『真冬のゆっくり対策 6』
「気を落とさないでください、何か対策を考えましょう」
「ええ…」
村で一番大きな施設の中。今日ここでゆっくりの駆除に当たっていた人達が集まって食事をしている。
「あ、お姉ちゃん」
右目に眼帯を付けた1人の女の子が虐待お兄ちゃんの席にやってきた。
「お姉ちゃん帰ってきてたんだ」
「ええ。今日帰ってきたところよ」
「そちらの方は?」
「今日知り合った人よ。一緒に駆除してたのよ」
「そうなんだ。…はじめまして。今日はお疲れ様です」
「ああ…どうも。そうでしたか、姉妹ですか。ああ…よく似ていらっしゃいますね」
(この子何で眼帯付けてるんだろう?…)
「お姉ちゃん、ちゃんと家に帰ってきてね。お父さんとお母さんも会いたがってるよ」
「分かったわ。ここを出るまでには会っておくわよ」
「お兄さん、何もないところですけど…ゆっくりしていってください」
「ありがとうございます。この鍋美味しいですね」
その子はまた別の席へ向かった。ここで世話係をしているのだろう。
「昔ここに住んでいたって言ってましたね」
「…なんで眼帯付けてるんだろう?……って思いましたよね?」
「え…いや…その…」
「あの子…ゆっくりに襲われたの」
「ええ!?」
「昔よ、数年前の話よ。畑にゆっくりが野菜を盗みに来たからあの子が追い払おうとしたの。そうしたら枝を咥えたゆっくりに
襲われて目を刺されたのよ」
「……」
「協定とかがあったから村中で抗議に行ったわ。まあ襲ったゆっくりは勿論その種はみな村に引き渡されて虐殺されたけどね」
「種?」
「下品な言葉使うゆっくりがいるでしょ。あいつらよ」
「そうか…だからみょん種を見なかったのか」
「それで済む問題じゃないのに……それ以降も時々畑に被害が出たわ」
「……」
「結局あの子の右目は失明したわ。かわいそうに…」
「それ以上は言わなくていいです。今は…貴方に協力しましょう」
「ありがとう…。ごめんなさい…変なこと話してしまって」
彼らは様々な意見を交わした。
「そうだ、今日途中で駆除アイテムくれたおじさんがいたんだ。何かいいものがないか聞いてきますね」
彼は席を外し昼間唐辛子入り煙幕をくれたおじさんを探した。
「村長、…スは…の…角に…るんだ…な?」
「え…そうですよ。しかし…ぜそんな…とを?」
(何を話しているんだ?)
そのおじさんは村長と何か話していた。周りがうるさいためよく聞き取れない。彼は近づいた。
「実はな、明日ドスを駆除しに行こうと思うんだ」
「それは危険ではないのですか?」
「いや大丈夫だ。実は隣の村でもドスの群の被害が出ててね、事前に一緒に駆除しようって誘ったら乗り気だったよ」
「しかし無理をしなくても。ドスとはいえこの冬じゃ手が出ないですから準備を整えてからの方が…」
「そう思うだろ。実はドスって冬でも行動できるらいいぜ」
「そうなんですか」
「ゆっくりってのは皮が小麦粉で作りが単純だろ?だから冬になると中の餡子がすぐ冷えちまうから冬は苦手なんだとさ」
「ええ」
「ところがドスってのは皮が厚くて硬いんだ。まあ所詮は小麦粉なんだけどな。だけど冬の寒さには通常のよりも耐えられるんだ」
「そうなんですか」
「実際冬なのに村に食糧を恵んでもらうためにやってきたって話がある。すぐ駆除されたらしいけどな」
「ドススパークとかは?」
「ああ、いくらドスでも冬は力が100%出せないってよ。ドススパークってのも冬になるとあのキノコを咀嚼するのに時間かかるし
威力も射程も弱まるって聞いたぜ。それでも脅威であることは確かだ」
「なるほど…早めに手を打った方が良いという訳ですな」
「一応隣の村に電話させてくれないか?今朝連絡したら"明日にでも駆除に行けますぜ"って返ってきたよ」
「場所とかは分かりますか?」
「ああ。大体の見当はついている。こっから西に半日ぐらいで着くよな?」
「ええ。」
(西?)
