ここは人里から離れた湖のほとり。
そこにはまだ子供のれいむが二匹とまりさが一匹ゆっくりしていました。
「ゆゆっ!むしさんゆっくりしてね!」
「おみずおいしー!」
「のみすぎちゃだめだよ!」
3匹は思い思いにゆっくりしていました。
そんな中、どこからかばさばさと羽音が聞こえます。
「とりさんだああああああ!」
「ゆっくりできなくなるよ!すぐにかくれてね!」
「あそこにかくれるよ!」
れいむたちの親ぐらいの大きさならば鳥も怖くはないのですが、まだ小さいれいむたちには鳥は天敵でした。
すぐに三匹は隠れる場所を探します。ちょうど木穴を見つけた三匹はその中に飛び込みました。
「ゆぅ・・・とりさんはやくどこかにいってね!」
「はやくゆっくりしたいよ!」
「まだわからないからもうすこしかくれていようね!」
三匹は身を寄せ合って恐怖から逃れようとします。
その間にもばさばさという羽音は大きくなっていき、とうとう木の上までやってきました。
どうやら鳥は隠れている木に止まったようです。
「ゆうううう!ゆっくりできない!」
「しずかにしてね!ゆっくりできなくなるよ!」
「ゆっくりしていってね・・・」
三匹は声を潜め鳥の様子を伺います。
すると羽音がまたしたと思うと、木穴の前に降り立ちました。
「ゆゅ?」
ゆっくり達が不思議がるのも無理はありません。
その鳥はゆっくりまりさやれいむにそっくりでした。
後で子供達は親に聞くことになりますが、そのゆっくりはきめぇまるという種類のゆっくりでした。
きめぇまるは先ほどまでれいむとまりさが木の棒で描いた絵を見ているようでした。
「ゆっくりしていってね!」
子供達はきめぇまるを見たことがありませんでした。
しかし、同じゆっくりならゆっくりできると思ったのでしょう。
れいむとまりさは木穴から飛び出してきめぇまるに近づいていきました。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりあそぼうね!」
「ゆっくりできるひと?」
子供達は知らないゆっくりに興味心身です。
しかし、きめぇまるは絵を見たまま動きません。
「ゆ!それはれいむがかいたんだよ!」
「れいむもかいたよ!」
絵を見ていることに気がついた子れいむが自分が描いたと主張します。
それを聞いたきめぇまるはゆっくりにしては素早い動きでれいむの方を向きました。
その動きに驚いた姉れいむですが、すぐに自分の絵を自慢するように頬を膨らませます。
妹も同じように真似た姿は、人がふんぞり返っているみたいでした。
きめぇまるはしばらくれいむ達を見つめた後こう言い放ちます。
「おお、ひどい、ひどい。」
そういいながらまたしてもゆっくりにしては素早い動きで、地面の絵を消し始めました。
驚いたのはれいむたちです。
れいむ達は自信作を消されて怒り、まりさはまだ見てなかったのに消されて怒りました。
「ゆっくりしていってよー!」
そんな掛け声の下、きめぇまるに駆け寄る子ゆっくり達。
「おお、こわい、こわい。」
そんな子ゆっくりにきめぇまるはゆっくりと向き直ります。
「ゆゆっ?なにするき!」
急にゆっくりになった動きに違和感を覚えた子ゆっくりはきめぇまるの目の前で立ち止まります。
そして、
「おお、ゆっくり、ゆっくり。」
叫び声をあげながら首を上下左右、自由自在に振り回し始めました。
「ゆゆゆ!?ゆっくりしていってね!」
「それじゃゆっくりできないよ!」
「ゆっぐりしてええええええ!」
子ゆっくりは目の前で起こったゆっくりじゃない動きにすぐに怯えてしまいました。
それでも何とか体当たりしようと向かっていきますが体当たり寸前に逃げられたり、急に顔が前に来たりと自分の知らない動きに驚くばかりです。
そして体当たりを避けるごとにきめぇまるの揺れは早くなっていきました。
「ゆぐぅ、もっとゆっくりしたいよ・・・」
「もう少しでゆっくりできるからがんばろうね・・・」
