ゆっくりいじめ系561 俺とゆっくり2(終編)


さて。
小一時間ほど休憩したところで、俺はゆっくり魔理沙へのお仕置きを再開することにした。
残る赤ちゃんゆっくり霊夢は四匹。
赤ちゃんゆっくりアリスを喰らって空腹感を満足させた姉妹たちは、家族が殺されたにも関わらずに箱の真ん中でのんびりと昼寝をしていた。
やれやれ、自分たちの立場が分かっているのかね?
ゆっくり魔理沙は相変わらず大きさに合わない小さな箱に圧縮されて息苦しそうにしながら、殺された姉妹のことを思い出しているのか、現在の状況を振り返っているのか、ゆぐゆぐと嗚咽を洩らしていた。
その表情、たまらん。
俺の愛するゆっくり霊夢は猿轡を噛まされながら沈んでいる様子だった。
もうちょっとだけ我慢してほしい。
すぐ終わるからさ。
「おーい、起きろー」
俺は姉妹の箱を両手で持ち、がたがた揺らした。
赤ちゃんゆっくり霊夢たちは驚いて跳ね起き、混乱した頭で四方八方に飛び回る。
「ゆっ、じしんだよ!?」
「ゆゆゆ、すごいゆれてるよ!」
「ゆっくりできないよぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆっくりさせてえええええぇぇぇ!!!」
ああっいい! いいよその表情! 悲鳴! ゾクゾクする!
俺は悦に浸りながら振動を止め、ゆーゆー泣き出した姉妹たちににっこりと笑いかけた。
「やぁ、起きたかい?」
「ゆっ、おにいさん!?」
「いまのはおにいさんがやったの!?」
「れいむたちのおひるねのじゃましないでね!」
「おにいさんとはゆっくりできないよ!」
相変わらず自分たちの立場を理解していない上から目線。
こいつらにもう少し知能があれば、第二のペットにしてやるのに……
とりあえず怒りの矛先が俺に向けられるのは何となく申し訳ない気分になってしまうので、責任を転嫁させてもらうことにしよう。
「悪いね。君たちのお母さんに、君たちをゆっくりさせるなと頼まれたんでね」
「ゆっ!?」
姉妹たちが母親を見る。
ゆっくり魔理沙は寝耳に水の衝撃発言に呆気に取られて反応が遅れる。
そりゃそうだろう。いきなり自分の名を出され、しかも事実無根の罪を被せられたのだから。
いやまぁ、事実無根の罪を被せるのは今に始まったことではないけど。
当然のように、ゆっくり魔理沙は否定の言葉を口にしようとする。
「うそだよ! まりさはそんなこと言わないよ!」
「って、言ってるけど、信じる?」
普通のゆっくり家族なら、母親を信じ、俺をなじる。
だが、この家族は既に普通の家族ではない。
俺がそうした。
「うそいってるのはおかあさんのほうだよ!」
「れいむたちをゆっくりさせないなんてひどいおやだね!」
「もうおやじゃないよ! おねえちゃんたちをころしたわるいゆっくりだよ!」
「わるいゆっくりはゆっくりしね!」
「「「ゆっくりしね!! ゆっくりしね!!!」」」
もう何度目になるか分からない、ゆっくりしねコール。
憤怒と憎悪が込められたそれは、本来決して母親に向けられるべきものではない。
しかしこの赤ちゃんゆっくりたちにとって、目の前のゆっくり魔理沙が既に母親でもなんでもなかった。
姉妹を見殺し。
食事を独り占め。
昼寝すら邪魔をする。
果たして、こんな自分たちをゆっくりさせないゆっくりが存在していいのだろうか。
否。
母と呼んだ存在はもう記憶の彼方に抹消した。
目の前にいるのは『敵』だ。
自分たちのゆっくりを脅かす敵なのだ。
――なんと素晴らしい、明後日の方向に捻じ曲がってしまった的外れの怒りか!
俺は感動の涙と笑いが同時に来てしまい、思わず顔を背けてしまった。
こいつら面白すぎる。
「ゆっくりしね!」
「ゆっくりせずにしね!」
「おにいさん、あのまりさをころしてよ!」
「そうだよ! れいむたちがゆっくりできるようにまりさをころして!!!」
おおぅ、とうとう俺にまでお願いし始めた。
いかなる手段を用いても、目の前に鎮座して姉妹たちをいじめては喜んでいる(そう赤ちゃんゆっくりたちには見えている)ゆっくり魔理沙を排除したいのだろう。
で。
その対象、極めて冤罪(いや罪はあるか)を多くかけられているゆっくり魔理沙はというと、
「な゛んでぞんな゛ごどい゛う゛の゛おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
やっぱり咽び泣いていた。
休憩を挟んだおかげで、体力や気力は少し持ち直したらしい。廃人……いや廃ゆっくりにはまだならずに済みそうだ。
いいねいいねー。
泣くゆっくりはやっぱり可愛いな!
涙を流して必死な表情のゆっくりだけを集めた家に住めたら俺死んでもいい。
管理が大変なんで自分ではやらないけどさ。
これでも現実は見ているつもりである。
「では、準備があるので少々お待ちを」
俺は牙を剥いて(比喩)ゆっくり魔理沙を威嚇している姉妹たちを置いて一旦外に出た。
太陽はまだ昇ったばかりで、気温はまだまだ涼しいとは言い難いが、それでも日中の熱気に比べれば大分緩やかだ。
なんか濃密な時間を過ごしたせいで、もう昼間になってた気がしていたんだが……まだ八時といったところか。
俺は加工所で購入した二つの箱のうち、赤ちゃんゆっくりアリスが入っていたほうではないもう一つの大きな箱を手に取った。
大きいといってもサッカーボールが収納出来る程度の大きさである。
木造の箱は中身が暴れているせいか、ごとごと揺れていた。
活きがいいな、これなら期待出来そうだ。
俺は箱を持って家に戻ると、わざと音を立てて床に箱を置いた。
予想通り、好奇心旺盛な赤ちゃんゆっくり霊夢たちが先程までの怒りをすぐに消し、興味津々に眺めだす。
「ゆっ、なにそれ?」
「ゆっくりできるの?」
「ゆっくりしていってね!」
うむ、ではご期待に添えようじゃないか。
俺は全員の注目が集まっていることを確認すると、勢いよく箱の蓋を開いた。
途端、

