ゆっくりいじめ系2766 てんこを無視してみた

※俺設定注意
 胴付き、ぬる虐め。嫌だと思う人はブラウザのバックを押してください










「あはぁ・・・っ、いいっ、いいよぉ・・・・・・おにいさァん・・・・・・」

薄暗い地下室、そこにてんこの悩ましげな声が響く。

薄く開いた秘裂、その周囲をなぞる様に指を這わせる。
ほんの少し湿り気を帯びたそこは、時折くちゅりと淫靡な音を紡ぎ出した。

「あっ、あっ、らめ、おにいさん、そこぉ、らめぇ・・・・・・」

その動作に合わせるように、てんこが熱い吐息を吐く。
視覚にも訴えかねないほど甘い香りを伴うそれは、気のせいか桃色に見えた。

水気でたっぷりと指を濡らし、今度はクレヴァスそのものの中に指を挿入していく。
つぷり。
有るか無いかの抵抗感のあと、たやすく指は奥へと導かれていった。

「あっ・・・・・・!!あっ、はあっ、ああっ・・・・・・んんぅっ!!」

それにつられる様に、てんこの爪先がピンと伸びる。
法悦を極めようとしているのか、既にその声の中に言葉らしいものは無い。
息を荒くしてただひたすら甲高いうめき声らしきものを出し続けている。

根本まで埋まった指を、そのままグチュグチュとかき回す。
最早水音どころではないそれと共に、甘い香りを放つ汁が撒き散らされた。
だがそれでも止めない。この程度では終わりはしない。

「あっ、やっ、おに、いさんっ!!てんこっ、てんこっ!!いっ、いっちゃ・・・・・・ぅっ!!」

そろそろ限界だったのだろうか。張り詰めたような声をてんこが出す。
既に目は限界まで見開かれ、弓なりにのけぞった背中をガクガクと揺らしている。
そうしてそのまま、てんこは絶頂を駆け上ろうと―――――。





「なぁてんこ。俺はさ、れいむのドタマかち割ってそこに指を突っ込んでいるだけなんだけど。
 何で指一本触れてないお前がそんな反応してんの!?て言うか何処から入ってきた!!」

「おいィ!?おにいさん、そんなれいむをいじめてないでこのいっきゅうゆっくりのてんこをいじめてね!!
 そうじゃないとずっとここであっぴるしつづけるよ!!」

「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ・・・・・・・・・」





ウゼェ。
久しぶりにてんこにそんな感情を抱いたとある昼下がりであった。

ちなみにれいむは反応がなくなったので潰した。










てんこを無視してみた










さて。
最近、てんこが調子に乗っているように感じられる。

先述のように、俺がゆっくりを虐待しようとするといつの間にか現れて自分を虐めるよう要求したりする。
さぁこれから虐待するぞと言うときに、いきなり現れて「てんこをいぢめてね!!」とか言って俺の周囲を走り回ったり。
正直言ってそんなことをされると虐待欲が萎えるのだ。

他にも、一挙手一投足を俺に褒めて貰いたいらしく何かにつけ俺に期待の視線を送っている。
今だって、俺の腰あたりに抱きついて離れない。ちょっと邪魔だ。

「なぁてんこ、離れてくれない?ちょっと邪魔なんだが」
「ああ!!てんこじゃま!?ねぇじゃま!?もっと、もっとののしってね!!びくんびくん」

こんな調子で少しでも悪く言うとそれを罵倒だと勝手に解釈して盛り上がっている。
そしてもっと罵ってもらおうとより俺にひっついてくるのだ。悪循環である。

まぁそんな感じでとにかくてんこは俺に何をやっても良いと思っている節があるらしく、最近甘えっぱなしだ。
だが俺は仏様でもなんでもない。流石に我慢の限界を迎えていた。

いいだろう、てんこ。
虐めて欲しければ虐めてやろうじゃないか。

とは言ってもてんこに生半可な虐待は逆効果だ。多少痛くした位ではてんこはますます調子付くだろう。
それに同居ゆっくりに目立つ傷は負わせたくない。
と、なれば一体どういう方法が良いか。

簡単だ。肉体的な虐待が駄目なら、精神的な虐待をすればいい。
即ち無視。これに尽きる。
少々消極的だが、てんこにはこの方法が一番だろう。



てんこを引っぺがし、ちゃんと立たせる。
俺に構ってもらえると思ったのだろうか、てんこはその大きい瞳を余計にきらきらさせて俺を見上げてきた。
だが無視。もう虐待は始まっている。