「ゆっくりゆっくり」
なんとかきめぇまるをゆっくりさせようと努力した子ゆっくりでしたが、結局一度も触ることなく体力が底をつきました。
「ゆぐぐう、もうやめでええええ!」
「おお、おそいおそい。」
きめぇまるは動かなくなった子ゆっくりの周りを満足するまで動いた後、どこかに飛び去っていきました。
子ゆっくりはしばらくその場で動かずにいましたが、やがてお腹がすいたのか這いずる様に巣に逃げ帰りました。
驚いたのは親ゆっくりです。
「どうしたの!?ゆっくりしていってね!」
「ゆゆ、おがあああざあああん!」
母れいむに頬を摺り寄せ泣き喚く子ゆっくり。
親ゆっくりのまりさとれいむは子ゆっくりが泣き止むのをゆっくり待ちます。
やがてゆっくりと泣き止んだ子ゆっくりはぽつりぽつりと何が起こったのかを話し始めました。
「あのね、おそらから知らないおねーさんがおりてきたの。」
「さいしょはとりかれみりゃかとおもったんだよね!」
「でもちがったの!くろかった!」
親ゆっくりはそのゆっくりの特徴からどんなゆっくりかを考えましたが記憶の中にはありません。
「きっとゆめでもみたんだね!ここはだいじょうぶだからゆっくりしていってね!」
「なにもないところでねるときけんだからつぎからきをつけてね!」
親ゆっくりは見たことも聴いたこともないゆっくりの話を聞いているうちにそれを子ゆっくりが見た夢と思ったようでした。
同じ夢を見たのは何か別の怖いものを見たのだろうと注意するのも忘れません。
「ゆううう!ちがうよ!ほんとにみたんだよ!」
「そうだよすごいうごきだったよ!」
「ゆっくりしんじてね!」
子ゆっくりは尚も食い下がります。
「うるさいよ!うそつきはゆっくりできないよ!」
とうとう親ゆっくりは怒り出してしまいました。
そして子ゆっくりを置いて寝床に行ってしまいました。
「ゆぅ、まりさたちはうそつきじゃないよ・・・」
「おかーさんたちがそういうのならゆめだったのかも・・・」
嘘つき呼ばわりされたまりさは落ち込み、れいむは本当に夢だったのかもと思い始めました。
でも、もし、明日もいればあそこじゃゆっくり出来なくなる。
子ゆっくりはゆっくり出来ていた場所がゆっくり出来なくなることを悲しみましたが、
「ゆ!れいむにいいかんがえがあるよ!」
と、もう一匹の子れいむが自信満々の顔で残りの二匹に耳打ちします。
その作戦にれいむとまりさは顔を輝かせます。
「それならゆっくりできるね!」
踏ん反りかえるれいむを精一杯褒めちぎった子ゆっくり達は眠くなったようです。
明日こそはゆっくりするために子供達も寝床に飛び跳ねていきました。
次の日、子ゆっくりはまた昨日と同じ場所でゆっくりしていました。
「きょうはゆっくりできそうだね!」
そんな願いも届かずまたしても羽音が聞こえてきました。
先ほどの声が聞こえたのか分かりませんが子ゆっくりは昨日と同じように慌てながらも作戦を確認しあいます。
そして隠れ始めますが、昨日と違うことは隠れる場所が木の陰ではなく草むらになったことです。
子ゆっくりがばらばらに草むらに隠れた後、きめぇまるは先ほどまで子ゆっくりのいた場所に着地しました。
地面に何も描かれてないのを確認すると、辺りを見回して子ゆっくりを探し始めます。
子ゆっくりはゆっくり、ゆっくりときめぇまるに近づいていきます。
子れいむの作戦はこうです。
子ゆっくり三匹が草むらにばらばらに隠れます。
そして、3匹できめぇまるに取り付けばゆっくりできなるだろう。
もし、一匹が見つかっても残りの二匹がくっつけば動けないはず。
数の利を使った簡単な作戦ですが、子ゆっくりは絶対に成功すると思い込んでいました。
「ゆ~しょ、ゆ~しょ。」
じりじりと距離をつめていく子ゆっくり。きめぇまるはまだ気づいていないように辺りをきょろきょろ見回しています。
子ゆっくりが作戦可能範囲に入ります。
「「「ゆっくりしていってよー!!!」」」
