〜ゆっくり達の生涯『加工場の日常編 にくまん工程』〜
前書き(と言う名の注意書き)
加工場の職員として人間が登場します。
ぺに、まむ、うん、しー設定は使用しておりません。
「加工場の日常編」の続編となりますが、各SSは単体で完結しておりますので以前の物を読んでいなくても問
題ありません。
〜にくまん工程〜
「うーうー! 」
1匹のにくまんこと、ゆっくりれみりゃが元気よく夜空を飛んでいる。
空中でホバリングしながら何かを探すように地面をキョロキョロと見回している。
「・・・・・うー♪ 」
何かをみつけたれみりゃは笑顔で鳴き声を上げた。
そして、ある木の根元めがけて急降下する。
そこにあるものは・・・・・。
ガサガサ・・・・・ゴソゴソ・・・・・
不自然に盛られた木の葉や木の枝を慎重に退かしていく。
・・・・・ガサガサゴソゴソ・・・・・
音が止むとそこにはポッカリと口をあけた木の洞が姿を現した。
翼をたたみ、音を立てないように洞の中へ入っていく。
「ぅ〜♪ 」
れみりゃは洞の中に居たあるものを笑顔で見つめている。あるものとは・・・・・。
「ゆぅ〜・・・・・ z z z z z ・・・・・おちびちゃ〜ん♪ ・・・・・。」
「むにゃ〜・・・・・z z z z z ・・・・・れいむぅ〜♪ だいす・・・・・。」
そこにはれいむとまりさが身を寄り添いながら幸せそうに眠っていた。
れみりゃは翼を邪魔にならない程度に広げると2匹の饅頭に向けて牙をキラ〜ン! と輝かせる。
カプッ♪
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! 」
まりさは頬に走った激痛に一瞬で目を覚まし、悲鳴が巣穴中に木霊する。れいむはというと・・・・・。
「・・・・・z z z z z ・・・・・ゆふふふ♪ くすぐった・・・・・。」
まったく目を覚ます気配は無かった。
なんとも図太い神経をしているゆっくりである。
「う〜う〜♪ 」
「やめでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! ながみずわないでえぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ! 」
まりさは必死に抵抗しようとするが、捕食種相手では既に勝負は決まっていた。
気持ちよさそうに眠っているれいむのすぐ横でまりさはどんどん中身を吸われ、しおれていく。
「・・・・・れ・・・・・い・・・・・む・・・・・に・・・・・げ・・・・・。」
薄れゆく意識の中、まりさはつがいのれいむに向けて必死に迫り来る危機を知らせようとしている。
しかし・・・・・。
ザクッ!
「っ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 」
れみりゃの牙がまりさの両目をえぐり取っていた。
中身の大半を失ったまりさにはもはや悲鳴を上げる力すら残っていなかった。
「う〜う〜♪ 」
れみりゃはもちもちなまりさの目をおいしそうに頬張っている。
まりさの目のあった部分からは餡子が涙に溶けた薄茶色の液体がどくどくと溢れ出している。
「うー♪ 」
れみりゃは最後の仕上げとばかりに、まりさの体内に残った餡子を吸っていく。
この時、すぐそばまで迫った死の恐怖からまりさの餡子の糖度は最高潮に達していた。
「う〜♪ 」
れみりゃは今日一番の笑顔でおいしそうにまりさの中身を吸い尽くした。
れみりゃの横には、帽子と皮だけになったまりさのデスマスクが転がっている。
「うー! 」
れみりゃはまだ満足しておらず、すぐに次の標的を定める。
「・・・・・まりさ・・・・・ずっと・・・・・ゆふふふふ♪ ・・・・・。」
既にこの世に居ないつがいの名前を寝言で呼びながら、れいむは気持ち良さそうに眠っている。
れみりゃはふしだらに開けた口からよだれを垂らし、呑気に眠るれいむへと近づいていく。そして・・・・・。
「ゆっぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! !
だずげでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛! ! ! 」
れいむの苦痛に歪む悲鳴が巣穴中に木霊した。
「うっう〜♪ 」
おなかがいっぱいになり、ご機嫌なれみりゃは笑顔で寝床に向かって飛んでいる。
しばらく飛んでいると遠くの方からなにやら鳴き声がれみりゃの耳(?)に入ってくる。
「う〜♪ 」
1匹のれみりゃが笑顔で横から姿を現した。
どうやらこのれみりゃも満足な獲物を捕らえる事に成功し、寝床へ帰る途中のようだ。
「うっう〜♪ 」
「う〜〜〜♪ 」
「う〜う〜♪ 」
複数のれみりゃ達が様々な方向から合流し、最終的には数十匹の群れとなり夜空を飛んでいた。
れみりゃ達は皆同じ方向に向かって列をなすようにして飛んでいる。
しばらくするとれみりゃ達の前方に視界を覆いつくす大きな壁が現れる。
「「「「「う〜♪ 」」」」」
れみりゃ達は嬉しそうな鳴き声を上げると壁にあいた穴へと次々に入っていく。
そう、この穴こそれみりゃ達の“おうち”である。
ゆっくりは“おうち”というものに対し非情に強い執着心を持つナマモノである。
これは捕食種れみりゃにとっても同じ事である。
このれみりゃ達もまた、無作為ではなく自分が“おうち”と決めた穴へと入っていっているのだ。
「う〜〜♪ 」
あの呑気なれいむを仕留めたれみりゃも同じくして自分の“おうち”へ入っていく。
“おうち”へ入ったれみりゃは器用に翼を折りたたむと落ち葉や干草で出来たベッドの上に体をうずめていく。
「う〜♪ ぅ〜・・・・・z z z z z 。」
朝日が昇る頃、お腹がいっぱいになったれみりゃ達は気持ちよさそうにゆっくりと夢の中へ旅立っていった。
「・・・・・z z z z z ・・・・・ぅ〜♪ ・・・・・。」
れみりゃが可愛らしい寝顔で気持ち良さそうに眠っている。
毎日十分な獲物を手に入れ、満足のいく“おうち”に住む事ができている。
れみりゃにとって最高にゆっくりできる環境が整っていた。
しかし、その永遠に続くと思われた至福の時も終わりを告げようとしていた・・・・・。
・・・・・カチャッ・・・・・
「・・・・・う〜? 」
僅かに聞こえた金属音に気付き、れみりゃは寝ぼけ眼で“おうち”の中を見回している。・・・・・次の瞬間!
ガシッ!
「うー!? 」
突如れみりゃは何者かに捕まれ、まったく身動きができない状態に陥ってしまった。
そしてれみりゃは驚愕する、なんと自分の寝床にしている“おうち”の最深部に大きな穴がポッカリ開いてい
たのだ。
「うー! うーーー! 」
れみりゃは体をジタバタさせ抵抗しようとするが、抵抗も空しくれみりゃはポッカリと開いた穴に引きずり込
まれていった。
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! ! ! 」
れみりゃの悲痛の叫びが小さな“おうち”に木霊した。
「・・・・・う〜? 」
れみりゃは見知らぬ場所で目を覚ました。
とりあえず目をキョロキョロさせ周囲の様子をうかがうが、すぐに自身の体に起こった異変に気が付いた。
ガタガタガタ・・・・・ガタガタガタ・・・・・
「うー! うーうーうー! 」
れみりゃの体は固定され、まったく身動きが取れなくなっていた。
「お、起きたか、それでは出荷前の最終作業に移るかな。」
背後から聞こえる声にれみりゃは恐怖する。
そう、今まで味わった事のない狩られる側の恐怖を・・・・・。
スッ・・・・・
「う〜!? うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! 」
れみりゃは頭が軽くなったのを感じ、すぐに理解した。
・・・・・大切な帽子が無くなった。
帽子を取り戻そうと目一杯体を動かして束縛から逃れようとする。
しかし、無情にもれみりゃの身は自由にならず更なる悲劇へと駒を進めていく。
スパッ! スパッ!
「う! うあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! 」
れみりゃの体に激痛が走った。
そして目で確認する事ができなくても、れみりゃはすぐに何が起こったのか理解する。
・・・・・・・・・・翼の感触を失った。
「うあ゛っ! うあ゛っ! うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! 」
体中を駆け巡る激痛、恐怖から逃れようとれみりゃは必死に暴れようとする。
しかし体は固定されており、身動き一つ取れない。
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ・・・・・うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ・・・・・。」
れみりゃが悲しげな鳴き声を上げた時だった。
カシャン
「うー! 」
コロコロコロコロコロン
体の束縛が解け、れみりゃはこの場から少しでも遠くへ逃げようと転がりだす。しかし・・・・・。
ガシッ!