彼は何か引っかかっていた。
"こまったことがあったらどすにたすけてもらえって。おひさまがしずむところにどすがいるってありすがいってたわ!"
(そうか!じゃあ次の行動は!!)
「お…おじさん、いつドス退治に行くんですか?」
「おぅ…お前さんさっき会った坊主じゃねえか」
「いつですか?」
「そうだなあ…日の出には出るよ。さっきの話聞いてたんだろ。半日かかるから早く行けば動けないうちに駆除できるぜ」
「あ…あの…よければ場所教えてくれませんか?」
「ついてくればいいじゃないか」
「いや…その…お…俺朝弱いんですよ。特に冬は」
「ハッハッハ!最近の若い奴は軟弱者だなあ。いいぜ、一応教えとくわ。来たくなったら来いや」
「ありがとうございます」
彼は地図にドスの居場所を書いてもらった。
「大体この辺りだ。この辺りでの目撃が多い」
「わかりました。ありがとうございます。できれば明日早起きできるようにします」
「それが一番いい。俺はもう寝るぞ」
「分かったよ。あいつらが次に起こす行動」
彼は席に戻りそう言った。
「何をする気なの?」
「あいつらドスのところに助けを呼ぶんじゃないかな」
「ドスってここから西に行った所にいる?」
「そうそう。困ったことがあったら太陽が沈むところにいるドスに助けてもらえって言うのがあそこのリーダーの言葉らしい」
「明日狩るってさっき聞こえたわ」
「ああ。奴らの最後の頼みはドスだ。だからそこを叩けば奴らは何もできない」
「……………」
しばし沈黙。
「?」
「ふふふ。いいことを思いついたわ」
「その笑顔…調子が出てきたみたいですね」
「ええ…………」
彼女は作戦を彼に話した。
「ほほう。免許とかは?」
「持ってるわ。軽トラの方は借りるわ」
「じゃあ俺はドス退治に向かいます。そちらは1人でも…」
「任せて。そうね、予備のリボンがあったはずだわ。それ使えば1人で充分よ」
「分かりました。じゃあ明日は早いんで俺はもう寝ます」
「おやすみなさい。私は道具を揃えるわ」
彼らは施設を出た。ちらほら施設を出る者がいたが食事をする人はまだいる。
「え、おじいちゃんドクウツギを知ってるんですか」
「知ってるも何もうちに生えておる」
「そ…それでゆっくりは」
「時々実を畑に撒いているよ。そうするとゆっくりが気絶しててのぉ…いい肥やしになるんじゃ」
「いったいどういったものなんですか」
「見た目は小さくて美味しそうな実じゃよ。実際甘いそうじゃ。だが食べると大変なことになる」
「そういえば俺小さい時山葡萄と間違えて変なもの食って腹壊したことがあるなあ」
「腹壊すどころではない。それは別だ。最悪死ぬぞ。見た目は確かに葡萄に似とる。昔は子供が食べて死ぬということがあってのぉ」
「そんな草花の名前聞いたことないですよ」
「ドクウツギは毒空木と書くんじゃ。被害が出るから大量に狩られてな」
「なぜおじいちゃんはその木を?」
「ゆっくりの畑荒らしに使えればと思って生やしてみたんじゃ」
「実とかあります?」
「保管しているのがあるぞ。実は初夏にならないと実らないから今年中にみなに分けてやるのは無理だが…」
「いえいえ。しかしそんなに危ないとなると子供には見せられませんね」
「だからわしは畑には生やしていないのじゃ。流石に落ちている実は拾って食べたりせんしな」
「今度見せてください」
「分かった。明日にでも持ってこよう」
-同時刻、洞窟の中-
「みんな…ごはんにしようね…」
「うん…」
妻や子供、仲間を失いさらに入り口もふさがれ意気消沈なゆっくり達は力なく食堂へ向かった。
「た…たいへんだよおお!!!!」
「どうしたの?まりさ…」
「ごはんが…ごはんがあああ!!!」
「いったいどうしたのよ!!」
「まさかごはんがない!!?」