そう叫ぶとともに三匹はいっせいにきめぇまるに飛び掛りました。目に映るは子ゆっくり。
「「「ゆっ?」」」
次の瞬間、子ゆっくりは3匹は綺麗におでこをぶつけ合いました。
ごろごろと同じ距離を転がります。
「ゆうううう、どおじでえええええ!」
三匹は涙目になりながら何が起こったのか考えます。
確かに、きめぇまるに向かって飛び掛ったのに・・・
「おお、こわいこわい。」
その声に反応して三匹は上を見ます。
太陽に隠れるように黒点が一つ、だんだん大きくなっていきます。
目を凝らしてみるとそれがきめぇまると気づきます。
きめぇまるは三匹が飛び掛ったと同時に空中に飛び上がったのでした。
作戦は失敗に終わりました。きめぇまるはまた体を振り始めます。
「おお、ゆっくりゆっくり」
「ゆっぐりでぎないいいいいい!」
後は昨日と同じです。
今日もくたくたになりながら巣に戻った子ゆっくりは、親にまた相談します。
しかし、ごはんの貯蔵に忙しい親ゆっくりは子ゆっくりの話を聞き流してしまいます。
親に取り合ってもらえない子ゆっくりはとぼとぼと親に声が届かない場所で身を寄せ合いました。
「れいむのさくせんうまくいかなかったね・・・」
「ごめんね・・・」
「れいむがわるいんじゃないよ!ほかのさくせんをかんがえようよ!」
そういって3匹は知恵を絞ってあれこれと作戦を出し合います。
といっても、ゆっくり、ましてや子ゆっくりに体当たり以外の方法が出来るはずもなく、
「ゆううううう、おもいづがないいいいい!」
一匹のれいむが泣き始め、それを残りの二匹が慰めるうちに作戦会議は終わりました。
「なんでゆっくりできないんだろう・・・」
「おなじなかまなのにね・・・」
「みょんもぱちゅりーもちぇんもゆっくりできるのにねー。」
「ありすはちょっとこわいけどね!」
れいむ二匹はきめぇまる以外のゆっくりのことを思い、なぜゆっくりできないのかと不思議な様子でした。
まりさもそう思います。
今まであってきたゆっくりは姿が違えど同じゆっくりでした。
同じように飛び跳ね、同じように食べてゆっくり・・・
「ゆゆっ!」
「どーしたのまりさ?」
「わかったよ、あのおねーさんにはあれがゆっくりなんだよ!」
「??」
子れいむにはまりさが何を言いたいのか分かりません。次の言葉を待ちます。
「まりさたちはあそこでゆっくりしてたでしょ!」
「ゆっくりしてたよ!」
「あのゆっくりもおなじようにゆっくりしてたんだよ!」
子まりさはきめぇまるの体を振る動きこそがゆっくりした状態なのではないと考えたのでした。
「うそだ~!」
「あれはゆっくりじゃないよ!」
子れいむは子まりさの言うことを信じません。
子れいむの思っているゆっくりとまりさの言うゆっくりはまったく別物でしたから。
まりさは続けます。
「でもぱちゅりーはごほんをよんでるときすごいゆっくりできるっていってたよ!」
「いってたね!」「いってたよ!」
「でもまりさたちはそうおもわないでしょ?」
「おもわないよ!」「おもわないね!」
「みょんはくちにぼうをくわえたときがゆっくりできるっていってた!」
「「ゆってた!ゆってた!」」
「ちぇんはしっぽをこするとゆっくりできるっていってた!」
「わかるよー!」「ちぇんみたいだね!」
「ありすはあのゆっくりににてからだすりよせてくる!」
「「ぶるぶる・・・」」
最後のありすの行動を想像して青くなる子れいむですがまりさが何を言いたいのかは理解しました。
ゆっくりはそれぞれの種類特有のゆっくりがあります。
そしてそんなゆっくりをひはんすることはゆっくりの中では嫌われる行動です。
「まりさ、れいむたちわるいやつだったのかな・・・」
「ゆゆぅ・・・」
「れいむたちがわるかったのかも。あしたあやまらないとね!」
子れいむたちは今まで無理やりゆっくりできなくさせていたと勘違いし、謝ることにしたようです。
「まりさ、まりさ!」
