ゆっくりいじめ系2809 理科室にて

                理科室にて









「皆さん見てくださいねー」

 私はれいむ種とまりさ種が二匹づつ実ったゆっくり茎を翳して見せた。
 ついで、左手で教卓上のビーカーを指す。
 左右二列、都合六つの机に行儀よく座った生徒たちが、興味津々といった眼差しをまっ
すぐに向けてくる──少しばかりこそばゆい。

「皆さんのテーブルには、このゆっくり茎と、ニコチン水が入ったビーカーがあります。
 見ればわかるとおり、赤ゆっくりはまだゆ茎につながっています。ゆ茎というのは人間
でいう臍の緒にあたるので、この赤ゆたちはまだ生まれていないということになりますね。
 当然この状態では、ゆっくりは見ることも話すこともできません。 
 ですが……見ていてくださいね」

 左手でビーカーを握り、みなに見えるよう胸の高さまで持ち上げると、私は右手のゆっ
くり茎の根元をビーカーに差し込んだ。ちょうど、活けたような格好になる。
 と。
 目を閉じたまま、幸せそうに微笑んでいた赤ゆっくりたちの表情が変わり始めた。

「が…ら……」
 限界まで開いた口から、あふれんばかりに舌を突き出してあえぐ、一番根元の姉れいむ。

「……じ……じぇ……」
 目をきつく閉じたまま、ボロボロと涙をこぼす次姉まりさ。

「ぃじゃ……ぃ……」
 目を思い切り見開いたまま、何度も口を開閉する妹れいむ。

「ぉ……きゃ……しゃ……」
 顎の下の排泄管から、なにやら水分を漏らし始める、一番先っぽの末妹まりさ。

 そのすべてが一様に震え出し、やがて震えは明らかな痙攣へと変じていく。同時に茎が
緩やかに曲がり始めた。私は慌てて茎を押さえながら、生徒たちに向けて解説の弁を述べた。

「はい。本来口を利けないはずの赤ゆっくりがしゃべり始めてしまっていますね。
 これはゆっくりの生態から見て異常なことです。
 ゆ茎を通じて赤ゆたちがニコチンを摂取してしまった結果、赤ゆたちの体の機能がおかしく
なってしまっているのですね。

 このことから、妊娠中の生き物がニコチンを摂取した場合、母体のみならず子供にまで悪影響
が出ているということがわかってもらえると思います」

 私が解説を続ける間にもれいむたちの痙攣は激しくなる一方で、さながら逆さのメトロノーム。
やがて、赤ゆたちとゆ茎を繋ぐ紐帯が、小さく音を立てて千切れた。
 赤ゆたちは、つぎつぎに新聞の敷かれた教卓の上に転落していく。誕生……いや、むしろこれ
は流産だろう。
 赤ゆたちは転落の痛みとニコチン毒に依る苦悶に、びくびくと小さく体を痙攣させた。本来なら、
この後「いちゃい……」などと泣きながら、それでもどうにか親の目前に向き直り、「ゆっくち
しちぇいっちぇにぇ!」と元気にゆっくりならではの挨拶を叫ぶのだろう。
 だが、転落の衝撃は、決定的なまでに赤ゆたちの体内を攪拌してしまっている。毒と餡とが、
致命的なほどに交じり合い、おそらくはすでに中枢餡を──

「「ぎゅぃゅぶッ」」

 最初の断末魔は同時だった。
 姉れいむと末妹まりさが、怪鳥のような悲鳴をあげながら、私の肩の高さにまで跳ね上がった。
 すっげぇ、と最前列の男子生徒が呻く。
 高さにしておおよそ50センチ。それは赤ゆにはあり得ない跳躍。
 だが、有り得るからには道理が有る。ニコチン毒に犯されたあんよの筋餡が、赤ゆにとって致命的
なレベルの痙攣が発生し、それが偶然跳躍の作用を引き起こしただけのこと。

 そして私には見えていた。空中の赤ゆたちは、すでに饅頭の形を保っていない。
 眦から眼球を、尻から口から餡子を止め処もなくひり出しながら、ツイストドーナツのように体
をねじりながら、餡子もろともに落ちていく。新聞の上に転がった、彼女たちの厚みのないかさかさ
の死体は既にして黒ずみ、アマガエルのミイラじみた有様を、私の目前に晒している。

