ゆっくりいじめ系2728 おとうさんがんばる1

 「ただいま、まりさ。ゆっくりしてたかな?」

 ゆっくりまりさは透明な箱の中から人間を見上げた。
 野良ゆっくりである自分が人間の手の中にあるという事実を再認識する。
 どうしてこんな事に。
 なぜ、こんな事に。



 さかのぼる事約10時間前。
 お兄さんが朝のゴミ出しから帰ってみると、家に居るはずの無い、黒いとんがり帽子を被った喋って
 跳ねるという饅頭と遭遇した。
 そいつはちゃぶ台の上に乗り、お兄さんの朝食の残りを口に蓄えようとしている最中だった。
 まさにばったり、といった効果音が聞こえてきそうな位だったが、まりさが振り向いて
 お互いの視線が交差するやいなや。

 「ごめんなざいごめ゛ん゛な゛ざいぃぃぃぃぃぃぃ」

 口から食べ物をこぼしながら、バスケットボール大の侵入者はそう謝りながら全力で駆け出した。
 なんとか人間の脇をすり抜けて元の入り口から逃げ出そうというのだ。
 しかし、お兄さんの背後にある勝手口が完全に閉じていることを視認すると、パニックに陥り
 Uターンして家の中をデタラメに跳ねまわり始めた。

 3分後。
 あっさりと捕獲された。

 「おねがいです!みのがしてくださぃぃぃ。さいきん全然ゴハンがたべられなくて
 家族みんながゆっくりできないんですぅぅぅぅ」

 会社に遅刻寸前だったことを思い出したお兄さんは、髪をつかまれて吊り下げられて喚くまりさを
 手際よく透明な箱にいれて急いで出かけていった。

 最近、数が増えすぎた野良ゆっくりの食糧事情は深刻になっていた。
 この野良まりさの家族も例外ではなく、番のれいむも子ゆっくりたちも常にお腹を空かせていた。
 まりさは家族の長としてそんな状況をどうにかしないと、と責任を感じていた最中に開けっ放しの勝手口に遭遇したのだ。
 そろーりそろーりと中を覗くが、人気は無い。
 少しだけ。少しだけでいいから食べ物を貰って急いで逃げよう。
 家族が大喜びする姿を想像し、行動にうつってしまった。



 「寝坊したのも、開けっ放しにしたのもボクが悪いんだけどさ、泥棒は良くないよね?」

 まりさの入った透明な箱を両手で運びつつ、中身に話しかけるお兄さん。

 「たべものが欲しかっただけなんです。もうしませんからまりさを許してくださいいぃぃぃぃ」

 「ダメだよまりさ。悪い事したらさ、罰を受けないと」

 廊下を移動した先、ドアを開けるとそこはコンクリート土間の無機質な拷問室。

 運の悪いことに。
 お兄さんは虐待お兄さんだった。

 部屋に唯一あるテーブルの上にまりさ入りの箱を置き、カセット式コンロを用意し始める。

 「じゃあ始めようか。足をこ~~んがり焼こうね」

 コンロから立ち上る青い炎を目にし、まりさは絶句した。
 これからこの炎であんよを焼かれる!?

 「やめでぐだざい!ぞんなごどされだら゛もう狩りがでぎなぐなっでじまいまず!
 家族が死んじゃいまずぅ゛ぅぅぅ」

 ガタガタと箱の中で暴れて抗議するが、お兄さんはどこ吹く風。
 慎重に箱のフタをあけると、まりさの髪を鷲づかみにしてコンロの上へ。

 「あづいぃぃぃぃぃぃぃ!れ゛い゛む゛ぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 最愛のゆっくりの名を叫びながら底部を焼かれるまりさ。
 なんとか熱から逃れようともがくが、お兄さんの両手ががっしりとそれを阻む。
 やがて叫ぶ気力も無くなったのか、目をひん剥いて歯を食いしばり、うなるだけに
 なった頃、まず底部の右半分がすっかり黒焦げになった。
 一旦炎の上から離され、お兄さんの目線の高さまで持ち上げられる。

 「よしよし。まず半分が終了だ。もう少しだから頑張ろうね」

 お兄さんの励ましの甲斐なく、空ろな目をしたままのまりさ。
 反応が無いのでつまらなそうに、お兄さんはゆっくりと再びまりさを灼熱の上にかざすと
 後半戦の開始の合図が響く。