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! 」
あっさりと捕まったれみりゃは悲痛な叫び声を上げる。
そしてれみりゃはそのまま狭い箱の中へ押し込められてしまう。
箱のサイズはれみりゃより一回り小さく、押し込まれたれみりゃはまったく身動きが取れない。
「うーーーーー! うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ・・・・・・・・・・。」
箱のフタがゆっくりと閉められ、れみりゃに外の音はほとんど届かなくなってしまった。
「・・・・・ぅ〜・・・・・。」
狭くて暗い箱の中、れみりゃが弱々しい鳴き声を上げる。
まったく身動きが取れない箱の中に押し込められたのであっては仕方のないことである。
「・・・・・ぅ〜・・・・・ぅ〜・・・・・ぅ〜・・・・・。」
間隔をあけ、れみりゃは不機嫌そうに鳴き声をあげる。
翼の生えていた部分がムズムズして気になって仕方がないのだ。
れみりゃは通常種に比べて再生力が高く、たとえ翼を失っても数日後には元通りになっている。
今れみりゃはまさに翼が再生しようとしているのだが、箱にきっちり収まっているため壁が翼の再生を邪魔し
ているのだ。
ガタンッ!・・・・・ゴト・・・・・ガッ!・・・・・
「・・・・・ぅ〜!・・・・・ぅ〜!・・・・・。」
時々箱に伝わってくる震動もれみりゃのストレスを更に上昇させていった。
光が差し込まない箱の中、時間の間隔は既に麻痺していた。
「・・・・・ぅ〜・・・・・・・・・・。」
ひょっとしたら自分は一生このままなのかもしれない、そんな不安がれみりゃの脳裏によぎった時だった。
「やっと届いたみたいね♪ えーと何々? この度は・・・・・・・・・・。」
「う! 」
突如うっすらと聞こえた声にれみりゃは元気を取り戻す。
「うー! うー! うーーーーー! 」
自分はここにいる! 助けてくれ! と必死に鳴き声をあげた。
そして願いが届いたのか箱に震動が加わる。
ガタッ!・・・・・パカッ!
「う〜〜〜〜〜♪ 」
久しぶりに見た外の世界にれみりゃは満面の笑みで鳴き声をあげた。
「うふふ♪ さすが加工場の製品ね。こんなにも活きがいいなんて♪ 」
れみりゃが閉じ込められていた箱を開けたのは人間の女であった。
女は笑顔でれみりゃの体を優しくつかむと、慎重に箱の中かられみりゃを救出した。
「う〜♪ う〜♪ 」
助けてくれた人間に向けてれみりゃは何度も何度も笑顔で鳴き声を上げた。・・・・・しかし。
「ではさっそく♪ 」
「う〜?」
コトンッ!・・・・・カチャンッ!
「うー! 」
れみりゃは閉じ込められていた箱程ではないが、再び狭い入れ物の中へ入れられフタをされてしまった。
なんとか脱出しようとするが、翼を失っているため思うように体が動かず悪戦苦闘している。
カチッ!
「うー! うーーー! 」
小さな音が鳴ったが、脱出しようと必死にもがくれみりゃには届いていなかった。
体を転がらせて壁にぶつかるがもともと狭い入れ物の中のため、たいした反動も得られず無駄な努力に終わっ
た。
シュ〜〜〜〜〜!
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! ?」
しばらくすると白い煙がれみりゃを包み込み、入れ物内の温度はみるみるうちに上昇していった。
「うあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! うあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! 」
れみりゃは体中を覆う熱気にもがき苦しんでいる。
そして内部の温度は更に上昇し・・・・・。
「う、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! ・・・・・・・・・・」
すさまじい断末魔を残し、れみりゃのゆん生は幕を閉じた。
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〜加工場&消費者サイド〜
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「A−3はちょうど良い頃合です。」
「B−1はあと2、3日といったところでしょうか。」
加工場のとある1室、職員達が大きな壁にあけられた窓の中を注意深く覗いている。
その窓の奥にあるもの、それは・・・・・。
「ぅ〜・・・・・ぅ〜・・・・・z z z z z ・・・・・。」
1匹のれみりゃが気持ちよさそうに眠っていた。
そう、ここではれみりゃ達が自然に近い形で養殖されているのだ。
餌場となるのは自然の森を模した大規模な施設となっている。
天井はガラス、壁には森の風景が描かれており、職員の出入りを除き完全に閉ざされた空間となっている。
そのため、れみりゃ達が勝手に外へ飛んで行ってしまう可能性は0であった。
れみりゃはれいむやまりさなどの通常種とは違い、数が少ない希少種である。
また特殊な条件の下でしか子供を産まないため、通常種のように安易に数を増やすことができない。
飼育にはそれなりのコストがかかるため徹底した管理の下、自然に近い形で飼育する事で品質をより向上させ
価値を高めているのだ。
そのため、養殖物であってもそれなりの値段となってしまうが需要は高い。
もちろんれみりゃ達は自分達が養殖されていることなど知る由も無い。
職員達が覗いている窓はNITORI印の特製マジックミラーとなっている。
こうして職員達はれみりゃ達に気づかれること無く毎日状態を観察することができているのだ。
「よし、A−3、A−7、・・・・・・・・・・は出荷時期だな。皆大切な商品だ、慎重に扱うんだぞ。」
班長の男が指示を出すと、職員達は慣れた手つきで作業に取り掛かる。
カチャッ
マジックミラーの窓は扉にもなっており、職員は静かに手を中に入れるとれみりゃをしっかりとつかみ上げる。
ガシッ!
