ゆっくりいじめ系2230 れいぱー王ボロありす~第一章~

れいぱー王ボロありす

前書き

筆者の東方の知識は、ニコニコ、pixiv、エロ同人、体験版レベルです。
ゆっくり関連の認識は、虐スレ、愛スレ、ガ板、ふたばをそこそこ見て……るはず。
物語への興味を損なうのが嫌なので、○○注意などの前置きはしません。
txtデータの改行とか考えずにワープロで書いたので、一太郎、word、
その他テキストエディタ等にコピペした方が読みやすいかも知れません。
色々と筆が滑って、ちょっと矛盾してる部分もあるけど、でもそんなのかんけえねえ!







第一章


 ある日、ゆっくりペットショップを経営する私の元に、一通の手紙が届いた。
「急啓 貴殿におかれましては、ご事業も益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。平素より大変お世話になっております。
 さて、このたび当組合におきましては、下記の要領で緊急集会を開催させていただくことと相成りました。
 つきましては、ご多忙の折、誠に恐縮ではございますが、是非ともご来場いただきたくお願い申し上げます。
 当日は、飼いゆっくりの安全について会合を開くことを予定しております。
 取り急ぎ用件のみで失礼いたします。
                                     草々」

 ゆっくりペットショップ協会からの連絡だった。
 記されていた日時は明後日の木曜日午後一時。
 うちも含むおおよそのゆっくりショップが木曜を定休日にしているとはいえ、ずいぶんと急な用事だ。
 緊急集会とあった。そしてその内容は飼いゆっくりの安全について、とある。すぐに具体的な用件は推測できた。
 このところ、街の飼いゆっくりが何匹も殺されているという。私のところにも、飼い主からの被害報告が寄せられていた。


 その飼い主のことはおぼろげに覚えている。
 確か、娘さんの小学校の入学祝いに何かペットを飼おうということで来店されたのだ。
 およそ二年前のことだった。
「ゆっくりしていってね!」「れいむをかってね! おうたをうたえるよ!」「まりさおねえしゃんとゆっくちちたいな!」
「だれにきめたの? わからないよー」
 と、それぞれの方法で自分たちを買ってくれとアピールするゆっくりたち。
 もちろん、しつけ済みのゆっくりたちが人間に無礼な口を利くことはない。

「結構高いな、十万円だって?」と父親が、しつけ済みのらんを見て言う。
「それはなかなかのレア種なんですよ。この間、山の中で見つけたんです。ちぇんと一緒に飼うのがおすすめですよ。
  ちぇんを一体、三割引でお付けできますが」
「……もっと安いのは? ネットだと、安いのはワンコインで買えるらしいんだが」

 私はご両親を、中級品以下のコーナーへ連れて行く。上級よりも遙かに姦しい。
「ゆ? おじさん、ようやくれいむのほうにきたね。ゆっくりしすぎだよ! あまあまくれたらゆるしてあげるかられいむをかってね!」
「れいむなんかより、このまりささまのほうがはるかにゆっくりできるんだぜ!
  あまあまなおかしをたらふくくれるなら、おっさんのいえをまりさのゆっくりプレイスにしてやってもいいんだぜ!」
「ふん、いなかもののにんげんも、ようやくこのとかいはなありすのみりきに気づいたのね、
 わたしをだんでぃなまりさといっしょにかってくれるなら、ありすとくせいのとかいはこーでぃねいとを、
 にんげんのおばばさんにもひろうしてあげないでもないわよ!」
「ゆ!? うんうんでりゅよ!」
 以下省略。

「……戻ろうか。安物買いの銭失いになる前に」
「はい」
「ゆっくり、ってのにも、ピンからキリまでいるんですね」
「そうですね、ピンだけをそろえた店もあるんですが、キリの方を安く求めるお客さんも多くいるんですよ」
「物好きなもんだな」

 ご両親は、ある水槽の前に娘がじっとしているのを見つけた。
「これがいい!」と彼女が指さしたのは――
 二つの水槽がある。まりさとぱちゅりーがそれぞれ入っている。もちろん、勝手ににんっしんっしたり、
 けんかしないように分けているのだが、その二匹は自分たちを隔てている壁越しに、体をすりあわせていたのだった。
「どっち?」と念のために両親が尋ねる。
「どっちも!」と娘が答えた。