「どーしたの、れいむ!」
「あのうごきってゆっくりできるのかな?」
「ゆっくりできるかもね!」
「ゆっくりしたいね!」
ゆっくりできる行動だと判断したゆっくりはそれを真似してみたくなります。
あの動き、どんなにゆっくりできるのかな?と、子れいむも子まりさも自分がする動きを頭の中で描いて見ます。
「あした、あのおねーさんといっしょにゆっくりしようね!」
三匹は明日こそゆっくりできると期待しながら寝床にもぐりこみました。
その次の日、子ゆっくりはきめぇまるが現れるのを今か今かと待っていました。
そしてきめぇまるはやってきます。
「おお、ゆっくり、ゆっくり。」
そして子ゆっくりの前で体を振り始めました。
子ゆっくりはその様子をじっと見ています。
きめぇまるは子ゆっくりの反応がいつもと違うことに気づき、速度を落として子ゆっくりを観察します。
「おお、おかしい、おかしい」
とうとう、きめぇまるは動きを止めました。そこに、
「おねーさん、いままでごめんなさい!」
「「ごめんなさい!!」」
きめぇまるはなぜ謝られるのか不思議でした。
頭をよく振って考えます。
とりあえず、名前を教えてないのに気づき名乗ることにしました。
「まいどおなじみ、きよくただしいきめぇまるでございます。」
「ゆゅ!きめぇまるっていうんだね!ゆっくりおぼえたよ!」
「きめぇまるさんゆっくりできなくさせようとしてごめんね!」
「きめぇまるさんはそれがゆっくりなんだね!れいむたちりかいしたよ!」
名前を覚えた子ゆっくりは今までゆっくりできなくさせようとしたことを謝ります。
きめぇまるはまだなんで謝られているのか分かっていません。
「まりさたちもゆっくりさせてね!」
子ゆっくりの謝る理由を考えていると子まりさと子れいむが頭を振り始めました。
「ゆっくち!ゆっくち!」
「ゆっくりうごくよ!」
きめぇまるは自分の動きを真似されて驚きました。今まで自分の動きを真似しようとしたゆっくりにはあったことがなかったのです。
子ゆっくりはきめぇまるよりかなり遅い速度で体を振り続けます。
きめぇまるは子ゆっくりのゆっくりした動きに次第に腹を立ててきました。
「おお、おそい、おそい。」
そして子ゆっくりの3倍の速さで体を振ります。
「ゆゆっ!ゆっくりーっ!」
子ゆっくりも負けじと速度を上げます。しかし一向に差が縮まりません。
とうとう子ゆっくりの体力がなくなってしまいます。
「づがれだああああああ!」
「ゆっぐりでぎないいいいい!」
その場につぶれたようになる子ゆっくりをきめぇまるはゆっくりと見続けます。
そのうち子ゆっくりは寝てしまいました・・・
「ゆっ!ゆっくりおきたよ!」
やがて一匹の子ゆっくりが目を覚まします。
それにつられて他の子ゆっくりも目を覚ましました。
きめぇまるはいつの間にかいなくなっていました。
「ゆぅぅ、またおこっちゃったのかな・・・」
「ゆぅ・・・」
「ゆゆ!おいしそーなみがあるよ!」
また怒らせたのではないかと心配していた子れいむと子まりさはすぐ近くにいつもは木の上にある実を見つけました。
その実はとてもおいしいのですが木の上にあるので普段は食べれません。
「きっときめぇまるさんがとってくれたんだよ!」
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」
「おとーさん、おかーさんにももっていこうね!」
子ゆっくりは持ち運べる量になるまでその実を食べると、口や帽子に実を入れ巣に持ち帰りました。
親ゆっくりは我が子が持ち帰った食べ物を、おいしそうなものを取ってきたと言うことと自分達で食料を集めたと言う二つの理由で喜びました。
その日は家族でおいしい実を食べ、みんなでゆっくり眠れました。
次の日から子ゆっくりはきめぇまるの動きを真似しようと体を振る練習を始めました。
しかし、まりさもれいむたちも思う様に体を振れません。
