ゆっくりいじめ系325 因果応報ご用心

※ゆっくり虐待。レイプ、出産などあり。
※人間の死者あり。
※後味微妙ってか悪い。
※東方キャラ登場あり。
※そのうち改稿しようかと思っています……んー、微妙。すごく。
※当然のように俺設定満載な感じです。
※特に、ゆっくりの設定は思い切り俺設定です。イメージと違う場合もございますので、
ご注意ください。





「因果応報ご用心」



 日暮れ間近な夏の山林に、悲鳴がこだまする。

「いやぁぁぁぁっ! おじさんっ! やめてぇぇぇぇぇっ!」
「たすけてぇー、まりさぁぁぁぁぁっ!」
「ゆっ! れいむはゆっくりしんでね!」
「むきゅぅぅぅっ! お、おいてかないでぇ~っ!」
「あがぢゃんっ! まりざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁっ!」

 ゆっくりれいむとゆっくりまりさたちの、悲痛な叫びがこだまする。

 人里もほど近いこの山林に最近やって来たゆっくりたちは、永住しようと巣作りに励ん
でいたのである。

 来て早々、長雨や台風で仲間が多数死ぬなどの苦難もあったが、やっと天気も良くなっ
たので、雨風に負けない頑丈な巣を作ろうと、みんなで頑張っている最中に現れたのが三
人の人間。
 人間たちを見たゆっくりは、ご近所さんに挨拶をしようと思い、いつも仲間にするよう
に笑顔で「ゆっくりしていってね!」と言った。

 三人とも男性な人間たちは、そんなゆっくりに挨拶を返すことなく、無言で行動を開始
した。
 手にした棒でゆっくりを殴り弱らせて、背負った籠に入れると言う、極めて野蛮かつ原
始的な狩猟に取りかかったのである。

 最初に殴られたゆっくりは、れいむ種のゆっくりで二匹の子供がいた。
 殴った男が力加減を間違えたため、そのれいむは一撃で皮を破裂させられ、中身の餡子
を周囲に飛び散らせながら息絶えた。

 挨拶をしても黙っている男達を咎めようとして、彼らに向かって一歩前へ出たのが間違
いだったのかも知れない。

「ゆっ! おぢざっべびゅっっっ!」
 これが最後の言葉である。

 自分が何故殺されたのか、その後子供たちは、家族は、仲間は、どうなるのか考える余
裕すら無い、突然訪れた生命の終わりであった。

 れいむが死んだことにより、ゆっくりたちは混乱した。
 頭の回転の早い者は、混乱しながらも即座に逃げ出し、何匹かは逃走に成功したが、逃
げ遅れたゆっくりたちは、殴られ捕らえられるか、その場で死ぬかの運命を押し付けられ
た。

「やべでぇぇぇぇっ! ま゛りざわる゛い゛ごどしでない゛よぉぉぉぉっ!」
「うはっ! 大物だぜっ! きゃっほぉぅ!」
 丸々と太った直径40センチクラスのまりさを捕らえ、思わず歓喜の声を漏らしたこの男
は、数ヶ月前までは"町のダニ"と後ろ指さされていたゴロツキだった。

 強請りと贓物故買が収入源な、絵に描いたような下っ端のチンピラであったが、ゆっく
りを捕らえ中身の餡子を売る事で最近は生計を立てている。
 殴ると人の声で悲鳴を上げるのが楽しくて堪らない上に、ゆっくりから取れる餡子は、
捕らえて取り出す労力以上の利益をもたらすのだから、この商売はやめられない。

「む……むぎゅぅぅぅ……」
「へへっ、ちょいと小振りだが、こいつぁゆっちゅりー種だぜ! 梅紫蘇餡は高く売れる
からな、ぐへへへ」
 成体と幼生の中間ぐらいの、もう一ヶ月ほど生き延びられたら立派な成体となったであ
ろう、ゆっちゅりーを捕獲した男は、先々月までは普通の農家であった。

 このゆっくりたちとは別の、もうこの世には存在しないゆっくりたちの群れに、農地を
襲われ作物が全滅してしまったため、今年の冬を越し来年の種籾を買うため、やむなくゆ
っくり狩りを繋ぎの仕事としている。
 自分が生きるためとは言え、他の命を奪う行為に少なからずストレスを感じており、そ
れを打ち消すためにことさら野卑に振る舞ってみせている。