 私はまたも解説を述べた。

「ニコチンの毒は、神経を流れる電気の流れをおかしくしてしまうのですね。重症になると、このよ
うに頭がおかしくなって、全身の筋肉が痙攣してしまいます。軽い症状でも、油断はできません。
残った二匹のほうは飛び上がりませんでしたが、さてどうなっているでしょうか」

 そして私は視線を残る二匹、次姉まりさと妹れいむに向ける。
 れいむのほうは既に絶命していた。あんよの餡筋が妙な角度に痙攣してしまい、そのままあんよが
張り裂けてしまったのだ。もはや傷口からぶりぶりと餡子をひりだすだけの、痙攣するニコチン饅頭
と化してしまっている。

 だが、次姉まりさのほうはエレエレと餡子を吐き出すだけで、どうにか命を保っていた。頑健で知
られるまりさ種だからこそだろう。これなら残りの実験にも耐え切ってくれるはずだ。
 このまま絶命されても困るので、私は事前に用意しておいたオレンジジュース入りのピペットを摘み
上げ、先端をまりさの餡子にまみれた口に突っ込むと、ゴム柄を完全に摘まみ潰した。
 びくりとまりさが一瞬ふくらみ、再び元のサイズにもどる。
 失神こそしているが、おそらくこれで大丈夫だろう。

 まりさの嘔吐がとまったことを確認した後、私は薄い透明なアクリル板を手に取った。
 教卓の上に斜に当て、新聞紙の上にあるモノすべてをこそぎ取るように動かていく。餡子やリボン、
帽子がごちゃ混ぜになりながら、アクリル板の端に盛り上がった。唯一の生き残りである次姉まりさだ
けは、潰さないよう慎重につまみ上げ、板の中央に乗せてやる。
 ついで、教卓脇のリモコンのスイッチを押した。天井に設けられた円筒形のユニットから、するすると
黒板前に白い映写用スクリーンが降りてくる。
 私はゆ茎の入ったビーカーを右手に、アクリル板を左手に持ったまま教段から降り、理科室の中央に
しつらえられている、オーバーヘッドプロジェクタの脇まで移動した。
 ひそひそ話をする女子生徒を一瞥して黙らせると、プロジェクタの投光レンズの上にまりさと餡子の
乗ったアクリル板とビーカーを載せる。
 電源を入れた。レンズが強烈な光を発し、レンズ上のモノすべての影をスクリーンに投影した。
 スクリーン中央、垂直に黒く太い餡子の線が走る。
 線の左には液体をたたえたビーカーの影、線をはさんで反対側には小さな円──まりさの影だ。

「はい、影だけでわかりにくいと思いますが、真ん中の線が餡子で右の丸い半透明の影がビーカー、
右端の小さな丸がまりさのですね。生き残ったのはこの子だけでした。
 このことだけでもニコチンが体に悪いものであるということがわかると思います。
 ですが……」

 私はまりさの帽子をつついた。失神していたまりさが目を覚ます。

「……あじゅい……」

 眠りから覚めるなり、アクリル板の上で体を振るまりさ。なにやら表情がへたっているが、同時に目が左右
に泳いでいる。おそらく、本能的に両親や姉妹を探しているのだろう。

「おきゃぁしゃん……いみょうとたち……どこにゃの……。
 まりしゃ、あちゅいよ……あちゅいよぅ……」

 何処なの、何処なの、暑い、暑いと呻きながら、まりさは高熱を発するレンズの上を這い回っている。サハラ
砂漠のど真ん中に裸で放り出されれば、似たような気分になるだろうか。
 やがて耐えがたくなったのだろう、まりさはアクリル板の端に山盛りになった姉妹たちの餡子の上に上った。
スクリーン中央の餡子の線の中央が、まりさの影でまるく節くれだったように見える。

「ゆ……こにょくろいにょ……あみゃあみゃしゃん?」

 餡子のことに気づいたようだ。
 レンズの上に視線を落とすと、逆光の中何度も餡子をぱくつくまりさの姿を見ることが出来た。それこそ、
夢中でむさぼっているのだ。
 まりさの丸い影が消しゴムのように、餡子の影を穿ち削って消してゆく。
 赤ゆにしては、やはり異常な食欲だった。

