ゆっくりいじめ系2844 ありす虐待エンドレス3-B

「あ、ありすは・・・まりさとゆっくりしたいわ!」

ありす種の子ども達が心配でない訳ではない、愛しくない訳じゃない。
とは言え、あのような虐待を受け、過半数がもはやまともに跳ねることの出来ない状況では仕方がないのだ。
その上「選ばれなかったほうは殺す」などと脅されてしまってはもはや選択の余地などなかった。

「お前のせいで散々酷い目に遭ったチビありす共は見捨てるんだな?」
「ゆぐっ・・・し、しかたないでしょ!?」
「そうか・・・はい、更正失敗。更正プラン2に移行」

しかし、彼女のそんな苦渋の決断は男の一言によって汚された。
男のお面に隠れて見えない顔を信じられないと言った面持ちで凝視するありす。

「ど、どういうこと・・・?」

悲しいかな、ゆっくりにしては賢いありすはすでにその言葉の意味を理解できていた。
ただ、納得することが出来なかった。
自分は男の命令に従って選択したのに「更正失敗」とは一体どう言うことなのか?

「要するに・・・お前は自分のせいで酷い目に遭った可哀想なチビありすを見捨てるクソ親だってことさ」

理解の追いつかないありすの困惑を察した男はいつも通りの嫌味ったらしい口調で説明を始めた。
それは今のありすには嫌味だとか腹が立つという以上の、憎悪の念すらも喚起させる。
それでも、これ以上この男に自分を侮辱する隙を与えないよう、彼女は歯を食いしばって感情を押し殺す。
この必死の抵抗自体がすでに付け入る隙を与えていることにも気づかずに。

「あれぇ?ありすはチビ共がどうなるか訊かないのかなぁ?」
「ゆゆっ!?」
「アレだけやっても自分の保身が一番のゲスなんだなぁ」

彼女が子ども達の心配をした所で何か難癖を付けたくせに。本当のゲスは誰?
そんなことを考えながら彼を睨みつけるありすに男はゆっくり用の大きなアイマスクを取り付けた。
それから髪の毛を乱暴に掴んで彼女を持ち上げると、何処かへとえっちらおっちらと歩いて行く。
ドアを開ける気配がし、外の空気にさらされて、ありすは彼が外へ向かっていることを何とか理解出来た。

「よお、チビども。お前らの母親を連れてきてやったぞ」
「「ゆゆっ!みゃみゃー!?」」
「「「ふひゅ、ひゃふぁー」」」

そうして目的の場所に到着するとありすを地面に置き、彼女のアイマスクを外した。
彼女が視界を取り戻したとき、そこに飛び込んできたものは狭くて暗くて薄汚い、野生のゆっくりの巣穴の壁だった。
ビデオの中でだけ見たことのあるみすぼらしい巣は実物もやっぱりみすぼらしく、思わず嫌悪感に顔を歪める。

「「みゃみゃー!」」
「「「ひゃふぁー」」」
「ゆゆっ!ありすのおちびちゃ・・・ゆぎゃあああああああああああああああ!?」

すでにビデオで彼女達の壮絶な有様は目の当たりにしていた。
しかし、それでも彼女を呼ぶ声の主の方を振り返って、その姿を捉えたとき、叫ばずにはいられなかった。
長女ありすは細く引き伸ばされた後にとぐろを巻くように成形され、ヘアバンドがなければありすでさえもゆっくりだと思えない姿になっている。
もはや動くこともかなわないらしく、妹思いの優しい姉は何の役にも立たない奇怪なオブジェに成り下がっていた。
次女ありすは皮を限界まで剥かれた結果、皮の破損が怖くて動くことはおろか表情を変えることも出来ず、口をわずかにぱくぱくと動かすばかり。
わがままでも可愛らしかった彼女は恐怖に頬を引きつらせることも出来ない有様になっていた。
押しつぶされて広がってしまった三女ありすはあらぬ方向を向いたまま、笑顔と思しき表情を浮かべている。
目や口はおろか底部の機能も失われてしまったらしく、もはや頬ずりも出来そうにないそれはあまりにも薄気味悪い。
ちなみにこの3匹の中にはまともに「みゃみゃー!」と声を発することの出来た個体は1匹もいなかった。