「うー! ? うー! うーーー! 」
突然つかまれたれみりゃは当然すぐに目を覚まして暴れようとする。
しかし、移動手段の要である翼を上手く押さえ付けているため逃げられる事はまずなかった。
慣れた手つきで職員は窓の外にれみりゃを運び出す。
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! ! ! 」
れみりゃは悲痛な鳴き声をあげるが、職員はまったく気にすることなく作業を続ける。
窓から取り出したれみりゃをすぐに定番の透明な箱に閉じ込める。
この透明な箱、通常のものとは1箇所だけ違うところがある。それは・・・・・。
シュ〜
箱の側面に開いた小さな穴から職員は白いガスを注入する。
「うー! うー! ぅー! ぅー! ・・・・・z z z z z ・・・・・。」
箱の中で大声を出し暴れていたれみりゃはあっという間に夢の中へ旅立っていった。
れみりゃ達の“おうち”の各所で同じ様な光景が繰り広げられていた。
職員は眠っているれみりゃ達を出荷の最終作業を行う部屋へと運んでいく。
そして眠っているれみりゃの全身を丁寧に洗浄し、作業台の上に乗せ逃げられないようにしっかり固定する。
「・・・・・う〜? 」
ガタガタガタ・・・・・ガタガタガタ・・・・・
「うー! うーうーうー! 」
れみりゃは起きてすぐに逃げ出そうとするが、当然体が固定されているので身動き一つ取る事はできない。
「お、起きたか、それでは出荷前の最終作業に移るかな。」
職員はれみりゃに背後から近づくとれみりゃの帽子に手を伸ばす。
「う〜!? うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! 」
帽子を失ったれみりゃは“返せ! ”とばかりに大声で鳴くが、職員は気にすることなくナイフに手を伸ばす。
スパッ! スパッ!
見事なナイフさばきでれみりゃの翼を綺麗に剥ぎ取った。
「う! うあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ! ! 」
当然の反応ではあるが、れみりゃは激痛に襲われ悲鳴を上げている。
この翼は別の場所で燻製にされ、珍味としてれみりゃと一緒に出荷される。
眠らせたまま作業を行わないのには当然理由がある。
既にれみりゃの中身はかなり上質なものへと仕上がっているが、高級食材としてはまだ完全ではない。
そう、まだ身の引き締まった肉としての食感が足りないのだ。
れみりゃは恐怖や苦痛により通常種同様中身の質を変化させることができる。
職員が姿を見せずに作業を行うのも、恐怖を煽りより上質な身の引き締まった肉へと変化させるためである。
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ・・・・・うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ・・・・・。」
れみりゃの顔からはいつもの笑顔は消え、泣き顔へと変わっていた。
カシャン
職員は箱詰めするため、れみりゃのかせを外す。
「うー! 」
好機とばかりにれみりゃは転がって一目散にその場から逃げようとする。
当然職員は予想済みであり、両手で傷をつけないようにれみりゃをつかみ上げる。
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! 」
そして商品箱の中へ泣き顔のれみりゃを丁寧に収める。
この時、気を付けなければならない事は目を傷つけないように細心の注意を払う事である。
目を傷つけると著しく品質が落ちてしまうためである。
箱の大きさはれみりゃのサイズより一回り小さい。
それは翼の再生を阻害させ、消費者に届くまで常にストレスによる苦痛を与え続けるためである。
「うーーーーー! うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ・・・・・・・・・・。」
職員がフタを閉じるとれみりゃの声が一切聞こえなくなった。
出荷中の鳴き声による騒音を回避するためである。
こうして今日もれみりゃが高級食材として出荷されていく。
「すいませ〜ん、加工場からのお届け物です。」
とある民家にれみりゃの入った箱が届けられた。
民家の主は興奮気味に付属のメモを読み上げる。
「やっと届いたみたいね♪ えーと何々?