「うー!」

中からゆっくりれみりゃが飛び出し、家の中を羽ばたきだした。
赤ちゃんだったゆっくりアリスとは違い、こちらはちゃんと成人(成ゆっくり?)したサイズである。
無論、赤ちゃんゆっくり霊夢など一口で食い殺してしまうだろう。
突然の捕食種の登場に、赤ちゃんゆっくりたちは目に見えて怯えだし、固まってぶるぶる震えだした。
「ゆ、ゆーっ!!?」
「れ、れみりゃだ、こわいよー!」
「ゆっくりできないよ、たすけてーっ!!!」
「れいむたちはおいしくないよぉぉぉ!!?」
ゆーゆー泣き出す姉妹たち。
くはっ、萌え狂う!
っと、鼻血を出している場合ではない。
「れ、れみりゃはあっち行ってね! まりさたちに近付かないでね!」
ゆっくり魔理沙は身動き出来ないながらも、必死にれみりゃを追っ払おうと睨みつけている。
ゆっくりれみりゃを怖がるのは何も赤ちゃんだけではないからな。
俺のマイスウィートラブリーエンジェル・ゆっくり霊夢も怯えて固まってしまった。
ああごめんよ、我慢してね。
俺はゆっくりれみりゃが入っていた箱の底からスプレー型の小瓶を取り出すと、ゆっくり霊夢の箱に小瓶の中身をしゅっと吹きかけた。
「う、うぁー!?」
卑しくもこの中で一番丸々太っていて美味しそうなゆっくり霊夢の周囲を旋回していたゆっくりれみりゃは、霧状の粉末がゆっくり霊夢の箱に飛び散るのと同時に慌てて離れだした。
あぅ、泣き顔のれみりゃもかわええのぉ。
でも胴体付きは駄目だ。流石の俺もあれだけは可愛がれねぇ。
紅魔館の周囲にはあの豚どもがうようよ生息してるのか……あまり想像したくない光景だな。
そういえば咲夜さんも駆除が追いつかないって俺に愚痴を洩らしていたな……って、今はそんなことどうでもいいか。
「えー、注目。このスプレーはゆっくりれみりゃが嫌がる香りを吹き付ける優れものです。これがあればゆっくりれみりゃには襲われません」
「ゆっ!? じゃあはやくれいむたちにちょうだい!」
「ゆっくりしないでいそいでかけてね!」
スプレーの説明をすると案の定、助かりたい一心の赤ちゃんゆっくりたちが騒ぎ出す。
俺はそれを無視して、ゆっくり魔理沙を入れた箱にスプレーを吹きかけた。
「あ、あかちゃんたちも助けてあげてね!」
ゆっくり魔理沙は子供に責められてボロボロになりながらも、それでも子供たちを助けてやってくれと哀願してくる。
うーん、ゆっくり魔理沙にしているのが勿体無いくらい家族思いのやつだ。
二週間前、仲間が殺されたのをケロっと忘れたゆっくりと同一人物とは思えんぞ。
まぁ、箱の中にいる限りスプレーがあろうとなかろうと助かるって分かってない辺りが、ゆっくりのゆっくりたる所以なのかもしれないが。
ああでも香りが付けばゆっくりれみりゃが近寄らなくなるので、その分心労は減るかもな。
「さて、最後はこれだな」
俺は姉妹たちの箱にスプレーを吹きかけた。
途端、安心したようで赤ちゃんゆっくり霊夢たちは大はしゃぎする。
「ゆー♪ これでもうあんしんだね!」
「れみりゃをこわがらなくてすむね!」
「やーいやーい、れみりゃのばーか!」
中にはゆっくりれみりゃを小馬鹿にした顔で貶すゆっくりまで出る始末。
ゆっくりれみりゃは悔しそうに、だけど近づけないのでうーうー遠くから唸っていた。
このうーうーってやつ可愛い。
「とりあえず、これで箱は全て安全地帯となったわけですが」
自分自身にもスプレーを吹きかけ、俺は姉妹たちの箱の前に立つ。
「でも、君たちにスプレーが直接かかったわけじゃないから、箱の外に出ると安全ではなくなるわけです」
「……ゆ?」
「そ・こ・で」
俺は邪悪……もとい天使の微笑みを浮かべて、
「君たちのうち、三匹をそこから出してあげます」
「ゆ、ゆーっ!?」
赤ちゃんゆっくりたちはにわかに騒ぎ出した。
「や、やめてね! れいむたちをここからださないでね!」
「え、なんで? あれだけ出たいって言ってたじゃないか、良かったね!」
「よ、よくないよーっ!?」
「そとにでたられみりゃにたべられちゃうよ!」
「おにいさん、れいむたちをそとにだすまえにれみりゃをゆっくりなんとかしてね!」
「ごめんね! お兄さんじゃゆっくりれみりゃには勝てないんだよ!」
激嘘。
「でも大丈夫! 君たちにはチャンスがあるよ!」
「な、なに!?」
「ゆっくりしないでいってね!」
「今からゆっくり魔理沙に問題を出します。君たちがゆっくりれみりゃに捕まる前に回答することが出来たら、君たちを解放してあげるよ!」
つまりは今までと同じである。
当然、
「ゆっ、それはだめだよ!」
「おかあさんはれいむたちをころそうとしてるもん!」
「おかあさんじゃゆっくりできないよ!」
「おかあさんはころしていいかられいむたちをたすけてね!」
反発が起こる。
今まで助ける機会がありながらも問題に答えず、姉妹たちを見殺しにしてきた母。
今更そんなゆっくりを信用出来るはずがない。
「ぞん゛な゛ごどな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉ!!! ま゛り゛ざはぢゃんどれ゛い゛むだぢを゛だずげる゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
そして、こちらは信頼を裏切り続けるゆっくり魔理沙。
