ゆっくりいじめ系394 きめぇ丸

「きめぇ丸だ!」
「相変わらず気持ち悪い顔だ!」
「喰われる前に逃げるぞ!」

畑を囲む柵が壊れていないか確認している俺の耳に届いたのは、そんな近所の子供達の声である。

声のした方に向かうと、何かを堪えているかのように同じく柵の点検をしていたきめぇ丸がそこにいた。

「またか?」

本当は聞かなくてもわかってはいるが、一応声をかけてやる。

きめぇ丸は「はい…」と頷き、目から涙を静かに流した…

今日はもう帰っていいと伝え、きめぇ丸を見送った。


きめぇ丸はゆっくりの一種である。

外見は… 名前の通りきめぇ。

不自然に顔の中央に目や口等のパーツが寄っているため、正直御世辞ですら可愛いと言うことはできない。俺には絶対に無理だ。

他人を見下しているような目、小馬鹿にしているようにうっすら開いている口、どれを取っても嫌われる要素しかない。

そんなきめぇ丸は、ゆっくりの中では当たり前のように異端な存在だ。

外見は言うまでもないが、その習性もである。

ゆっくりという種であるのだが、きめぇ丸は「ゆっくり」という事を極端に嫌うのだ。

人間の食糧を奪い、同族を殺し、更には家族すらも殺して「ゆっくり」するゆっくり種。

その事がきめぇ丸は吐き気を催す程嫌いらしい。

そしてきめぇ丸種は、普通に大きくなっていく他のゆっくり種と違い成長すると生活のパターンが二つに分かれる。

一つはきめぇ丸同士森で密かに暮らし、独自の進化を遂げるパターン。

ケンタウロス型や、胴が短くなって二本の足が伸びるのが代表的な進化のパターンだ。

とにかく気持ち悪いので小さい子供は泣き出す。大人だって泣きながら逃げる。

だってあんなのに追いかけられたら怖いもん。

もう一つは、人間の生活に溶け込むパターンだ。

四肢があり、人と話す事のできる知能があるきめぇ丸だからこそ、人間の生活に紛れ込む事ができる。

しかし、やはり外見があれな為小さな村では化物と間違われて殺される事もあるらしい。





この村では先程見送った奴を含め何匹かのきめぇ丸が暮らしている。

基本的にきめぇ丸は人間に友好的である為、農作業や狩猟の手助けをしてくれるのだ。

だが、やはり子供達からの評判はよくない。あの外見だから仕方ないのだが、最近それがちょっと困った事になっている。

子供が放った無邪気な言葉のハンマーは、あの顔に全く似合わないきめぇ丸の硝子のハートを一瞬で粉々にしてしまうのだ。

砕かれるとおよそ三日間、きめぇ丸は役に立たない。

そろそろ本格的に越冬の準備をせねばならないというこの時期に抜けられると困るのだが、仕方がないと自分に言い聞かせる。

悪いのはきめぇ丸じゃない、きめぇ丸のあの顔が悪いのだと。

ゆっくり侵入防止用の柵に問題がないことを確認し終えた俺は帰路につく。明日は畑に出る前にあいつを慰めに行ってやろうと思いながら。





真夜中に、外がやけに騒がしかったので俺は家の外に出た。

辺りを見回すと、村の入り口にやけにでかいゆっくりまりさがいることに気づいた。あれは村の側の森に集落を作っているドスまりさだ。

「おい、一体何があったんだ?」

入り口の方にいき、俺は知り合いに声をかけた。

「俺もいきなりであまりわかっていないが… ドスまりさが子供を人質にとっているらしい…」
「ドスまりさが!?」

ドスまりさ… ゆっくりの中で皆から認められた存在である。

髪につけられているリボンはゆっくり達の信用の証であり、その数でどれほどのゆっくりが認められているかがわかる。

この村の近くにもドスまりさがいるのは皆知っていた。なにせ、子供達の遊び相手になってもらっていたのだから…

信じられずに俺はドスまりさの方を見た… 心の中に、ドスまりさを信じたいという気持ちがあったのだろう。

しかし、残念ながらそれは無駄だった… ドスまりさを守るように囲むゆっくり達の中心… ドスまりさに踏まれている子供達がいたのだ…

ドスまりさが体を揺らす度に、踏まれている子供達から呻き声をあげる… まだ生きてはいるようだ。

「お前たち子供達をさっさと放せ!! 目的はなんだ!!」

村長が声を張り上げる。今まで友好的だったゆっくりが裏切ったのが信じられないのか、声が少し震えている。

「やっときたね!! まりさたちはね、たべものがほしいの!! たべものさえくれればさっさとかえるよ!!」
「食べ物だと? 私達はお前達と約束したじゃないか!! 私達はお前達を殺すことはしないし、お前達も村の畑を荒らさないと!!」

