ゆっくりいじめ系3219 にんげんのいないまち

「むーしゃ!むーしゃ! しあわせー!」

 路地裏にゆっくりたちの歓声が響く。どっさりと積まれたゴミ袋が片端から引き破かれ、中の生ゴミが辺り一面に散乱していた。こぼれた野菜くずや油カスなど、ゴミとしか形容しようがないものに、成体から赤ゆまで数多くのゆっくりが貪り付き、ぐっちゃぐっちゃと不快な音を立てながら辺り一面に響き渡る声でしあわせーしあわせーと合唱していた。

「ゆ~ん! にんげんさんもとうとうはんっせいしたんだね!」
「ひとりじめはげすのすることなんだぜ! ようやくそれがわかったんだぜ!」

 通常なら、このレベルでゴミを荒らされれば保健所か加工所が光の早さで飛んでくる所であったが、不思議なことに何時まで経っても現れるべき人間たちは現れなかった。それどころか、付近には人間の影も形もない。

「ゆ~ん、でもここはどこなのかしら。まえにすんでいたこうえんさんとはちがうみたいだけど」
「わかんないよー、でもごはんさんがゆっくりたべられるんだねー」

 彼女たちは街ゆっくり。街の隙間、道路の隅を這いまわり、人間に見つからぬよう、息を潜め、街に存在するわずかばかりの口に入るものを求めてさまよい歩く不思議な饅頭。街ではゴミ以下の扱いを受ける存在である。一度人に見つかれば良くて即死。悪ければ死んだほうがマシという責め苦を受けるという苛烈なゆん生をつい最近まで送ってきたゆっくりたちである。

「ゆう~~~~! ぱすたさんだよ! おちびちゃんぱすたさんだよ! ゆっくりっむーしゃむーしゃしてね!」
「おきゃーしゃん……。れーみゅ、こ~んなにむ~ちゃむ~ちゃしちゃのうみゃれちぇはじめちぇじゃよ……」
「ちちちちあわちぇ~~~~」

 薄汚れた赤ゆが出せる水分を全て出しながら生ゴミを貪る。今まで生きてきたゆん生で、ここまで子供にご飯を食べさせられたことはないのだろう。そのゆっくりした姿に、親たちも顔をほころばせてゆっくりする。

「むきゅ……。ここはどこなのかしら……。ぱちぇたちはす~やす~やしてたら……。いつの間にかここに……」

 ある公園の、群れとも言えない集団が、ふと気づくとここに居た。辺りはどうもにんげんさんの街のようなのだが、雰囲気がおかしい。人が居ない。人の生活している気配がないのだ。ただあるのは人間がいつも出入りしている大きな白い岩山、つまりビルなどの建築物。そしてそこら中に不可思議に大量に転がっている木箱やダンボールだ。

「ゆ~、ここらへんのびるさんは入れそうになかったんだぜ」
「でもゆっくりしたおうちはたっくさんあったよ!」

 そう。木箱、ダンボール。そういったものは街ゆっくりにとって貴重なおうちになりうる資源である。街ではこれをめぐって凄惨な殺し合いが起きるくらいだ。

「むしさんもくささんもたっくさんいたんだよ~」
「ここはゆっくりたちのゆっくりぷれいすなんだぜ!」

 ゆっくりぷれいす! ゆっくりぷれいす! とゆっくりたちがまた合唱する。

「むきゅう……」
「ゆう……確かに……変だよね……」

 通常のゆっくりよりやや賢い、番のぱちぇりーとれいむが顔を見合わせる。いくらなんでも都合が良すぎる。人間が居ない。生ゴミは食べ放題。あからさますぎるゆっくりできそうなおうち。どれもこれもゆっくりできそうでゆっくりできない雰囲気で満ち溢れていた。

「どくもはいってないみたいだし……」
「いっせいくじょ……? れいむたちはゆんごくにいるの……?」

 困惑する二ゆをのこして、他のゆっくりたちは歓喜の凱歌を歌い上げる。ゆっくりプレイス。夢にまで見たゆっくりプレイス。それがここにあった。そしてここにいる。楽観的なゆっくりたちにそれに浮かれるようなことさえあれ、疑うようなことなどしない。

 「ゆう……」
 「ゆう……」

 この2ゆんの憂い。それは半分あたっており、半分外れていた。

 ここはゆっくりたちのゆっくりプレイスなどでは無論ない。

 ここはゴミ処理場。

 生ゴミ専用の処理場である。

 郊外にある、とある敷地の広い廃工場を接収し、建物を残しつつ封鎖。 中に街ゆたちを離し、敷地の何箇所かに生ゴミを外から流し込む。 生ゴミに慣れた、むしろ憧れすらあるゆっくりたちは、腐敗していようがカビが生えていようがお構いなしに生ゴミを腹の餡に詰め込む。

 それもそのはずだ。生ゴミの袋には、匂い消しと称してバニラエッセンスがかけられていた。
 甘い匂いがゆっくりたちの危機感を忘れさせ、えづきそうなレベルの腐敗物さえも、

「しあわせ~~」

 とかきこんでいる。
 生ゴミの袋の一部には、ゆっくりの餡質をコンポスト用に防かび防腐作用のある「すくすくコンポスト剤」という薬剤が詰め込まれている。
 わずかに甘いそれを、ゆっくりたちは争って食べる。
 ゆっくりたちはこうして、どんなものでも食べられるようになる。
 バニラエッセンスのかかったゴミ袋さえ、バニラエッセンスのかかった、バイオ素材のビニールという事もあって、跡形もなく食い荒らされていく。

