ゆっくりいじめ系706 ある復讐の結末(中)


※これは「ある復讐の結末(前)」の続きになります




目の前で復讐を横取りされた。
餡子脳の処理が追いつかない。
どう反応すればよいのかも分からない。
呆然とするゆっくりれいむより先に我を取り戻したのか、だぜまりさが興奮した声で命令した。

「れいむ! あのふらんのあとをおうんだぜ!」
「ゆっ!?」

その内容でなんとか我を取り戻した。
なんてことを言うのだ、こいつは。
あのクイーンありすをいとも簡単に殺したふらんの後を追えだと?

「ゆゆゆっ!! あんなふらんとたたかったらしんじゃうよ!」
「だれもたたかえなんていってないんだぜ! すまでついていくだけでいいんだぜ! 
 くいーんありすをころしたやつはただじゃおかないんだぜ!」

つまり、尾行してやつの住処を暴け、と。
暴いた後は群れ総勢で報復をする。そういうことか。
しかしクイーンありすが死んだ今、れいむが言うことを聞く理由はない。

だが、ここで逆らったらどうなるか。あのふらんの仲間として殺されるかもしれない。
れいむとしてはクイーンありすを殺せれば死んでもいいと思っていた。
しかし、思ってはいても、『生きてもっとゆっくりしたい』という本能が、突然の出来事で錯乱状態にあったれいむを行動させた。
ふらんの後を追ったのである。

「まりさはこのことをどすまりさにつたえにいくんだぜ!」

だぜまりさはれいむにそう言うと、うーぱっくに乗り込んだ。
だぜまりさの命令に従いうーぱっく達は飛翔する。
だぜまりさ、眠っているゆっくりれいむ、ゆっくりまりさを乗せたうーぱっく三匹は巣へと向かって飛んでいった。








あれだけのスピードを出すふらんだから、簡単に見失うかと思ったが、そうでもなかった。
食後で体が重くなったのか、狩りの時じゃないからなのか、非常にゆったりとした速度でふよふよと飛んでいたためれいむでも追うことができた。
ふらんはれいむに気づいていないようである。

木々が生い茂る森の中を進んでいく。
ふらんはすいすいと木々の間の縫って飛んでいる。ゆっくりれみりゃとは大違いだ。
れいむは追っているうちに徐々に錯乱状態から回復した。
このまま行方をくらませてもいいんじゃないだろうか、と考えた。
だがすぐにその考えを振るう。ここで行方をくらませたら間違いなくふらんの仲間と思われる。
そうすればドゲスまりさは絶対にれいむを許さないだろう。

ドゲスまりさの群れは大きい。ゆっくりが生きている場所の七割を掌握している。
奴らに見つからずに生きていくことは不可能だ。すぐに見つかって殺される。
クイーンありすの殺害が思わぬ形で実現された今、れいむの中に残っているものは何もない。
何もないから、本能が生きろと叫んでいる。
今や復讐を決意していた時より生きたいと思っていた。

やがてふらんが木々を抜けた。
れいむは見晴らしのよい場所に出て見つかるのを防ぐため、木の陰に隠れてふらんの様子を窺うことにした。

「ゆっ?」

木々を抜けてふらんが向かう先には、洋風の家があった。
人間の家だ。
れいむはこっちの方向へは来たことがないから知らなかった。不可侵条約のため人里の方へは来たことが無かったからだ。
その家は人里からは離れているが、ドゲスまりさの群れの本拠地があるところから見れば人里寄りである。

まさかあの家が……。
そう思っていると、本当にふらんはその家に向かっているようだった。

「う~~」

と、ふらんがドンドン扉を叩く。
家の中でバタバタと音がした。
数秒の後に扉が内側から開かれ、人間の若い男が姿を現した。

「やぁ、ふらん。お帰り~」

笑顔でふらんを出迎える青年。

「う~、ただいま~」

ニコニコと微笑む青年の脇を通り過ぎ、家の中へと入っていくふらん。
青年はふらんが家の中に入ったのを確認すると、扉を閉めた。
間違いない。あのふらんは人間の飼いゆっくりだ。

つまりは、どういうことか。
人間の所有物がゆっくりを殺した。つまり人間がゆっくりを殺したことと同じ。
すなわち、不可侵協定を破ったこととなる。
この事がドゲスまりさ達に知れたらどうなるか。
決まっている。ドゲスまりさはここぞとばかりに人里へ攻め入るに違いない。