「おいおい、怯えてやるなよ。お前の大好きなおちびちゃんだぜ?」
「「みゃみゃー!」」
「「「ひゃふぁー」」」

一方、後に生まれた3匹はかろうじて原型と呼べるものを留めていた。
双子のありすの片方は目のない全身がこんがりと焼けた禿饅頭に成り果て、もう一方は前後に目のついた異形。
この2匹はヘアバンドがなくても紙一重でゆっくりだと認識できるかもしれない。
余談ではあるが、全身を焼かれた赤ありすだけは何も聞こえないので母の声に気づかず、返事をしていない。
そしてある意味でもっとも凄まじいのが皮を葛生地に交換された末妹の赤ありすだ。
もし、全身の皮膚や筋肉が透明で常時内臓を露出させている人間に遭遇すれば、誰だってこんな反応しか出来ないだろう。
なまじ原型を残していることがなおさら悪い方向に作用したらしく、ありすは思わずカスタードを吐き出してしまった。

「ゆげぇ・・・おぇ・・・!?」
「ちなみにサイズが変わってないのは食事制げ・・・って聞いてねぇな」
「ゆゆっ!みゃみゃー、ゆっきゅちー!?」

数日の間に内臓に覆われた視界に慣れた末妹赤ありすは嘔吐した母の下へと一生懸命跳ねてゆく。
そして、葛生地の少しねっとりとした頬で青ざめた顔をしている彼女に頬ずりをした。
その奇妙な感触にありすは思わず身を引いてしまい、それを拒絶と捕らえた彼女は涙ぐんでしまう。

「おやぁ、ゲスクソありすがおちびちゃんを泣かせちゃったぞぉ?」

巣の入り口ではお面をつけた男が面白おかしく、無責任に好き勝手なことを囃し立てている。
ありすは怒りに任せて葛饅頭の娘を押しのけると、彼の方へ向かって跳ねて行き、頬を膨らませて威嚇した。

「いいかげんにしてね!ぜんぜとかいはじゃないわ!ぷくううううう!」
「事実だろぉ~。それに・・・お前のガキ共にはお前のせいだってことを教えてないんだから感謝しろよ、腐れ饅頭?」
「ゆゆっ!?」
「今度粋がったら何もかもばらすからな?」

ありすにしか聞こえない小さな声で男は彼女に釘を刺す。

「それじゃ、俺はもう行くぜ。ああ、そうそう・・・今日から食事は自力で集めないと食べられないからゆっくり頑張ってね!」

更に「死体同然のおちびちゃんをこんなに抱えて大変だね。でも沢山死なせると更正失敗扱いだよ!」と言いながら、彼はその場を後にした。



「「「ひゃふぁー、おひゃーふいひゃはー」」」
「「みゃみゃ、おにゃかしゅいちゃよ!」」

ありすは途方にくれていた。
理由は言うまでもなく彼女が現在置かれているこの絶望的な、いや絶望そのものと言えるこの状況。
ありすは温室育ちで底部もあまり発達しておらず、また自然のものを食べるには舌が肥えすぎている。
それどころか、何が食べていいものなのかさえも分からない有様であった。

「・・・ゆっ」
「ゆぅ、おねーしゃんがふるえちゃよ!」

更にこの狭くて暗くてじめじめした最低の環境の巣。
天井が低すぎて跳ねることも出来ないのに、床がざらざらで這いずるだけで激痛が走る。
その上、こんな劣悪な環境では病気になる以前に気が滅入ってしまいそうだ。

「「みゃみゃー!ありしゅ、おなきゃしゅいちゃよー!?」」
「「「ふぁひゃー」」」

そして何よりも問題なのが、どう見てもまともに食料を集めることなどできそうにないこの赤ゆっくり達である。
移動することが出来るものは双子の4つ目の子と末妹の2匹だけ。その上、どちらも視野に関係する異常を抱えていた。
つまり、食事を集めてくることが出来るのはありすしかいない。
もっとも、一番の問題は健常ならば赤ゆっくりを狩りに連れて行こうと考えたその無知蒙昧なのだが。