「むーちゃ、むーちゃ……しあ……むーちゃ……
 あみゃいのに……むーちゃ……しあわしぇにゃにょに……」

 生まれて初めて幸せそうな笑みを浮かべていたまりさの顔が次第に曇り、やがてためらいもなくぼろぼろと
涙をこぼし始める。それでもなお、口は食事をとめようとしないのだ。自分で自分を御せぬまま、まりさは
必死に泣き叫ぶ。

「どぉちておくちしゃん……むーちゃ、むーちゃ……
 もう、おにゃか……むーちゃ……たしゅけて……
 むーちゃ、むーちゃ……ゅわぁ……あ……」

 餡子の線はすでに半分以上が消え去っている。ちょうど赤ゆっくり1・5匹ぶんをまりさは平らげた計算に
なり、実際皮もだいぶ薄くなって、内側の餡子が透けて見えてきている。
 捨て置けば破裂するだろう。その前に、わたしはまりさを摘み上げた。おしょらをとんでるみちゃい、と
赤まりさが叫ぶ。だが、赤ゆであるがゆえにその声音は小さく、生徒たちには届かない。
 私は四方を一瞥すると、赤まりさを掲げて生徒たちに示して見せた。

「はい。皆さんにももうわかっていると思いますが、餡子にはニコチンが含まれていましたね。哀れ、赤まりさ
はすっかりニコチン依存症になってしまいました。依存症になってしまうと、体に悪いものであるにもかかわらず、
その薬物がほしくてほしくてたまらなくなるのですね。だからまりさはおなかが破れそうになっているのに、
次から次へとニコチン入りの餡子を食べてしまったわけです。
 では、最後に──」   

 私は、掲げたまりさを再び胸元までおろした。 
 まりさと視線が合う。
 体をひねって小首をかしげたまりさは、なにかとても不思議なものでも見ているかのような表情を浮かべていた。
 誰なんだろうこの人間さん? なんて、そんなことでも考えているのだろうか。
 私はまりさから指を離す。 
 まりさは不思議そうな表情のまま、ビーカーの中に落ちていく。

 小さな小さな水音が響く。
 水面が一瞬震え。やがて音立てて波うち、まるで生きてでもいるかのように飛沫を上げる。

「ぴぎ     。」

 それは小さな断末魔。
 けれど、うわ、という女子生徒のうめきにいともたやすくかき消され、その呻き声もついで沸き起こったどよめき
によってかき消される。

「赤ゆっくりをニコチン水に落とした場合───」

 半透明のビーカーの影の中、まりさの丸い影を囲んで、いくつもの餡塊が踊っていた。 
 さながら夜店の金魚すくい。
 ポイから逃げる和金のように、餡塊は四方八方に散ってゆく。
 散りながらに、溶けてゆく。

「───ニコチンの作用により、赤ゆっくりの薄い皮は、一秒ほどで溶けてしまいます。
 皮の内側の餡子、筋餡ですとか内臓餡は皮という支えを失って、水中で分解してしまいます。基本的にゆっくりの
餡子は万能細胞ですから、餡子がたとえば肝臓ですとか筋肉ですとかの形を取っているさまを目にすることはなかなか
できません。この、ビーカーの中の塊ですね、長く細いのが腸ですね、細いレンズ上の影が筋肉で──
 ああ、もう見えませんね。溶けてしまいました。
 さて、それではここからは皆さんで実験してみてください。先生は一時席をはずしますが、まじめにやるようにして
くださいね。
 茎は一人一本、ビーカーは一人ひとつです。オレンジジュースは一テーブルに一缶づつですから、勝手に飲んだり
しないように・・・・・・」