「あがぢゃ! や゛べでっ、べいぶのあがぢゃぁぁぁぁんっ!」
「ふんっ! ふんっ! おらぁっ!」
 餡子があまり多く取れない赤子のゆっくりを踏みつぶしながら、その母に向かって棒を
振り下ろしている男は、この三人組のリーダーと言うか先導者である。

 ゆっくりが幻想郷に姿を現した頃から、男はもうこの仕事をはじめていた。たまたま見
かけたゆっくりを、むしゃくしゃしていたので殴り殺した際に、手に付いた餡子を見て思
いついたのであった。
 これはカネになると思った男は、ゴロツキや食い詰め者など、人間の声の悲鳴にも竦ま
ない仲間を集め、狩猟と加工を行う集団を作ったのである。

 ゆっくり猟は、こんな商売がこの世にあって良いのかと思うほど儲かった。

 里の指導層が、ゆっくりを"異変の前兆か一部"であると認定し、なるべく関わらないよ
う人々に呼びかけ、多く出没する地域を危険区域として立ち入りを禁じたため、男たちの
商売はほぼ独占市場であった。

 ゆっくりを捕らえ中身を取り出すのは、やろうと思えば子供でも簡単にできる事なのだ
から、人々に多く知られてしまっては商売が成り立たない。

 だから彼らは一切合切を仲間内の秘密として外部には伏せている。独占を維持するため
に。

 そのために、この日も"立ち入り禁止"とされている山林を狩り場に選んだのであった。

「い゛や゛ぁぁっ! どっ、どぶじで、れ゛いむだぢを、い゛いぢめるのぉぉぉぉぉっ!」
 必死に逃げながら、一匹のれいむが叫んだ。

 しかし、男たちは誰一人その問いに答えず、無言で狩りを続ける。
 意志疎通も可能であるにもかかわらず、男たちは極力ゆっくりと会話を行わない。
 こいつらが人と同じ言葉を喋る、と言うことを強く認識してしまうと、慣れた者か元か
ら暴力的な者でない限り、どうしても非情になりきれなくなるからである。

 獲物と情を交わすことは禁忌であった。
 物言わぬ獣が相手ではなく、物言う獣が相手なのだから。

 ゆっくりたちにとって辛く、狩猟者たちにとっては心躍る時間は、唐突に終わった。

 がけ崩れが発生したのである。

 男たちもゆっくりたちも、圧倒的な自然の災害によって、等しく死を与えられた。



 目覚めたとき、男たちは三途の河に居た。

「さぁ、お客さん方、今日はもうこれで終いだよ。早く乗った乗った」
 背の高い赤毛の少女が、男たちを舟に乗るよう急かす。

「お客さんもわかってんだろ、自分らが死んじまったって? ほら、河原で石積みって歳
でもないだろ? 早いとこ乗って閻魔様のお裁き受けなよ」
 男たちにそう言いながら、少女は手にした大鎌の柄で、ゆっくりたちを殴っている。

「え? なんであたいがゆっくりを殴ってるかって? こいつらは話しても聞かないから
ね……面倒なんで、ぶん殴って温和しくさせて舟に積むのさ」
 慣れているのだろう、少女は手際良くゆっくりを気絶させて舟に放り込んでゆく。

「そうそう、あたいの名前は小野塚小町さ。ここの船頭──要するに死神をやってる……
っと、お客さんそんな顔しなさんな。死神って言っても、魂を身体から出すんじゃなくて、
あんたらみたいな魂を三途の向こうに運ぶだけの、しがない船頭さ」
 話し好きなのか、小町と名乗った死神少女はやたらと口数が多い。

「まぁ、そう言うわけだよ……わかったんなら、有り金を寄越しな。隠すとためにならん
よ。どうせお客さん方は、これからお裁きを受けるだけの身の上なんだから、銭なんざ持
ってたって仕方ないだろ?」
 言われた通り、いつの間にか持っていた金銭を男たちは小町に渡した。

「……んっと、金額にちょいとバラつきがあるねぇ、お客さん。んー、本来なら別々に運
ぶところだが、今日はもう終いなんだから特別サービスだ。全員一緒に乗りな!」
 断る理由もないので、男たちは素直に小町の指示に従った。

「いやぁ、最近ゆっくりの魂が増えちまってねぇ。いつも仕事がきついんだよね、これが。
ってーか、あんたらみたいのが面白半分に殺して回る所為なんだがねぇ……ああ、別に責
めちゃいないよ。仕事増やされた愚痴だと思っておくれよ」
 船をこぎ出してからも、しきりに小町は話しかけてくる。

