巷で話題のゆっくり。あれに関して、俺はいくつかの持論がある
一つ、「人間には人間の規則、ゆっくりにはゆっくりの規則がある」
二つ、「相手の規則を乱さない限り、それは尊重するべきである」
三つ、「相手の規則を乱した場合は、それは罰せられてしかるべきである」
四つ、「俺が関わる場合は、人間の規則を乱したゆっくりだけ」
五つ、「関わったゆっくりがどうなろうと、俺の知ったことではない」
だいたい、こんなものだ。
まあ、単純な話として、ゆっくりにはゆっくりの生活があるのだから無闇に関わるべきではない。というだけの話。
うざったいから、という理由だけで殺すのは俺の性に合わない。
しかし、人間の生活を乱し、家を荒らし、作物を勝手に盗んでいく、というところまでいくと駄目だ。
しかも、家や作物を「これは自分のものだ」などとぬかす身勝手な理屈、ゆっくりとしての規則を人間に押し付けてくる。
ならば、よろしい。相手が自分の規則を押し付けるのであれば、こちらもこちらの規則を押し付けよう。
それこそが、弱肉強食。自然界の摂理というものだろう。
そんな風に俺は考えて、この仕事をやっている
おっと、自己紹介が遅れた。俺は「ゆっくり調教師」。ゆっくりに関する躾や調教を専門にしている者だ。
今日もまた、俺のところにゆっくり達が運ばれてくる。ゆっくり霊夢が二匹、ゆっくり魔理沙も二匹だ。今は薬で眠っているようだ。
今回は新たに開発した器具も用意してあるので、箱に閉じ込めるやり方とは違う方法も試せる。
箱での調教は楽なのだが、箱から出さないため、運動不足とストレスが極度に溜まるゆっくりがたまにいるのだ。
用意したものは新開発の代物なので、正式名称はまだない。とりあえず、俺は『首輪』と呼んでいる。
それは、大きな虎バサミのようなものあった。今は何かを掴もうとするように左右に開いているが。閉じれば輪となる。
ゆっくりにある程度の自由度を持たせつつ、かつ確実に拘束する器具として開発した。
今回は万力のように捕らえるだけだが、今後の発展型として、爆弾型・電気型なども考えてみている。
『首輪』は如何にして重さをなくし、かつ強力な力を発揮できるかが問題であったが、河童との共同作業によって完成した一品である。
とりあえず、四匹の経歴を渡されていた紙を見て確認。ほうほう、成程成程。
どうやらこいつらは相当悪知恵が働くらしく、作物荒らしの常習犯であるらしい。四匹はその指揮をしていたようだ。
長いこと農家を荒らしてきたが、この度有志によってめでたく捕まり、加工場送りとなった、と。
しかし、加工場でも同じ部屋にいた他のゆっくりを食い荒らしたり、食べ物を横取りしたりと横暴が目立つ。
餡子にするのは簡単だが、その前に人間の怖さを思い知らせて調教してみてくれないか、ということで俺の出番と相成ったわけか。
条件は整っている。ならば、調教開始といこう。
まず、外に通じる扉を開けておく。次にゆっくりたちを床に並べていく。
最後に、ゆっくりたちを横から挟める位置に『首輪』を置く。部屋にある柱に『首輪』から出ている縄を括り付けるのも忘れずに、と。
位置をしっかりと確認して……よし、起動!