「ゆっくりりかいしたわ!おちびちゃんたちはゆっくりまっててね!」
「「ゆっきゅちー!」」
「「「ふっひゅいー」」」

それでもありすは不安を振り払って生まれて初めての狩りをすべく巣の外へと出て行く。
赤ありす達は彼女の懸念に一切気づくことなく、無邪気に彼女が自分達をゆっくりさせてくれると信じている。
ありすはそんな彼女達の母に守られる安堵感に満ちた声を背中に受けて、意気揚々と跳ねていった。

「ゆひぃ・・・つかれたわ!みちさん、いなかものね!?」

しかし、温室育ちのぷにぷにの底部には舗装すらされていない道はあまりに険しいものだった。
巣を出てから10分としないうちに歩き疲れ、その場にへたり込んでしまう。
幸いにも巣の近くにはゆっくりを狙うものはいなかったが、それと同時に同属や適当な食料も存在しなかった。

「ゆぅ・・・このくささんはたべられるのかしら?」

休みがてら目に付いた葉っぱに噛り付いて味見をするが、あまりの苦さに含んだ葉っぱを吐き出した。

「ごんなの、ぜんぜんどかいはぢゃないわ!?」

ありすは葉っぱに不平不満を漏らしているが、今彼女が口にした葉っぱは野生のゆっくりにとっては美味しい方の食べ物。
要するに、これが食べられないようでは自然の中では生きていけないことを意味している。

「ゆふんっ!ありすはもっととかいはのたべものさんをゆっくりさがすわ!」

が、ありすがそんなことを知るはずもなく、多少体力の回復した彼女は再びあんよに優しくない道を進み始めた。

「ゆっくりー・・・!」
「ゆっゆっ!ゆっくりー!」
「ゆっく・・・ゆゆっ、いけさん?」

ありすは何の考えもなしに跳ねていった先で幸運にも池を発見した。
もっとも、かつて飼い主の男性と一緒に見たそれとも、ビデオの映像で見たものとも似ても似つかないどぶ池だが。
とはいえ、この偶然によってありすは食糧以上に深刻な飲み水の問題を解決・・・

「ゆぅ・・・こんなゆっくりできないおみずさん、ごーくごーくできないわ!」

かに見えたが、自然の水の汚さや、見た目ほど汚れていないことを知らないありすはそれを華麗にスルーした。
きょろきょろと辺りを見回し何か食べられそうなものを探すが、不味そうな葉っぱしか見当たらない。
もし彼女が目を凝らせばそこに虫を見つけることが出来たかもしれないが、見つけた所で食べられないだろう。

「ゆぅ・・・おなかすいたわ・・・」
「ゆえーん、おにーさぁん!おいちいごはんさんたべだいよぉー!」
「ゆっくりー!ゆぴええええええええええええん!?」

そうこうしている内に自分自身も空腹に耐え切れなくなり、その場にうずくまって泣き出してしまった。
この環境においては赤ん坊同然の経験と知識しかなく、飼い主の男性ともずっと会っていないありすにとってこの状況はあまりに過酷。
本来ゆっくり出来るはずの子ども達も恐ろしい容姿に変わり果ててしまってゆっくり出来ない。
たとえ彼女達の心が昔のままであったとしても、やはりああなる以前と同じように接することは出来ないだろう。

「ゆっぐ、もうやだ・・・おうぢがえりだい!」
「おにーざんとゆっぐぢしたいよぉ!まりざとすーりすーりしだいよぉ!」

1日を待たずしてありすの心は半ば折れてしまった。
元より1週間の孤独な生活と我が子の変貌や環境の激変に気が滅入っていたというのもあるだろうが。
大粒の涙を零しながら泣きじゃくるその姿は都会派とは程遠く、聞き分けのない子どものようだった。

「ゆっ?!ゆぅ・・・おちびちゃんがまってるわ」

いつの間にやら泣き疲れて眠ってしまっていたらしく、目を覚ますと空が赤く染まっていた。
急いで帰らなければ赤ちゃんが寂しがる。
ありすは自然の中ではてんで的外れな思考を巡らせて、のそのそと家路を急ぐ。
石の転がる道に絶えられず、眠っている間に赤く腫れてしまった底部を庇いながらゆっくりゆっくりと。

