ゆっくりいじめ系2674 実まりさと鏡

注:某イラストを元にしてこのSSは構成されています。



とある茎に1匹のまりさがぶら下がっていた。
まだ産まれていないので『実まりさ』と言ったところだ。
目はまだ開いておらず、ただぶら下がっているだけだった。
だがそんな実まりさにも徐々に自我が生まれてきた。
自分はゆっくりまりさであることも分かった。
まだしゃべれなかったが心の中でならしゃべれるようにもなった。

『まりしゃはゆっきゅりうみゃれるよ…。』

実まりさは楽しみだった。すでに様々な期待が心にはあった。
だが不思議なことに何が楽しみなのかは分からなかった。
実まりさは色々なことを考えた。
産まれたら何をして遊ぼう…。
どんなゆっくりした生活が待っているんだろう…。
楽しみで意味も無く体を揺らしてみた。

「可愛いな~。説明書だとあと数日後に目が開くのか~…。」

何か聞こえた気がしたが、実まりさは眠かったので無視して寝た。









自我が生まれて2日後、実まりさは何と目を開いていた。
普通なら産まれる直前まで目は開かないはずである。
だがそんなことも知らない実まりさは初めての景色に感動していた。
ぶら下がっている状態なので身動きが取れず同じ方向しか見れないが、
それでも実まりさは嬉しかった。

『ゆ~♪はやきゅうまれちゃいよ♪』

自分の目線では見えなかったが、茎の根元にはきっとお母さんがいるのだろう。
自分が産まれてくることを楽しみにしていることだろう。
実まりさはそう思うとますます嬉しくなった。

「おっ!目を開いてるぞ。さすが………だな!」

ウトウトしてる時に不意に大きな声が響いた。
よく聞き取れなかったが、実まりさは誰かいることは理解できた。

「あ、ごめんね。お兄さんのことが分かる?」

実まりさは目線の都合上声しか聞けなかった。
だがその後、細い何かが実まりさに触れてきた。

「これはお兄さんの指だよ。危害は加えないから安心してね。」

実まりさは少し悩んだ。お兄さんって誰だろう?
実まりさは頭がこんがらがった。

「キョロキョロしちゃって可愛いな~。そうだ!
 同じ景色ばかりじゃつまらないだろ?」

お兄さんはある物を実まりさの前に置いた。
…そう、鏡である。

『ゆぅ~?まりしゃがいりゅよ!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!』

心の中でそう思った実まりさは笑顔で鏡に映る自分を見つめていた。

「それは鏡って言うんだ。君が映ってるんだよ。ほらね。」

実まりさは鏡のことを理解していなかったので、
お兄さんは少し教えてあげることにした。


綿棒で軽く触れてみた。
実まりさは驚いた顔をしたが、同時に鏡に映るまりさも同じ顔をした。


『ゆ?ものまにぇしゃんだ!』


指でスリスリしてあげた。
実まりさは体を揺らして喜んだが、同時に鏡に映るまりさも喜んでいた。


『ゆぅ~?まりしゃとおんなじだにぇ!!』


針でゆっくり突いてみた。
実まりさは痛そうにしたが、同時に鏡に映るまりさも痛がっていた。


『ふしぎだにぇ…。まりしゃとおんなじだよぉ…?』


実まりさは鏡の中のまりさが自分と同じリアクションを返すことに気が付いた。

『ゆぅ~♪きゃぎゃみっちぇおもしりょいにぇ!!!』
「どうやら理解してくれたみたいだな。良かった良かった。」



鏡には実まりさと茎の先だけが映っていた。
根元のお母さんが見れないのは残念だったが、
その内見れるのだから別にいいと思っていた。
同時に自分は1人っ子だと気付かされた。
体を揺らしても何の反応も無いからである。
でも実まりさは不満じゃ無かった。
自分だけなら思いっきり親に甘えられるからだ。


それから実まりさは毎日鏡で遊んだ。


『ぴゅくー!ゆゆ~ん♪』

膨らんだり体を揺らしたり…鏡に映っている自分を見て楽しんだ。
お兄さんはその様子を見て和んでいた。

「見てて飽きないなぁ~…。可愛いな~…。」

実まりさはやることが無いのでひたすら鏡で暇を潰した。
恰好を付けてみたり、笑ってみたり、プラプラ揺れたり…。
目の前の鏡と睨めっこして遊んだりもした。

そんな百面相を演じる実まりさをお兄さんは後ろから鏡越しに
こっそり覗いて楽しんでいた…。




実まりさは楽しみだった。
産まれたらきっと、もっと素晴らしい景色を見れるのだろう。
お母さんやお父さんとスリスリしてお歌を歌うのだろう。
美味しい食べ物を存分にむ~しゃむ~しゃするのだろう。
それ以外は何故か何も思い浮かばなかったが、
思いつく限りの幸せなイメージの中で実まりさはワクワクしていた。