 「いじゃあああああああああ!あづい゛のは、もういじゃああああああああ」

 ものの10分程だったろうが、当のまりさ本人には数十時間にも感じられた。
 底面を全て黒焦げにされ、ゆぅゆぅと息も絶え絶えになり机の上でぐったりするまりさに
 希望が投げかけられる。

 「よく耐えたね、まりさ。これで罰は終了だよ」

 目線をあげて、お兄さんを仰ぎ見るとそこには爽やかな笑顔。
 これで無事開放されるのだろう。
 家族の元に帰れる。
 しかし。

 「でも、まりさは家族の為に泥棒に入った結果こんな酷い目にあったのに、元凶の奥さんや子供が何の咎めも無いなんて…
 これは連帯責任を負うべきだよ」

 まりさにお帽子をそっと被りなおさせて、その上から優しく撫でながら。

 「だからまりさ、家族の元に案内してくれないかな。みんなにも罰を受けてもらおう」

 自分に対してこんな事をする人間だ。れいむや子供たちには一体どんな罰が与えられるというのだ。

 「ぞんな゛事でぎるわ゛げないでじょぉぉぉぉぉ」

 即座に拒絶され、まりさを撫でていた手がぴたりと止まる。

 「どうしてさ?まさかそんなゲスなゆっくりどもを匿うというのかい?」

 「れいむや子供たちの所にお兄さんを連れて行くなんて絶対にしないよ!」

 これが先ほどまで息も絶え絶えだったゆっくりだったとは誰が想像もできるだろうか。
 その目には家族を守るという強い意志が宿っていた。

 お兄さんの笑顔が完全に消え、完全なる虐待おにいさんの容貌へと変化する。

 「じゃあゲスゆっくり隠匿の罪でまりさに罰を与えまーーす。案内をしてくれるなら罰は終わるから
 いつでも言ってね!」

 罰だの責任だのともっともな言葉を使ってはいるが、お兄さんはまりさを、いやゆっくりをとにかく
 苛められればそれでよかった。
 まりさが耐え切れずに家族を売り渡せば一家まとめてヒャッハーー!!だろうし、そうでなければ
 まりさの精神と肉体が完全に壊れるまでいたぶるつもりなのだ。


 机の上にまりさを残し、いそいそと部屋の隅の工具箱から『道具』を用意し始める。




 「今回のアイテムはこれに決定」

 片手にプラスドライバー、もう片手にはジャラジャラと音のする木の箱を持ち、虐待お兄さんは
 戻ってきた。

 「刑の執行を開始しまーす」

 箱から取り出されたのは長さ約10cm、ねじ径7mmの特製のステンレス木ねじ。
 その半ばのあたりまで螺子が切ってある。

 「一本目~~」

 尖った先端をまりさの左頬に軽くプスリと刺す。
 軽い痛みと金属の独特のひんやりとした冷たさに、思わず目をぎゅっと閉じるまりさ。
 お兄さんは左手でねじを支えつつ、ドライバーで少しずつ、少しずつ回転を加えていく。

 「ゆ゛っ!ゆ゛ぎい゛っ!ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っゆ゛ゆ゛」

 ねじは見る間に真ん中までめり込んでいく。
 目と歯を固く閉じたまま、ひたすら激痛に耐えるまりさ。

 中枢餡に傷が付かない限りはほぼ死の危険が無いゆっくりにとって、一定の長さのねじは苦痛を
 与えるだけの実に都合の良い道具だ。

 「これじゃあバランスが悪いから、逆の側にも一本追加するね」

 わざわざそう言うと右頬にもねじを当て、じわりじわりとめり込ませてゆく。

 「ゆ゛ゆ゛っ……ゆ゛ゆ゛っっぅ~~」

 涙と涎でグチャグチャになったまりさに口調だけは優しく問いかけるお兄さん。

 「うわ~~、痛そうだね。どうかな?家族を許せなくなったでしょ?こんな目にあってるのはキミ
 だけのせいじゃ無いんだし。責任を一人で背負い込む事は無いんだよ?」

 「ま゛り゛ざはれ゛い゛む゛もこども゛達もう゛ら゛んでま゛ぜん。悪い゛のはま゛り゛ざだけ
 でず」

 「ゲスゆっくりたちをまだ庇うなんて、罰が全然足らないみたいだね」

 やれやれと大げさに両手を上げて首を左右に振るジェスチャーをすると、お兄さんはねじを更に合計で6本 
 まりさの頬にめり込ませた。
 まりさは途中何度か白目を剥いて気絶したのでそのつど作業は中断し、ペットボトル入りの
 オレンジジュースを頭のてっぺんからぶっかけられては覚醒した。