この度は加工場特製“まるごとゆっくりれみりゃ”をお買い上げいただき誠にありがとうございます。
内容物
れみりゃ1匹 下ごしらえ済み、まだ生きているので注意(丸ごと蒸し焼きにするのがオススメです。)
れみりゃの帽子1個 (食べることはできませんが貴重なれみりゃの帽子です。お好きなようにお使い下さい。)
れみりゃの翼の燻製 左右1枚ずつ(歯ごたえ抜群の燻製です。お酒のおつまみのどうぞ。)
※本製品はあくまで食品として出荷されたれみりゃです。
ペット用としては不向きですのでご注意下さい。
開封後は早めにお召し上がり下さい。
開封後にエサなどを与えてゆっくりさせると味の低下につながります。
万が一製品に不備がございましたらすぐに返品、交換を承りますので加工場の方へご連絡下さい、か。」
メモを読み終えた主は少々緊張しながられみりゃの入っている箱のフタへと手を伸ばす。
「いよいよご対面ね、かなりの期間待ったわね。さすがに緊張するわ。」
・・・・・パカッ!
「う〜〜〜〜〜♪ 」
箱を開けると満面の笑みのれみりゃが元気良く鳴き声を上げた。
「うふふ♪ さすが加工場の製品ね。こんなにも活きがいいなんて♪ 」
主は慎重にれみりゃの体をつかむと箱からゆっくり取り出す。
「う〜♪ う〜♪ 」
れみりゃは満面の笑みで主に向けて鳴き声を放っている。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゅるり♪ )
「ではさっそく♪ 」
「う〜?」
主はれみりゃを少し大き目の蒸し器へセットする。
コトンッ!・・・・・カチャンッ!
「うー! 」
カチッ!
フタを閉めるとれみりゃが大きな鳴き声を上げたが、主は気にすることなく火を入れた。
「うー! うーーー! 」
カタカタカタ! カタカタカタ!
中でれみりゃが暴れているのか蒸し器が小刻みに揺れ始めた。
蒸し器は丈夫な金属製であるため重量もそれなりにあり、転がる事しかできないれみりゃにとって自力での脱
出は不可能であった。
故に主は安心して蒸し上がる瞬間を今か今かと待ち続けている。
「うぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ! ?」
蒸し器の中からは驚きの混じったれみりゃの声が響いてきた。
「どうやら蒸気が充満し始めたようね♪ 」
フタの隙間から白い蒸気があふれ始める。
「うあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! うあぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ! 」
時間が経つにつれ、れみりゃの苦しむ鳴き声はどんどん大きくなっていく。そして・・・・・。
「う、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ! ! ・・・・・・・・・・。」
すさまじい鳴き声を残し、蒸し器は静かになった。
「うわ! びっくりした! どうやら蒸し上がりのようね♪ 」
主はミトンを装着するとゆっくりと蒸し器のフタを開ける。
・・・・・パカッ!
驚愕の表情を浮かべたまま固まっているホカホカれみりゃが完成していた。
「うわぁ・・・・・話には聞いていたけど確かに見た目はアレね。」
皮が破れないようにれみりゃを慎重に皿へ移し、テーブルまで運んでいく。
主は椅子に腰掛けると、緊張した面持ちで頬のあたりを軽くむしり取り口へと運ぶ。
パクッ!
「! ! ! ! ! ! ! ! ! !
おいし〜〜〜♪ ♪ ♪ 口中にお肉の旨味が一気に広がっていくわ! さすが普通の肉まんとは大違いね。」
かなりのサイズであったが、主はあっという間にペロリとれみりゃを平らげた。
「ふぅ、おいしかったわ♪ もうお腹一杯。」
主は少し苦しそうな表情で同封されていた翼の燻製と帽子を見つめながら口を開く。
「翼は酒の肴にするとして、この帽子どうしようかしら・・・・・?」
少しの間考え込んだ主であったが、特に思いつかなかったためとりあえず帽子は押し入れにしまったのであった。
こうして養殖れみりゃは女性のお腹の中へ消えてゆき、そのゆん生に幕を閉じたのであった。
にくまん工程 END
にくまん繁殖工程へ続く
作成者:ロウ
後書き
初めましての方、お久しぶりの方、本作品を最後まで読んでくださりありがとうございます。
個人的にですが、れみりゃは語呂が少ない方が可愛いと思っています。
そのため、私の書くSSのれみりゃはほとんど「うーうー! 」としか鳴きません。(希少種は除く)
「加工場の日常編」はまだまだ続きそうですが、ゆっくりと書いていきたいと思います。
最終更新:2011年07月29日 02:51