食堂の前ではゆっくりが集まっていた。
「これは!!!!ひどいわ…」
「むししゃんだべちゃかったよおおお!!!!」
「まりさのだいすきなきのこがあああああ!!!」
「だいこんさんがああ!!!たべだがっだよおおお!!!!」
食糧は半分ほどが焼焦げていた。実は虐待お兄ちゃんがゆっくりが食事をしている時にこっそりと燃やしていたのだ。
「これじゃあ…ふゆこせないよお…」
「ゆっくりできないよお…」
「ゆえぇえぇええん!!!!」
「おきゃあしゃんおにゃかしゅいちゃよお!!!!」
「と…とりあえずみんなごはんにしましょう…いつもよりすくないけど…」
ゆっくり達に食事が与えられた。いつもの半分も無い。
「「「「むーしゃむーしゃ…」」」」
「「「むーちゃむーちゃ…」」」
いつもだったらしあわせー♪な食事も今は悲しくて悔しくて辛くて味がしなかった。
「「ゆえぇええぇええん!!!!!」」
「「ぐやじいよおおお!!!!!」」
「「みゃみゃあ!!!!ゆっぐりできにゃいよおお!!!!」」
「「おいじぐないよおお!!!!みんなどいっしょにたべだいよおお!!!」」
「「あがじゃああん…いっしょにごはんたべだいよおお!!!!」」
洞窟内はゆっくりの涙声でいっぱいだった。
「ゆっぐ……もう…がまんできないよ!!」
「そうだよ!!ぜったいじがえじじでやるうう!!!」
「ごろじでやるううう!!!!じじいとばばあをごろじでええええ!!!!」
いつしか涙声は怒号に変わっていた。
そして1匹のれいむが叫んだ。
「ゆ!そうだよ、ぱちゅりーがいってたよ!!!こまったことがあったらおひさまがしずむところにいるどすにたすけてもらえって」
「そ…そうだよ!どすがいればにんげんにふくしゅうできるよ!」
ゆっくり達に希望の火が灯った。
「いこう!みんなでどすのところに!」
「で…でもおそとはさむいよ…それにいりぐちが…」
「ゆ…ゆぅ…」
「で…でも…そうしないと…」
「きめたよ!まりさはどすのところにいくよ!!」
「れいむもいくよ!このままじゃくやしいもん!」
「まりさ、いいことをおもいついたんだぜ!」
まりさは巣穴の中に入り白い綿を持ってきた。
「まりさ!それはあなたのたいせつな!!」
「そうだぜ!たいせつなもこもこさんなんだぜ!!」
「これをどうするの?」
「もこもこさんをきればあったかいんだぜ!これならおそとにでてもだいじょうぶなんだぜ!!」
「もこもこさんだったら…れいむのところにもあるよ!!もってくるね!」
「ちぇんももってるよ!ちょっとまっててほしいんだねー」
何匹かが巣から綿や藁など寒さを防ぐために持っていたものを持ってきた。
「これだけじゃ…みんなのぶんはないわね」
「ゆううう…」
「むきゅ、だったらだいひょうしゃがどすのところにたすけをよびにいってのこりはここでまってるというのがいいわ」
「どすをつれてくればいいんだね。わかるよー」
群の中で足が速くまた体力があるゆっくりが選抜された。
「あとは…いりぐちだね」
「どうしたらいいの…」
「むきゅ!みんなよくきいて、ゆきさんはおみずさんがかたまったものなのよ」
「ゆ!じゃあのめばいいんだね」
「みんなでかきわければいいんだよ!れいむさっそくいってくるよ!」
多くのゆっくりが入り口へ向かった。
「ゆんしょ!ゆんしょ!」
「ゆぴいいい!!つべたあいい!!!」
「むーしゃむーしゃ…」
「ぺっぺっぺっぺ!!!」
ゆっくりは雪をどかし始めた。
「みんなでがんばればどかせるよ!!」
「がんばるよ!!ぜったいみんなでゆっくりするよ!!」
「「「「「えいえいゆー!!!!」」」」」
ゆっくりは夜を徹して入り口を塞いでいる雪山を崩す作業を続けた。
最終更新:2009年05月31日 23:19