答えられるはずもない無理難題を押し付けられ、逆恨みを買いまくっているあまりにもゆっくり出来ない哀れな存在。
激しく嗜虐心をそそります、はい。
ぶっちゃけ、そろそろ子供たちを見捨ててもいいと思うんだ。
愛しているのに、その愛が全然、まったく、これっぽっちも伝わらない悲しさ。
同情を買う?
いいえ、滑稽です。
「残念ながらルールの変更は認められません。精々、ゆっくり魔理沙が回答に辿り着けることを祈っていてください」
「そんなのしんじられないよ!」
「どうせおかあさんじゃこたえられないよ!」
赤ちゃんゆっくり霊夢たちが発言するたびにゆっくり魔理沙の心がザクザク傷付けられていく。
最っ高!
「何を言っても駄目でーす。それではゲーム、スタート!」
「「「「ゆ、ゆっくりしていってよー!?」」」
「お、おねえちゃーん!!!」
俺は四匹のうち、末っ子だけを残して、三匹を外に出した。
するとすぐに、空腹でイライラと部屋中を飛び回っていたゆっくりれみりゃが、歓喜の表情で突撃してきた。
「ぎゃおー! たーべちゃうぞー♪」
「や、やだぁー!!!」
「ゆっくりやめてね!!!」
「ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛お゛お゛おぉぉぉぉぉ!!!」
赤ちゃんゆっくりたちは涙目ながらも生存本能からか高速で散開。勢いを止められず、ゆっくりれみりゃは先程まで三匹がいた床に激突する。
「う、うわぁー!!!」
泣き出すゆっくりれみりゃ。
か、かわえぇ!
っと、見とれている場合ではない。
このままでは不公平だしな。
俺はゆっくり魔理沙に向き直った。
「では問題です」
「は、はやく出してね!」
「いやいや、遠慮すんな。いつも通りゆっくり答えろよ」
「ゆっくりできないよ!!! はやくもんだい出してね!!!」
俺の後ろでゆっくりれみりゃに捕獲されないよう、必死に逃げ惑う子供たちの姿が見えているのだろう、ゆっくり魔理沙が俺を急かす。
やれやれ、仕方無いな。
「では問題です。『れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!』これを千回言ったら子供たちを助けてあげるよ」
あ、『問題』じゃねーやこれ。
まぁいいか。
ゆっくり魔理沙は驚いて目を見開いていた。
「そ、そんなこと言えないよ!」
「じゃあ、赤ちゃんをゆっくりれみりゃに食われるのを黙って見てるんだな」
「そ、それはだめだよ!」
「じゃあ言うんだ。途中でつっかえたりしたら、もう一度初めからやり直しだからな」
「ゆっ……」
諦めたように瞼を閉じ、ゆっくり魔理沙は息を吐き出した。
言いたくない台詞を言わなくてはいけない葛藤。
だが、それでも親の愛が勝るのだろう。
ゆっくり魔理沙は大声を上げた。
「れ……れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」
「おーいお前ら、お母さんがこんなこと言ってるぞー!」
「ゆっ!?」
突然赤ちゃんたちに話を振る俺に驚くゆっくり魔理沙。
ブランコや滑り台などの遊具を使って必死に逃げ惑っている赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、突然の母の暴言にまたも怒りを曝け出す。
「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」
「やっばり゛おがあ゛ざん゛じゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」
「ち、ちがうよ! おかあさんはれいむたちをたすけようと」
「はいアウトー! 規定の台詞以外の言葉をしゃべったのでもう一度最初からね!」
「ゆっくり!?」
そう、これはどれだけなじられようともゆっくりれみりゃに自分の子供を差し出す台詞を言い続けなければならない拷問。
今頃それに気付いたのか、ゆっくり魔理沙の瞳から涙が止め処なく溢れ出した。
「ひ、ひどいよぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざだぢがな゛に゛をじだのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「シチュー落っことしたじゃねーか」
もう忘れたのかよ。
「ほら、早く言わないと千回言い終わる前に子供たちが全員食べられちまうぞ?」
「ゆ……」
再びの葛藤。
だがやらないと子供は助からない。
ゆっくり魔理沙は泣き顔で、もう一度言葉を繰り返し始めた。
「れ、れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」
「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「れ゛み゛りゃはまりざのあがぢゃんをゆっぐりだべでいっでね! れ゛み゛り゛ゃはま゛り゛ざの゛あがぢゃん゛をゆ゛っぐり゛だべでい゛っでね゛っ゛!!」
糾弾され、涙声になっても、今度は言葉を止めずに言い続けるゆっくり魔理沙。
この全てに絶望したような顔、素晴らしい!
これだからゆっくりいぢりは止められないのだ。