先代ドスまりさが人間達と結んだ不可侵協定を、ドゲスまりさは一応は守っていた。
いたが、ドゲスまりさを含む多勢のゆっくり達は、隙あらば協定を破棄し人里を襲おうと思っている。
人間が先に協定を破ったと分かったら、ドゲスまりさは大義名分を得る。
「そちらが先に破ったのだから」と嬉々として攻め込むに違いない。

そうなったら地獄絵図だ。
人間達も当然反抗する。いくらドゲスまりさが大の人間の大人より強いといっても、大人数を相手にすれば殺される。
だがドゲスまりさもドスパークを持っているうえ、群れのゆっくりは数が多く血気盛んだ。
人里側もただならぬ被害を被ることになるだろう。

それだけじゃない。れいむは今やドゲスまりさの群れの一員だ。自分も殺されてしまう恐れがある。
ここで寝返って人間側についたら?
いや、やつらは裏切り者を絶対に許さない。真っ先に自分を殺しにかかる。

どうしよう、どうしようと悩むゆっくりれいむ。
いっそふらんが人間の飼いゆっくりじゃなければいいのに、と思った。
思って、閃く。
そうだ、まだ家の中に入っただけで飼いゆっくりと決まったわけじゃない。
ただ人間と仲の良い野良かもしれない。人間の家の庭に居つく野良猫だって居ると聞く。
そうだ、それを確認しなければと。

それは問題を先延ばしにしているだけだったが、先ほどからの突然の事態の連続でれいむはそんなこと考える余裕も無かった。
気づいたらふらんが入った人間の家の前に居た。

「ゆっ~、ごめんくださ~い」

言った。
言ってから、気づいた。
訪問する理由がない。
素直にふらんを追ってきたと言うわけにはいかない。
人間側にもそっちが不可侵協定を破ったことを気づかれるわけにはいかない。
じゃあなんでこの家に来たのか、ということになる。

は~い、と中から声がする。
どうするどうする。れいむは焦るがいい答えが出てこない。
どう言えば怪しまれない。
答えが出ぬまま、扉が開かれた。

「はいはいっ、と。……おや? ゆっくりれいむじゃないか。どうしたんだい?」
「ゆっ、ゆ~……ゆっ~~」

頭がゴチャゴチャだ。ゆっくりの餡子脳じゃいい答えが出てこない。
考えても考えても答えは無い。
だから、本能に従った。

「ゆっ! おにいさん、おなかすいたよ! おかしちょうだい!」











言ってからその理由はないだろう、と思ったが、驚くことに青年は快くれいむを中に招きいれ、お菓子をくれた。
出されたみたらし団子を、ゆっくりれいむは机の上でゆっくりと味わいながら食している。

「む~しゃ、むしゃ~、しあわせ~~」

人間の食べ物を食べたことがないれいむにとって、それは天にも昇る美味しさだった。
あまりの美味しさに嬉し涙が出るほどだ。

「気に入ってもらえたのなら、何よりだよ」

青年は椅子に座りながらニコニコと団子を食べるれいむを見守りながら、自分も串にささったみたらし団子を食べている。

「ゆっ、おにいさんありがとう!」

心の底から感謝の言葉を言う。
そこで、思い出した。自分は何のためにここに来たのか。そして、ここには何がいるのかを。
視線を青年の後ろに向ける。
青年の背後では、ゆっくりふらんがベッドに座ってうとうととしていた。
れいむの視線に気づいたのか、青年が優しく口を開いた。

「あぁ、怖がらなくて大丈夫だよ。ふらんにはゆっくりを襲わないよう言いつけてあるから」

さっきクイーンありすを襲ったじゃないか、とは言わなかった。
青年の前では襲わず外では襲っているのか、と思った。

「ゆっ、あのふらんおにいさんといっしょにすんでるの?」
「そうだよ。僕はゆっくりが大好きなんだ。人はぼくを『愛でお兄さん』とも呼んでるね」

朗らかに笑いかける青年の言葉に、れいむは期待を裏切られた気分になった。
もしかしたら、と思ったがやはりふらんは人間の飼いゆっくりだった。
隠し通せるだろうか。ふらんがクイーンありすを襲った事実を。
無理だ。たとえ人間側が重く見て無くても、ゆっくりにとっては大事件だ。
少なからず他のゆっくりによってクイーンありすが死んだことが人間側に露見する。
その時、ふらんが襲ったことが分かったら?
そのことを、れいむが黙っていたと知れたら?