「あれ・・・?おにいさん?」

てんこを無視したまま、すたすたと歩き去る。
残されたのは不思議そうな顔をしたてんこ。いじめてもらえると思ったのに、期待が外れたのだろうか。

「あれ?あれれ?おにいさん、てんこをいじめないの・・・・・・?」

とてとてと俺の後を追いかけてくるてんこ。
俺はてんこに追いつかれないように、少しだけ歩く早さを上げる。
それに対抗するように、てんこも歩く早さを少しだけUP。

「おーい、おにいさーん・・・・・?てんこはここですよ~?」

その辺を歩き回るてんこと俺。
付かず離れず、その姿はまるで追いかけっこだ。
このままでは埒が明かない。とりあえずここを離れよう。

「あっ!!おにいさん・・・・・・?」

てんこを置き去りに、ダッシュでここを走り去る。
いくら胴付きと言えど、俺の走りには付いて来れないだろう。
ちらりと後ろを振り返る。

そこには一人、不思議そうに、そして少し寂しそうに佇むてんこの姿があった。





それから暫くして夕食。

ちゃぶ台に今日の夕食を人数分置いていく。
ご飯に味噌汁、野菜のお浸し、野菜炒め、漬物。あとお茶。
随分と野菜尽くしだが俺の趣味ではない。肉が苦手な同居ゆっくり達のためである。

「頂きます」
「ゆっくりいただきます!!」

手を合わせて静かに宣言する俺に、元気一杯にてんこが合わせた。
何故かこっちをキラキラした目で見てくるが、無視。元よりうちのルールは「食事中は静かに」だ。

「おにいさん、このおみそしるおいしい!!はかいりょくばつ牛ン!!」
「・・・・・・・・・」

それでもてんこはいつも食事の感想を言ってくるのだが、今回は取り合わない。
いつもなら「あーありがとーおいしいねー」くらいは言う筈の俺が無言なことに、てんこは少し首を傾げる。

「おいィ?おにいさん、さっきからてんこのいうことをむししつづけてどういうわけ?
 このままではてんこのいかりがうちょうてんになってしまうんだが?それがいやならさっさとかまってね!」
「・・・・・・・・・」

やはり無視。
そんな俺に頬を膨らますてんこだが、何かを思いついたようだ。

「はっ!?これはもしかして『ほうちぷれい』ってやつ!?
 ゆあぁ!!それならそうとはやくいってね!!てんこらめになっちゃううううぅぅぅ!!びくんびくん」

また勝手に自己解釈して、勝手に悶え始めるてんこ。
俺はそんなてんこを無視しながら白飯をかき込んでいく。

「あっはああ!!てんこ、いまおにいさんにつめたくされちゃってるぅぅ!!」

ゴロゴロと床を転がり、あられもない嬌声を上げるてんこ。
だが時折、こちらをチラリと伺っている。本気で感じていると言うわけではないのだ。
あくまでこれは、俺の気を引きたいがため。

元々ゆっくりてんこ種というのは他者に依存する性質がある。
とは言ってもてるよやごく一部のれいむのような寄生的依存ではなく、あくまで精神的依存だ。
自分の近くに誰かがいて構ってもらえてさえいればゆっくり出来るのである。

しかもうちのてんこは少々甘やかした結果なのか、俺に酷く依存している。
それこそ肉体的痛みすら快感に変えるくらいには。
つまり、食事中にこんな真似をしでかした自分を叱ってもらいたいのであろう。とんだドMだ。

そうはいくか。
目の前で痴態を繰り広げるてんこを尻目に、さっさと夕食を平らげ、さっと立ち上がった。

「ごちそうさま」

そのまま台所へ。皿洗いだ。
てんこの事はひたすら無視し続ける。

「らめぇ、てんこいっちゃうううぅぅぅ・・・・・・いっちゃう・・・・・・」

明らかにてんこの声量が落ちた。
少し戸惑い気味に、しかしそれでも叱ってもらえると信じているのだろうか。
痴態を演じることを止めはしない。

俺はそのまま書斎に向かう。
このままではいつか見かねててんこに注意してしまうだろう。
そうならないためにも今のうちに離れておいた方が良さそうだ。
てんこの動きが止まる。

