『しまわないで!』
※一部にパロディ要素を含みます
「うー! しね! よわむしおねえさまは、ゆっくりしね!」
「うー! ふりゃんのぶぁーか! おねぇーさまはかりしゅま☆れでぇーなのぉー!」
× × ×
「うーうー♪ あまあま☆でりしゃすぅー♪」
「う~~! ちっぢゃいれみりゃ、やめてぇー! それ、れみりゃのおやづなのにぃ~!」
× × ×
「ゆゆっ! にくまんがいるよ! みんなあれをつかまえれば寒い冬さんも安心だよ!」
「やだやだぁー! れみりゃはにぐまんじゃないのぉー! おでで、はむはむしないでぇー!」
× × ×
「おっ! ゆっくりゃだ! 珍しいな」
「なぁ、知ってるか? あいつらの服や髪、結構いい金になるらしいぞ」
「うわぁぁー! れみりゃのだいじだいじがぁー! ざらざらへあーがぁぁーー!?」
× × ×
「うっぐ、ひっぐ、えっぐ……」
幻想郷の里山の一画から、聞こえてくる嗚咽。
それは、ふくよかな手で大きな下ぶくれ顔を押さえ、
必死に涙をこらえようとする"ゆっくりれみりゃ"のものだった。
「う~~っ、ぐやじぃよぉ~~!」
よたよた、どたどた、ゆっくりと歩くれみりゃ。
左右にふらふら揺れては、大きなお尻を振ることで、辛うじてバランスを取る。
このれみりゃは、度重なるトラブルで、すっかり疲れ果てていた。
真っ赤になって泣きじゃくるれみりゃの顔は薄汚れ、
手も足も擦り傷だらけで、大事なおべべも帽子もしわくちゃになっている。
妹の"ゆっくりふらん"に散々馬鹿にされた上で、虐められ。
友達になろうとした"胴無しゆっくりれみりゃ"には食べ物を奪われた挙げ句、見捨てられ。
迷子で泣いていてところをドスの群れに見つかり、"にくまん"の汚名を着せられて追いかけ回され。
その挙げ句、こぁいお兄さん達に意地悪をされ、大事なおべべや髪の毛をぐちゃぐちゃにされてしまった。
痛くて、苦しくて、悔しくて。
解決できないモヤモヤを押さえきれず、れみりゃはぺたんと座り込み、叫んだ。
「もうやだぁ~~! なんでみんな、おぜうさまにやさしくしてくれないのぉ~~!?」
再び"こぁいなにか"と出会ってしまう危険性も厭わず、わんわん叫んで泣く、れみりゃ。
自分は可愛くて、えれがんとで、かりすま溢れるえら~いお嬢様なのに、
一体どうしてこんな目に遭わねなければならないのか……。
れみりゃはその不条理にどうしても納得ができない。
せめて、今のこのゆっくりできない状況だけでもどうにかしたい。助けてもらいたい。
れみりゃはよちよち立ち上がるり、本能レベルですり込まれた絶対的な味方を探し求めるのだった。
「しゃくやぁー! れみりゃのしゃくやどごぉー!?」
"ガサッ"
「うっ、うぁっ!?」
れみりゃの赤い靴が、泥の上にいくつかの足跡を作ったその時、
れみりゃの眼前のしげみの奥から、がさがさという音が聞こえてきた。
その音に驚き、反射的に身をすくめる、れみりゃ。
がさがさという音は次第に大きくなっていき、
しげみの奥の暗がりに、うっすらと巨大な何かの影が映りだす。
「う~~~~っ!」
れみりゃは怯え、身を屈めて両手で頭を抱えこむ。
それは、"大好きなまんまぁー"から教わった、秘伝の緊急回避法だった。
もっとも、周りからは姿も丸見えで、
体を丸めてガタガタ震えるその様は、むしろ戦闘力の無さをアピールしてしまっていたが……。
「ごごにはだれもいないのぉー! れみりゃはゆっぐりずるのぉー!!」
恐怖で声を抑えることができないれみりゃは、必死に叫ぶ。
もういやだ。
おうちへかえりたい。