 生徒たちに解説と指示と注意の言葉を発しながら、私はふとスクリーンに視線を投げた。
 光の中、ビーカーの半透明の影が少しだけその黒味を増している。
 その真ん中に、くっきりと黒い顔があった。苦痛で奇怪によじれた目と口が、白く白く影の中に浮き出している。
だが、それも、秒を経るごとに茫漠としたものになり、そしてついにはニコチン液のなかに溶け去った。
 あと10分ほど残ってくれればよかったのにと内心思いながら、私はプロジェクターの電源を落とし、ビーカーだけを
手に取った。
 そのまま理科室の一番後ろにある腰ほどの高さの用具棚に歩み寄る。
 上に置いたままにしておいたダンボールを小脇に抱えると、まじめに実験するようにとだけ言い残して、私は
理科室を後にする。
『元気』と未熟な筆跡で記された半紙が並ぶ廊下を歩き、突き当りのドアを開けて入った。
 そこは小さなベランダになっており、周りが木々に囲まれているため、生徒や同僚の教師に見咎められる心配がない。
私はドアを閉めてもたれかかると、床にダンボールを置いた。
 胸ポケットから緑色のパッケージを取り出した。銀紙を破り、端を指で何度か叩く。
 せりあがってきた紙巻を直接唇でくわえ込むと、ジッポライターで火をつける。口から深く煙を吸い込むと、
メンソールとタールが交じり合った複雑な辛さと旨さが舌の上に広がった。
 頭に広がる貧血感を楽しむと、私は持参したビーカーにタバコを吹き捨てる。
 そしてしゃがみこみ、ゆっくりとダンボールの蓋を開けた。

「ごくろうさまでした」

 声をかける。
 箱の中には、バレーボールほどのまりさが居た。
 今日の実験赤ゆを提供してくれたのがこのゆっくりだ。

「……ッ!………っ………ッ!」

 泣き腫らした目で私を恨めしそうに睨み上げながら、ばくばくと何度も口を開閉している。昨晩、私が素手で咽喉から
声帯を削ぎ取ったので、どれほど腹を絞ろうが声は出せないのだ。
 もっともゆっくりは表情豊かに話す生き物だから、コツさえ掴めば唇を読んで会話するのは容易い。

「ゆっくり殺し?ちびちゃんを返せ?いえ、死んでます。もう無理です。
 棚の上から全部見たでしょう?あきらめてください。
 実際、あなたにとって悪い話ではないと思ったんです。
 自然の中なら簡単に死んでしまう赤ゆなんて、どれほど死んでも困らない。
 わたしは貴方のおかげで実験動物の準備費を着服できて幸せだし、あなた自身も食事や伴侶にいろいろと困らない。
 大体、あまあまがほしいといったのは貴方でしょう?だから私は差し上げた。
 そしてその代償をいただいた。ただそれだけのことでしょうに」

「───ッ!────ッ!!」

 音の亡い声でまりさは叫ぶ。

 子供あげるなんていってないよ、あまあまだっていらなかったよ!
 ちびちゃんたちを返してね!おうちを返してね!れいむを返してね!お声を返してね!
 返してね!返してね!返して!返して!

 だが、そんなことは私にとってどうだっていいことだ。重要なのは金と仕事で、ほかのすべては二の次だ。私はまりさに
微笑むと、バクバクと開閉し続けるまりさの口に、ビーカーの中身を注ぎ込む。
 一瞬、まりさは驚愕に目を見開いた。 
 そのまま苦悶の形相で何度も激しく咳き込み、ダンボールの中に盛大に吐き出しながら、瘧にかかったかのようにぶるぶる
と震え上がる。いくら成体とはいえ吸殻入りのニコチン水は、やはり相当にキクらしい。すでに肌の色は青ざめ、冷や汗さえ
かいている。下手をすれば、このまま絶命するだろう。
 そうなったところで、代わりを用意すれば良いだけの話だが。
 びくびくと痙攣しながらなお、まりさは再び私を睨んだ。
 瞳には恨みだけではなく、明らかに悲しみの色がある。当然だろう。まりさはビーカーに溶けたモノが何であるか、その目
で確かめて知っている。
 その唇が、小さく何かをつぶやいた。

 まりさたちはなんにもしてないのに。
 どうしてあんな事したの。
 どうして、どおしてちびちゃん達に、あんな酷いことしたの……。


 ゆっくりらしい語彙の無さ。
 馬鹿でもわかるようなその問いに、私はゆっくりと微笑んだ。
 どんな馬鹿にも教えるのが、教師というものの仕事だろう。


「そんなこと、決まっているじゃありませんか。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 子供たちの健康な未来のためですよ」


 私はけらけらと高く笑う。
 わがらないよと呟いて、まりさが小さくうなだれた。








                                         おしまい。





gdgdな人の書いたもの。

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最終更新:2011年07月31日 16:17
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