まりさのほうがれいむよりは早く動けますが、それでもきめぇまるにはかないませんでした。
いつしか、まりさは一人で時間を見つけて練習するようになりました。
湖の水面を鏡のように使い練習します。
まりさは早く動けない原因を見つけていました。早く動くと帽子がずれてしまうのです。
帽子を動かさないように素早く動くにはどうしたらよいのかと水面を向いて四苦八苦しますがなかなかいい方法が思い浮かびません。
まりさは湖を眺めます。きめぇまるとなにが違うんだろう・・・
そこに一枚の葉っぱが空から降ってきました。
「ゆゆ、はっぱさんみずにおちちゃうよ!こっちにきてね!」
まりさの願いもむなしく、葉っぱは湖に落ちます。
「ゆぅぅぅ、はっぱさんこっちにくればゆっくりできたのにね・・・ゆっ?」
湖に落ちた葉っぱは波に揺られ左右に振られます。まりさはその動きを見て気づきます。
あの葉っぱみたいに帽子を揺らせば落ちないのではないかと。
まりさはすぐにはっぱの動きをイメージして練習を開始します。
左に動くときは帽子を右に傾け、右に動くときは左に傾け・・・
帽子は落ちませんでした。後はきめぇまるに追いつくだけです。
「もっとはっぱさんはやくうごいてね!」
さっきまでゆっくりしていってほしかった葉っぱを今度は急かします。
しかし、葉っぱは自分では動けません。
「ゆううう、ゆっくりはっぱさんをみるには・・・」
まりさは考えます。そして湖に流れ込む川までやってきました。
ここは流れが速く、そのため波もゆっくりしていません。
「はっぱさんゆっくりできなくてごめんね!」
そういって葉っぱを川に流します。葉は川の流れに沿ってジグザグと流れていきました。
それを見ながらまりさは練習します。その姿は修行している武道家のようでした。
れいむはまりさのように理由を見つけられず、困ったときは相談と、親ゆっくりに助言を貰いにいきました。
「おかーさん!ゆっくりおしえてほしいことがあるの!」
「どーしたの!?ゆっくりおしえるよ!」
子れいむは母れいむにゆっくりしたいけど出来ないからどうしたらいいのかと質問しました。
きめぇまるについては信じてもらえないので喋りませんでした。
「ゆゆゆ、ゆっくりできないんだね・・・」
母れいむは困ります。
子れいむは母れいむが思うゆっくりができていたので何がゆっくりできないのだろうかと不思議になりましたが、子供の質問に答えないと親失格です。
母れいむは子れいむ達を見てこういいました。
「ひとりじゃだめでも、きょうりょくしたらできるかもしれないよ!」
親ゆっくりは協力して餌を取ります。
それを子ゆっくりにも学んでほしいと、母れいむはこの前の実を運んだときのように協力すれば何でもできるよといいました。
子れいむはその場で考え出しました。母れいむはその姿を優しく見守ります。
「ゆーん。ゆーん。」
「ゆぅ~ん。」
「かんがえるすがたはそっくりだね!」
「そっくり?」
「そうだよ!れいむのこどもたちはみんなおなじくらいかわいいね!」
そういって母まりさは子れいむの頬をすりすりします。
子れいむはお互い顔を見合わせます。その顔には何かを閃いたという表情が。
「おかーさん、ありがとう!」
「これでゆっくりできるよ!」
子れいむたちは母れいむにお礼を言って外に跳ねていきました。
母ゆっくりはゆっくりと見送ります。
外に出た子れいむは二匹でこそこそと相談を始めました・・・
それから三日後。子ゆっくりは最初の平原にいました。
身を隠してきめぇまるの到着を待ちます。
子れいむも子まりさもお互いの練習成果を知りません。
しかし、ゆっくりできる自信はありました。
そして、
「「「ゆっくりしていってね!」」」
きめぇまるが何か言い出す前にゆっくりしていってねと叫びました。
きめぇまるはその自信がある声に驚きをもって対応しました。
挨拶も終わり、体を振るきめぇまる。
対する子ゆっくりはまりさとれいむがどちらが先に試すか相談していました。