まんまぁー、ふらん、たすけて。
ぐるぐる、思いが頭と胸を駆けめぐり、意識は恐怖で混濁していく。
そして、その精神的負荷がついに限界に達し、れみりゃは目を瞑り両手を広げて近づいてきた何かへ向かって叫んだ。
「ぎゃおーーーーー!!!」
自分のカリスマを最大限にほとばしらせる、必殺のポーズ。
それが、錯乱したれみりゃの取れた、唯一の行動だった。
「……ゆぅ?」
「……ぎゃ、ぎゃおー?」
しげみの奥から現れた者の声を聞いて、
れみりゃはおそるおそる、大きな赤い瞳を開いてみる。
「う、うわぁぁぁーー!!?」
バンザイの姿勢のまま、その目をパチクリさせて、
見上げるほど大きいその存在に、れみりゃはあんぐり口を開けて固まった。
「……おぜうさま、およびになりましたか?」
しげみの奥から現れた存在。
それは、高さ2mにも達する動くプリン饅……すなわち巨大なゆっくりさくやだった。
* * *
「うっう~♪ すぴあ☆ざ☆ぐんぐにるぅ~♪」
「ゆべしっ!」
れみりゃが巨大さくやと出会ってから数時間後。
そこには、笑顔で木の棒を振り回してはしゃぐれみりゃと、
れみりゃの"ぐんぐにる"に無抵抗のままべしべし叩かれ続けるドスまりさの姿があった。
「ふやじょう☆れっどぉー♪ ぜんせかい☆ないとめあー♪」
「ゆぐ、ゆぐぐ……」
調子に乗って、下ぶくれスマイル全開で攻撃を続けるれみりゃ。
ドスまりさもれみりゃに抵抗しようとするが、
より強大な存在に取り押さえられ、なすがままになっていた。
「そのちょうしです! 素敵ですわ、おぜうさま!」
れみりゃへ声援を送るのは、あの巨大さくやだ。
数分前、巨大さくやは体当たりと口にくわえた鋭利な石片で、あっという間にドスまりさを痛めつけ、
上からのしかかって動きを封じ、れみりゃ用のサンドバッグにしたてあげたのだった。
「うっうー☆」
「ゆぅ……ゆっくりした結果がこれだよ……」
れみりゃの御機嫌な一撃を受け、とうとう絶命するドスまりさ。
動かなくなったドスまりさを、れみりゃは不思議がり、おそるおそる触れていく。
やがて、自分がドスまりさを倒したことを知り、れみりゃはぴょんぴょん跳ねて喜びを露わにした。
「れみりゃ、つよぉーい♪ うぁっ☆うぁっ☆うっうー♪」
興奮冷めやらぬ様子で、腕をぐるぐる、お尻をぷりぷり振り出し、ダンスを踊るれみりゃ。
実際は殆ど巨大さくやの手柄であったが、そんな事実は今のれみりゃにとってどうでもいいことだった。
「さすが、おぜうさまです! さくやかんげきです!」
「う~♪ しゃくやぁ~♪ いっしょにおまんじゅうたべよぉ~♪」
巨大さくやの言葉にさらに機嫌を良くし、
れみりゃは巨大さくやと一緒に"えれがんとなでぃなー☆"を開始する。
「あぅー♪ おいじぃー♪」
口の中いっぱいに広がる甘み。
お腹から全身へ広がっていく、ゆっくりとした満足感。
これが勝利の味、これがカリスマ☆にふさわしき食事、これがおぜうさま本来の姿……。
「あーぅ☆あぅー♪」
口のまわりを汚しながら、れみりゃは幸福感に酔いしれる。
そして、この幸福を自分へ運んできてくれた巨大さくやへよりかかり、頬をすり寄せた。
「うーうー♪ しゃくやぁーごれがらもずっどいっしょー☆いっしょだよぉー♪」
そんなれみりゃの様子を微笑みながら眺める巨大さくや。
そして巨大さくやは、れみりゃへ向かってハッキリと告げる。
「もちろんです、おぜうさま。さくやは"こうまかん"でおぜうさまにおつかえしつづけます」
「うー? ごーまがん?」
きょとんとして、首を傾げるれみりゃ。