「ゆぅ・・・ごはんさん、みつけられなかったわ・・・」

正確に言えば、肥えすぎた舌を満足させられるものを見つけられなかった、である。
が、そんな事は知るはずのないありすは俯いたままとぼとぼとすでに暗くなった道を跳ねて行く。

「ゆぅ・・・きょうはごはんさんみつけられなかったわ・・・」

彼女なりに一生懸命跳ねているつもりだが、底部を庇いながらの移動は昼間以上に鈍足。
1時間近く跳ねているにもかかわらず、まだ先ほどのどぶ池がありすの低い視点からでも目視できる。

「ゆふぅ・・・のじゅくさんはぜんぜんゆっくりできないわ!」
「でも、もうすこしでおにーさんやまりさたちとゆっくりできるわ!」

ありすは半ば折れた心を叶うかどうかも分からない希望で支え、再びありすとっては道なき道を急いだ。

「おちびちゃん、ゆっくりただいま!」
「「みゃみゃー、ゆっぐぅ・・・ゆぅゆぅ・・・」」
「「「ふぅ・・・ひゅぅ・・・」」」

更に1時間後、ありすはれみりゃなどの襲われることもなく無事巣へ帰り着いた。
ようやく巣に到着した時には彼女の子ども達はすでに眠っており、母を求めて泣きじゃくったのか頬にうっすら涙が滲んでいる。
その姿を見て申し訳なく思ったありすは彼女達の異形を前に一瞬ためらいながらも、優しく頬ずりをした。



翌朝、ありすが目を覚ますとすでにお昼になっていた。
本当ならばれみりゃが巣に帰る早朝には巣を出ないといけないにも関わらず、往復の時間を考えないといけないにも関わらず。
失態に気づいたありすは急いで外へ飛び出そうとするが、底部に力をこめた瞬間に激痛が走り行動不能になった。

「みゃみゃー・・・おなきゃしゅいちゃよぉ・・・」
「ゆっきゅちたべちゃいわ・・・」
「「「ふぁーひゃー・・・」」」

あまりの激痛に悲鳴すらも上げられずにぷるぷると震えていることに気づかない子ども達は母に空腹を訴える。
ありすは彼女達の声に背中を押されて、ぽろぽろと涙を零しながらも一生懸命這いずって巣の外へと出て行った。

「ゆひぃ・・・!い、ぢゃ・・・いぢゃいよぉ・・・」

跳ねれば力を入れるたびに、着地をするたびに気を失いそうなほどの激痛がありすを容赦なく襲う。
しかし、這いずれば歩みが遅くなる上に、恒常的な痛みとなってありすに襲い掛かってくる。
だからと言って、赤ゆっくりを飢えさせるわけにも行かず、自分も空腹ではゆっくり出来ない以上、何もしないわけにもいかなかった。

「ゆひぃ・・・いぢゃいわ!ゆっぐぢやずむよ!」

相変わらずぽろぽろと涙を零しながら牛歩と言うにしても遅すぎる速度で進むありす。
数十メートル、時にはほんの数メートル進むたびに休憩を取りながら、ゆっくりと進んでゆく。

「ゆっくぢやすんだわ!ゆっくりいそぐよ!」

誰に話すわけでもなく、そう宣言したありすは再び進み始めた。

「ゆひぃ・・・ゆぐ・・・!」
「いだいわ゛・・・ぜんぜんとかいはぢゃないぃぃ・・・」
「ぼうや゛だ!おうぢがえりだい!?」

しかし、昨日の強行軍でぷにぷにの底部を酷使したありすがどんなに頑張ってもまともに進むことなど出来ない。
さっき休憩した場所がまだ目視できる距離で休んでは、泣き叫びながら進んでまた休む。
そんな事を繰り返していると、不意にどこかで嗅いだ事のある匂いが漂ってきて、ありすの意識をひきつけた。

「ゆぅ・・・なんだかゆっくりしたにおいだわ?」

その匂いに惹かれたありすは痛む底部に鞭打ち、草木の茂る本当に道なき道へと進入する。
幸運にも葉っぱが足をざらついた地面から保護してくれたおかげであまり休むことなく匂いの元にたどり着けた。

