死ねとおっしゃる!!」 「袁尚殿じゃない、袁尚様だ。俺に忠誠を誓うならそのくらいのことをして当然だろう。  だいたい、お前だって運がいいのなら簡単に助かるだろう!!」 「私の運は袁尚様に拾っていただいたことで使い切りましたよ~ぅ」 今度は両者が身を潜めていることを一瞬忘れてしまったため、ありえないほどの大声が林中に響く。 もちろんその声を、劉諶が聞き逃すはずもない。 「見つけたぞ、この売国奴!!!」 一瞬早く我に返った袁尚は、劉禅の手を引き一目散に逃げ出した。 しかし、すでにその姿は劉諶に捉えられている。そして劉諶の諸葛弩の照準もまた、劉禅を捉えていた。 そしてまさに矢が放たれるその瞬間、劉諶が踏み込んだその足元に、袁尚の食べかけたバナナはあった。 体勢が少し崩れる。矢を放った反作用で、さらに少し崩れる。 二つの力のベクトルが劉諶をあらぬ方向へと倒し、 さらに偶然にも倒れた先の劉諶頭がある位置に、まったくちょうどよい大きさの石があった。 当然のように劉諶は頭を強打し、昏倒する。 しかしその姿は、木々のあいまの茂みによって、一見して分からないように隠れてしまった。 ---- 256 名前:運の王様 3/5 投稿日:2006/07/19(水) 03:17:33 ズゴン、という鈍い音に、劉禅はつい足をとめて後ろを振り返った。 そこにあるべき劉諶の姿はない。 それを不思議に思ったのもつかの間、今度は自分を引っ張っていた袁尚の手がすでに放されていることに気づく。 袁尚は、右のふくらはぎに矢を生やして地べたでもがき苦しんでいた。 「おやおや、袁尚様大丈夫ですか?」 「大丈夫じゃない!! 早く、この矢を抜け!!!」 劉禅は言われたとおり矢を引き抜いたが、これでは右足は使い物にならないだろう。 適切な処置を施せばともかく、ここには治療のための道具も技術もない。 さらに不幸なことに、袁尚の左足は矢を受けた拍子に転んだたとき、どうやらひねったようであった。 「これではどうしようもない。とにかく左足は冷やさなければならんな。  おい。俺をおぶって近くの小川なりに連れて行け」 「はあ。まあ、それでもいいんですが…」 「何だ。他に何かいい方法でもあるのか?」 「そうですねぇ。どんな重傷でもたちどころに治してしまうカードでもあればそれが一番なんですが…」 「そんな都合のいいものがあるはずないだろ!!」 劉禅の、まったく事態の深刻さを意にかえさないようなのんびりとした様子に、袁尚は再びいらだちだした。 劉禅はまたなだめなら袁尚の鞄をさぐる。 そして、遠距離攻撃のできる敵相手には不利であり、 逃げの一手を打つならば邪魔であるという理由からしまわれていたモーニングスターを取り出した。 ---- 257 名前:運の王様 4/5 投稿日:2006/07/19(水) 03:18:28 「な、なんだ、劉禅。何の真似だ!!!!」 「足の骨を折った馬って、殺されるんですよ。知ってました?」 「なんっ!!」 「行動の自由の利かない同行者って、どう考えても邪魔ですからねぇ。  それにほら、例の24時間ルールもあるわけですし」 「貴様、俺に服従するといったではないか!!!!!」 「そりゃ、生き残るために担ぎ上げもすれば仰ぐ旗も変えますよ。  何といっても貴方は武器を持っていたし、あ、これのことですよ。私なんてバナナでしたからねぇ。  実際、直接自分の手を汚すのって初めてだから、あんまりやりたくないんですけど、  ここって、運だけで生き残れるほど甘い世界でもなさそうですから」 また劉禅がにっこりと笑う。 袁尚は声にならない悲鳴を上げ、体を引きずって逃げるが、逃げ切れるはずもなく……。 最期に脳裏に見た光景は、誇り高き父か、すでに逝った二人の兄か、あるいは惨めに這いつくばった己の姿か―――。 劉禅は、頭蓋骨を叩き割って四散した血と肉片に眉をひそめる。 その一部は、劉禅の衣服にも付着している。 「参ったな。これじゃ警戒される。小川にでも行って洗い流さないと。  それにしてもこの武器、私には扱いづらいな。せめて献帝を守っていた兵士たちが持っていた武器でもあればいいのに」 その望みは全然「せめて」ではないのだが、それを指摘するものはもういない。 そのまま劉禅は、劉諶がどこに消えたのかを訝しがりながら、その場を去っていった。 ---- 258 名前:運の王様 5/5 投稿日:2006/07/19(水) 03:20:53 劉の姓が受け継いだのは、「運」と「生への執着」 劉禅の幸運は、ただのバナナによって一命を取り留めたこと。 劉諶の悪運は、昏倒しながらその姿が隠れたこと。 袁尚の不運は、そんな劉親子に出くわしてしまったこと。 ≪お坊ちゃんズ≫ →解散 @劉禅【バナナ2本、モーニングスター】 ※ピンユニット化 ※小川を探して服を洗う @劉諶[昏倒]【諸葛弩】 ※茂みに隠れて一見それとは分かりません 【現在地】冀州の林道(ギョウよりも南) 【袁尚 死亡確認】

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