さて、ではそろそろ赤ちゃんゆっくり霊夢たちのほうに視線を移してみよう。
「うー! うー!!」
「こっちにこないでねぇぇぇ!!?」
「れいむっ、こっちだよ、はやく!」
「ゆっ、ありがとうおねえちゃん!」
成体のゆっくりれみりゃじゃ潜り抜けられないようなブランコや滑り台の小さな隙間を使い、上手く攻撃をかわしている。
なかなかやるなぁ。もしかしたらペット用ゆっくりになれる素質の持ち主かも。
対するゆっくりれみりゃはかなりご機嫌斜めのようだった。
自分より格下の存在であるゆっくり霊夢、しかも赤ん坊をなかなか捕食出来ないのだから当然だろう。
しかも加工所からここまで、何も食べていないのだ。空腹も怒りに拍車をかけている。
考えなしに広い場所へ行かず、真っ先にこの場所へ陣取った姉妹たちの作戦勝ちといったところかな。
……まぁ、実はゆっくりれみりゃが嫌がる香りを浴びた箱にぴったりくっついていれば、このゲーム楽に勝てたりするんだけどね。
そこに気付かない辺りは、やはりゆっくりといったところだろう。
「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね……れみりゃは……」
呪詛のようにぶつぶつ呟き続けるゆっくり魔理沙。
その声は、ここにいる全てのゆっくりに聞こえている。
逃げ惑うゆっくり姉妹たちはゆっくりれみりゃの攻撃を避けながら、ずっとその言葉を聞き続けていた。
母でありながら自分たちの死を願う、その言葉を。
何度も、何度も。
そして。
ついに一匹の赤ちゃんゆっくり霊夢が、キレた。
「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!! う゛る゛ざぐでゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
リボンの番号を見るに三女か、赤ちゃんゆっくり霊夢3が怒りに頬を膨らませてゆっくり魔理沙の元へ走り出した。
どうにかしてゆっくり出来ない声を止めようと考えたのだろう。
しかしそれは、なんという自殺行為。
「うー♪」
「おね゛え゛ぢゃん、に゛げでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「……ゆっ!?」
周囲に障害物はない。
身を隠す場所は、何も無い。
ゆっくりれみりゃはこの上なく無邪気な笑顔を浮かべ、何も遮るもののない赤ちゃんゆっくり霊夢3までの距離を、高速で飛翔し零とした。
妹の悲鳴に赤ちゃんゆっくり霊夢3が振り向けば、そこには眼前にドアップで迫るゆっくりれみりゃの姿。
「うー!」
「ゆゆゆ、ゆっくりまっ……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
頭上へと昇ったゆっくりれみりゃは、その身体を急降下させて赤ちゃんゆっくり霊夢3を押し潰した。
飛び散る餡子。
平べったくなった饅頭の肉体。
「れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
「ゆ゛……ゆ゛べっ……」
姉の悲痛な悲鳴。
それに身体を弱々しく震えさせながら、反応する赤ちゃんゆっくり霊夢3。
大量の餡子を吐き出しながら、それでも赤ちゃんゆっくり霊夢3は生きていた。苦しそうに呻きながら、必死に現在の状況から逃げ出そうともがいている。
無論、それを見逃すほど、ゆっくりれみりゃは捕食種としてお人好しではない。
「うっうー♪ たべちゃうぞー♪」
「ゆびゅぅ!? れ、れ゛い゛む゛のがら゛だをだべな゛い゛でねっ!?」
赤ちゃんゆっくり霊夢3の頬に齧りつくゆっくりれみりゃ。そのまま少しずつ、ゆっくりと味わうように咀嚼していく。
皮が千切れ、餡子が溢れ出る都度、赤ちゃんゆっくり霊夢3は絹を裂くような悲鳴を上げる。
「や゛め゛でぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「うー♪」
しかしその悲鳴も、ゆっくりれみりゃにとっては食事を彩る調味料としかならない。
