「あ、ありすのおにーさんはおにーさんだけよ!あんたなんて、おことわりよっ!?」
「おいおい、だからお前の飼い主はお前らなんていらないって言ってるって・・・」
「そんなのうそよっ!!!?」
ありすは今までのゆん生で一番大きな声で叫んだ。
あの優しいお兄さんがそんなこと言う訳がない。
ありすの大好きなお兄さんがありすを見捨てるはずがない。
「いやいや、嘘じゃないんだよなぁ。何せ・・・」
誰に話しかけるでもなく、あらぬ方向を向いてつぶやいた男はおもむろにお面を取り、地面に落とした。
その表情は溢れんばかりの悪意を孕み、赤ゆっくりなら見ただけで泣き出しそうなほど邪悪に歪んでいる。
しかし、ありすは彼の表情よりも顔立ちに気を取られていた。
「当の本人がそう言ってるんだからなぁ」
「お、おにーさん・・・?」
お面の下にはありすのよく知る、ありすの大好きな、ありすの家族の顔があった。
「おにーさん、どうちて・・・?」
「決まってるだろ? お前とチビ共を虐待するためさ」
「そ、そんなのうそよっ・・・!?」
予想外の事態に混乱し、状況の飲み込めないありすは右往左往しながらも男性の言葉を否定する。
しかし、彼女の目の前にいるのは確かにありすの飼い主の男性だった。
今まで見たこともないほどに邪悪な表情をしているが、どこからどう見ても見間違えるはずがない。
「で、でもぉ・・・ありすとおにーさんはかぞくなのよ!」
「家族に裏切られるのって辛いだろ?」
「それに・・・おにーさんが、ありすのおちびちゃんにひどいこと・・・」
「残念ながら俺がしたんだよ。なかなか面白かったよ」
一生懸命決して多くない語彙で男性から今の状況を否定する言葉を引き出そうとするありす。
が、男性の口から出てくる言葉に彼女の望むものはひとつとしてなかった。
「でも、おにーさんはつかまってるって・・・」
「そんなもん嘘に決まってるだろ? そもそもお前に言ったことの大半は嘘だよ、バーカ」
「ゆぐぅ・・・」
そろそろ言葉を思いつかなくなってきたらしく、ありすは俯いてしまった。
「なあ、チビ共。お前らからもこいつに何か言ってやってくれよ?」
「「「「・・・・・・」」」」
「なんだ、お前らもまったく状況が理解出来てないのか」
口を半開きにして呆然と自分を見つめる赤ありす達の姿を見て、男性はため息をついた。
が、すぐに気を取り直すと、再びありすの方を向く。
「ありす」
「ゆゆっ!?な、なあに、おにーさん?」
「お前・・・俺のペットにはなりたくないって言ってたよな?」
先ほどまでとは打って変わって、彼は柔和な笑みを浮かべている。
「ちがうわよ!ありすはおにーさんのぺっとだからおにーさんの・・・ゆぅ?」
「つまり俺のペットにはなりたくないんだよな。 それじゃ、そこでせいぜいのたれ死んでね」
「どほぢぢぇしょんなごぢょいうのおおおお!?」
今の彼の温厚な笑みは、先ほどとは打って変わってかつてのありすの大好きなお兄さんの笑顔そのもの。
それとじっと見つめていると、昔に戻ったかのような錯覚すら覚えそうになる。
「そりゃ、お前のことが大嫌いだからだ」
しかし、錯覚は錯覚に過ぎなかった。
優しい笑顔は徐々に悪意に染まって行き、攻撃的な恐ろしい笑みへと変貌してゆく。
ありすはその光景を見つめながら「器用なことが出来るもんだなぁ」と見当はずれなことを考えてしまった。
「本当にありすって奴らはよぉ・・・救いようのないクソレイパーばっかりなんだよ、わかるか?」
「あ、ありすは・・・ちがうわよ!?」
「猫被ってるだけだろ?薄皮一枚はげばすっきりの事しか考えてないクソレイパーだよ」
そんな事を口にしながら顔をしかめる男性。