「おにいさん・・・?てんここんなにみだれてるよ・・・?しからないの・・・・・・?」

振り返ることなく、俺は居間から離れる。少々の不安を孕んだてんこの声を振り切って。
それを見たてんこが俺についてきた。だが無視。
てんこは今どんな表情をしているのだろう。

書斎のドアに鍵をかけ、引き篭もる。
これでもう俺がここから出る以外にてんこと会う方法はない。
幸いここには本が大量にある。夜更かしには困らないだろう。

「おにいさん・・・・・・?ここあけて・・・・・・」

ドア越しにてんこの声と扉を弱弱しく叩く音がする。
だがやはり無視。
さっさと寝ちまえ、てんこ。



結局その日はもうてんこと会うことは無かった。
他の同居ゆっくりに後で聞いた話だが、てんこは夜中の一時頃までずっとドアの前に立ち尽くしていたらしい。
そのまま膝を抱えるように眠ってしまったてんこを、寝室に抱えて運んだのだとか。
ちなみに俺は書斎で寝ていた。





それから、てんこを無視する日々が続いた。



「おにいさん!!てんこさっきのらゆっくりをばらばらにひきさいてやったよ!!ほめてね!!」

無視。

「・・・・・・おにいさん?おにいさーん?てんこいいこ・・・・・・でしょ?」



「あっ、おにいさん!!てんこおにいさんがたいせつにしてたおちゃわんわっちゃった!!ごめーんね!!」

無視。

「・・・・・・おにいさん?てんこわるいこでしょ?・・・・・・しかってくれないの・・・・・・?」



「・・・・・・おにいさん、てんことおはなししてね・・・・・・?それがだめならぶってね・・・・・・?」

無視。

「おにいさぁん・・・・・・おねがいだからてんこのほうをみてぇ・・・・・・」



「お、おにいさん・・・・・・」

無視。

「・・・・・・ううん、なんでもない・・・・・・」



こんな調子だ。



てんこは日に日に元気を無くしていった。
最初の方こそ勝手に放置プレイだとか言って喜んでいたものの、時間が経つにつれそれも無くなっていった。
途中、わざと悪戯をして叱って貰おうとした様だが、これも無視した。

そして現在。

「・・・・・・・・・」

遠くの物陰に隠れつつ、俺を捨てられた子犬のような表情で見つめてくるてんこ。
まるで別人だ。正直こんな態度になるとは思ってもいなかった。

流石に気の毒に思ったのか、既に他の同居ゆっくりの中には「てんこが可哀想」との声が続出している。
確かに俺も可哀想だとは思うのだが・・・・・・なんか可愛いのだ。

あの天真爛漫で図々しくさえあったてんこが、今では俺の一挙手一投足にすらビクついている。
その姿が可愛くて、ついなんとなくこの虐めを終わらせられないのだ。
加虐心と罪悪感が均衡していると言ったところだろう。

元のてんこに戻って貰いたいという心と、今のてんこを見ていたいという心。
どっちつかずの状態は良くないと自覚している。だが切っ掛けが無かった。
この虐めを終了し、てんこに話しかける切っ掛けが。

いや、切っ掛けなんて無くてもいいじゃないか。
そもそも思い付きで始めた虐めなんだ。終わるのも適当でいいだろう。
そう思った俺は、てんこの方に振り向き、近付くべく足を・・・・・・。

「・・・・・・・・・っ!!」

何を思ったのだろうか、てんこは俺に背を向け走り去っていった。
思わぬ事態に立ち止まる俺。

逃げられた?てんこに?俺が?
今までてんこから逃げた事はあっても逃げられた事は無かった。初めての経験だ。
それにしても逃げ出すとは。これでは本当に別人だ。まるでにとり種である。

なんとも気まずくなってしまった。
これでは迂闊にてんこに話しかける事すら出来ないではないか。
てんこを無視しようと思いついた過去の俺を呪う。

いや、違う。過去の事を悔やんでも仕方が無い。大切なのは今なのだ。
全ては事を先延ばしにした俺に責任がある。
大丈夫だ。てんこに話しかけて、そしてそのまま仲直り。簡単じゃないか。
そう、簡単だ・・・・・・と思う。本当に簡単なのかなぁ。不安だ。