 30分後、まりさの頬には4対の突起がまるでヒゲのように誕生した。

 「ぷっ。くっ、あはははは、ゴメンゴメン。まるでネズミさんのようだったから。チュウまりさとでも呼ぼうかなあ」

 相変わらず軽い態度をとるお兄さんをなんとかに睨み返すまりさ。
 足は焼かれ、顔にネジが埋め込まれ、それでもまりさの心は折れなかった。

 「今日の所はボクの負けさ。それではまた明日、おやすみ。まりさ」

 お兄さんは部屋を出て行き、照明が落とされて暗闇に取り残される。

 「おちびたち…お腹を空かせているだろうね…ごめん。れいむ、おちびたちをゆっくり頼むよ」

 まりさは残してきた家族のことばかりを心配をしていたが、極度の疲労のためか間もなくまどろみに 落ちていった。



 「ゆっくりただいま!みんなおかあさんの言うことを聞いてよい子にしてたかな?」
 「おとうしゃんゆっくりおかえりなさい!かえってくるのがおそいから、おかあしゃんがとーーってもしんぱいしたんだよ」
 「ゆゆ!?ごめんねれいむ…。でもゆっくりできるゴハンがたくさん取れたよ!」
 「今日もゆっくりお疲れ様、まりさ。おちびちゃんたちがかたつむりさんが一杯居る場所を見つけてくれたんだよ。」
 「ゆっへん!いもうとたちとみんなで、がんばってとってきたんだよ!」
 「すごいね!かたつむりさんがこんなに!?こんな豪華な夕飯は生まれて初めてだよ」
 「さあ、みんなお父さんの取ってきた分も合わせて分けたらゆっくりいただきましょう」
 「「「むーしゃ、むーしゃ。しあわせ~~~~~!」」」



 きっとこれからも何度と無く繰り返されたであろう団欒の風景。
 きっともう戻れないであろう幸せの風景。
 夢であっても見れたのは正に幸運であったろうか。









 次にお兄さんが部屋に来たのは翌日の夜だった。

 「遅くなってごめんね。お腹空いただろう?なにか食べるかい」

 お菓子やらパンやらの入ったビニール袋を掲げて見せるが、まりさは拒絶する。

 「ゆうぅ…なにも食べたくないよ」
 「そうかあ。まりさのむーしゃむーしゃ、しあわせ~、を見てみたかったなあ」

 がっかりした表情で袋を部屋の隅に置くお兄さん。

 「…そのうち出来なくなるんだし」

 幸運な事に、ボソリと出た言葉はまりさには届かなかった。
 次の瞬間には何事も無かったのごとく明るい表情になるお兄さん。

 「じゃあ今日は、熱いのとねじねじとどっちにしようね?」

 部屋にある棚から道具を選択しながらの質問。

 「どんな事をされてもまりさは負けないよ!」

 自分はどうなろうとも、家族の元に虐待お兄さんを連れて行くわけにはいかない。
 まりさの覚悟は固いままだった。

 「案内したくなったらすぐに言うんだよ?じゃあ、今日のメニューはこれ」

 右手にはドライバー、左手にはアルコールランプが。

 「熱くてネジネジ♪」






 仰向けに寝かされたまりさはベルトで机に固定され、微動だに出来なくなった。
 お兄さんはアルコールランプの炎の先がまりさの左右の『ステンレスのおひげ』の先に
 うまく当たるように位置を調節し、点火した。
 熱がねじを伝わり、やがて餡子に到達する。