彼の暗い輝きを放つ瞳の奥に、ありすは彼の悪意の根源を垣間見た。
それは・・・怒りだった。
「どうちでぞんなごどいうのおおお!?あでぃずなにもぢでないよおおお!?」
「ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ!俺のまりさをレイプしたクソレイパーのガキが!!」
「ゆぐっ!?」
「みゃみゃああああああ!?」
「「「ふぁひゃー」」」
彼が叫び終えるのと同時に強い衝撃を受けてありすは宙を舞った。
宙を舞いながら、痛みと悲しみのせいで止まらない涙でぼやけた視界の向こうに男性の笑顔を見た。
ありすに蹴りを浴びせたと思われる右足を前に突き出した不自然な体勢で笑っていた。
「俺のまりさを犯し殺したクソッタレのガキなんだよ、お前は!」
「ゆぐぅ・・・いぢゃ、いぃ・・・」
「確かにお前が犯し殺した訳じゃない。でもな、そんなもん知ったこっちゃないんだよ!」
しかし、彼はありすを見ていなかった。
ありすの向こう側に全てのありす種の存在を見出し、彼女達を憎悪の眼差しで睨んでいた。
あくまでも狂気を孕んだ笑顔のままで。
「あの日までは俺もどこか対岸の火事のように思ってた・・・でもな、それが間違いだったんだよ」
「みゃmy・・・ゆびぃ!?」
「お、おぢびぢゃあああああん!!?」
ありすに向かって、いや世界中のありすに向かって語りかける男性は母の元に駆け寄ろうとした4つ目のありすを踏み潰した。
が、彼は彼女を潰した事に何の感慨も持っていないらしく、叫ぶありすのことなどお構いなしに語り続ける。
おかげで、ありすはようやく目の前の現実を受け入れることが出来た。
「ゆぐぅ・・・ゆっぐりりかいぢだわ・・・」
「何を?」
「おにー・・・ざんが、ゆっぐぢできだいひどだってごとよ!」
「ぶっぶー、不正解」
両手で大きなバツ印を作りながら、男は長女赤ありすに大きな足を叩きつける。
もっとも、彼自身は軽く踏んだ程度のつもりなのだが、彼女にとっては必殺の一撃以外の何者でもないだろう。
押し潰された長女赤ありすのカスタードが四方八方に飛び散った。
「おぢびぢゃああああああん!?」
「可哀想だよな。無能な馬鹿親が間違った理解をしたせいでこんな目に遭うなんて・・・」
「「おひぇーはーん」」
「お前のガキ共がどうなるかは俺の気分しだいだって事・・・理解出来たか?」
今度はピザのように薄く伸ばされた三女赤ありすの頭上に男性の足が掲げられている。
その行動の意図する所は流石にありすでも簡単に理解出来た。
勿論、彼女の力ではこの事態を打開するのは不可能であると言うことも。
「分かるよな? ありす種ってのは存在しているだけで恥ずかしいんだよ」
「・・・・・・・・・」
「そうか、分からないか。じゃあ、仕方ないな」
三女の真上にある男性の足がわずかに動く。
「や、やめでね!?ゆっぐりりがいぢだわ!りがいぢだがら、やべてね!?」
「じゃあ、言ってみろよ? 何を理解したんだ?」
「あ、あでぃずだぢは・・・いぎでるだけでゆっぐぢでぎないいながものよぉ・・・!」
これ以上子ども達を死なせないためにも、彼女は男性を下手に刺激しないようにその屈辱的な言葉を口にした。
プライドと子どもの命、どちらが大事かを見誤るほどありすは愚かではない。
全身をわなわなと震わせ、目にいっぱいの涙を溜めて、口をへの字に曲げて・・・それでもありすは子どもを優先した。
「はい、正解」
「お、おねがいよぉ・・・あぢずのおぢびぢゃ・・・」
「と言う訳で死ね」
「ゆぴぃ!?」
しかし、男性のありすに対する悪意の、憎悪の根深さを完全に見誤ってしまっていた。