「ゆぅ~~~っ!ゆっくりしたおはなさんだわ!」

うっそうと生い茂る草木をかき分けながら進んでいったその先で、ありすは綺麗なお花畑を見つけた。
かつて飼い主の男性からもらった小さな花と、男性と行ったお花畑に咲いていた花とそっくりの赤い花が一面に咲き乱れていた。

「ゆぅ~ん!とってもゆっくりできるわ!」
「おはなさん!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくり~♪ゆっくり~♪」

懐かしく、そして久しいゆっくりした景色を前にありすは子どものように大はしゃぎ。
花畑の真ん中まで痛みも忘れて跳ねてゆくと、ころころと転がって花と戯れた。
もっとも、押しつぶされる花にとってはそれで死ぬことはないにせよ、いい迷惑だろうが。

「ゆぅ~ん、みつさんちゅーちゅーするよ!」
「ちゅーちゅー・・・し、しあわせぇ~~!」
「おはなさんもたべるわ!むーしゃむーしゃ、それなりー」

花弁というのはお世辞にも美味しいものではないが、彼女にとってはそれなりのものらしい。
ありすは久しぶりの、それこそお面の男に捕まって以来のまともな食事にありつけたことを涙を流して喜んでいる。
やがて、安心したせいか強烈な疲労感と眠気に襲われ、花に囲まれてゆっくりと眠りについた。



夕刻前に目を覚ましたありすは今だに受け入れ難い現状を思い出すべくゆっくりと思考をめぐらせつつ百面相をしていた。
男性やまりさと暮らしていたことから始まり、お面の男の拷問、そして赤ありす達との野生の暮らし。
ゆっくり出来ることを思い出しては笑顔を浮かべ、ゆっくり出来ないことを思い出しては泣き顔になった。

「きょうのごはんさんはこのおはなさんにするわ!」

やがて、自分が今お花畑で目を覚ますに至った経緯を思い出したありすは、そんなことを叫びながらにっこりと微笑む。
昨日はゆっくりさせてあげられなかったけれど、今日こそはきっと皆で一緒にゆっくり出来る。
慣れない狩りを無事成功させた彼女を褒め称える我が子の姿を想像しては、思わずにやけてしまう。

「ゆぅ~!ありすのかわいいおちびちゃん!ゆっくりまっててね!」

脳裏に可愛らしい我が子の、異形になる前の姿を思い浮かべながらありすは花を出来るだけ多く口に含んだ。
そして、子ども達の待つ巣へ戻ろうと最初の一歩を踏み出す、が・・・

「ゆゆっ!?お、おうちさん・・・どこなのぉ?」

昨日は道なりに進んだからこそ何とか帰ることが出来た。
しかし、今日は途中で茂みの中に入ってしまったために帰り道が分からなくなってしまったのだ。

「ゆぅ?ゆぅっ?ゆぅ~~?」
「ゆっ・・・と、とにかくゆっくりいそぐわ!?」

ゆっくり考えている暇はない。とにかく進むことにしたありすの進行方向は元来た道とは正反対の方角。
進めど進めど草木が鬱蒼と生い茂っているばかり。
やがて、道を間違えたと気づいたありすは急いで引き返そうとするがそのための道さえも分からず、更に困惑する。

「ゆっぐ・・・ゆええええええん!おうぢざんがわがらないいいいい!?」

我慢の限界に達し、泣き出してしまうまでの時間は本当に一瞬だった。
せっかくたくさん溜め込んだ赤い花をぽろぽろと涙と一緒に零しながら、ありすは大声で泣き叫ぶ。

「おにーざああああああん!まりぢゃあああああああ!」

大声で大好きなまりさや飼い主の男性に助けを求めた。
が、助けが来ることなどあるはずもなく、泣き疲れたありすは茂みの中で再び眠りに落ちた。

一方、その頃の子ども達は・・・

「おなきゃしゅいちゃね・・・みゃみゃ、ゆっきゅちししゅぎよぉ・・・」
「しゅーね、ありしゅぽんぽんしゃんがゆっきゅちできにゃいわ・・・」
「ふーはふーはひはいえ」