すぐに決まったようですが。
「「まずはれいむだよ!」」
そういってきめぇまるに向かって直線に並びます。
飛び跳ねるタイミングと高さも同じなれいむ達をきめぇまるは一匹のれいむと勘違いしました。
二匹いないのを怪しみましたが、2匹が1匹になったところできめぇまるにはれいむが勝てるとは思えなかったのです。
子れいむたちはゆっくりと体を振り始めました。
前の霊夢を追うように後ろの霊夢も体を振り始めます。
きめぇまるもそれに乗って体を降り始めました。
きめぇまるはれいむの振るスピードに驚きました。
その速さはれいむの分身を生み出しています。
まるで二匹いるようです。
きめぇまるも負けじと体を振るスピードを上げますが分身が出るほどじゃありません。
「おのれ、おのれ、おのれ。」
れいむに負けたとあってはきめぇまるのプライドが許しません。
「「ふふ、れいむたちのすぴーどについてこれないね!」」
もっとはやく、ハリケーンのように体を振るきめぇまる。
れいむはそれを見ても余裕そうに体を振ります。
憎たらしい顔できめぇまるの怒りが有頂天になるころ、きめぇまるはれいむが一匹になっていることに気づきます。
そういえば、先ほどのれいむはれいむたちと言っていた・・・
きめぇまるはれいむの横に素早く回りこみます。
「「ゆゆっ!よこからみないでね!」」
そういうことか。きめぇまるは先ほどまでの怒りが無くなって行くのを感じました。
二匹でだましたのには腹が立ちましたが、元から一対一とはいってなかったのです。
ルールの隙を突くのは常套手段ですし、れいむたちも精一杯考えて思いつき努力したことが先ほどの動きから分かりました。
幾分余裕を取り戻したきめぇまるは、
「おお、ひきょう、ひきょう。」
そう言ってれいむ二匹に体当たりします。二匹のれいむは転がって石に頭をぶつけてクラクラしています。
「ゆ~、がんばってかんがえたのにいいいいい!」
「ゆわ゙あ゙あ゙ああああああん!」
子れいむ二匹はその場で泣き出します。きめぇまるは残る子まりさを睨みました。
こっちは一匹なのに自信満々です。
所々擦り切れた皮から、努力のあとも伺えます。
「つぎはまりさのばんだよ!」
「おお、たのしみ、たのしみ。」
久しぶりに楽しめそうな相手を睨みながらきめぇまるの心は喜びに満ちていました。
まりさは、ゆっくりと横に伸び、上に伸びています。
準備運動のつもりでしょうか。
やがて、それも終わると、まりさはきめぇまると向き合いました。
「ゆくぞっ!」
まりさは体を振ります。それはこの前までのまりさからは考えれないような速度です。
きめぇまるも体を振り始めます。
二匹はほぼ同じ速度で体を振り続けます。
固唾を呑む子れいむ。
きめぇまるはまりさがここまでやるとは思っていなかったので焦りました。
大きい帽子が邪魔になるだろうと思っていたのです。
しかし、まりさは上手く帽子を動かしてバランスを取っています。
さらに帽子の移動で重心さえも動かして速度を上げていました。
体を振り続ける二匹。息を呑む二匹。
勝負をかけたのはきめぇまるでした。
残りの体力を使ってギアを上げていきます。
「おお、やりおる、やりおる、」
「ゆゆゆ・・・」
だんだんとまりさが遅れてきます。
「まりさがんばって!」
「ふぁいとー!」
応援する子れいむ。
まりさは修行のことを思い出していました。
三日間川を流れる葉を見て練習した日々・・・
激流に流される葉はこんな揺れ方ではありません。
まりさは激流を流れる葉となりました。
「はああああああああっ!」
「おお・・・!」
きめぇまるに追いつくまりさ。
決着はすぐそこです。
「まけぬ、まけぬ、まけぬ!」
「げきりゅうにみをまかせどうかする!」
二匹の意地がぶつかり合います。
命運を分けたのは一陣の風でした。
「ゆゆっ!」
まりさの帽子が風に煽られ、まりさはばらんすを崩しました。