『はやきゅうまれちゃいな…。でみょまぢゃゆっきゅりしちぇるよ…。』

実まりさの本能がまだ誕生の時では無いと告げていた。
実まりさは早く産まれたいと思いつつ眠りに就いた…。



自我が生まれてから5日後、実まりさは時折口をパクパクさせていた。
実まりさは産まれた時に言う『ゆっくりしていってね!!!』の練習をしていたのだ。

茎に実った赤ゆは皆こっそりと挨拶の練習を始める。
この実まりさも例外では無い。
鏡を見ながら口を懸命に動かし発音しようとしている。
実際ちゃんと言葉を発せるようになるのは産まれてからだ。
この時点ではほとんどしゃべることはできないが、
本番で上手くできるようイメージトレーニングしているのだ。

「ゆ…ゆ…し…ちぇ…ちぇね…。」
『ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!…うみゃくいえにゃいよぉ…。』

そんな様子を見てお兄さんはまた笑顔になった。

「練習してるのか…。いや~可愛いな本当に!!見てて癒されるね!!」



実まりさは産まれる日を夢見て必死に毎日ずっと練習した。
鏡がある分効率がいいのか随分上達していた感があった。

「ゆっきゅ…ちぇ…いっ…ね…!」
『ゆ~♪だいぶうみゃくいえりゅようになっちゃよ!』

実まりさは楽しみで楽しみで仕方が無かった。
産まれ落ちたら元気良く挨拶していっぱい褒めてもらおう。
色々なことを教えてもらって良い子になろう。
実まりさは様々な期待を胸に誕生の時を待ち続けた。


だが実まりさは期待や希望が優先したせいで異常に気が付かなかった。
ぶら下がっている時点で目が開けたこともそうだし、
親の子守唄が一切聞こえてこないこと、
ほとんど茎が揺れないこと、
記憶がほとんど受け継がれていないこと…。

期待と希望で頭がいっぱいの実まりさはそんなこと考えもしなかった。




自我が生まれてから2週間後、実まりさは少しだけ違和感を感じていた。
いい加減産まれてもいい頃ではないだろうか…?
だが本能が産まれるべきでないと告げていた。
すなわち今無理に産まれたら危ないと告げていたのだ。
実まりさはまだ産まれるべきでないと判断し、仕方なく発音の練習を始めた。

「ゆ…きゅ…しちぇ…いっ…ね…!!!」

実まりさは鏡に映る自分を飽きること無く見ていた。
自分が少しずつ成長しているのが分かって嬉しいからだ。
だが少し退屈であった。早く産まれたいなと実まりさは思った。

『まだうみゃれるときじゃにゃいんだね…。ゆっきゅりししゅぎだよ…。』


疲れて寝てしまった実まりさを見て、お兄さんはコーヒーを飲みながらくつろいだ。

「1日見てても飽きないな~。買っておいて正解だったな!」






自我が生まれてから1ヶ月後…

実まりさはさすがに何か変だと思い始めた。
産まれるのにこんなに時間がかかるものなのだろうか?
産まれるのは当然初めてなので分からないが、
いくらなんでもゆっくりし過ぎな感じがした。

『もうひみゃだよぉ…。はやきゅうみゃれちゃいよ!!』

仕方ないので今日も鏡の前で発声練習だ。

「ゆ…きゅ…しちぇ…いっ…ね…!!!」

頑張って練習してるのに前と比べてほとんど上達していなかったが、
実まりさは当然そんなことに気付かなかった。


『みょうねみゅくなっちぇきちゃよ…。おやしゅみ…。』


「おじゃましま~す!おっ、これがお前が言ってた例の…。」
「大声出すなよ~。可愛い寝顔を崩すなよ。」
「分かってるよ。お前のロリコンっぷりには感心するぜ。」
「変なこと言うなよ…。お前だって可愛いと思うだろ?」
「まあ五月蝿くないしな。でもちょっと残酷じゃないか?」
「何が?残酷なもんか。永遠の美と言って欲しいね。」
「永遠では無いだろ…。説明書に約半年で取り換えてって…。」
「ああ、そうだったね。その時になったら考えるよ。」




自我が生まれてから4ヶ月…


実まりさはもう産まれたかった。
もう暇で暇で仕方が無い。
一刻も早く産まれてお母さんやお父さんと挨拶したかった。
だが4ヶ月も経っているのに実まりさは全然成長していなかった。
そして挨拶の成果も全く向上していなかった。

『みゃだうみゃれちゃだめにゃの?みょうきゃぎゃみあきちゃよ!!』

実まりさはただ耐えた。いくら体を揺らしても茎から離れられないのだ。
つまりまだ誕生できる状態では無いということだ。
実まりさは退屈だったので寝て過ごすことにした。