まともに動くことも出来ない有様では姉妹でじゃれ合う事すらままならず、その場に座り込んだまま、時折不満の声を漏らしていた。
幸いにもそれが余計な体力の消耗を抑え、彼女達の命をつなぎとめる要因になっているのだが。
しかし、1週間も人間の手で大切に育てられた赤ありす姉妹にとっては一食抜くだけでもゆっくり出来ない事だった。

「ひんふぁ、ひゃふぁほひんいえへ」
「ゆぅ、なにいっちぇるのおねーしゃん?」
「みんにゃ、みゃみゃをちんじちぇね?」

長女ありすの言葉を4つ目の赤ありすが正確に訳したの聞いて、とぐろを巻いたオブジェの中心にある顔がにっこりと微笑む。
そして、その言葉がきっかけとなって赤ゆっくり達は「ママがいつでも守ってくれた」事を思い出して心を奮い立たせた。
壁さんに頭をぶつけてしまった時、患部をぺーろぺーろしてくれたこと。
何もないところで転んでないていると頬ずりをしてくれたこと。
それにお面の人間さんが言っていた。「ありす達が生きているのはお母さんのおかげ」だと。

「ゆぅ~ん・・・おうちゃをうたっちぇまちょうね!」

にわかに元気を取り戻した5匹は歌を歌いながらありすを待つことにした。
あまりにゆっくり出来る歌だったから、前に歌った時には皆寝てしまった最高の歌を。

「ゆ~♪ゆ~♪」
「ゆんゆんゆ~♪」

まともに歌えるのは葛饅頭と化した末妹と双子の片割れの4つ目のありすのみ。
残りの3匹はお世辞にも歌とは呼べないような「ふー」「ひゅー」などとうめき声を漏らしているだけ。
全身を焼かれた赤ありすにいたってはそもそも前の会話が聞こえていなかった。

「「ゆ~♪ゆっくり~♪」」

しかし、それでも赤ありす達は幸せだった。
ありすがきっと自分達をゆっくりさせてくれると信じているから。
いつか元のゆっくりした暮らしに戻れると信じているから。

「「「ひゅーひゅー、ひゅっふいー」」」

根拠なんて何もない。強いて言うならば彼女達は大好きな家族を信じている、ただそれだけ。

「ゆぅ~!ゆっきゅちできちゃね!」
「しょーだにぇ!ゆっきゅちー!」
「「「ふっひゅひー」」」

こうしてほんのちょっとだけ満たされた赤ありす達は、ゆっくりした気持ちで母の帰りを待った。
ただ一匹、何も見えない聞こえない感じないの三重苦の中で恐怖に震えることすら忘れた双子の片割れを除いては。



翌朝、せっかく集めた花の半分以上失ったありすが帰宅すると、赤ゆっくり達は出来る限り満面の笑みで彼女を迎えた。
お腹は空いているし、丸1日母が留守でとても不安だったが、彼女を安心させるために涙は見せなかった。

「みゃみゃ、おきゃえり!」
「「ひゃふぁー」」
「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「ふっひゅいー」
「ゆぅ、ゆっくりしていってね・・・」

しかし、疲労困憊のありすに彼女達と話す余裕はなく、集めた花を吐き出すと、巣の入り口付近でへたり込んでしまう。
底部は一部中身が露出しそうなほどに消耗しており、恐らく明日は食料を集めにいけないだろう。
たまたま視線の先にいた全身を焼かれた赤ありすを眺めながら、崩れ落ちるように夢の世界へと没入していった。

「ゆっきゅちちていっちぇね!」
「みゃみゃー!ゆっきゅちししゅぎだよ!」
「おかーしゃんはねぼすけしゃんだにぇ!」

目を覚ましたありすが顔を上げるとそこには6匹の赤ありすと3匹の赤まりさ。
みんな丸々としていて、頬はつやつやで、金色に輝く髪がとても美しい。
間違いなく、ありすの良く知っている可愛らしい我が子の姿がそこにあった。

