ゆっくりいじめ系2838 取替えられた子

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「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」
「「ゆゆっ?!」」

両親は、生まれてきたゆっくりありすを見て大いに戸惑った。そのよ
うなモノは生まれるはずがないからだ。
何故なら、このありすの両親は、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの
つがいだからだ。
ゆっくりは、一部の希少種を除き親と同じ種類の子しか生まれる事は
無い。この場合、生まれてくるのはれいむかまりさのはずなのだ。
それなのに、このありすはこの両親から生まれ、ありすは両親を両親
と認識し、両親も戸惑いながらもこのありすを子供だと感じている。
本来生まれるはずのない種の子が生まれる。これが、ゆっくりの取替
え子というものだ。
この現象の原因は遺伝子異常とも、突然変異とも、隔世遺伝とも言わ
れるが、症例が少なく、また、ゆっくりの研究事態がそれほど進んで
いないためにまだその真実は判明していない。更には、取替え子には
幸運を招く力がある事が判明し、その不可解さから妖精に取り替えら
れた等という馬鹿げた話が出回り、未だ原因もわかっていないその現
象を世間は妖精の取替え子『チェンジリング』と呼ぶようになった。

「ゆぅ、よくわからないけどおちびちゃんはおちびちゃんだよ!」
「ゆっくりしたこにそだてようね!」
「ゆっくちちちぇにぇ!」

両親はありすを育てる事を決断し、親愛のすりすりを交わした。


しかし。
もしも本当にこのありすが取替え子だというならば。


ありすと取り替えられた子供は、一体どうなったのだろうか?





これは、妖精に取り替えられてしまったれいむの、

もう誰も語る事のない、

一人の物語。









            取替えられた子













薄く広がり、漠然としていた意識が集い、細く鋭さを持ってれいむの
意識を覚醒させた。れいむの中にある餡が急速に熱を持って稼動し始
め、れいむに外部の状況を送りつける。
肌を覆う生ぬるい風。
瞼越しに瞳を灼くぼんやりとした光の群れ。
足から感じる自らの重さ。
エトセトラ、エトセトラ。
次々と送り込まれる情報が、れいむに『生まれた』と次げる。
瞳を開く。初めて使う瞳は、強い光を受けてぼんやりとした景色をれ
いむに与えた。れいむはぎゅっと目を瞑り、そしてもう一度開く。
そしてくっきりと世界が映る。
青々と木々が茂り、幻想的な蒼い光が宙を舞う。風が葉を揺らし水が
飛沫を立てて流れていく。
それはなんて美しい、夢のような世界。
れいむは、思わずそれに見とれそうになる。
しかし、まだれいむはやっていない。生まれたからには絶対に最初に
やらなくてはならない事を。
口を開けて大きく息を吸い込む。そして、勢い良く振り向いて、自分
ができる限りの、最高の笑顔を浮かべて大きく声を上げた。

「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」

生まれたゆっくりの子供がやらなくてはならない事。それは、最愛の
両親への『ゆっくりしていってね』だ。
やった。できた。うまくやれた。
れいむは自信を持って、親からのお返しの『ゆっくりしていってね』
を待つ。
しかし、待っていても返事が帰ってこない。
どうしたのだろう。不思議に思ったれいむは、力みすぎて閉じてしま
っていた瞳を開いて、前を見た。

「……ゆ?」

そこには、誰もいなかった。

「ゆ、ゆ?」

慌ててその場で半回転し、後ろに振り返る。両親の姿はない。
れいむはその場を何回も何回も、ぐるぐると回りながら親の姿を探し
た。
いない。
いない。
いない。
いない。
いない。
何処にもいない。

「お、おちょーしゃん! おきゃーしゃん!」

不安。それに押し潰されそうになり、たまらず声を上げた。
返事が無くても何度も何度も。返事が来るまで声を上げ続ける。

「おちょーしゃん!」

返事が無い。きっと声が小さいからだ。

「おきゃーしゃん!」

返事が無い。きっと偶然聞き逃したんだ。

「おちょーしゃぁん!」

返事が無い。きっともっと大きい音が鳴ってて気付かなかったんだ。

「おきゃーしゃぁん!」

返事が無い。きっと、何か理由があって気付かなかったんだ。

「おちょーしゃん!! おきゃーしゃん!!」

返事が無い。
悲痛な声を上げる度に、頭の中をネガティブな言葉がぐるぐる巡る。
きっと、でも、もしかして、ひょっとしたら。
幾つも幾つも理由が浮かんでは消えていき、それでも何度も何度も、
何度でも声を上げ続ける。『親がいない』なんて、信じたくないから。