言っても言わなくても自分にとっては不利にしかならない。
どうしようもない。
何かこの状況を打破する手は無いかと家の中を見渡す。当然そんなものは無いのだが、あるものに目が留まった。
人間だ。愛でお兄さんと同じ年ぐらいに見える男だ。家の隅で椅子に座ってじっとしている。
その眼光は鋭く、恐怖を感じる。

「ゆっ、ゆっ~?」
「? あぁ、彼かい。気にしなくていいよ。僕の知り合いさ」

愛でお兄さんは怖がらせないようにれいむに優しく言った。
だが、その鋭い眼光はれいむを見ている。怖い。
何がそこまで怖がらせるのか分からないが、れいむは本能のところで恐怖を感じていた。











ドゲスまりさの群れの本拠地である巣に、一匹のまりさが慌てて戻ってきた。
ゆっくりれいむの共にいただぜまりさだ。
うーぱっくに乗っていた方が速いのだが、自分の足で走れないのがもどかしいのか地面に近くなったところでうーぱっくから飛び降りた。
そのままだぜまりさはドゲスまりさの所へ向かって全力で走る。その後ろの眠ったれいむとまりさを乗せたうーぱっくがついていく。
周りのゆっくりが何事かとだぜまりさを見るが、だぜまりさはそんな視線も撥ね退けて一目散に巣の奥へと向かっていった。

「どすまりさ! たいへんなんだぜ!」

巣の最奥にドスまりさとクイーンありすの寝床がある。
いつもドスまりさとクイーンありすはそこでドッシリ構えているのだ。

『そんなにあわててどうしたんだぜ』

ニメートルを越す巨体から遠雷のような重く低い声が響く。
だぜまりさはその威圧に少しのけぞるが、それどころではないと慌てて報告する。

「く、くいーんが! くいーんありすがころされたんだぜ!」
『ゆゆっ!? それはほんとうなのかだぜ?』
「ほんとうなんだぜ! ふらんがひきょうにもふいうちでくいーんをころしたんだぜ!」
『な、なんだとぉぉぉ!!!!!!!!』

ドゲスまりさの怒声が巣中に響き渡る。
間近にいただぜまりさはもちろん、寝床の外にいたゆっくり達もそのあまりの大音量に身を竦ませた。

「あ、あんしんするんだぜ! れいむにふらんのあとをおわせたから、もうすぐつかまるんだぜ!」
『ゆ゛ぅぅぅぅぅぅ!!! さっさとそのふらんをここにつれてくるんだぜ! どすまりさがじきじきにころしてやるんだぜ!』
「わ、わかったんだぜ!!!」

あまりのドゲスまりさの怒りに恐怖を覚え、だぜまりさは慌てて寝床を飛び出し、まわりのゆっくり達にクイーンありすが死んだ旨と、ふらんをここに連れてくるよう命令を下していく。
だぜまりさに付いてきたうーぱっくは、どうしてよいか分からず、今回の仕事で飛び疲れたのかそのまま眠ってしまった。ドスまりさも特に何も言わなかった。うーぱっくに直接的な戦闘力はあまり無いし、その二匹のうーぱっくは昨日から働かせ詰めだったからだ。

巣の中は騒然となった。
皆一丸となってだぜまりさの命令に従い出立の準備を整える。
そこへ一匹のうーぱっくが飛んできた。
それはだぜまりさが巣に戻る際、空中ですれ違ったうーぱっくで、れいむの後を追ってどこへ向かったのか知らせろと命じたものだ。

うーぱっくの知らせによりふらんが人間の飼いゆっくりであることが判明した。
この事に普段から人間への反抗心を持っているゆっくり達は憤慨し、一様に敵意をみなぎらせる。
ドゲスまりさを除く群れの八割のゆっくりが人間の家へ攻め込むことになった。
ふらんを飼う人間を叩きのめし、ふらんをドゲスまりさの前にひったて、その後人間を殲滅する。

総勢四桁にのぼるゆっくりの群れが、怒りと殺意をもって進軍していく。
向かうは、愛でお兄さんの人間の家。
全面戦争に発展するのは、時間の問題に思われた。





──────────
あとがきのようなもの

書きかけの中篇もさっさと書きあげました
スレで話題になってましたが、自分は研究所の人ではありません
混乱させてすみません。

自分はこれまで名乗ってませんでしたが、この作品を機に「キノコ馬」と名乗ることにします。
後編は明日以降になるかもしれません


これまでに書いたもの

ゆっくり合戦
ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2~以下無限ループ~
二つの計画
ある復讐の結末(前)




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年09月14日 08:06
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。