「ゆ~ん、いっぱいあそんだからおつかれなんだよ!」
「そうだな、昨日は遠くまで出かけたからなぁ」

声のした方を振り向くとありすの大好きな男性とまりさの笑顔があった。
一瞬、どうしてなの?と首を傾げるがその様子を見た男性とまりさも首をかしげた。

「どうした?」
「どうしたの、ありす?」
「ゆぅ?・・・ゆゆっ、なんでもないわ!」

が、今そこにある幸せの大きさに彼女の瑣末な疑問は流されてしまった。
まずはまりさの元へと跳ねて行き、彼女のもっちりした柔らかい頬に頬ずりをする。
まりさは一瞬恥ずかしそうに頬を染めながら身を引くが、まんざらでもなさそうな笑みを浮かべて身を委ねる。

「ゆゆっ!おきゃーしゃんだけじゅるいよ!」
「「ありしゅもしゅりしゅるしゅるー!」」
「「ゆっきゅちいしょぐよ!」」

すると赤ゆっくり達が一斉にありすとまりさと男性の方めがけて跳ねてきた。
先頭を走るのは3匹の赤まりさ。
皆まりさそっくりのとっても格好良くて強そうで元気いっぱいのゆっくりした子達だ。

「まりしゃがいちばんだよ!」
「ゆーっ!まりしゃまけにゃいよ!」
「ゆゆっ、まっちぇね!まっちぇね!」

負けず嫌いな彼女達は姉妹同士競い合いながら我先にと先頭争いを繰り広げている。
その後ろに続くのは長女と次女の年長組ありす2匹。
どちらもありすに負けず劣らずの可愛らしい都会派のレディーだ。

「ゆっくりー!ゆっくりー!」
「ゆゆっー!」

甘えん坊の次女ありすはわき目も振らずまりさ達を追いかけて両親の元を目指している。
その表情は真剣そのもので、一刻も早く母に甘えたいことを言葉よりもはっきりと示していた。
一方、彼女のすぐ後ろを走る長女ありすはしきりに後ろの様子を気にしていた。

「ゆぅ・・・ありしゅのいもーちょ、だいじょうぶかなぁ?」
「「ゆっくちちてりゅよ!」」
「いもーちょはいもーちょでもいもーちょのことじゃにゃいよ!」

どうやら第三集団の双子のことを気にしているのではなく、最後尾の2匹の心配をしているようだ。
最後尾の2匹・・・つまり、運動の苦手な三女ありすと皆より一回り小さい末妹ありすのことである。
とは言え最後尾の2匹もどこかに障害があるわけでもなく、少し運動が苦手なだけなのでいささか過保護のきらいがある。

「ゆゆっ、まりしゃがいちんびゃんだよ!」
「ゆふぅ・・・にばんさんだったよ!」
「ゆ~・・・さんばんだよ・・・」

そうこうしている内に、先頭集団の赤まりさ3匹がありす達の下に到着。
赤まりさ達はありすを見上げてにへらと頬を緩める。
彼女達のその笑顔を見て愛しさがこみ上げてきた彼女は何も言わず3匹に順番に頬ずりをした。

「ありしゅもちゅいちゃよ!」
「ゆっきゅちー!」

その後すぐに次女ありすと長女ありすが到着し、両親の傍へと跳ねてくる。
それから双子のありす姉妹や最後尾の2匹も無事彼女達の元にたどり着き、ありすの頬に口づけをした。

「ゆぅ~ん!とってもゆっくりできるわ!」

最高の笑顔を浮かべて、ありすは飛び跳ね・・・



そして天井に頭をぶつけた。

「ゆぐっ!?」
「みゃみゃー、どうちちゃの?」
「ゆっくちー!?」

ありすの視界に映るのは狭い天井と汚らしい壁と床。
そして、とてもゆっくりには見えない姿にされてしまったみすぼらしいありす達。
しばらく呆然としていたありすだったが、少しして夢だったことに気づくとため息をついた。

「みゃみゃー!ありしゅ、おなきゃしゅいちゃよ!」
「ありしゅも、むーちゃむーちゃちちゃいよ!」
「「うーひゃうーひゃひはいほー」」

しかし、現状を嘆いても何にもならない。
ありすはもう一度短くため息をつくと、深呼吸をし、ゆっくりできる言葉を紡いだ。

「とかいはー、のごはんさんにするわよ!」
「「ゆっくちたべりゅよ!」」
「「「ひゅっふひー」」」

久しぶりの心からゆっくりした表情を浮かべる赤ありす達。
そんな彼女達の前にありすが少量の花を配って回り、今にも花に飛びつきそうな子ども達におあずけを命じる。
全員に花を配り終えた所で「いただきます!」と元気良く叫んだ。