 子まりさと子ぱちゅりーのつがい、まりさ(三ヶ月、未去勢、銀)が一万八千円、
  ぱちゅりー(四ヶ月、未去勢、銀)が三万六千円である。
 水槽や飼育セットに飼育の手引きもつけて、計六万円のお買い上げ、ありがとうございました。
 去勢しておきますか? と尋ねたら、それはあまりに可哀想だろう、というので去勢はしなかった。
 子ゆっくりが増えすぎて手に負えなくなったときはこちらで引き取ることになった。
 きょせいって何? と娘さんが不思議がっていた。君、何て言葉をうちの娘に教えてくれるんだね。
 いや、まだ教えた訳じゃないんですけど。

 配送の前にまりさとぱちゅりーには、口を酸っぱくして飼い主に無断ですっきりするな、と何度も何度も言い聞かせた。
 もし、増えすぎてゆっくりショップに戻ってきたら、れみりゃの餌にするぞ。
 子供を産みたいのなら、飼い主、特に両親にお伺いを立ててからにしろ。そしてすっきりしているところを娘さんには絶対見せるな。
「むきゅう、わかったのだわ」
「ぱちゅりーとふたりでずっとゆっくりするよ!」

 そして二体は引き取られていった。
 律儀な娘さんで、子ゆっくりが産まれたときは、絵を描いたはがきを送ってきてくれた。
 親ゆっくりはそれぞれ金バッジに昇格したという。
 そのころには飼いゆっくりブームも沈静化しており、捨てられて野良と化したゆっくりが、
 あちこちで迷惑行為を行っていたのだが、そのはがきの中には、悲劇とは縁遠いとてもゆっくりとした一家の姿があった。

「うちの、うちのゆっくりたちが、黒ずんで動かないんです! 頭から変な枝を何本もはやして……」

 それが、一家全滅。水槽から出して、一階の小さな庭に面したリビングで放し飼いにしていたのだが、
 ある日、飼い主一家が遊園地に遊びに行って帰ってくると、窓ガラスが割れ、部屋の中は荒らされ、
 物言わぬゆっくり一家の黒ずんだ亡骸だけが残っていたという。どの個体にも、虚ろな顔に、砂糖水の涙が乾いた跡があった。
 床は一面、水っぽいクリーム色の粘液で汚れ、ゆっくりの子供達は、黒ずんだまま食い散らかされていた。
 一家全滅の損害はもちろん、部屋が荒らされた損害も大きい。
 そして何よりも、ゆっくり一家との付き合いが一番深かった娘さんの心の損害は、計り知れない。

 事件の後、娘さんはショックのあまり、一週間は食事も進まず、食べても戻す、と言った状態だったらしい。
「一体、どこの誰がこんなむごいことを……」
 娘さんの母親もかなりの感情移入をしていたらしく、顔をゆがめていた。
 私は娘さんのお宅で被害状況を聞かされて、ゆっくりを扱う者として至極当たり前の結論を導き出していた。

 私は独り言のような小さな声でつぶやく。
「ありすですね」
「あ、あきす?」
「いや、空き巣じゃなくてありすです。ありすのなかには、このような被害をもたらすやつがいるんです。
 我々はれいぱーと呼んでいます。しかもかなり大勢の群れのようですね」


 木曜日、定休日のプレートを入り口に下げて家を出た。
 なるべくなら今日は早く集会を終えて帰ってきたかった。
 一体の上級れいむが、にんっしんしているのだ。時期で言えば、今日あたりに新しい子供が生まれそうなのだ。
 相手はありすだ。もちろん野良やれいぱーではない。「とかいは」を自慢する程度の、普通のありすだ。
 最近はさっぱり、ありすが売れなくなっている。飼いゆっくり暴行致死事件の裏にれいぱーありすあり、
 と噂が広まってしまっているためだ。仕方なく、売り物のありすを他のゆっくりの交配用に使っているのだ。
 赤ん坊のありすは供給過剰なので……れみりゃのご飯だ。
 そういった風評被害を何とかしなければならない。
 とはいえ、ゆっくりの出産というイベントが、常に頭の中でちらついて、どうにも気が散って仕方がなかった。

 無駄にでかくて新しいビルの一室で、集会は行われる予定だった。このテナントにはゆっくりペットショップ組合の本部があった。
 時間ぎりぎりで会議室にはいると、その部屋にいた数人が私を見て、怪訝な顔になった。
 私は、十指にも満たない会議室の人口の少なさに面食らっていた。
  いくら何でもゆっくりショップの組合員がこんなに少ないはずはない。
  もっと広い会議室が必要なのではないか。
 だが、そんな私の心配をよそに、組合の幹部がのほほんとした顔で部屋に入ってきた。
「みなさんおそろいのようですね。では、始めましょうか」
 時計の針は、ゆっくりすることなく、会議の開始を告げた。