「ん? 面白半分に殺してなんかいないって? ああ、そっかお客さん方はゆっくりを狩
って稼いでたんだよな……うん、面白半分ってのはあたいの失言だな、すまない。けど、
まぁ面白半分だろうと生活のためだろうと、あたいの仕事が増える事にゃ変わりはないん
だよ」
 しんみりと語るわけでもなく、あくまで小町は明るく話す。

「ゆっくりの魂の何が面倒かって言ったらねぇ、こいつら銭をほとんど持ってないのさ。
三途の河ってのは渡し賃の多寡で距離が決まるんだよ。だから、ゆっくりどもを運ぶとき
は杓子定規に規則通りの距離じゃやってけないから、ちょいと細工して距離を縮めるのさ」
 別に聞いてもいないことを、次々と小町は男たちに語ってゆく。

「本当は、あたいももうちょい暇だったら、まともに話せる人間のお客さんとは、のんび
り河渡りと洒落込みたいんだけどねぇ……ゆっくりどものおかげで、いつも時間食ってノ
ルマがなかなか消化できないのさ……ってなわけで、終点だよ。あたいもゆっくりを運ば
にゃならないから、一緒に行くよ」
 男たちを舟から降ろすと、小町は手押し車にゆっくりを積み込み始めた。

「ああ、こいつかい? 袋に詰めたりするよりも、この方が早いんでね。そこに用意して
おいたのさ……いまじゃ、あたいのタイタニックに次ぐ大事な商売道具だよ」
 小町は手押し車の胴体を手で叩き、男たちに向かって微笑んだ。

「さぁ、閻魔様がお待ちだよ。急いだ急いだ」
 そう言って、小町は男たちを急かした。

 小町に追い立てられ感慨深く周りを見る余裕もなく、男たちは法廷に入った。

「映姫さ……ごほん、ヤマザナドゥ様、本日最後の被告を連れて参りました」
 口調を改め、小町は法壇の上──裁判官席に座る、緑髪の少女に最敬礼をした。

「死神・小野塚小町、ご苦労。まず、ゆっくりから裁きますので、被告を並べて下さい」
 威厳たっぷりに楽園の閻魔は死神に命じた。

 言われた通りに小町は、手押し車からゆっくりの魂たちを一つずつ下ろし、法壇の下へ
一列に並べる。
 全部で13匹のゆっくりの魂が、ずらりと並べられた。

 それを見て頷いてから、閻魔は小町に対して新たな指示を下す。
「書記官が本日は早退してしまいましたので、臨時代理書記を命じます。書記席に座りな
さい」
「えっ!? しょ、書記……でございますか」
 裁判書記の仕事は、もっと上級の死神が行う職務であるため、小町は慌てた。

「書記です。あくまで臨時代理ですから、本職の裁量で任命できます。研修は受けていま
すね。やり方はわかるはずです。頼みましたよ」
「あ……は、はいっ! 謹んで承ります」
 有無を言わさない閻魔に抗えるはずもなく、小町は苦手なデスクワークを引き受けた。

「さて、ゆっくりの裁判は簡易形式を以てす、と定められておりますので、それに基づき
速やかに審議いたします」
 小町が書記席に着くのを待ってから、左から右へゆっくりたちの魂を見回し、閻魔は言
った。

「当法廷では、便宜的に左より1から13まで番号にて、ゆっくりを呼ばせていただきます
……まずは1番のゆっくりれいむ!」
 開廷の合図として、閻魔はガベルを振り下ろした。

「汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」
 罪状については何一つ言わず、いきなり閻魔は判決を下した。

「次に2番のゆっくりまりさ! 汝の判決は、ゆっくりへの転生とする。執行は閉廷後即
時行う。以上」
 同様に二番目の魂へも、速やかに判決が下された。

 ──結局、13匹のゆっくりは全て「ゆっくりへの転生」と言う判決であった。

「続きまして、三人の人間の被告を裁きます。被告人は、整列して下さい」
 閻魔に指示された通りに男たちも一列に並んだ。

「まずは左から──」
 最初の男の、名前、年齢、性別を閻魔は口にし、
「相違ないか?」
 と確認を取った。

 もっとも、確認を取ったと言っても形式に過ぎない。
 何故ならば死人は喋れないのだから。
 そのためすぐに閻魔は次の言葉を発し、裁きを進行してゆく。

「被告人は、幼少の頃より乱暴で、親兄弟、友人知人近所の者に多大なる迷惑を掛け、ま
た強請りや盗品の売買を行い、死の数ヶ月前からはゆっくりを狩り、その命を奪って餡子
を取り、その出所を伏せて販売していた──そう、あなたは少し乱暴が過ぎる」
 端的に男の罪状を閻魔は並べ立てた。