村長の言う通りだ。村の近くにドスまりさ達が住み着いたときに、今言った二つをこの村とゆっくり達の間で結んだ。

「それはわかってるよ。でも、ふゆごしのしょくりょうがたりないからゆっくりわけてね!! でなきゃこどもをつぶしちゃうよ!!」

そう言いながらドスまりさは軽く跳ねた。

本気で跳ねてるわけではないようだが、軽く跳ねただけでもあれだけの巨体なら受ける衝撃は凄まじい。子供達の命はドスまりさの思うがままである…

「ドスまりさ…」
「僕達友達じゃなかったの…」
「酷いよ… やめてよ…」
「かんけいないよ!! まりさたちはふゆをこすためにたべものがひつようなんだからしかたないよ!! だからともだちならこうやってやくにたってね!!」

子供達は信じていたドスまりさに裏切られたのがショックだからか、泣いている… 

今すぐにでも駆け寄ってドスまりさを潰して助けたいが、近づくまでに一度でも本気で跳ねられたら子供たちの命は無い…

「はやくたべものをもってきてね!! こどもたちがしんじゃってもいいの!!」

誰も、ドスまりさに対して何もできなかった…

「わかった… 今から作物を持ってくる… だから子供達を放してやってほしい…」
「さいしょからそうすればよかったんだよ!! おやさいぜんぶさっさともってきてね!!」
「ま、待ってくれ… 流石に全ての食料も持ってかれては私達が死んでしまう… せめて、せめて半分にしてくれないか?」
「じじいはさっきからうるさいね… べつにいいよ、はんぶんでも」
「ほ、本当か?」
「かわりに…」

そう言いながらドスまりさは高く跳んだ。

「こどもをころしてまりさたちのごはんになってもらうからね!!」

跳んだと同時に子供達向かって俺も含めた男衆が走り出す。間に合うかはどうかは考えない… 助ける為に小さいゆっくりを踏み潰し、子供達の元へ駆け寄った。

「そんなことしてもむだだよ~ みんなつぶぎゅる!!」

踏みつぶされるのを覚悟したが、ドスまりさは空中で横に吹っ飛ばされてしまった。

一体何が起きたのか皆わからなかった。わかったのは、ドスまりさに何かが乗っかっているのに気づいてからだ。

「どうも、キモくてうぜぇきめぇ丸です」
「子供達がピンチなので助けさせてもらいました」
「そして貴方を潰しにきました」
「というわけなので」
「「「「「さっさと潰させてもらいます!!」」」」」」

村に住み着いているきめぇ丸が、一方的にドスまりさを蹂躙する。

体当たりされればきめぇ丸も危なかったろうが、ドスまりさは先ほど吹っ飛ばされた姿のままである。どうやら起き上がることができないらしい。

「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「村の子供達を殺そうとしたこと」
「村人との約束を破ったこと」
「それで十分殺す理由になります」
「自分のやったこともわからないなんて、愚か愚か」
「やべでぇぇぇぇぇぇぇまりざのあんごがでぢゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

ドスまりさが泣き叫んでもきめぇ丸は手を休めず、皮を千切り中身の餡子を掘ってゆく。

そんなきめぇ丸に当てられたのか、俺達男衆は側にいる通常サイズのゆっくりを潰し始める。

「やべでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「まりざばわるぐないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「がわをやぶらないでぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「どがいばのありずのがみがぁぁぁぁぁぁ!!」
「ドスまりざだずげてぇぇぇぇぇ!!」
「わがらない!!なんでごろざれるのがわがらないよぉぉぉぉぉぉ!!」

ゆっくり達にとって地獄が始まった。ドスまりさが相手ならともかく、通常サイズのゆっくりに負けるほど人間は弱くない。

途中からきめぇ丸も手伝い始めた。ドスまりさはもう動けないそうなので、とりあえず後回しにするらしい。

夜が明けて、辺りはゆっくりの皮と中身で埋め尽くされていた。

逃げようとしたゆっくりはきめぇ丸が始末し、勇猛果敢に挑んできたゆっくりは人間の手によって潰された。

後はドスまりさだが、こいつは本当に酷かった。

「おねがいじまずぅぅぅたずけでくだざいぃぃぃぃぃ!!」
「じょうだんのづもりだったんでずぅぅぅ!!」
「だがらごろざないでぇぇぇ!!」

上のように聞くだけで潰したくなる言葉を、永遠とこいつは吐き続けたのだ。

しまいには殺そうとした子供達にまで助けてくれと懇願したが、許す者がいるわけも無くドスまりさは皆の手で解体された。





あれから、きめぇ丸の扱いが子供達の中で変わった。

以前は気持ち悪いといって逃げるだけだったが、今では積極的にきめぇ丸に近寄って遊ぼうとする。

今日も収穫の最中に子供達が現れ、きめぇ丸を連れてどっか行ってしまった。

お陰で午後は俺一人で頑張ることになってしまったが、子供達と楽しそうに一緒に笑うきめぇ丸の姿を見たら連れてくなと俺は言えない。

幸いにも、餡子なら大量にあるのだ。

少しくらい収穫が遅くなってしまってもいいだろう。




fin


ゆっくりが人間社会に溶け込むのも良いかもと思って書いてみました。御目汚し失礼!!

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最終更新:2011年07月30日 02:01
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