 円卓を囲んでいる面子を、一通り見回す。気づいたことは、ここに集められた者は、
 この地方にあるゆっくりショップの中でも売り上げ成績が良かった者や、
 ゆっくりの生態について新発見をした者であるということだった。つ
 まらない街のつまらないゆっくりショップで、いつが店の閉め時だろうと考えている私とは縁遠い人たちだ。
「まずはお手元の資料をご覧ください」
 私はレポートを見る。
 題名は「昨今のれいぱーありすによる飼いゆっくりの一連の被害について」
 そこには、最近の事件についての概要がつらつらと連ねられていた。

 ある家では、胴付きのれみりゃ親子三体(金)が服をぼろぼろに破り取られ、体中の傷から肉汁を垂れ流していた。
 またある家では、一メートル近くまで育っていたまりさ(金)が十センチ代までひしゃげていた。
 親(金)の犠牲によってかろうじて難を逃れた子れいむ(銀)がいたが、完全に精神が壊れていた。
 犯し尽くされたみょん(銀)から生まれ落ちた赤ん坊が、精子カスタードの海で溺死していた。
 以下、一部の人間が垂涎しそうな飼いゆっくりの惨状が続く。
 もちろん被害はゆっくりにとどまらず、住居を荒らされた人間にも及ぶ。
 が、これらの被害はほとんど似たようなもので、私はとばし読みした。

「質問、いいですか?」
 と出席者の一人が口を開く。
「はい、何でしょう」
「確かにこれはひどい事件だと思いますし、飼いゆっくりを扱う者として強い憤りを感じますが、
 こんなところに呼び出してまで報告されるほどのものでもないと思います。
 どちらかといえば、警察や、地域の野良ゆっくり対策課が対処すべきじゃないでしょうか?」
「ははは、まあ、そう言われてしまえば実も蓋もないんですが、ところがね、ちょっとそういう、
 傍観者的な立場を決め込むわけにもいかない事情なんですよ」
 幹部は苦笑する。が、いきなりぐっと表情を引き締めた。
「これから理由をお話しします。どうしてこの件に関して、数多くいる組合員の中から皆さんを選んでここに呼んだのかをね」
 先ほどの柔らかい雰囲気がすっと消える。何の感情も浮かんでいない目で、笑顔のまま、出席者を一瞥した。

「飼いゆっくりの現状について皆さんはどれほどのことを知っていますか? 
 また、都会のゆっくり全体の概況がどのようになっているのか、皆さんはどれほどのことを把握していますか?
 この業界に差し込んでいる影に、敏感な皆さんならお気づきになっているでしょう」
 私以外の全員が、小さく相づちを打つなどの反応を見せる。

「先頃まで続いていた好景気に乗っかる形で、ゆっくりを飼うことがブームとなりました。
 皆さんもブームの頃は、ゆっくりペットショップで好景気を感じられていたことと思います。
 ですが、ご存じの通り、その好景気も終わりを告げました。
 間の悪いことに、ゆっくりの生態で人間に嫌われる要素が、ちょうど目立って噴出した時期とも重なってしまいました。
 街には捨てられたゆっくりが野良と化して跳梁跋扈し、今まで愛でられていたゆっくりは一転、害獣、
 いや害饅頭としても見なされるようになったわけです。
 それからゆっくりペットショップの側でもゆっくりへのしつけがより一層、重要視されるようになりました。
 当然、皆さんの負担も増えることになったわけです」
 これには私も頷いた。

「驚かないで欲しいんですが、それでもゆっくりペットショップの数は増えているんです」
 私だけ驚いた。そーなのかー、と思わず口走りそうだった。
「日々、ゆっくりの研究は進み、飼い方についても深い理解がなされるようになっています。
 同時に、ゆっくりの種類や性格も千差万別であることが明らかになり、
 ライトユーザー向けからマニアックユーザー向けまで、
 飼いゆっくり産業はこれから、ふくらむことはあってもしぼむことはないでしょう」
 本当にそうならいいんだが。うちの店を見てるとどうもそうは思えないのだが。

「で、その前置きが今度のれいぱーありす事件とどう結びつくんですか?」
 しびれを切らしたのだろう、出席者の中で一番の若年とおぼしき一人が口を挟んだ。
「まさか、そのれいぱーありすたちがマニアックユーザー向けのレアものだから捕まえてくれっていうんじゃないでしょうね?」
 一同が嫌な予感を覚えると同時に、幹部が答える。
「ええ、その通りです。ここにいる皆さんで、そのれいぱーありすたちを捕まえて欲しいんですよ」