 「ゆ゛あああああぁぁあづい゛あづい゛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」

 皮膚を炙られのとはまた別の、直接餡子に熱が襲う激痛が始まる。
 じたばたともがこうとするが、しっかりと固定されたベルトの所為で身動きは取れない。

 「針灸みたいで、なんか餡子のめぐりが良くなって健康になりそうだね。これじゃあ
 罰にならないかなあ?」

 熱くて、が完了したのでネジネジの準備をしながら暢気な感想を述べるお兄さん。

 「まずは下ごしらえをしないとね」

 手にしたのは裁断用のハサミ。
 慣れた手つきで金髪をバサバサと切り落としてゆく。

 「あのね、まりさ。誤解してるみたいだけど、なにもまりさの家族を殺しちゃうわけじゃないんだよ?」

 ジョキジョキジョキ。

 「悪いことに加担したのは確かだけど、なにも泥棒しただけで死刑にはならないさ。
 それに、ここにキミが来てから丸2日。最初からお腹を空かせていたんなら、もう
 すごく心配になってるんじゃないかなあ」

 ジョキジョキジョキジョキジョキ。
 まりさはただ歯を食いしばり、餡子を蝕む熱に耐えるしかなかった。

 「だからさ、意地を張らずに家族に会いに行かないかい?」

 ジョキジョキジョキ。
 まりさの周辺にきれいな金髪だったモノがうっすらと降り積もった。
 お兄さんはハサミをしまいに行き、代わりに3面鏡を抱えて持ってきた。

 「チャームポイントのおさげだけ残してみました。お気に召しましたでしょうか」

 横たわるまりさに見えるように開いた3面鏡が、熱さに悶えるまりさに変わり果てた姿を映す。

 「ま゛り゛ざの髪の毛がぁぁぁぁああ」

 3方向から文字通りつるつる饅頭が映し出された鏡を両手に、お兄さんはニコニコ笑顔のままで。

 「安心してねまりさ。これから素敵な髪型にしてあげるよ。
  ああでも、かっこよくなり過ぎて家族にまりさがわからなくなっちゃうかもね!」

 いそいそと鏡をドライバーとネジに持ち替えヘアセットを開始する。





 …30分後、まりさの頭部には銀色に輝く直毛がまばらに生えていた。

 「こんな感じになりましたけど、いかがでしょうかお客様?ってまた気絶してる」

 許容量をはるかに超えた苦痛で、とっくにまりさは口から餡子を吐いて白目を剥いていた。
 お兄さんはめんどくさそうに餡子を口に入れなおし、オレンジジュースをドボドボと流し込む。
 無理矢理現実に引き戻され、ゲホゲホと咳き込むまりさ。

 「どうかな?ここまでされても家族を庇うのかい?」

 まだ視界がぼんやりとしたまま、昨夜見た夢を思い出す。
 まりさはただ黙ったまま、弱弱しくもお兄さんを睨み返した。

 「明日も仕事だし、ここまでかなあ。ホンっトまりさは頑張るね!」

 アルコールランプの火を消し、新たな頭髪が植えられた頭部にもオレンジジュースを
 たっぷりとかけてから。

 「今日もまりさの勝ちでいいよ。ゆっくりおやすみ」

 拘束しているベルトはそのままに、お兄さんは部屋を後にした。
 明かりが落ち、再び暗闇に支配される部屋。
 頬のねじを熱せられたことで内部の餡子に軽いヤケドが出来たようで、体の内側から
 ジンジンと痛みが自己主張を続ける。
 頭部のねじの痛みはオレンジジュースでかなり緩和されていたが、餡子まではその効果は
 あまり届かなかったようだ。
 まりさは一晩中、鈍痛でうなされ続けて夢を見るどころか一睡も出来なかった。




 「ゆっくりおはよう、まりさ。よく眠れたかい?」

 「………」

 翌日の晩、お兄さんが部屋に入ってきて声をかけてもまりさは無反応だった。
 疲労、睡眠不足、飢え、そして痛みと積み重なってきた『ゆっくりできないこと』は
 確実にまりさの精神を蝕んでいった。

 「無視するなんてひどいなあ。でも今日の罰も気にせず開始するからね」

 昨日髪を無残に切り落としたハサミを再び手に、拘束されたままで動けないまりさの前に現れるお兄さん。
 ハサミを持たない方の左手でそっとまりさの口に人差し指を突っ込むと、次に親指とで上の唇をつまむ。
 次に何をされるかと想像し、必死に顔を逸らそうとするが既に上唇はガッチリとつままれ
 皮がビロンと伸びるのが逆に滑稽だった。