「お゛ちょーじゃん! お゛がーぢゃん! おにぇがいだきゃらおへ
んじぢでね! おべんぢぢぢぇ! ぢぢぇよー!」

一際大きい声を上げて、れいむはぜぇぜぇと息を吐きながら両親の返
事を待つ。

『       』

と、そこへ何か、声のような物が響いた。

「おちょーしゃん! おきゃーしゃん! ゆっく、ゆっくち! ゆっ
くちちちぇいっちぇにぇ! ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」

れいむが虚空を見上げながら狂ったように叫びを上げて声の主を探す。
そんなれいむの前に、先程から宙を漂ってきた蒼い光が降りてきた。
なんだろうと思いそれを見ていると、その蒼い光はいくつにも分裂し
れいむを取り囲んだ。

『僕は君の親じゃないよ』
「ゆっ?!」

驚いているれいむに声が掛けられ、れいむは再度驚愕する。

『僕も』
『僕もだ』
『僕らみんな違うよ』
『残念だね』
『あぁ残念だ』
「ゆ、ゆっ? ゆっ? だれにゃにょ?」

更に続けられるその何かの声に、れいむは激しく驚き戸惑う。
蒼い光はれいむの周りをふよふよと漂いながら、一つずつ自己紹介を
始めた。

『僕は妖精』
『あぁ、僕も妖精だ』
『奇遇だね、僕もさ』
『奇遇もなにも皆妖精だよ』
『あぁ、そっか』
『忘れてた』
『うっかりしてたね』
『というわけで僕らは妖精』
「ゆっ、しょーなんだ。りぇーみゅはりぇーみゅだよ」

蒼い光……妖精達に続いて、少しだけ孤独が和らいだれいむが元気に
声を上げる。妖精は何か楽しいのか声を上げながらせわしなくれいむ
の周りを飛びまわる。

『れいむ、れいむね』
『奇遇だね、僕もれいむさ』
『君は妖精でしょ』
『妖精は君だろ』
『そういう君も妖精じゃないか』
『もうれいむも妖精でいいんじゃない?』
『いやれいむはれいむだよ』
『だよね』
『そういうのはちゃんとしなきゃね』

れいむの前で妖精達の意味のわからない会話が延々と続いていく。
親がいない不安はまだあるものの、世界に一人ぼっちという孤独感は
もう無くなっていた。

「よーしぇーしゃん、りぇーみゅのおちょーしゃんとおきゃーしゃん
がどこにいるかちりゃにゃい?」

そして、そのおかげで出来た余裕から、親の不在という現実を受け入
れ言葉にして表す事ができた。
妖精はれいむの周りをくるくると回りながら語りだす。

『れいむのお父さんとお母さんね』
『知ってる?』
『人に聞く前にまず自分から言いなよ』
『それもそうだね』
『あぁそうだ』
『親しき中にも礼儀ありってね』
『で、結局知ってるの?』
『知ってるよ』
『あぁ知ってる』
『まりさお父さんとれいむお母さん』
『皆知ってる』
『誰でも知ってる』
『知らない方がマイノリティ?』
『知ってる方がマジョリティ』

相変わらずほとんどが意味の無い会話で子供のれいむには難しかった
が、それでも自分の父がまりさで、母がれいむだという事は理解でき
た。
れいむは続けて質問する。

「じゃあよーしぇーしゃんはおちょーしゃんたちがどきょにいるかし
ってりゅ?」
『勿論さ』
『え、君知ってるの?』
『凄いなぁ、僕知らないや』
『僕は知ってるよ』
『僕も知ってる』
『僕知らなーい』
『割れたね』
『見事にね』
『偶数だと多数決に不便だね』
『多数決?』
『数の暴力だね』
『民主主義ともいうよ』
「……ゆっ! しってりゅにょ?! じゃあどきょにいりゅかおちえ
ちぇにぇ!」
『いいよ』
『君の両親は東の山にいるよ』
『仲良く暮らしてる』
『あれ、君さっき知らないって言わなかった?』
『そうだっけ?』
『どうだっけ?』
『知らない』
『僕も知らない』
『そう言われると僕が間違ってたような気になってくるから不思議』
『とにかくれいむの親は東の山にいるよ』
『ちなみに東ってあっちね』