いや、それとも、ゆっくりの悲鳴など鼻から耳に届いていないのか。
兎にも角にもゆっくりれみりゃは上機嫌で、赤ちゃんゆっくり霊夢3の身体を全て完食してしまったのだった。
「ま゛、ま゛り゛ざのあがぢゃぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん゛!!!」
ゆっくり魔理沙は耐え切れず、慟哭の涙を流した。
自分の言葉のせいで、子供が死んでしまった。
その嘆きは如何ほどのものなのだろうか。
……まぁ、それはそれとして。
「はいアウトー。指定された言葉以外の発言をしたからもっかい最初からねー」
「ゆっぐ!?」
ゆっくり魔理沙はしまった、といった風に目を見開いた。
そう、これは子供が食べられてしまっても、自制しなければならない罠でもあるのだ。
ゆっくり魔理沙は少し先のことも考えずに本能のまま行動してしまった結果、ただでさえ少ない救出の確率を更に下げてしまったのだ。
慌てて再び「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言うが、もう遅い。
先程までの70回くらいは全てパーだ。
「うっうー♪」
ゆっくりれみりゃは口の周りに餡子を付けながら、上機嫌に羽根を広げて舞い上がる。
そして先程残してきた姉妹、残り二匹の元へと向かった。
「お゛ね゛えぢゃんがぁぁぁ……」
「ゆっ!? ゆっくりしてたらたべられちゃうよ! ここからはなれようね!」
ゆっくりれみりゃの接近に気付いた赤ちゃんゆっくり霊夢1は姉の死にぐずぐず泣き崩れる妹のリボンを加えて、滑り台の下へと引っ張る。
間一髪。ゆっくりれみりゃの牙は赤ちゃんゆっくり霊夢5を傷付けることなく、逆に超スピード(といってもあくまでもゆっくり基準なのだが)のまま滑り台に激突し、顔面の激痛で大粒の涙を零した。
「う、うぁー! うぁー!!」
顔を真っ赤にして泣き叫ぶゆっくりれみりゃ。頬ずりしたい。
姉妹はその様子を確認すると、今度はブランコの方に移動を開始した。
気付いたゆっくりれみりゃも、ふらふらと後を追う。
「ゆっ、おいかけてきたよ!」
「だいじょうぶだよ! ゆっくりまかせてね!」
心配そうな妹の声に力強く頷き、赤ちゃんゆっくり霊夢1は前方にぶら下がったブランコを口に加えてずりずりと後退し、限界まで引っ張ると口を離した。
勢いよく吹き飛んだブランコは、無防備に近付いてきたゆっくりれみりゃへと一直線に激突する。
ばしん、という思わず目を背けてしまう光景と音。
「うぁーーー!!!」
余程痛かったのだろう、弾き飛ばされたゆっくりれみりゃは、地面にへばりついてわんわんと泣き出してしまった。
萌ゑる。
一方、捕食種への反撃が見事に決まった姉妹たちは、大喜びで飛び跳ねていた。
「ゆっゆっゆー♪ おねえちゃん、すごーい!」
「ゆゆーん♪ ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでいってね!」
二匹して勝利のダンス。箱に取り残されている末っ子ゆっくりも遠目に見える姉妹の活躍にはしゃいでいた。
しかし、勝利の美酒に酔いしれる三匹の餡子脳は、まだ死神が遠のいていないことに気付いていなかった。
突如。
頬をすり合わせて喜びを表現していた姉妹の片方、赤ちゃんゆっくり霊夢3が、赤ちゃんゆっくり霊夢1の眼前から一瞬で消失した。
「…………ゆ?」
赤ちゃんゆっくり霊夢1は何が起こったのか、一瞬では理解出来ない。
妹は何処へ行った。
と。
視界の端に、引っかかるものがあった。
黒い、点々とした影。
それが、何処かへと続いている。
赤ちゃんゆっくり霊夢1は無意識に、その黒い影の先へ視線を移した。
そして。
妹は、そこにいた。
「……」
物言わぬ亡骸となって。
大量の餡子を撒き散らしながら。
「ど、どお゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
泣きながら妹に駆け寄ろうとする赤ちゃんゆっくり霊夢1。
刹那、