手に持った機械を操作すると、がちぃぃんっ! と大きな音と共に『首輪』が閉まる。
首輪がゆっくりたちの身体に思い切り食い込んだ。
「ゆぶっ!?」「ゆっぐり!?」「いだいぃぃぃっ!?」「ゆ゛ゅぅぅぅぅ!!」
急激な痛みで悲鳴と共に目を覚ますゆっくり。痛みから逃れようと暴れるが、『首輪』は挟んだまま逃がさない。
鋏部分が皮に食い込み、中の餡子にまで触れているのだから、相当な激痛だろう。
ふむ、耐久性は大丈夫か。ゆっくりを潰さない程度に挟む力加減も出来ている、と。完璧だぞ、河童よ。
俺が感慨に浸っていると、ゆっくりたちはこちらに気がつき、泣きながら騒ぎ始めた。
「なにずるのぉぉっ!?」「いだいよぉ!」「どって! どっでぇねぇ!」「ゆっぐりざぜでぇぇぇ!!」
「まあ、落ち着け。少し話がある」
そう言って俺が話を始めようとすると、一匹のゆっくり魔理沙が扉が開いていることに気がついた。
「おぞと! おぞとにいぐぅぅっ!! 」
流石、ゆっくり魔理沙だ。目端が利くな。残ったゆっくりも扉に気づいて、魔理沙の後に続こうとした。
「おうぢ、がえるぅ!」「ゆっぶぐっ!?」「いだぎゅっ!?」
即座に二匹のゆっくりを上から潰すように押さえ込んだが、一匹のゆっくり霊夢はあえて逃がした。
そして、捕まえた二匹にだけ聞こえるように囁く。
「おい、お前ら。よく見ておけ」
外に出ようとするゆっくり魔理沙と、それを追うゆっくり霊夢。涙を流しながらも嬉しそうだ。
「おうぢにがえるよっ! ゆっぐりじんでいっでね! ゆっぐりじ、いいぃっぃぃっぃぃぃ!!??」
「ゆ゛う゛ぅ゛ぅぅ!? な゛んでぇぇぇ!? ま゛り゛ざんのながみがぁ、あ゛ぁあぁぁぁ!!??」
首輪の縄が限界まで伸びきった結果、二匹のゆっくりは餡子を撒き散らしながら、べちゃりという弾まない音と発して地面に落ちた。
いくらか遅れて『首輪』も地面に落ちる。
ゆっくりの前に進もうとする力と『首輪』の縄が戻ろうとする力が互いに引っ張り合って、身体が柔らかい方が千切れたというだけの話だ。
ある程度、自由度を持たせ、しかし行動範囲は完璧に制限する『首輪』。中々の効力だ。これならば実用化もいけるかもしれない。
これは外の世界に関する本を読んだ時、犬が逃げないように付ける『首輪』という物があることを知って作ってみたのだ。
残ったゆっくりたちを見ると、声も出さず、逃げようとした二匹『だったもの』を恐怖に固まった表情で見つめている。
「見たか? 逃げようとすると、首輪に引っ張られて、あんな風に死ぬ」
ゆっくりにも分かるよう、噛んで含めるように言葉を発する。
それがきっかけとなったのか、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は泣き叫び始めた。
「い゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!? ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛い゛ぃぃ!!!」
「だずげでぇ゛ぇ゛!? お゛う゛ぢに゛がえ゛る゛ぅ゛ぅぅ゛ぅっ!!!」
「お前たちは悪いゆっくりだから、ここからは帰れない」
「れ゛いむはい゛い゛ゆっぐりだよぉ!?」「な゛んに゛もぢでないぃぃ!!」
ここからは特に重要だ。「いい」か「わるい」かは既に決定していることだ。それをゆっくりたちにも分からせねばならない。
「しかし、お前たちは今も逃げ出そうとし、人の野菜を盗み、加工場では仲間を食べた」
「じらな゛い、ぞんな゛のじらない゛ぃぃ!」「お゛ぼえでな゛いよぉぉぉっ!!」
「しらを切っても駄目だ。お前たちは悪いゆっくりなんだ。しかし、まだ大丈夫だ」
「ゆ゛っ!?」「ゆゆ゛っ!?」
大丈夫という言葉に希望が見えたのか、一途に俺の言葉を待つゆっくり。
「俺は悪いゆっくりを良いゆっくりにする人だ。俺の言うことを聞けば、良いゆっくりになれる」
「いいゆっぐり!」「なる゛、いいゆっぐりにな゛りだいっ!」
嘘はついていない。何が「悪く」て、何が「良い」のかを伝えていないだけだ。
「分かった。だが、もしも俺の言うことを聞かない時はあんな風になるからな」
そう言って、外に散らばったゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙を指差す。
「いうごどぎぎまず! いうごどぎぎますがらぁ!!」」「あ゛んなぶうにな゛るのはい゛や゛ぁぁ!!」
第一段階成功。ゆっくりを調教するには、鞭と飴が必須だ。まず、鞭によって上下関係をはっきりさせる。