 「じゃあ今日の罰のまずは下ごしらえ。まりさの唇を奪いまーす。っていってもチュッチュするわけじゃ
 ないんだけどね」

 鼻歌まじりに、摘まんで伸ばした上唇に遠慮なくハサミを入れていく。
 ジョキジョキジョキ。

 「ねえ、キミの家族ってさ、帰ってこないお父さんの事を自分たちを捨てたって考えて
  怨んでるかもしれないよね?」

 まりさは目を見開いたまま何も答えない。
 その視線は眼前のお兄さんを捉えているわけでも、何かを見ているというわけでもなかった。
 無反応のまりさにつまんないなー、とつぶやきつつも作業を続ける。
 元々は饅頭の皮なのだから唇はみるみる切り裂かれて、とうとう上半分が取り除かれた。

 「歯も歯茎もむき出しで、おおきもいきもい。では続いて下半分もいっちゃおー」

 もう何をされてもまりさはなすがままだった。

 このまま、まりさは嬲り殺しにされるだろうね。
 別に好きにすればばいよ、生きてここを出る事は諦めちゃった。
 ただ心残りは残してきた家族の事だけ。
 帰ってこない父親を怨んでいるかもしれない。
 既に自分の事など忘れてしまっているかもしれない。
 それでもとにかく…無事に皆でゆっくりしていてくれればそれでいいんだ。


 「はい。これで上手にごーくごーくも出来ないし、ちゅっちゅも永遠に出来ないまりさの完成でーーす」

 切り取った皮を無造作に背後にポイと投げ捨ててお兄さんが宣言する。

 「でもこんなのはあくまで準備なんだよ。これからまりさには永遠にむーしゃむーしゃ、しあわせー
 が出来なくなる事をしちゃうんだけど、何か言うことは無いかな?」

 ここまでやっておいて、ここまでされても家族のことを言わないまりさに敢えて聞くお兄さん。
 こんな風に全身をメチャクチャにされて、もはや自分は『ゆっくり』と言えるのだろうか。

 「殺じで……さっさとま゛り゛ざを殺ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」

 「ああ残念。ボクが聞きたかった言葉とは違うなあ」

 片手に愛用のドライバーと、もう片手には今度はヒゲや頭髪に比べて細くて短めのネジを。

 「では邪魔な唇も無くなったし、歯にねじねじしようかなあ。うんうん、虫歯は無いようだね感心感心」

 コツンとネジが前歯に当てられ、グリグリと先端で傷を付けて中心を定める。
 ネジ頭にドライバーをあてがい、お兄さんの腕にぐっと力がこもる。
 ギギギギ、ギリギリ。
 ゆっくりの歯は飴細工で出来ているという。
 ステンレス製のねじは多少の抵抗を受けつつも、やすやすと貫通していく。
 ギリギリギリギリギリ。
 わざとらしく、じわりじわりとしかドライバーを回さない。

 「ゆぎぃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ殺ぜぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛殺じでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」

 4cmほどのねじの丁度半分が歯を貫いたところで1本目の処置が完了した。
 歯の厚さを差し引いた分、口の内側に銀色の先端が姿を現している。
 唇が無いのでよだれが周辺に飛び放題になり、お兄さんの服にもシミを作ったが、大して気にも留めても居ない。
 今は虐待という世間一般には絶対に知られてはならない趣味を全身で堪能しているからだ。
 このまりさの、この悲鳴は2度とは奏でられない。
 全身全霊をもって発せられるこの音を、一秒たりとも聞き逃す事なんてどうして出来ようか?

 「んー。全体のバランス的に考えて、それぞれの前歯に1本ずつで8本。今日はあと7本ねじねじって所かな
 時間もあんまり無いしどんどん行ってみよ~!」

 ギリギリギリギリギリ、ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。ギリギリギリギリギリ。
 ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ。

 「痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛
 痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛痛い゛
 も゛う゛や゛だお゛う゛ぢ帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛帰る゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅう……」