ごぅん!

一迅の風が舞う。
赤ちゃんゆっくり霊夢1の頬をかすめ、ブランコが眼前を通り過ぎ、また戻っていった。
餡子を少量、付着させて。
――つまり、なんだ。
妹は、ブランコとぶつかって、死んだ。
ブランコを動かしたのは自分。
だから。
妹を殺したのは。

「あ……ああぁ……あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ゛あああ゛あああ゛あ゛あぁぁ゛ぁ゛あ゛ぁあ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あ゛ああ゛ああ゛あ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁ゛あぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛!!!」

赤ちゃんゆっくり霊夢1はこれでもかというくらいの大声量で悲鳴を上げた。
生まれてからずっと一緒にゆっくりしてきた妹。
それが、死んだ。
自分が殺してしまった。
ゆっくり出来なくしてしまった!
赤ちゃんゆっくり霊夢1は半狂乱になり、しっちゃかめっちゃかに周囲を飛び跳ね、奇声を上げながら床に自分の身体をぶつけ始める。
身体の痛みで、心の痛みを少しでも和らげようとしているのだろうか。
だけど、そんな余裕でいいのかな?
「うー!!!」
ようやく泣き止んだゆっくりれみりゃが、逆襲のために赤ちゃんゆっくり霊夢1の下へと向かう。
悲嘆に暮れて自傷を繰り返す赤ちゃんゆっくり霊夢1は、それに気付かない。
箱の赤ちゃんゆっくり霊夢7は立て続けに姉を失い、泣き叫んでいたため反応が遅れる。
ゆっくり魔理沙は目を瞑って同じ言葉を繰り返す機械のようになってしまっているため、既に見えていない。
「あ゛ぁあ゛あぁ゛ぁ゛ぁあ゛ああ゛あ゛ああ゛……ゆ゛っぐり゛ぃ!?」
「うっうー!!!」
ゆっくりれみりゃは飛び跳ねる赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭を見事にキャッチすると、加速を付けたまま壁に投げつける。
思ってもみなかった突然の激痛に、赤ちゃんゆっくり霊夢1は正気を取り戻して悲鳴を上げた。
「い、い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!!」
口から餡子を吐き出しながら苦しみ悶える。
ゆっくりれみりゃはそんな赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭上に陣取り、赤ちゃんと比較して三倍以上もある大きさの身体でプレス攻撃を仕掛けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
絶叫。
ゆっくりれみりゃはその声に満足した様子で、またプレス攻撃をする。
何度も、何度も。
「や゛めでぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!!」
明らかに殺すことが目的ではない手加減した攻撃。
食べるためではなく、苦しめるためだけの攻撃に、赤ちゃんゆっくり霊夢1はただひたすら泣き叫ぶ。
苦しい。
痛い。
助けて。
そういった感情が、見ている俺のほうにも伝わってくるようだ。
だけど、ゆっくりれみりゃは攻撃の手を休めない。
もうそろそろ死ぬ、といったところでプレス攻撃を止め、赤ちゃんゆっくり霊夢1の頭に齧り付き、中の餡子を吸い上げ始める。
「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃ!!! や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! れ゛いむ゛のあ゛ん゛ごずわな゛いでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
身体の中身がどんどん失われていく感覚。
段々と、赤ちゃんゆっくり霊夢1の顔から生気が抜け落ちていく。
しかし後ちょっと、というところで、ゆっくりれみりゃはまた動きを止めた。
今度は赤ちゃんゆっくり霊夢1の身体に自分の身体を押し付け、直にそのまま押し潰そうとする。
先刻のプレス攻撃と比べて、一瞬の激痛が何度も往復するのとは違う、永劫に感じられる苦しみが続く拷問。
激しい圧迫感、赤ちゃんゆっくり霊夢1は瀕死で朦朧としているが、痛みにびくんびくんと身体を震わせる。
もう悲鳴を上げる元気もないのだろう。
ただ、掠れた呻き声を上げながら、苦痛の涙でぐしょぐしょになった顔を激痛で更に歪ませるだけ。
やがて赤ちゃんゆっくり霊夢1は耐えられる限界を超え、身体のあちこちから餡子を撒き散らせながらぷちっと潰れ、絶命した。
「うっうー♪」
ゆっくりれみりゃは大勝利、とばかりに軽快に飛び回る。
復讐を完遂させて満足なのだろう。
幸せそうな笑顔で、飛び散ったゆっくりの死体をぱくぱくと食べ始めた。
「うー♪ うまうまー♪」
「お゛ね゛ぇぢゃん゛だぢがぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ぁぁ!!!」
その光景を見て、滂沱の涙を流すのは箱に閉じ込められ、唯一死亡を免れた姉妹の末っ子。
その泣き顔にクるものを感じながら、俺は未だに「れみりゃはまりさのあかちゃんをゆっくりたべていってね!」と言い続けているゆっくり魔理沙の箱を蹴り、言ってやった。
「おい、もういいぞ」
「……ゆっ?」
「もう全員死んだ。良かったな、お前の言ったとおり食べて貰えて」
「……う゛わ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛ぁぁ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁぁ!!!」
ああ、いい。
何度聞いても、ゆっくりの絶望の悲鳴というものはいいものだ。