「これどくはいってる!」

 もちろん、辛味や苦味があるものがありそういったものは食べられず横に捨て置かれる。
 それらはどうなるのか? 心配はいらない。直に、彼女らはそのようなものでも食べざるを得なくなる。

「すっきり~!」
「すっきり~!」
「すすすすっきり~!」

「ゆっくちうみゃれりゅよ!」
「じぇんせきゃいにしゅくふきゅしゃれちぇまりちゃがうみゃれりゅのじぇ!」
「ちょかいは~~~~!」

 食料と安全が手に入れば、際限なく子供を作るのがゆっくりというものである。
 たちまちのうちにねずみ算式にゆん口は指数関数を描きながら増えていく。
 食べやすいものしか食べない、という贅沢は許されなくなる。

「か~らか~らさんやに~がに~がさんは、ほかのごはんさんや、つちさんとまぜてむ~しゃむ~しゃするんだよ。おちびちゃん」
「「「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」」」」」」

 無論、人間たちの出す生ゴミの数も尋常ではない。
 暫くの間は平穏が続く。食べても食べても文字通り勝手に生えてくる。

 広い敷地いっぱいに、赤ゆの声が響く。
 あたりを子ゆがぴょんぴょん飛び跳ね。
 新たな番がまた巣立っていく。

「ぱちぇりー。れいむたちのかんがえすぎだったね……」
「そうだね……」

「「もうじゅうぶんゆっくりしたよ……」」

 最初の世代のゆっくりがその寿命を終えた。
 そして彼らが、幸せを感じ得た最後の世代となった。

「ゆ~ん……。さいきんごはんさんがすくないよ……」
「ごはんさん! ゆっくりしないででてきてね! すぐでいいよ!」
「「「おにゃきゃしゅいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁl!!!!!」」」

 臨界点は来る。
 いくら人間の出す生ゴミが膨大だといっても、それを上回るゆん口になってしまっては全てのゆっくりの腹を満たすことはできない。

「でいぶがむーじゃむーじゃずるんだよぉぉぉぉ!」
「ごのごばんざんばでぃざのごばんざんだぜええええええ!!!」
「わぎゃんばいどーーーーー!!!」

 ゆっくりたちはたちまち飢え、豊富な量の生ゴミをその数百倍の数のゆっくりが奪い合うことになった。
 おうちを求めて、木材などで塞がれていた入り口を破り廃工場内に住み着き、

「向こうのおやまのゆっくりにはまけないぞー!!!」
「「「「「「「「「ゆっゆっおー!」」」」」」」」」

 建物のゆっくりが群れをなし、他の建物のゆっくりと殺しあう。
 少ない餌をめぐる抗争。負ければ溜まりに溜まったうんうんを食ううんうん奴隷に成り下がる。
 社会が形成される前にお互いを潰し合い、ゆっくりたちは屍を晒していく。
 時折降る雨がゆっくりたちを、不思議に整備された排水口へと流しこむ。

 そう、この排水口に流れたゆっくりたちやうんうんは、微生物に分解され、近隣の山に捨てられる。山の自然を再生する際の良土として割と評判なのだ。

 敷地内にゆっくりがひしめき、殺し殺されが恒常化。貧富の差も生まれ、生ゴミは広域組織の管理下に置かれる。

「おにゃきゃしゅいちゃ……」
「ごべんねぇ……。おちびちゃん……」

 腹をすかし、街の隙間、道路の隅を這いまわり、ゲスに見つからぬよう、息を潜め、街に存在するわずかばかりの口に入るものを求めてさまよい歩く饅頭の姿も珍しくなかった。結局彼らはこうなる運命なのである。そう思いたくなるような光景であった。


「ぶひゃひゃひゃ、ゆっくりしてないゆっくりなのだぜ!」
「いなかものだわ~。ああはなっちゃだめよおちびちゃん」
「「ゆっきゅりりきゃいしちゃわ!」」

 建物の上層部から下を見下げてゆっくりする上流ゆっくり。

「それより……。まりさ……。そろそろなのね……」
「ゆん! そうなのだぜ! あのかべさんのむこう! まりささまがしはいするにふさわしいせかいがまってるのだぜ!」

 この施設を封鎖する高い壁。それを乗り越えられるように、お飾りを取り上げられた奴隷ゆっくりたちがゆんや~ゆんや~とこぼしながら石材や木材を積み上げていく。
 まりさはこの施設内の組織全てを支配し、まさに王として君臨するゆっくりであった。 そっと愛するありすを抱き寄せ、目を細め遠くを見やる。

 きっとうまくいく。順風満帆なゆん生はこれからも追い風を受けてどこまでも行くことだろう。

「ゆ?」

 風を巻いたような妙な音が聞こえた。
 見上げると巨大な鳥のようなものがいくつも飛び回り、白い粉状のものを投下していく。


 ゆ除剤である。


 王のまりさ、下層ゆっくり。有象無象の区別なく、餡を吐瀉し、狂ったように踊り狂い、一ゆん残らず物言わぬ饅頭へと変えていった。

 やがて雨が振り、生き残ったゆっくりたちが、一番最初の世代のようにゆっくりらしい生活を送り始める。


「くそにんげんをおいだして、ゆっくりだけのゆっくりぷれいすにするんだよ!」


やけくそになったゆっくりはよくそう言う。
ただはたして、それは本当にそうなのか。


この処理上のゆ除剤散布周期は、約半年である。






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最終更新:2024年03月25日 12:35
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