「そろそろ新しいのを買う時かな…。飽きてきたし…。」



自我が生まれてから半年後…

実まりさはほとんど動かなくなり、反応しなくなっていた。
もうどれだけ時間が経ったのかも分からない。
産まれる時をただ待ち続けて待ち続け…。
実まりさはもう疲れてしまったのだ。
長い間ずっと明るい未来を信じ待つことに…。

そしてこの頃になるとお兄さんも興味をなくしており、
ほとんど見向きもしなくなっていた。
当然だ。何をしてもほとんど反応しないのだから。
虚ろな目で鏡を見つめる実まりさなどもう可愛くないと思っていた。

「そろそろ期限か…。まぁ楽しませてもらったよ。ありがとね。」

お兄さんは茎を掴んだ。
良く見れば茎も実まりさも埃にまみれていた。
どれだけ放置されていたかが分かる。

実まりさは浮遊感を感じ再び期待した。
ひょっとしてやっと産まれる時が来たのかも…。

「ゆ…きゅ…!!!」


「よいしょっと…。」


「ゆぴゃ…。」


実まりさは急に意識が遠ざかった。
おかしいな…。さっき起きたばかりなのに…。
あれ?何か苦しい?あれ?あれ?
体が痺れる…。助けてお母さん助けてお父さん。

『くりゅし…たしゅけ…ゆっきゅり…うまれちゃかっちゃ…。』


実まりさの意識はそこで途切れた。
2度と覚めない永久の眠りへ誘われたのだ…。


「最後の顔も苦しそうで可愛かったな。じゃあね。」


お兄さんは茎ごと実まりさをゴミ箱に捨てた。


「さて…。新しいのも買ってきたしまた賑やかになるぞ~♪
 ええと、確か説明書が…。」


お兄さんが手に取った紙にはこう書かれていた。



『大好評!!インテリア用ゆっくり』

ゆっくりを飼ってみたいと思っている、でも世話は面倒。
そんなあなたに朗報です!!
このキットさえあればゆっくりをお部屋のインテリアとして
何の世話もせずに飼うことができます!!
寂しい思いをしているあなたにもお勧めです!!

      • キット内容・・・


実ゆ&茎のセット

茎収容ケース

成長抑制剤入り栄養薬(半年分)


      • セット方法・・・

1、まずケースの中に砂糖水と成長抑制剤入り栄養薬を9:1で混ぜます。
2、ケースの蓋の穴に茎を通し、蓋を閉めてケースを固定します。
3、数時間後実ゆの自我が生まれ動き始めます。
  それまでに置きたい場所にケースを設置しましょう。
4、後はお部屋のインテリアとして飾って楽しみましょう。
  手や口を出すも良し、ただ観察するも良しです。

注:1で作成した水は交換せず半年間使用できます。
  半年程で実ゆはあまり活動しなくなるので処分してください。


ゆっくり特有の騒がしさもありませんし、
部屋を汚したり騒いだりすることもありません!!
ペット禁止のアパートでも使用することができます!!





そう、実まりさはお兄さんが買ったインテリア用ゆっくりだった。
茎にぶら下がっている時点で目を開けられたのは栄養薬の効果だったのだ。
ある時を境に成長も発音も止まったのは成長抑制剤のせいだった。
記憶があまり受け継がれていなかったのは親とすぐ切り離されてしまったからだ。
インテリア用ゆっくりは茎が生えてすぐに1匹だけ残され、
即座に親から離され冷凍保存される。
1度保存された実ゆは栄養薬がないと目覚めないよう加工され出荷される。

つまり実まりさが抱いていた理想や夢など最初から実現しなかったのだ。
ただ飾りとして人間を満足させるためだけに存在したのだから。
そして用が済んだら古くなったお供えの饅頭のごとくポイである。

このインテリアゆっくりは様々なニーズに飛ぶように売れた。
老若男女、愛で派と虐待派、会社や自宅…。
客を選ばず多くの実ゆは売り飛ばされていった。

実ゆにはゆっくり特有の迷惑な本能もないし、世話をする心配も無い。
ただ見ていたいだけの人には好都合だったのだ。


「よし、今度はありすだ!可愛いリアクションを見せてくれよ~♪」





とある茎に1匹のありすがぶら下がっていた。
まだ産まれていないので『実ありす』と言ったところだ。
目はまだ開いておらず、ただぶら下がっているだけだった。
だがそんな実ありすにも徐々に自我が生まれてきた。
自分はゆっくりありすであることも分かった。
まだしゃべれなかったが心の中でならしゃべれるようにもなった。

そして2日後…

『ありしゅはゆっきゅりうみゃれるわ…。』
「おっ!目を開いてるぞ。さすがインテリアゆっくりだな!」



決して叶わない幻想を抱き、今日も実ありすは人間の身勝手な欲望を満たしていた。








某イラストの絵が気に入ってしまい書いてしまいました。
色々脚色してますが…。
植物型だし植物と同じ扱いにしてみました。




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最終更新:2011年07月27日 23:59
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