その後、俺はゆっくりれみりゃを捕まえ、元々入っていた箱に再び閉じ込めた。
こいつにはまだ用がある。後でまた出してやるからな。
で。
七匹もいた赤ちゃんゆっくりたちも、ついに残すところ一匹だけとなってしまった。
可哀想なのでこいつだけ森に返してやろう……なんて気はない。
だが、そろそろゆっくり魔理沙も精神が限界に来ている。
さっきから「燃え尽きたぜ……真っ白によ……」みたいな感じでボケーっとしている姿は、誰が見ても廃人一歩手前だ。
壊れると、楽しみがなくなってしまうからな。
なので、いい加減子供と再会させてあげることにした。
ゆっくり魔理沙と赤ちゃんゆっくり霊夢7を箱から出してやる。
感動の親子の再会だ(いや、ずっと顔は見えていたが)。
「れ……れいむ……れいむぅぅぅ!!!」
子供の姿が手に届く場所にあると認識したゆっくり魔理沙は、もう離さないとばかりに赤ちゃんゆっくり霊夢7に駆け寄った。
色々辛いこともあったが、これからは二人仲良くゆっくりしていこう!
そんな感じで喜色満面の笑顔を浮かべている。
だが。
「ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆっぐりぃぃぃぃ!!?」
突然、娘に腹の部分(?)を噛み付かれ、悲鳴を上げた。
「な、な゛にずるの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!?」
所詮プチトマト程度である大きさの赤ちゃんゆっくりに噛み付かれた程度、成長してバレーボール程度になった成人ゆっくりにとって箪笥の角に小指をぶつけたくたいの痛みでしかない。
だが、相手が自分の娘というのなら話は別だ。
身体の痛みより、心の痛みのほうが何倍も自分を傷付けることだろう。
「う゛る”ざい゛! ゆっぐりじねぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!! や、やめてねっ!!! お母さんのからだを食べないでねっ!!!」
「お゛まえな゛んが、お゛があざんじゃな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃ!!!」
痛みにぶんぶん身体を捩じらせ、振りほどこうとするゆっくり魔理沙。
だが怒りに濡れる瞳の赤ちゃんゆっくり霊夢7は、死んでも離さないとばかりに噛み付くのを止めない。
そこにいるのはゆっくりすることなどもはや眼中にない、憎悪の塊。
自分の姉妹全員を悉く皆殺しにして悦に浸っている母を抹殺しようとする怒りの権化。
俺が誘導したとはいえ、なんという勘違い。なんという思い込み!
感動しすぎてちょっと涙が出てきた。
「ぢがう゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! お゛があざんはれ゛い゛むだぢを゛だずげよ゛う゛どじだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!?」
「う゛ぞづぎま゛りざはゆ゛っぐり゛じな゛いでじねぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」
「い゛だぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁぁっ!!? い、い゛……い゛い゛がげんに゛゛じでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆ゛べぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!?」
お、ついに堪忍袋の尾が切れたのか、ゆっくり魔理沙が怒声を上げた。
力強く跳躍して自分の皮ごと強引に娘を吹き飛ばすと、今までの鬱憤を晴らすかのごとく、赤ちゃんゆっくり霊夢7に体当たりを仕掛ける。
「ま、ま、まりざがどれだけくろうしたのか、分かってるのぉぉぉ!!?」
「ゆぎぃぃぃぃぃ!!?」
「それなのに、み、みんなでゆっくりしねって……そんなのひどすぎるよぉぉぉぉぉぉ!!!」
「やめでぇぇぇぇ!!! れ゛いむのあん゛ごはみでぢゃうよ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」
「まりざ、もっどゆっぐりじだがっっだのにぃぃぃぃ!!! れいむだぢがぁぁぁぁぁ!!!」
「いだいよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉ!!! ごめ゛んなざい゛ずる゛がらゆ゛る゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」
何度も何度も体当たりされて吹き飛ばされる赤ちゃんゆっくり霊夢7は、もう自力で動けないくらい重傷だ。
だが、涙で視界がぼやけ、更に怒りでいっぱいいっぱいのゆっくり魔理沙は、そのことに気付かない。
「おがあざんはおがあざんなんだよぉぉぉ!!! ちゃんどわがっでるのぉぉぉぉぉぉ!!?」
「わ、わがっ……ゆぴっ……も、もう……ぴげぇっ」
「だいへんなのはれ゛いむ゛だぢだけじゃないんだよぉぉぉ!!? ま゛りざだっでゆ゛っぐりでぎながっだんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「ゆっ……じだ……だよ……」
「う゛わ゛ぁ゛ぁぁぁ゛あ゛あぁあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁあ゛あ゛ああ゛ぁあ゛ぁ゛ぁあ゛ぁっ!!!」
「……」
「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁあ゛あぁ゛ぁぁ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ぁぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!」
「ストップ、そこまでだ」
事の成り行きを見守っていた俺は、事態が終わったことに気付いてゆっくり魔理沙の身体を持ち上げた。
未だ興奮冷めやらず、といった様子でふーふー荒い息をついているゆっくり魔理沙は、逃れようとじたばたもがく。
「は、はなしてねっ! まりさはまだ……」
「下をよく見ろ」
「……ゆっ?」
言われて、はっと気付いたようにゆっくり魔理沙は視線を下に移す。
そこには、