 5本目の途中でガックリと気絶したまりさ。
 既に傍らに準備されていたオレンジジュースで、間髪入れずまりさの意識を引き戻すお兄さん。

 「やあ、おかえりなさい。まりさ」

 笑顔のお兄さんの優しい言葉にまりさは。

 「ゆ、ゆっくりただいま…。れいむっ!?」

 ほぼ数秒意識が遠のいたときに、家族の元に帰れた幻影でも垣間見ていたのであろうか。
 だが幸せなひと時も一転、まりさは自分の置かれている状況を再認識して絶望する。

 「ゆ゛んやぁぁぁぁぁああ!ま゛り゛ざ帰る゛の゛!お゛う゛ぢ帰る゛の゛ぉぉぉぉぉぉぉ」

 もはやただの駄々っ子と化したまりさに、容赦なくお兄さんは残りの作業を開始する。
 途中、一旦入ったねじを逆回転させて戻してからまた入れてみたりとか散々したために、全部の前歯にきれいな
 ねじ頭が生えた頃には用意したオレンジジュースがほとんど無くなってしまうのだった。








 翌日、お兄さんが虐待部屋に来たとき、まりさはうっすら開いた目で天井をぼんやり眺めたまま
 「帰りたい」とブツブツ呟くだけだった。

 「おうちに帰りたいなら連れてってあげるけど?」

 というお兄さんの問いかけにも完全に無反応。
 はたして、泥棒してしまう前にかえりたい、こんな姿になる前にかえりたい、という意味だったのか もしれない。
 お兄さんはため息一つ、固定していたベルトを外しはじめた。

 「ごめんね、まりさ。調子に乗ってやりすぎちゃったみたいだ。しばらくゆっくり休もうね。
 あ、そうだ。まりだとは別のゆっくりと今暮らしてるんだ。その子たちに会わせてあげるよ。
 すごくゆっくりしたいい子ばかりだから、きっとまりさとも仲良くしてくれるよ」

 『ヒゲ』や『頭髪』そして『歯の一部』が邪魔なので透明な箱に入れるわけにもいかず、底面を両手で
 そっと持ち上げてまりさを運ぶお兄さん。

 この悪夢の出発点、台所のある部屋に待っていたもの。

 「「「「むーしゃむーしゃ、しあわせーーーー」」」」
 「おいちいね!すごくおいちいね!」
 「ほらほら、あんまりがーつがーつしちゃ駄目だよ」

 床に置かれた皿に山盛りのゆっくりフード。
 それを囲んで堪能する成体サイズのゆっくり1匹と4匹の子ゆっくり。
 お兄さんが部屋に入って来たことに気づくと、一旦食事を中断して振り向いて。

 「「「おにいさん、ゆっくりいただいてます!」」」

 それまでブツブツと繰り返していたまりさは、その顔を見てガクガクと震え出した。
 自分が死ぬ間際に夢を見ているんだろうか?
 見間違えることがあるはずのない、愛しいれいむ、子供たち。
 どうして今、このお兄さんの家に?

 「あれ?どうしたのまりさ。この子達と知り合いかな?」

 自分を抱きかかえたお兄さんの言葉にはっと我に帰る。
 まずい。知られてはいけない。
 絶対に知られてはいけない。

 「し、知りません。ぜんぜん知らないゆっくりだよ」
 「あ、そう。じゃあこれから紹介するけど…」

 先ほどまで団欒していたゆっくりの親子を見ると、まりさを凝視したまま固まっていた。
 飾りのおぼうしも無く、髪も無い。
 銀色のヒゲに頭髪。
 唇も無く剥き出しの歯からはネジが生えている。
 なんなのだろう?一体、全然ゆっくりできない。

 「これはボクの家に泥棒に入ったゆっくりなんだ。しかも他に仲間がいるらしいんだけど
 そいつらのことを教えろって言っても庇うゲスなんだ。
 だからたくさん罰を与えた結果、こういう姿になっちゃんだよね」

 親子はお兄さんの説明を受けても、これが自分たちと同じゆっくりだとは到底信じられないと
 いった表情だった。

 「そしてこのれいむ親子は3日前だったかなあ。朝仕事に行こうとしてたら、すぐそこの所で
 行き倒れになってたんだ。
 一旦家まで連れてきて、ゴハンだけあげて急いだんだけどまた遅刻で大目玉さ。
 で、帰ってきてから事情を聞くと、お父さんゆっくりが狩りに出たまま一晩戻らなかったって。
 お腹を空かせたまま夜明けを待ち続けて、それからずーーっとこの辺を探して回ったって」