終ぞその日はてんこと話す機会が無かった。
なんとなく空気がギスギスして、夕食の時もそれ以外の場面でもなかなかてんこに話しかけられなかったのだ。
「いい加減話しかけろよ」と言わんばかりの他の同居ゆっくりの視線も、俺には通じず。
結局俺がヘタレ以外の何物でもないと証明したに過ぎない結果となった。

明日こそは、明日こそは必ず。
そう胸に想いを決めて、俺は布団の中にもぐりこむ。
どうやっててんこに話しかけよう。そんなことを考えてばかりいて俺はなかなか眠りにつけなかった。





そして次の日。

朝食の時間になってもてんこは起きて来なかった。

いや、正確に言うとてんこは眠ってなどいなかった。
てんこの部屋、そこは既にもぬけの殻。
つまりてんこは俺が起きる前にそこから抜け出ていたという事になる。

即座に俺の脳裏をよぎる一つの可能性。
もしかして・・・・・・家出?
てんこが俺を嫌になって家を出て行った?
我が家がパニックになるのに、そう長い時間は要らなかった。

とにかく総動員だった。
我が家の同居ゆっくり、その全てが周囲を捜索することになったのだ。
農園の隅々、森の奥、人里の近くまで。
だがてんこは居なかった。

家から半径20kmを捜索し尽くした俺は頭を抱え込む。
どうしてこんなことになっちまったんだ。
こんな事になるなら昨日、無理やりにでもてんこに話しかけておくべきだった。

今は悔やんでももう遅い。
とにかくもう一度、てんこを探さなくては。
少々疲労の溜まった頭でぼんやり家を見上げる。

てんこ、何処に行っちまったんだ。
もう無視したりしないから。お前の事、ちゃんと褒めてやるから。叱るときは思いっ切り叱ってやる。
抱っこしてくれと言えばいくらでもしてやる。ゆっくりを虐待するときはお前も交ぜてやるから。

だから、帰ってきてくれ。お願いだ、てんこ。



ふと、一箇所だけ家の中でてんこを探していない場所を思い出す。
地下室だ。普段鍵の掛かっている地下室は、俺以外には入れないと思ってうっかりスルーしていた。

急いで家の中に入り、地下室へと繋がる階段の鍵を開ける。
ギィ・・・と重い音を残して開いていく扉。
階段を下り、地下室のドアに手を触れる。

ドア越しの気配、それが俺に教えてくれた。
てんこはここに居る。
少し安堵し、息をつく。途端、扉の向こうで震える気配。

気付いているな、俺の気配に。
そして、怯えてもいる。
しかしそれに躊躇うことなく、俺は地下室のドアを開けた。

「おっと!」

ドアを開けた瞬間、何かが俺の横を走りぬけようとした。
すかさずキャッチ。両の腕に抱いたそれを、眼前に持ち上げる。
やっぱりそれは、今朝居なくなった筈のてんこだった。

「ーーーっ!!!」
「うおっ!?」

暴れる。
じたばたと、俺の腕から抜け出そうともがくてんこ。
だが離さない。絶対に逃がしてなるものか。

てんこを抱きかかえたまま後ろ手でドアを閉め、地下室の真ん中までてんこを連れて行く。
部屋の中央に近付くにつれ、てんこの暴れる力は弱くなっていった。

部屋のど真ん中で、てんこを降ろして立たせる。
また逃げ出すんじゃないかと思ったが、もう抵抗する気は無いらしくてんこはそこから動かなかった。
これでようやく話せるという訳だ。



「てんこ、ごめんな。俺が悪かった」
「・・・・・・・・・」

出し抜けに謝罪の言葉を口にする俺。
まずは謝っておかないと気が済まない。いくらなんでもやり過ぎた。
てんこは喋らない。俯いたまま、静かに俺の話を聞いている。

「お前がどう思ってるかなんて考えもしないで、ずっと無視し続けてしまった」
「・・・・・・・・・」

てんこに謝り続ける。
そうだ、てんこがこんなに傷つくまで無視してしまった。何でもっと早く止めなかったんだ、俺は。
くしゃりと布が折れる音。てんこが虹色エプロンを握り締めている。