「……」

物言わぬ亡骸と化した潰れ饅頭が転がっていた。
「ゆ゛、ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!?」
「いやー、すごい殺しっぷりだったな! 自分が気に入らないなら子供だって簡単に殺す! 酷いゆっくりだな、お前は!」
「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!! ま゛りざはぢがう゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」
「えー、どう違うんだよ。今さっき自分で殺したんじゃないか。自分の子供を。助けてって言ってたのに!」
「う……う、う゛る゛ざぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁい゛!!! も゛どはお゛兄ざん゛がゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛ひとだがら゛い゛げな゛い゛ん゛でしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「はぁ? 何言ってるんだ、俺はちゃんとお前にも答えられる問題を出してやったぞ。それをゆっくりしすぎて答えられなかったんだから、お前が悪いに決まってるだろ」
勿論生死に関わる状況に追い込んだのは俺だから俺が悪い。
だけど子供を殺したばかりの罪悪感の塊であるゆっくり魔理沙は、俺の言葉を鵜呑みにしてしまう。
元々、悪いことをしたという負い目はあったのだ。
箱に詰められたときに、それに気付いていた。
そのまま全員殺されていてもおかしくはなかった。
でも、生き延びることを許された。
そして、助かるチャンスはいくらでもあった。
どれもこれも、無理難題――例えば変形してみせろとか、大空を舞ってみろとか、赤ちゃんを全員食えとか――ではなかった。
ゆっくりせずにちゃんと考えれば、答えられていたはずなのだ。
だけど、答えられなかった。
何故?
それは。

自分が、ゆっくりしていた、から。

赤ちゃんを助けるために、真に全力ではなかった、から。

それに気付いた時、ゆっくり魔理沙の瞳から涙がぽろりと零れた。
今までのように騒いだりしない。
ただ、何かを悟ったような、そんな憑き物が落ちたような顔だった。
「……ころして」
「なに?」
「まりさをころしてね……赤ちゃんたちがいないなら、もうゆっくりできないよ……」
俺は驚いた。
まさかゆっくりが自分の殺害を依頼するなんて。
それ程までに、自分の子供が大切だったのだろう。
仲間のことはすぐ忘れたというのに。
過去に何かあったのだろうか。
……まぁ、興味ないけど。
「殺して欲しいのか?」
「うん……ゆっくりせずにころしてね……」
「だが断る」
「……ゆっ!?」
ゆっくり魔理沙が驚愕の表情で俺を見上げる。
俺はニコリと、天使のような慈愛の表情を浮かべた。
「俺は自分の手で何者かの命を奪うのは大嫌いなんだ。だから、お前は殺さない」
だって、殺すと反応がなくなってつまらないから。
「もっと苦しんでもらうよ、ゆっくり魔理沙」






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最終更新:2008年09月14日 07:19
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