もし人間ならば容易に想像出来たことだが、ありすにはそれを想像することが出来なかった。
憎い相手を、いつか裏切りの絶望を与えるためだけに慈しむという行為を可能にするほどの妄執を。
「どほぢでぞんなのごどずるのおおおおお!?」
「自分で言ったろ? 生きているだけでゆっくり出来ない田舎者だって」
「ゆひぇーん」
ありすの子どもは薄皮の次女赤ありすただ一匹。
そして今、男性の足が彼女の頭上に大きな影を作った。
彼女だけでも救いたい一心で痛む体を引きずってゆっくりと這いずるありす。
「焦るなよ。こいつは治療すれば元気になる見込みがあるし、生かしてやってもいいんだ」
「ゆゆっ!?ほ、ほんとうに・・・っ?」
「ああ、本当さ。もうお前の子どもはこいつ1匹しかいないしな」
「いっぴき・・・?ま、まりさの、まりさのおぢびぢゃ・・・」
一瞬、体を傾けて考えるような仕草をするありす。
その直後に目先の問題に気を取られて重要なことを忘れていたことに気づいた。
苦痛と屈辱と疲れきっていた表情が驚愕によってわずかに活力を取り戻す。
「ああ、あいつらならとっくに潰したよ。もういらないし」
「ど、どほぢでぇ!?あのごだちは!ありぢゅぢゃないでぢょぉ!?」
「ありすが親ってだけで同罪なんだよ」
そう呟くとポケットから子まりさ達のものと思しき帽子を取り出し、無造作に放り投げる。
破れ、ほころび、汚れ、解れた小さな山高帽はツヤのない安っぽい黒い布切れに成り果てていたが、間違いなく子ども達のものだった。
まりさ種の子どもなら生かしてもらえるかも知れない、そんな儚い期待は抱くと同時に打ち砕かれた。
「・・・・・・お、おに゛ぃざん・・・」
「何だ?」
「・・・おぢびぢゃ、だげは・・・ゆっぐぢざせであげで、ねぇ・・・!」
彼の憎悪がもはや常軌を逸していることを理解したありすは泣きながら笑う。
全てに絶望しきった果ての諦めの境地だった。
それでも無駄だろうと半ば諦めながらも最後の1匹になった子どものために命乞いをした。
「言われなくてもそのつもりさ」
「ゆっ・・・ゆっぐぢ、ありが・・・」
その一言で十分だとありすは思った。
その一言で彼が本当は優しい人なのだと信じることが出来た。
その一言で自分の子どもの無事を確信できた。
散々酷い目に遭わされ、裏切られたにもかかわらず。
「ただし・・・最低のクソレイパーとして、な」
「ゆぅ・・・ゆゆっ!?」
「お前の母親みたいなクソレイパーにしてやる、って言ったんだよ」
男性はまくし立てるように喋り続けた。
まりさを殺したありすやその子どもだけじゃもはや満たされない、と。
ただありす種を片っ端から潰すだけじゃ気がすまない、と。
ありすの子孫を命ある限り苦しめ、欺き、偽りの希望にすがりつかせて最後には絶望させてやる、と。
産まれたその瞬間にそれを後悔するするくらいの絶望をカスタードに刻み付けてやる、と。
「や、やめでぇ・・・おねがいよぉ・・・ありずのおぢびぢゃんを、でいばーにぢないでぇ!?」
「言っただろ? お前らを苦しめるのが俺の目的なんだよ。 死んだくらいでゆっくりできると思うなよ」
「お、おねがい、ぢまずぅ・・・おちびぢゃ、んをとかいはのゆっぐぢぃ・・・ゆぶぅ?!」
必死に懇願しながらありすは再び最後の1匹になってしまった我が子の元へと這いずっていく。
なんとか彼女を守ろうと、混乱と恐怖のあまりに言葉も発せず怯える彼女を慰めようと。
しかし、またしても男性に蹴り飛ばされ、ささやかな望みが叶うことは無かった。
「ゆ゛っ・・・お゛にぃ、ざぁん。ひ゛とづだけ、ゆっぐぢ・・・おぢえでねぇ」
「何だ?」
「あ゛ぢずのまま゛は・・・ほんどうに、れい・・・ゆびぃ!?」