「なんとなくでお前に話しかけられなくて、そのたびにお前は傷ついて」
「・・・・・・・・・」

ふるふるとてんこの肩が震える。
怒っているのだろうか。悲しんでいるのだろうか。
俺は謝り続けることしか出来ない。

「こんな事になるまで気付かなくて。いくら謝っても足りないと思う。本当にごめん」
「・・・・・・・・・さぃ」
「・・・・・・え?」

ぽたりと、雫が地面に落ちる。
今の言葉を聴き取ろうとしゃがみ込み、目の高さを合わせる。
てんこの顔を覗き込む俺。



てんこは泣いていた。



俯いて、肩を震わせて。
必死に涙を堪えようと、くしゃくしゃに服を握り締めている。
それでも涙は止まらずに、てんこの頬から流れ落ちていた。

「ひ、ぐっ・・・・・・うっく・・・・・・ごめ、んなさ、っく、い・・・・・・」

そうか、これは・・・・・・「ごめんなさい」。
ぽろぽろと涙を零し、俺に謝ろうとしてくるてんこ。
しゃくり上げながらも、必死に言葉を紡ごうとしている。

「てんこが・・・・・・ひっく、てんこが、わる、いの・・・・・」

涙を拭き取ろうとしても、次から次へと溢れてくる。
既にてんこの顔はびしょ濡れだ。

「てんこ、が・・・・・・おにい、っく、さんの、じゃましたり・・・・・いたずらしたり、っすん、したから・・・・・・」

無視されたことを、自分の普段の行いのせいだと言うてんこ。
確かにそれは一理あるが、今回の件は明らかに俺に非がある。
それなのにてんこは俺に許しを求めているのだ。

「おにいさん、おこって・・・・・・てんこ、ひぐっ、いらなくなって・・・・・・」

またてんこの瞳から涙が溢れ出す。
ぐしぐしと目をこするが、涙は止まらない。

「おねが、っく、いします・・・・・・てんこ、いいこにするから・・・・・・ひっぐ、もうわがまま、っすん、いわないから・・・・・・」

ようやく顔を上げるてんこ。
その顔には涙の通り道が出来ている。
そしてそのまま、弱弱しく俺に抱きついてきた。

「だから、てんこを、ひっぐ、おにいさんの、そばに、うっく、いさせて・・・・・・!」

涙を溢れさせた大きな瞳で、てんこは俺を見つめてくる。
恐れさえ含んだ表情で。祈りさえ含んだような感情で。
まるで捨てられまいと縋る子犬のように。



可愛い。

思わずそう思ってしまった。
まるで場違いな感情だが、確かにそう思ってしまったのだ。

いつものブロント語のブの字すら出さず、泣きながら俺に謝ってくるその姿。
俺に捨てられるのではないかと怯え、必死に懇願してくるその表情。
全てが・・・・・・その、萌える。

出来ることなら一生このてんこを見ていたい。
一瞬だがそうとすら考えてしまった。
それほどまでに、今のてんこは愛らしいのだ。

だがてんこを泣かし続けにするほど俺はサドではない。
確かに可愛いのだが、それよりてんこを泣かしている罪悪感のほうが大きかった。
可愛さ余ってなんとやらである。



てんこをギュッと抱きしめ返す。
ふぅっ、とてんこが息を吐く音。
いまだ落ち着かない呼吸の中に、少しだけ安堵の色が混ざる。

「このばかもん」
「・・・っ!?」

軽く拳を作り、てんこの頭を小突く。
安心しかけた顔が、またくしゃりと歪む。
そして溢れ出してくる涙。

「・・・・・・うぇっ、ひっぐ。おにいさん、ぶった。いたい・・・・・・」
「誰がてんこを要らないなんて言ったんだ?そんなこと俺は言ってないぞ」

頭を抱えながら泣くてんこ。
俺はそんなてんこの髪をぐしゃぐしゃと撫でる。
そういやてんこがここまで素直に痛がるなんて初めての事だっけ。

「お前はだな・・・・・・その、大切な家族・・・なんだ」

顔が熱くなるのを感じる。
こんな状況でもないと、絶対に言わない言葉。
少し恥ずかしい。

「だから、えっと・・・・・・まぁ、とにかく泣き止め。いつものてんこに戻ってくれ。
 そうじゃないと俺も悲しい。俺はいつも笑顔のてんこが・・・・・・す、好きなんだからさ」