帽子を落とさないように止まろうとするまりさ。
しかし、ゆっくりとは思えない速さで動かしていた体を急に止めることは難しく、
まりさは顔を地面に強く打ち付けました。
「ゆぎゅっ!」
気を失う前に見えた光景はきめぇまるの驚く顔でした。
「ゆぅ~ん。」
「ゆゆ!まりさきがついたのね!」
「おねーさんまりさがきがついたよ!」
まりさが目を覚ましたとき、近くには子れいむがいました。
気絶した後木陰に運んで手当てしてくれていたようです。
「ゆ、ゆっくりしていってね。」
「ゆっくりしていってね!」
「まりさもゆっくりしていってね!」
ゆっくり特有の挨拶をして元気であることを伝えます。
「おお、よかった、よかった。」
「ゆゆっ!」
いつもと違う声に驚く子まりさ。
しかし、きめぇまるをみると子まりさは先ほどまで勝負をしていたことを思い出しました。
「ゆぅ、まけちゃった・・・」
風のせいとはいえ負けは負けです。
子まりさはしょぼんと俯いてしましました。
子れいむ達が困っているときめぇまるが子まりさに近づきこう言います。
「おお、すごかった、すごかった。」
親以外に褒められたことのなかった子まりさは、うれしいのか恥ずかしいのかよく分からない表情でになってしまいます。
「ゆゆゆ・・・ありがと!」
どうやら嬉しさが勝った子まりさはきめぇまるに擦り寄ります。
子れいむも一緒にきめぇまるの横できめぇまるが取ってくれた果物を齧り始めます。
きめぇまるは子まりさと子れいむを吹き飛ばさないように子ゆっくりを見つめていました。
4匹はとてもゆっくりとしていました。
「どお゙じでゆ゙っぐり゙じな゙い゙の゜おおおおおおおお!」
「ゆ゙っぐり゙じでね゙!!」
4匹がゆっくりできた日から親ゆっくりのゆっくりできない生活は始まりました。
あの後巣に戻ってきた子ゆっくりは親ゆっくりに練習の成果を見せます。
しかし、子ゆっくりほどの順応性がない親ゆっくりには激しく体を振る動きは本当に苦痛でした。
きめぇまるの動きをゆっくりと認識した子ゆっくりは巣でも体を振るようになっていました。
それをみるたび、親ゆっくりはゆっくりできず、ストレスは溜まるばかりです。
親ゆっくりがゆっくりできるのは子ゆっくりが寝てから自分達が寝るまでの間と、きめぇまるのところに遊びに行ったわずかな間だけです。
雨の日には子供達はずっと家にいるので親ゆっくりは違う意味で水を怖がるようになってしまいました。
親ゆっくりのゆっくりできるわずかな時間に親ゆっくりはゆっくりし、なぜこのような事になったのかと悲しみました。
「どーして子どもたちはゆっくりできないんだろうね・・・」
「れいむたちのそだてかたがわるかったのかな・・・」
何度も何度も答えの出ない相談を繰り返す親ゆっくり。
きめぇまるを否定した親ゆっくりには原因を知ることはありません。
結局答えを出せないでいる間に子ゆっくりが帰ってきて苦しむ時間が始まるのです。
親ゆっくりは子ゆっくりが結婚して巣立つまで苦しみ続けることになるでしょう。
そんな親の苦しみも知らない子ゆっくりは元気に湖にはねて行きます。
あれから、湖に来るのはきめぇまるが先になりました。
子ゆっくりは平原に着くときめぇまるを探します。
お腹が空くまで探しても見つからなければきめぇまるの勝ち、見つければ子ゆっくりの勝ちです。
お腹が空いた後はきめぇまるが取った食べ物を食べたり、4匹で食べ物をとったりしてゆっくりしていました。
ある日はきめぇまるのように体を振り、またある日は木陰で寄り添いながらゆっくりする。
4匹のゆっくりはそうやってこれからもゆっくりしていくのでした。
後書き
- きめぇまるの喋り方が分からないからすごい適当になってしまった。
- スレと感想フォームで感想と誤字指摘してくれた方ありがとうございました。
自分が書いたのに感想つくと思ってなかったのですごい嬉しいです。
最終更新:2008年09月14日 08:50