 今度はまりさに親子の事情を説明するお兄さん。
 これで納得がいった。
 帰らない自分を心配して一家総出で探しにきたのだ。
 結果、数日間まともに食べていないゆっくりが遭難するのは当然のことであろう。

 ゆっくりの行動範囲は実際は大して広くは無い。
 お決まりの狩り場、というのを探そうとすればこのお兄さんに遭遇するのも仕方が無いこと
 だった。

 「じゃあ、みんな一緒に生活するんだから仲良くしていってね」

 まりさを大皿の脇に置いて親子の食卓に参加させるお兄さん。
 れいむ達はおぞましい姿のゆっくりが改めて間近に来てビクっとしたが、お兄さんが笑顔のまま
 一度だけうなずいて促す。

 「で、ではあらためて…」

 一匹を新たに加えて食卓を囲む一同が声を合わせて。

 「「「「ゆっくりいただきます」」」」

 まりさは複雑な気持ちだった。
 家族全員無事だった事。
 ここならなに不自由なく暮らせるだろう事。
 しかし、自分が父だと言い出せない事。
 さらに、この人間が本当に家族を飼いゆっくりとしてゆっくりさせるだろうかという事。

 「「「むーしゃーむーしゃ、しあわせーーー!」」」

 ゆっくり特有の習性。
 皆が声を揃えて幸せな気分を表現する。
 しかし、まりさには出来なかった。
 団欒の中でまりさだけが出来なかった。
 物を噛むと歯に激痛が走るからだ。
 仕方なく少しずつ舌でペロペロとすくいとり、口に運ぶと噛まずに飲み込むことしか出来ない。
 今まで味わったことの無い甘味が口内にしっとりと広がるが、何故かしあわせー、な気分に
 なることは出来ない。
 それでも、再び家族とこうして一緒に居られるなら。
 そこがまりさのゆっくりプレイスなのだから。


 ゆっくりたちのそれぞれの食事の風景を、目を細めつつ見守るお兄さん。
 その胸の内では、次はなにをしよっかなー、と無邪気な虐待魂を燃え上がらせていたのだった。



 その日の晩、お兄さんも自分の寝室に行き、親子ゆっくり達もゆぴゆぴと安らかな寝息を立てた頃。

 「れいむ起きて。ねえ、れいむ。ゆっくりしていないで起きて」

 まりさの少し潜めた感じの呼び声で母れいむは目を覚ました。

 「だいじなお話があるんだ。まりさは実はれいむのまりさなんだ。みんなのゴハンを集めなきゃって
 このおうちに入っちゃってこんな事に……。
 ここのお兄さんは全然ゆっくりできない人だから、お願いだからゆっくりしないでここから出て行ってね」

 まりさはれいむにだけは真実を話しておこうと思った。
 れいむは賢く、冷静なゆっくりだからばれる前に子供たちをつれて上手く脱出できる方法を考えてくれるだろう。

 「いきなり何を言ってるの!?そんなこと言われてもゆっくり信じられないよ」

 れいむのこの答えも当然だった。
 目の前のボロクズのような、ゆっくりとさえ言えない様なモノにいきなり旦那宣言されたのだ。
 そこでまりさはれいむとの過去の出会い、永遠に一緒にゆっくりする事になったきっかけや
 子供たちが生まれてからのことを出来るだけ細かく思い出しながら説明した。
 そこまでされてようやく、れいむは探し続けていた夫を見つけることが出来たのだった。
 それと同時に、行き倒れていた自分たちを手厚く保護してくれた同じ人間が、ゆっくりに対してこのような
 虐待を行うことが出来るのかと戦慄するのだった。

 「ゆぁぁ…まりさ…どうしてこんなことに」
 「れいむ達が無事で良かった…頑張った甲斐があったよ…」

 れいむがまりさの頬にすがりついて今までの分も含めて思い切りす~りす~りをし、2匹はしばらくそのままで
 涙を流すのだった。

 ようやく落ち着いた後、しばらくお互いに知らないフリをしてチャンスを伺う事にした。
 れいむはまた元の子ゆっくりたちが一かたまりになって眠っている場所に戻っていった。

 「ゆっくりおやすみ、れいむ」
 「ゆっくりおやすみ、まりさ」



 ドア一枚向こうのお兄さん
 「ゆっくりおやすみ」











 に続きます。

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最終更新:2009年06月10日 20:15
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