先に飴を与えては、間違いなく有頂天になるからだ。
しかし、鞭だけではストレスが溜まって死んでしまう。今は飴の時間だ。
「ふむ、そこまで言うのなら、良いゆっくりにしてやろう。とりあえず、ここで待っていろ」
「「ゆっぐりまっでるよ!!」」
涙を流しながら答えるゆっくりを部屋に残して、外に向かう。その際、千切れた二匹の『首輪』の縄を柱から外す。
縄があっては扉を閉められないからな。
外に出ると、二本の『首輪』を回収する。と、ゆっくり霊夢の方はまだ息があるようだった。
「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ」
一目見て、先は長くないと分かる。おそらく死ぬ間際の痙攣みたいなものだろう。
特に構わず、皮ごと餡子も回収する。台所で餡子をこね回していると、
「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ、ゆ゛、ゆぐ!」
痙攣が激しくなって、そのまま動かなくなった。無視して、皮を除いて二匹分の餡子をまとめておいた。
今後のゆっくり用の食事としよう。
「待たせたな」
「ゆっ! ゆっぐりまっでたよっ!」「いいごにじでだよ!」
『首輪』の痛みか、恐怖のためか、まだ言葉が不明瞭だ。
「ちゃんと待ってたご褒美だ。食え」
二匹の目の前に餡子を盛った皿を置いてやる。ちなみに床には汚れてもいい敷物を敷いてある。
「なにこれ! すごくおいしいよ!」「うめぇ、めっちゃうめぇ!」
瞬く間に食べ散らかしていく。あの皿はゆっくり専用の皿とするかな。
食い終わった頃合を見計らって、立ち上がり声を張り上げる。
「さて、お前たちが良いゆっくりになるには、俺の言うことに絶対に従ってもらう!」
何が始まったのか、という顔で俺を見上げるゆっくり。規則は明確に決めないといけない。
「俺の言うことが出来たらご褒美をやる。その餡子とかだな」
「ゆっくりー♪」「ごほうび、ごほうび、うれしいなー♪」
ご褒美と餡子と聞いた途端に喜色満面のゆっくり。
「俺の言うことが出来なかったらお仕置きだ。ご飯抜きとかだな」
「ゆっくりー!?」「ごはんたべたいよぅ!」
「ついでに、発情してゆっくりするのも駄目だ」
「ゆっ!?」「いやだよ、ゆっくりしたいよ!」
ご飯が食べられない、ゆっくりしたいと騒ぎ出すゆっくり。黙らせるために最後の規則を口にする。
「もしも逃げ出そうとしたり、言うことを聞かなかったら、お前たちに後ろにくっついている『首輪』で死ぬことになるからな」
軽く『首輪』の縄を引っ張る。背中に直結しているので、嫌でもその存在と先ほどの惨劇が思い出されるようだ。
「ゆ゛うぅっぅう゛!? いうごとぎぎまずぅぅっ!!」「え゛ぐぅぅぅ! じぬ゛のはいやぁぁ!?」
第二段階成功。この後、何度か教え込んで『首輪』の危険性と柱に繋がっていて外れないことを覚えさせた。
とりあえず、首輪がある限り逃げられないことが分かれば十分である。
その日から、俺のゆっくり調教生活が始まった。
まずは単純な復唱から始める。俺の言葉を繰り返して言うという単純なものだが、鞭と飴という規則を覚えこませるのにちょうどいい。
この段階では複雑なことは覚えられないという経験則もある。
「ゆっくり」 「「ゆっくり!!」
「霊夢」 「「れいむ!」
「魔理沙」 「「まりさ!」」
「餡子」 「「あんこ!」」
「首輪」 「「くびわぁぁっ!?」」
少し乱れがあったが、順調にこなしていく。一通り復唱したら、食べ物をやることも忘れない。
こうすることで「言うことを聞く=食べ物をもらえる」という図式を植えつけるのだ。
知り合いから借りてきた飼い犬を見せる。犬は「お手」や「お座り」などの芸をゆっくりたちの前でやってみせた。
「すごい、すご~い!」「かっこいい~!」
「お前たちも犬みたいに言うことをちゃんと聞くんだぞ」
試しに「お手」は出した手に顔をすり寄せること、「お座り」は顔を伏せることとして、練習させてみたが一向に覚える気配がなかった。
「お手」「ゆっ? なにかくれるの?」
「お座り」「ゆぅ? な~に?」
「……昼食は抜きだな」「「ゆ゛ぅぅ~~!?」
何度も「あの犬みたいに出来るようになれ」と言葉をかける。勿論、俺だってそんな短期間でゆっくりが芸を覚えられるとは思わない。
ここでは「犬みたいに」という言葉に重要な意味を持たせ、「犬みたいに=言うことをきく」と条件付ける。
ちなみに俺は別に犬が嫌いなわけではない。
調教を開始し出した頃の、夜中には注意が必要だ。