東の山、そこに大好きな両親がいる。
嬉しさの余り、ぴょいんぴょいんと跳ね上がって喜びの声を上げる。
妖精もわかっているのかいないのか、れいむの周りを陽気に飛びまわ
った。
そして、問題のいくつかが片付いて心に余裕ができたからか、れいむ
はふと思った。そして、その思ったことを口に出した。

「よーしぇーしゃん、どうちちぇりぇーみゅはここにいりゅにょ?」

その、当然といえば当然といえる疑問。
あらゆる質問に答えてくれた妖精さんなら、きっとこの答えも知って
るだろう。そう思っての事だった。
事実、妖精は知っていた。
妖精達は一斉に集まり、一つの大きい蒼輝球となって声を合わせてこ
う告げた。

『『『『『『僕が持ってきた』』』』』』
「……ゆ?」

帰ってきた答えに、れいむが首を傾げる。

「……よーしぇーしゃんがりぇーみゅはちゅれてきちゃにょ?」

それが何を意味するのか、理解したいような、したくないような。そ
んな思いを掛けながられいむは再び問いかけた。
妖精はまたいくつもの光球に分裂すると、口々に騒ぎ立てた。

『持ってきた? 連れてきた?』
『どっちでもいいよ』
『そうだね、どっちでもいいよ』
『むしろどっちでもなくてもいいね』
『その発想は無かったね』
『無かったよ』
『じゃあ連れてきたってことで』
『異議なし』
『というわけで僕らが連れてきたよ』
『親のところからここまでね』
『代わりに他の子置いてきたから親は悲しんでないよ』
『しかも運がよくなるおまじない付き』
『それは安心だね』
『客商売はアフターケアが大事』
『試験でも及第点くらいなら貰えるね』

先程までなら理解できなかった、意味のわからない会話。それが不思
議なほどすらすらと頭の中に入ってくる。
連れてこられた。
親から引き離されて。
代わりに他の子を残して。
親はその子を可愛がって。
その子は親に可愛がられて。
みんなみんな幸せで。
れいむだけが、ここに一人ぼっちで。

「ど、どうちちぇしょんなこちょちちゃにょー?!」

たまらず、怒鳴りつけるような声で叫んだ。今までれいむの周りをふ
よふよと不規則に飛んでいた妖精達は、急に列を成してれいむの頭上
に綺麗な円を描き始めた。

『どうして連れてきた?』
『どうして?』
『どうしてだろうね』
『楽しいから?』
『楽しいから』
『楽しいからだ』
『そうそう、楽しいからだった』
『アハハハァ』

光の粒の塊が一つ降りてきて、れいむの前で嘲るような笑いを上げる。

「りぇーみゅはじぇんじぇんたのちくにゃいりょ! おにぇがいじゃ
からおちょーしゃんたちのところにかえちちぇにぇ!」

れいむは憤り、その光の粒に向かって思い切り飛びかかった。
が、光はするりとれいむの体をすり抜け再び頭上の隊列に戻り、れい
むは無様に地面を舐めた。

『返す?』
『返すの?』
『せっかく持ってきたのに?』
『やだな』
『もったいないよ』
『面倒だ』
『せっかく連れてきたのに返すのはやだ』
『それに面倒だし』
「どうちちぇしょんなこちょいうにょー?! りぇーみゅはおちょー
しゃんとおきゃーしゃんのとこりょにかえりちゃいにょにー?!」

くすくす、うふふ、あははと様々な笑いを上げる妖精の下で、怒りと
哀しみをごちゃ混ぜにした言いようの無い激情を抱えながらじたばた
と体全体で地団駄を踏む。

「もういい! りぇーみゅひとりでかえりゅ!」

暴れ疲れ、破れかぶれにそう叫んだ。
瞬間、妖精達の笑いが消えた。
空気が変わったのを察して、れいむが不安げに頭上を見上げる。

『帰る……?』
『帰るだってさ』
『無理無理』
『この森からは出られないもの』
『今までみんな出ようとしてたけど』
『今までみんな出られなかったもの』
『それにずっと遠くが君の家』
『たとえ出られても辿り付けはしない』