一応すぐ目の前に置いたこともあって、動けない子も目が見えない子も何とか花を食べることができた。
みんな「それなりー」と言いながら、久しぶりの食事を一生懸命食べている。
その中で1匹、感覚の大半を奪われた赤ありすだけが何もせずただじっとしていた。

「ゆゆぅ・・・おちびちゃん、ごめんね!ありす、きづかなかったわ!」

ありすはそう言って何も見えない彼女に話しかけ、照れ笑いを浮かべる。
しかし、赤ありすは何の反応も返さない。

「ままがゆっくりたべさせてあげるわ!」

赤い花を咥えると、彼女に口を開けるように促す。
しかし、赤ありすは何の反応も返さない。

「ゆぅ~ん・・・ゆっくりしすぎよ!しかたないわ・・・」

唇と舌を器用に使って彼女の口を押し広げると、口内に赤い花を届けた。
しかし、赤ありすは何の反応も返さない。

「ゆぅ・・・ふざけないでね!そんなのとかいはじゃないわ!」

その態度に憤りを覚えたありすは彼女を叱った。
しかし、赤ありすは何の反応も返さない。

「ゆぅ・・・どうしたの?おくちさんいたいの?」

そう言って今度は額で上唇を押し上げつつ彼女の口内を眺める。
が、口内には何の異常もなく、ありすは気づいてしまった。

「お、おぢびぢゃんが・・・ずっどゆっぐりぢぢゃっだわ・・・」

視界を奪われ、誰かと触れ合う温もりを奪われ、誰かと話す楽しみを奪われた赤ありすの心はここに来た時点で既に壊れていた。
他の赤ありす達とは明らかに趣の異なる絶望と恐怖に蝕まれ、母の温もりを確かめることも出来ない。
家族の中にいながら、彼女は孤独の中で誰にも気づかれることなく息絶えたのだ。

「ゆっぐぢいいいいいい!?」
「やぢゃああああ!じゅっとゆっぐぢっやだあああああ!?」
「「ひゅっふひへひゃいはー!?」」
「ひゅひぃ!ひゅひぃ!?」

その言葉は狭い巣の中を反響し、他の赤ゆっくり達の耳元へ届くと彼女達の心を悲しみと恐怖で覆い隠した。
今まで遠い世界のものだと思っていた「ずっとゆっくり」というゆっくり出来ないゆっくり。
お面の男に酷い目に遭わされているときも、きっと飼い主の男性が助けてくれると心のどこかで信じていた。
だが、初めて目の当たりにする死、それも産まれたときからずっと一緒にいた姉妹の死がその感情を粉々に打ち砕いてしまった。

「やぢゃあああああ!ゆっぎゅぢぢぢゃいいいいいい!?」
「どほぢぢぇ!どほぢでえええええ!?」

4つ目の赤ありすはものの位置を正確に把握できない目で巣の中をデタラメに走り回っては壁にぶつかっている。
葛饅頭にされたありすはその粘り気ゆえに1度跳ねるたびに転んで、また起き上がってを繰り返しながら顔に生傷を増やしていった。

「ひゅっふいー、ひゅひぃー」
「ひゅっふいへひはー」
「ひゅ・・・いひゅ・・・」

死の恐怖に駆られて恐慌状態に陥っているのは当然この2匹だけではない。
いや、動けないと言う点でずっとゆっくりした赤ありすに近い分、残りの3匹のほうが酷くそれを恐れていた。
ただそれを体で表現できないだけのことである。

そんな恐怖が支配する薄暗い巣の中でありすは叫んだ・・・




「だいじょうぶよ!おちびちゃんたちはありすがゆっくりまもるわ!」→ありす虐待エンドレス4へ

「だぢゅげでえええええええ!おに゛いいいいざああああああん!?」→ありす虐待エンドレス『再会』へ

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最終更新:2011年07月29日 18:04
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