顔から火が出そうだ。
初めて「好き」なんて言葉を使ってしまった。
らしくない。てんこも驚いたような顔している。

「・・・・・・おにい、さん・・・・・・」

ぐしぐしと顔をこするてんこ。
いつの間にか泣き止んだようだ。それでも、涙の跡はくっきりと残っている。

「てんこもね、おにいさんのことが・・・・・・だいすきです」

囁くような声で、てんこは確かにそう言った。
このタイミングは卑怯だろう。ますます顔が赤くなるのが分かる。
つられるように、てんこの顔にもほんの少し赤みが差した。

てんこが笑う。
ここ数日、見ていなかったてんこの笑顔。
涙で濡れたそれを見て、俺はやはりてんこにはこの顔が一番似合うと思った。










それからどうなったかというと。

「おにいさんだっこしてねなでなでしてねすりすりしてねぎゅってしてねてんこのおにいさんのことがだいすきだよー」
「・・・・・・・・・・・・」

ウゼェ。
今俺の左足には、てんこが抱きついて離れないでいる。
そして息もつかせぬ構ってコール。

結果として、あの虐めの後てんこの俺に対する依存はますます深いものとなった。
とにかく何をするにも俺と離れたがらない。
以前は一人で眠れていたのに、「怖い夢を見るから」と言って俺の布団に潜り込んでくる始末。

「あ、でもてんこはおにいさんといっしょにいられるだけでしあわせだよ、ふういんがとけられるよ」
「あーはいはい」

流石にまた無視して泣かせる訳にもいくまい。
後ろめたい所がある俺には、てんこのしたいままに任せている状態だ。
別にてんこも本気で構ってコールしているわけじゃなさそうだしこれはこれで問題ない。

「てんこはおにいさんがだいすきー、おにいさんもてんこがすきー、きゃー♪」
「・・・・・・・・・・・・」

こっ恥ずかしい。
てんこはあの時の事をまだ言っている。
こんな事なら言わないほうがよかったか・・・?あの時の俺をちょっと恨む。



もうこの際てんこの事は諦めるとしよう。
てんこの事は諦めるとして・・・・・・問題は、今俺の「右足」に抱きついている奴の事だ。
俺はそっちに視線を下ろす。

「なぁうどんげ、邪魔だから離れてくれない?」
ケラ?

そう、今俺の右足にはゆっくりうどんげが抱きついて離れないでいる。
まるでてんこに対抗するかのように。と言うか実際対抗しているのだろうが。
先程から離れるように言ってるのにうどんげは一向に聞き入れようとしない。

どうやら、うどんげは最近のてんこのいちゃつきっぷりを見て嫉妬しているらしい。
元々ゆっくりうどんげ種も依存心が強い種だ。
兎の因子が入っている為なのか、寂しいと死んでしまうことすらある。

「てんこ、うどんげ、ちょっとそこから離れて・・・・・・」
「はーい」

パッと俺の左足から離れるてんこ。
あれからてんこは俺の言うことを良く聞くようになった。それなりにいい子にしているようだ。
もっとも、10分もすればまた足に抱きついてくるのだが。

「おいィ?なんでうどんげはいつまでもおにいさんのあしからはなれないわけ?
 ここでさっさとおにいさんのいうことをきくやつはほんのうてきにちょうじゅたいぷ」

てんこがそのままうどんげを引き剥がしにかかろうとする。
うどんげも耐える。必死に俺にしがみついて、離れない。
困った奴だ。

「おいィ!?さっさとおにいさんからはなれてね!そうじゃないとまじでかなぐりすてんぞ!?」
ゲラゲラゲラ。

これはうどんげにもお灸を据えてやった方がいいのかもしれない。
腕組みをし、考える。
もう無視はしないほうが良いだろう。ならば一体、どんな方法が良いか。

考え事をしながら歩く俺。
俺にに抱きついて離れないうどんげ。
そしてうどんげを引っ張ろうとして逆に引きずられるてんこ。
傍から見れば異様な光景だろうな。

普通に虐めるのじゃ面白くない。
どうせならうどんげの泣き顔も見たい。きっとあの時のてんこと同じで、可愛らしいのだろう。
うどんげに一番相応しい虐めは何か。少しだけ楽しみだ。

うどんげは何も知らずに、楽しそうな顔をしている。
あの時の嗜虐心を覚えつつ、俺はうどんげとてんこを引きずって歩いていった。









おわり?










―――――
書き溜めです。
てんこを無視して泣かすだけの筈が、こんな事になった。無視とか良くないよね。
山も無いし落ちもないし意味も無い。乱文すぎる。

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最終更新:2009年06月12日 02:04
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