妖精達の言葉に嘲る色は無い。そこにあるのは、ただただ呆れ返った
者の声。何もわかっていない者に対する、途方も無い呆れ。
今までとは違う、まるで宥めすかすような声を妖精は口にする。

『だからここで過ごそう』
『何も終わる事の無い永遠を』
「え、えいえんっちぇにゃに?」

不可解な単語を聞き、れいむが妖精に問いかける。
妖精は、そのれいむの問いの返答に、恐ろしく感情の篭らない声を上
げた。

『ずっとずっと続くって事』
『終わらないって事』
『年を取らないって事』
『死なないって事』
『何も変わらないって事』
『ずっとずっと続けられてしまう事』
『終われない事』
『年を取れないって事』
『死ねないって事』
『何も変われないって事』
『シアワセでも』
『フシアワセでも』
『『『『『『ずっとずっとずっと、この森の中って事』』』』』』

巨大な蒼輝球が宣告する。れいむは、その言葉の意味異常にただその
彼らの異様さに怯え、声を失う。どうあってもれいむには理解し得な
い、その感情の動きに。

『たとえ帰る事ができたとしても』
『親は可愛いありすを育ててるもの』
『可愛いありすが本当の子供だと思ってるもの』
『君は君の親の子供じゃない』
『君の事なんか誰も知らない』
『君はもうここにしかいない』
『君ももうここでしか必要とされない』

余りにも残酷な事を、歌うように妖精は告げて、踊るように、妖精は
飛ぶ。一見愉快そうなその動きに、どうして哀れみと憤りと、ある種
自虐的なイメージを感じるのか。れいむには何もわからない。

『それなのに君は』
『傷を一つ残して』
『灯火一つ抱いて』

妖精は、緩やかに集う。
そして作られた形は蒼輝球ではなく、途方も無く巨大で不気味は唇だ
った。

『『『『『『君は、何処へ行く?』』』』』』

蒼い唇が、れいむに問いかける。
れいむは答えない。答えられない。
れいむは答えを持っていない。
何も答えられずにいるれいむを前にして、噤まれていた蒼い唇が、ぐ
にゃりと歪み、歪な三日月を模った。
そこにあったのは、ぞくりとするほどおぞましい狂った喜び。

『『『『『『君も、何処にも行けやしない』』』』』』

三日月がぼろぼろと崩れ、黒いものが溢れ出した。その黒は逃げよう
ともしないれいむの体に纏わり付き、ずるずるとその体を引きずりこ
んでゆく。
嫌悪感が無いとは言えない。だが不思議と恐ろしさは無かった。

『君もこの森に消えていく』
『この闇の中へ消えていく』

れいむは黒に飲まれながらも、宙に浮かぶ崩れ掛けの三日月を見上げ
る。壊れた三日月は最後に。言葉を発さずに告げていた。
―これでお前も同じだ―と。






















れいむは森の中を飛んでいた
ふよふよと、目的も無くただ飛んでいた
ふと、前からぴかぴか光る物が飛んできた
あれはまりさだ
れいむはすぃーっとまりさの前に躍り出て声を掛ける

元気かい、君
君こそ元気かい
人に聞く前にまず自分から言うべきだよ
それはこっちの台詞?
そういえばそっちの台詞だね
まぁどうでもいいけどね

他愛も無い話をしてまりさと別れようとすると
今度は一番の古株のぱちゅりーがやってきた
遠目からでもきらきら光る体に何かを抱えているのが見える
金色の髪が見えたから、たぶんあればありすだと思う

あらあら取り替えられちゃったんだね
災難だね
災難かな?
違うかもね
あの子次第かな
あの子次第だね
でもきっと災難だろうね
災難じゃなかったら逆にびっくり
じゃあ行こうか
うん行こう

まりさと一緒にぱちゅりーの後を追う
ふとあの子の事を考えてみた
あの子は一体どうするだろう
怒るだろうか
悲しむだろうか
恨むだろうか
傷つくだろうか
何を感じ、何を思うのだろうか
そんな事を考えたが、すぐに意味が無い事を理解してやめた
どんな決断をしたとしてもあの子の結末は決まっているのだから


そう


誰も彼もこの森に消えていく
この闇の中へ消えていく
そして


何も終わる事のない永遠を知る







ここから先は、妖精に取り替えられてしまったありすの、
もう誰も語らない、
一人の物語。



おわろう


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最終更新:2011年07月29日 18:02
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