「そうです! おぜうさまのおやしきです!」
こーまかん……おぜうさまのおやしき……。
巨大さくやから澱み無く放たれたその響きに、
れみりゃは胸がときめきわきたつのを感じずにはいられなかった。
「うー♪ ごーまがん☆ごーまがん♪ れみりゃのおやじぎぃ~♪」
実際のところ、このれみりゃにとって"こうまかん"は初耳の単語であり、
当然元々そこに住んでいたわけでもない。
けれど、れみりゃに刻まれた本能が、おぜうさまとしての宿命が、
"こうまかん"へ行くことを促して止まらない。
「うーうー♪ れみりゃはおぜうざまだがら、ごーまがんでゆっぐりずるのぉー♪」
「はい、おぜうさま! それではこちらへ!」
れみりゃが肯定するのを聞くや否や、
巨大さくやは自分の頭の上にれみりゃを乗せ、どすんどすんと森を跳ねていった。
巨大さくやの頭上で、れみりゃは至って御機嫌だ。
"たかいたか~い♪"と喜び、巨大さくやを見て逃げ回る他のゆっくりや動物達を見ては、
自分のかりすまに恐れおののいているのだと解釈して、誇らしげにうぁうぁ☆リズムを刻んだ。
そうして、楽しい一時をすごしているうち、
大きな岩山に開いた巨大な洞の前で、巨大さくやは跳ねるの止めた。
「さぁ、つきましたよ、おぜうさま」
「すごぉーい♪ おっぎぃー♪」
立派で頑丈そうな、それでいて綺麗な乳白色の岩山と、
元々あった天然の穴を拡張し、整地したであろう洞穴とエントランス。
それでいて、付近には花が植えられ、彩り鮮やかに周囲を賑わせている。
それらは、永い年月をかけて、巨大さくやが瀟洒に整えたものであった。
「うー♪ れみりゃはごーまがんのあるじなのぉー♪ とっでもえらいんだぞぉー♪」
巨大さくやさえ余裕で入れる"こうまかん"の大きさに、ご満悦のれみりゃ。
おぜうさまとしての自信と誇りを胸に、パタパタ中空へ浮かびあがって、洞の中へ入っていく。
そのまま直線の回廊をしばらく進むと、れみりゃは明るく広大な場所につきあたった。
「うー?」
そこは直径20mはあろう円形の広場になっており、
天井は吹き抜けで、上空から優しい木漏れ日が照明として降り注いでいた。
そして円形の外周部には、広場を囲むように、岩で組んだ箱状のものが何十個も並んでいた。
「うぁ☆おまんじゅうがいっばいあるぅー♪」
れみりゃは、地面に降り立ち、とてとて歩いてその岩の箱へと近寄っていく。
岩の箱の中には、一つの箱につき一匹ずつ、弱り切ったゆっくりが収まっていた。
うぁうぁお尻を揺らし、その様を観察するれみりゃ。
やがて、その光景にも飽きたれみりゃは、岩の箱の中からゆっくりを取り出し、無造作に放り投げる。
「うー♪ おまんじゅうはたべあぎちゃっだがら、ぽいっ☆するのぉー♪」
一匹、また一匹と、れみりゃはゆっくりを放り投げて遊び出す。
「ぽーい☆ぽーい☆ぽぽいのぽーい♪」
独特のリズムを刻み、時折ダンスとお歌を混ぜながら、ゆっくりを"ぽいっ☆"していくれみりゃ。
飽きずに20匹ほど放り投げ終えてから、れみりゃは自身の下ぶくれスマイルを両手で指さし、
誰へとでもなくぬぼーと笑顔を広げた。
「ぽーいしたら、おながすいちゃったぁー♪ ぷっでぃ~ん☆たぁ~べだ~いなぁ~♪」
にぱぁーと、笑顔満面のれみりゃ。
すると、どこからか、れみりゃに呼応するかのように声が聞こえてきた。
"うー……"
「……うー?」
その声を不思議がるれみりゃ。
最初は気のせいかと思っていたが、
ほどなく円形広場の一画から、その声が聞こえてくることに気付き、そこへ歩を進める。