「クソレイパーのガキでもちょっとはマシだと思ったんだがな・・・所詮クズだな」
2度蹴り飛ばされ、かなりの量のカスタードを漏らしたありすにもはや動く力も残されていない。
そんな彼女が見出した最後の希望が男性の軽蔑に満ちた眼差しによってかき消された。
「ありすのままはほんとうにれいぱーだったの?」
結局、ありすがその言葉を言い終える前に男性は次女赤ありすを捕まえて立ち去ってしまった。
「ゆっぐ・・・ゆ゛びぃ・・・」
男性の徐々に小さくなって行く背中を見つめながら、ありすは呻いた。
もはや痛みすらも感じない体で、何とか男性に追いつこうと底部に力を込めた。
けれど、一歩も動くことが出来なかった。
「おぢびぢゃ、ごべんでぇ・・・」
ありすは謝った。
自分のせいで、もっとも忌むべき存在にされてしまう我が子に。
自分の無力で守れなかった小さな命に。
自分の子どもだったばかりに理不尽な憎しみに巻き込まれた子ども達に。
「まりぢゃぁ・・・ごべんねぇ・・・」
ありすは謝った。
自分のつがいになったせいで不幸に巻き込まれたまりさに。
もっとも、ありすに彼女の末路を知る術などないのだが。
「みゃみ゛ゃ、ごべんなさぃ・・・」
ありすは謝った。
男性に言われるがままに嫌悪してしまった母に。
果たして彼女がレイパーだったのか、真偽は定かではないが。
それでも謝らずにはいられなかった。
「お゛にぃさぁ・・・ごべ、ん・・・」
ありすは謝った。
理由は分からないけれど、飼い主の男性に。
最後の最後に酷い裏切りを受け、本来憎むべきはずの彼に。
その言葉を最後にありすは二度と動かなくなった。
家に帰った男は次女赤まりさの皮の厚みを戻す作業を行いながら、一人考え込んでいた。
あのありすの表情を、絶望を見たことで多少は大事なものを奪われた憎しみから解放された。
もう、この赤ありすを叩き潰して、唯一生き残っている親まりさも処分して、新しいゆっくりでも飼おうかと。
「おい、れいぱー」
「ゆえーん、ありしゅれいぴゃーぢゃ・・・」
「うるさい」
皮の厚みを取り戻したことで何とか喋れるようになった彼女にでこピンを食らわした。
痛みからいっそう激しく泣き喚き始めるが、彼は気にも留めずに思案を続ける。
しかし、今の自分はきっと普通にゆっくりを飼っても満たされることはないだろう、と。
ありすの子ども達を嬲ったときの、曰く形容しがたい暗い快感。
ありすを絶望させていくときに感じた得体の知れない幸福感。
それらが、彼を捕えて放さなかった。
「そうだな・・・せっかくだからありすに言った事を本当にやってみようか?」
「ちょうどレイパーと可哀想な被害者も居る事だしな」
ありすやその子どもだけじゃ満たされない。
ただ片っ端から潰すだけじゃつまらない。
ありすの子孫が苦しみ、欺かれ、偽りの希望にすがりついて最後には絶望する様をもっと見たい。
産まれたその瞬間にそれを後悔するするくらいの絶望をカスタードに刻み付けてみたい。
治療を終えた男性はいつか哀れな被害者になる黒帽子を被った饅頭の元に食事を持っていった。
‐‐‐あとがき‐‐‐
ありす虐待といえば今や引退してしまったあのお方
彼の作品は本当に素晴らしかった
落として落として更に落として、もはやそこより下はないと思えるところで更に落とす
最後には肯定の言葉をもって突き落としたりと、一片の尊厳すらも残さない驚愕の虐待でしたね
氏の影響がこの作品の随所にも見られます(悲しいほど劣化してるけどな!)
というか、ビデオネタのことを思い出したのがすでに70kbほど書き終えてからと言う・・・
ああ言うガチ虐待を書ける人が妬ま羨ましい
最終更新:2011年07月29日 18:04