「……ゆっ、……ゅゆ……!」「ゆ……っ……ゆぅ……!」
大して広くもない部屋に二匹のゆっくりを放置しておいたら、やることなど大体決まっている。
俺は音もなく、ゆっくりたちのいる部屋に近づき、耳をすませた。
「ハァハァ! ゆっ! ゆふん! ふぅ~! ゆん!」
「ゆんゆんっ。ゆっくりぃ~! 」
「ゆっゆっ! ゆっ、ゆ゙ーっ!」
「 ゆ゙うううう!!」
大層盛り上がっているようだ。しかし、初日に生殖行動はするなということを言っておいてある。
ゆっくりたちはそれを破ったわけだ。ならば、罰を与えねばいけない。
バタンっ! とあえて大きな音を立てて、扉を開ける。威圧するためと、どれだけ怒っているのかを教えるためだ。
「ゆ゙っ!? ゆ、ゆっくり!」「ゆ! し、していってね……」
突然、行為を中断させられたため、最初は入ってきた者を睨むゆっくりたちであったが、俺だと分かった瞬間、意気消沈する。
「……お前たち、言ったはずだよな? 発情はするな、と」
最初と同じように噛んで含めるように話す。俺の怒りを感じ取ったのか、慌てだす二匹。
「ま、まりさじゃないよ! れいむがゆっくりしようっていったんだよ!」「ゆっ!? ちがうよ! れいむじゃないもん!」
「黙れ」
醜く騒ぎ出そうとした二匹を一言で黙らせる。
「最初に言ったよな? 言うことを聞かない悪いゆっくりは首輪で……」
そこまで言ったところで、力を込めて『首輪』の縄を引っ張る。勿論、千切れない程度の力で、だが。
「ゆ゙ゔううぅ!? やめでぇ!?」「いだい、いだいよぉ!!」
「お前らがすることは何だ? そんなことも分からないのなら、このまま千切るぞ」
「ごべんなざいぃ! ごべんなざいぃぃぃ!!」「もうじまぜん! もうじまぜんがらぁぁっ!!」
ここで、即座に謝るのならまだ芽はある。まだ責任転嫁するのであれば、本当に千切っていただろう。
「生殖をする=悪いゆっくり」という図式がここで出来上がる。したくとも『首輪』の痛みを思い出せば、そうそう出来ないだろう。
この日を境に、ゆっくりたちが生殖をすることはなくなった。早めに調教出来て楽になったというところかな。
いくらか調教を進めていくと、『首輪』とゆっくりの皮膚が薄皮一枚分ほど一体化し、あまり痛くなくなったようだった。
勿論、引っ張れば痛いのだろうが、普段の生活や運動に支障は来たさなくなった。
もしかすると、『首輪』を己の一部分と捉えて、無意識的に痛覚などを麻痺させているのかもしれない。
ここらへんの興味は尽きないが、調教も進めねばならない。
たまに、『首輪』を引っ張っては、命令をきかせる。それを繰り返すことで身体の中の異物を意識させ続けるのだ。
「ゆ゙ぐゔぅぅぅ!!??」「や゙め゙でぇぇ!!??」
『首輪』を異物と認識させ、「異物がある=言うことをきく」という条件付けをさせる。
ゆっくりは忘れることはあっても、痛みに慣れる生き物ではない。常に鞭を意識させ続ければ、命令をきかせることも容易となる。
苦労の甲斐あってか、ゆっくりたちもかなり言うことを聞き、出来ることも増えてきた。
前は出来なかった「お手」や「お座り」も易々とこなす。
「れいむはいぬさんみたいにできるよっ!」「まりさもいぬさんみたいに、ちゃんとできるよ!」
二匹いるという環境も良かったのか、適度にお互いが張り合って刺激を与えあっている。
多くのことを覚えたり、出来たりした方のゆっくりには食べ物を多めに与える、という形を取っているので、よりそういう風になる。
ちなみに食べ物などのことで喧嘩をしようとしたら、即座に『首輪』を引っ張る。
何度も伝えるべき言葉は「わるいゆっくりは死ぬ」「犬みたいに言うことをきけ」「言うことをきいたら食べ物がもらえる」だ。
鞭と飴の対比は7対3ぐらいである。ゆっくりにはそのぐらいで十分だ。
たまには『首輪』の縄を持って散歩にも出かける。屋内にだけ居るのでは、ゆっくりのストレスが溜まっていくからだ。
近頃では俺から離れすぎないように注意しながらも、それなりにゆっくりできるようになっている。
当初は外に出ても『首輪』が怖くて、
「ごわいよぉ! がえろうよぉ!」「あるぎだぐないいぃぃ!」
と、俺の周りから一歩も動けなかったものである。
今では、『首輪」についてる縄の範囲を把握したのか、俺の足元から離れて飛び跳ねたりもしている。
無論、調子に乗ったりすれば『首輪』の警告を発して、ちゃんと戻らせる。
ここまで調教出来れば、もう十分だ。後は最後の仕上げにかかるとしよう。
最終更新:2008年09月14日 05:50