"うーうー……"
"うっぐ……ひっぐ……"
「う、うぁ!?」
その一画へたどりついた時、れみりゃは立ちつくした。
そこにもまた、岩の箱が大量に並べられていた。
ただ、先ほどゆっくりを放り投げたところとは違い、平べったい岩で蓋がされていた。
そして何より、その岩の箱の中から、同じれみりゃ種のものと思われる声が聞こえてきた。
それも一つや二つではない。その区画にある殆どの箱の中からである。
「う~!? れみりゃがいっばい~!?」
困惑するれみりゃ。
れみりゃは疑問を解決すべく、岩の箱を調べだす。
岩の箱をおっかなびっくり撫でてみたり、こんこんと蓋を叩いてみたり。
そのうち、ちょうど蓋の閉まっていない箱を見つけ、れみりゃはその中を覗き込んでみる。
……と、その時。
「ぶぶっ!」
突如、何者かに背中を押され、れみりゃは顔を箱の底に打ち付けてしまう。
「うわぁぁーー!! れみりゃのえれがんとなおかおがぁぁーー!?」
顔の真ん中を赤く腫らし、歪なへの字に口を広げて、滝のように涙を流すれみりゃ。
痛みで我を忘れ、のたうちまわるれみりゃ。
れみりゃの体は、顔を先頭にして既に半身が岩の箱の中に入ってしまっている。
苦しむ上半身に併せて、箱から出ている大きなお尻がじたばた揺れて、捲れたスカートからドロワーズがまる見えになる。
その動きに誘われたのか、れみりゃの背中を押した何者かが、今度はお尻を押しはじめた。
「じゃぐやぁー! ごぁいひどがいるよぉー! はやぐぎでぇーー!」
ぎゅうぎゅうと、狭い岩の箱の中へ強引に押し込まれていくれみりゃ。
れみりゃも暴れて抵抗するが、何者かの力は強く、なすすべもない。
「やだやだぁー! れみりゃばごーまがんでゆっぐりずるのぉー! じゃぐやぁー! はやぐだすげでよぉー!!」
必死に助けを呼ぶ、れみりゃ。
しかし、その願いがかなうことはなく、とうとうれみりゃの体はすっぽり岩の箱の中へ押し込められてしまう。
そして、れみりゃを押し込めた何者かは、れみりゃの体が箱に収まったことを確認すると、すばやく岩の蓋を閉めてしまった。
狭いの箱の中で、身動きも出来ぬまま、光さえ奪われるれみりゃ。
手足や羽を動かすことも出来ず、れみりゃはただただ助けを呼び続けるのだった……。
「ぶぇぇぇ~~! じゃぐやぁ~~! まっぐらでごぁいよぉぉ~~!」
* * *
『ぐらいよぉー! ごぁいよぉー! おながずいだよぉー!』
岩で組まれた箱の中、平べったい岩の蓋の向こうから、れみりゃのくぐもった泣き声が聞こえてくる。
その声を聞きながら、恍惚の表情を浮かべ、小さくひとりごちる者がいた。
「これでもうあんしんです」
それは、れみりゃを箱の中へ閉じこめた張本人。
そして、れみりゃをこの"こうまかん"へ招いた張本人。
「おそとはきけんがいっぱいですから。おぜうさまはこうまかんでゆっくりしていってくださいね」
れみりゃ達が閉じこめられている箱の前。
そこには、自らの職務を瀟洒に果たしたと自負する、巨大さくやがいた。
「うふふ、ゆっくりできていないおぜうさまは、どんどん☆しまっちゃいましょうねぇ~♪」
おしまい。
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れみりゃおぜうさまをペットとして飼いつつ、
自分自身はさとり様にペットとして飼ってもらう……そんな生活に憧れる日々です。
さておき、れみりゃSSにはまだまだ可能性があるはず……
最近、それを模索中だったりします。
最終更新:2022年01月31日 02:26