「残念ながら情状酌量の余地はありません。貴方は地獄行きです」
 すっぱりと小気味良いぐらいに閻魔は言い切った。

 が、やや間を置いてから、
「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく
りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」
 かくの如き判決を下した。

「続きまして真ん中の──」
 同様に次の男の、名前、年齢、性別を口にして確認を取る。

「被告人は、親に孝行を尽くし、受け継いだ農地で農業を営み、利を貪ることなく適正な
価格で作物を卸し、善良な農家として近隣からの評判も上々であり、またゆっくりによっ
てやむなく転業を強いられた点は大いに酌量の余地ありと認む」
 最初の男とは打って変わって、評価する言葉が続く。

「しかしながら、ゆっくりによって受けた被害以上に、ゆっくりの命を奪うことで利益を
上げた事は許し難し──そう、あなたは少し誘惑に弱すぎた」
 一転して、閻魔は厳しく男の罪を糾弾する体勢に入った。

「ゆっくりによって職を変えざるを得なくなった事情は理解できますが、あなたは命を奪
って金銭を得ると言う行為に罪悪感を感じていましたね──にもかかわらず、受けた被害
以上に利益を上げました。損害の賠償分としても過大な程ほど……罪悪感を感じていたの
ならば、何故ある程度で元の職に戻らなかったのでしょうか。田畑を耕し、土と共に生き
るよりも、ゆっくりを捕らえて殺す方が儲かるし楽だったからですね……残念ながら、貴
方も地獄行きです」
 一気に畳みかけるように閻魔は言った。

 だが、ここでも先と同様に、
「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく
りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」
 全く同じ判決を下した。

 そして最後の男の番になった。
 前二者と同様の形式を済ませ、罪状の読み上げが開始される。

「被告人は、やや粗暴な点はあったものの、目上を敬い、目下を愛する、理想的な町の兄
貴分として振る舞い、また基本的に正業の範囲内で生計を立てていた点は大いに酌量の余
地ありと認む」
 まず最初にプラスの評価を示すのが、正式な裁判時のスタイルのようだ。

「しかしながら、たいした理由もなくゆっくりを殺し、それによってゆっくりの命を奪っ
て利益を上げる商売を思いつき、仲間を誘い組織的に行った点は許し難く──」
 前と同じように、閻魔は罪の糾弾を開始する。

「その上、動物の命を奪う職にある者ならば当然すべき、奪う命への感謝と慰霊を全く行
わなかった点は言語道断──そう、貴方は少し命を軽く見過ぎた」
 閻魔は厳しい判決を予感させる強い口調で言い切った。

「他の命を奪わずに生きることは不可能です。だが、命を奪うことを商売とするならば、
やらねばならない事があるのです……屠畜場には必ず慰霊碑があるのです。獣といえども
命は命、それを忘れてはいけません──貴方も地獄行きです」
 教え諭すよう閻魔は言うと、やや間を置いてから、

「──と言いたいところですが、諸般の事情を鑑みて罪一等を減じ、汝の判決は、ゆっく
りへの転生とする。執行は閉廷後即時行う。以上」
 三度全く同じ判決を下した。

「これにて閉廷!」
 速やかに閉廷を宣言した閻魔は、宣言通り刑の執行に取りかかった──。

 そして、法廷には小町と閻魔だけが残った。

「……さて、小町」
 執行作業で額に浮かんだ汗を、楽園の閻魔こと四季映姫はハンカチで拭った。

「は、はいっ!」
「なにをそんなに緊張しているのですか? 私に怒られる心当たり、やましいことがある
のですね」
 映姫は人の悪い笑みを浮かべた。

「すすすすすみません! あ、あたい……」
「あー……言わなくてもいいです。今回の件は不問とします」
 うんざりした顔で映姫は言い、

「しかし、今度からはゆっくりの魂だけにしなさい。人間の死者については、エスコート
する必要はないのですから……わかりましたね?」
 しっかりと釘を刺した。
「はっ、はい! 肝に銘じます」

 ゆっくりの出現で、死神も閻魔も仕事内容に変化が生じた。
 その一つが、船頭担当の死神による魂のエスコートである。

 通常の人間や妖怪などの魂は、基本的にわざわざ船頭が迎えに行ったりはしない。
 死者は中有の道を通って、自ら三途の河を目指すのだから。

 ただし、ゆっくりの魂は別である。
 自ら三途の河に来るなどと言うことは、ほぼ皆無と言っても良いぐらいで、死んでもそ
のままゆっくりし続けて、ほとんど動かないのである。
 そのためゆっくりの魂は、船頭が機を見て回収に行く事が定められた。

 また、閻魔の裁判形式も、ゆっくりに関しては罪状を告げる手間を省略し、いきなり判
決を下す略式裁判が基本と定められた。
 あまりにも弱い生き物のため死ぬ数が多すぎるからである。
 正式にしっかりと審判を行うための時間も人員も足りない以上、やむを得ない苦肉の策
として定められたのであった。

 そして、繁殖力も旺盛で生まれる数も多いため、ゆっくりは基本的に三千回ゆっくりと
して転生するまでは、自動的に死→転生判決→生を繰り返すこととされた。
 地獄も拡張を必要とするほど手狭な以上ほいほいと送り込むわけには行かず、かと言っ
てまともに輪廻させるためには正当な審判が必要であるため、これまた苦肉の策である。

 要するに、ゆっくりに関しての問題は「先送り」され、ゆっくりへの転生が地獄行きの
代わりとしても使われている現状である。

 なお、転生が三千回とされた数的根拠は、いわゆる三千世界から数だけを取っている。
 他には、七回、四十九回、百回、五十六億七千万回、などの案があったが、無難なライ
ンとして三千回で落ち着いたのであった。

「ところで、小町……私の判決に対して、あなたは不満を感じていますね」
 詰問するような口調ではなく、優しい声で映姫は聞いた。

「いっ、いえ! そ、そそそんな滅相も……」
「閻魔に嘘はいけませんよ。ふふっ、わかってますから、この際正直に言ってご覧なさい」
 子供に言って聞かせるように、あくまで優しく映姫は言った。

「あ……は、はい……あの、最初の男はともかく、後の二人の判決が……その……」
 正直に言えと言われても、やはり閻魔の判決を批評するのは気が引けるようだ。

「法廷だからって緊張しなくても良いのですよ。いつも河原で私に堂々と「あはっ! さ
ぼってました! えへへっ!」と言うように、すっぱり言いなさい」
「あ、いや、いくらあたいでもそんな頭悪そうに言ったこと……もとい、はい。わかりま
した! 二番目の男への量刑は重すぎ、三番目の男へは軽すぎると思いましたっ!」

 映姫は目を閉じ、少しの間黙考するように押し黙ってから、おもむろに口を開く。
「そう、あなたの感覚は一般的です……しかし、浅いのです。二番目の男については、罪
悪感を感じながらも続けていたと言う点が重要なのです。罪の意識がありながら、罪と知
っていながら行い続けるのは、非情に罪深い事なのですよ、小町」

 反応に詰まる小町に一度視線を合わせてから、映姫は続けて、
「もしあの男がもっと生きながらえていたならば、ゆっくり狩りをやめて農業に戻り、罪
を相殺する善行を行えたかも知れません──しかし、それは仮定に過ぎないのです。生者
への裁きならば未来の仮定も考慮に入れますが、死者には未来が無いのですから、今後こ
うすれば罪が軽くなる、とは言えないのですよ」
 と言った。

「……な、なるほど……すみません、あたいの思慮が浅かったです」
 どことなく引っかかるものも感じたが、小町は素直に認めた。

「そして、最後の男に関してですが、元々は猟師でも屠畜業でもなかったのですから、慰
霊の大切さを知らないのも、やむを得ないと私は考えたのです。勉強不足、知識不足は責
められるべき点であり、命を軽く見ていたのは事実ですが」
 意味深げに映姫は一度言葉を切った。

「ゆっくりの命を弄んだのですから、地獄へ落とすよりも、三千回ほどゆっくりとして生
きさせるが最適と判断したのです──そう、同じようにゆっくりの命を弄ぶ人間や妖怪は、
今後も多く現れるでしょうからね」
 言い終わると、今日の業務は終了と言った顔で、映姫は法廷を立ち去る。
 小町は手元の書類をまとめ、急いでその後に従った。


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最終更新:2008年09月14日 05:43
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