 当然、不満の声が上がる。
「どうして我々がそんなことを?」「あなたが先ほどおっしゃったように、私たちは自前のショップのことで忙しいんですよ」
「それに、探すと言ったってこの少人数で何をどうしろと言うんです?」
 幹部は「まあまあ」と手で空気を押さえつける。
「なぜ皆さんにそのようなことをして欲しいか、にも訳があるんです」
 そして、彼はその理由として、ある一言を告げる。
「皆さんは、ゆっくり加工所が永遠亭ゆっくり研究部と手を組んで、新たなゆっくりペットショップ団体を立ち上げようとしている、
 という噂を聞いたことはあるでしょう」
 私は聞いたことがなかったので、皆さんと同様、黙りこむしかなかった。

「先ほども申し上げたとおり、ゆっくりに対する世間の目が厳しさを増しているのに伴って
、我々に対しても、批難の声が大きくなっています。
 そこへ、新たな団体が、新たなゆっくり飼育技術を持って参入してきたらどうなります?
 技術革新は喜ぶべきことだの、商売に競争はつきものだの、そんなきれい事では済まされません。
 全国数千の、もちろん皆さんのゆっくりショップも、倒産の危機にさらされるんです」
 そうなったら、私も野良ゆっくりみたいに公園で残飯漁って住まうのかな、と考えた。
「問題視されるのは、倒産の危機だけではありません」
「と言いますと?」
 この幹部のおっさんはとんでもなく嫌らしい策士だ、と思う。他の出席者達がすっかり彼の話に聞き入っている。
「その新しい団体で売り出されるゆっくりは、ゆっくりでない可能性があるんです」

「は? ゆっくりを売るのにゆっくりでない? ……新種ということですか?」
「いえ、我々が小耳にした情報によりますと、姿形は従来のゆっくりと大差ないということです。
 れいむやまりさ、ありすにぱちゅりー、その他、これまで確認されてショップで売られているものと同じものらしいのです」
「それなら、ただのゆっくりじゃないですか。恐るるにたりない」
「問題は、そのれいむやまりさの皮をかぶった連中に、何が入っているかなんですよ」
「何なんですか?」
「まだ分かりません。ですが、出てくるゆっくりにはある特徴があるようです」
「特徴?」
「そのゆっくり達は、完全に個性を潰されているようなんです」

 ショップの店員達が、一様に困惑の表情を浮かべる。完全に個性を潰しているのはあんたの方だよ、とこの幹部につっこみたくなる。
「それは……どういうことですか? 個性がないという特徴がある?」
「ゆっくりにはそれぞれの種類に特徴があることはご存じでしょう?
 まりさなら、やや少年的な口調で生意気を言う。ありすは都会派を自称し、気位が高い。
 ぱちゅりーは何でもいいから文字のついた「ほん」を読みたがる、病弱のゆっくりである。
 そういった特徴を均一化されているらしいんですよ。
 あのまりさはやけに小食で言葉遣いがお嬢様みたいだ、とか、ほんを読むのが嫌いな活字離れのぱちゅりー、
 などといった一切の例外が現れないそうです。
 先ほど姿形は従来のゆっくりと大差ない、と言いましたが、実はそれにも、例外が現れない――つまり、全く同じ生活条件であれば、
 全く同じ大きさや形のゆっくりに育つということです」
「つまり、ゆっくりのクローンというわけですね」
 私が初めて口を開いた。「然り」と幹部が頷く。

「クローン!?」
「信じられない、ゆっくりに遺伝子があるのかどうかすら怪しいのに!」
「いや、永遠亭ならまだ分かっていないゆっくりの生態をすでに発見しているのかも」
「なんでよりによって加工所なんかと手を結ぶんだ?」
「そんなのがうちの業界に流れ込んできたらどうなる?」
「少なくとも、苦労して捕まえたレアものは大暴落だ……」
「もしそれが従来のより形が良くて育てやすいとなったら、やばいじゃないですか!」

「ですから、我々は何とかして我々の立場を固めないといけないんですよ」
 と、幹部が言う。
「我々が都市部に持ち込んで売った飼いゆっくりが、心ならずも捨てられて野良となり、
 人間の生活圏を荒らしたのであれば、どう言いつくろおうと、我々への視線が冷たくなるのは仕方のないことです。
 だが、今まで我々が飼いゆっくりの市場を艱難辛苦の末に広げてきたことも事実です。
 新団体のやろうとしていることは、それを労せずして乗っ取ろうとする……ゲスのゆっくりと同じです。
 これを傍観することなどできない」

「それで、今回の件で大騒ぎとなったれいぱーありす達を捕まえることで、衆目の歓心を得ることが目的なんですね」
「左様です。マスコミを集め、れいぱーありす達をさらしものにして、
 犯罪を犯したゆっくりたちを我々のノウハウで捕まえたことをアピールします。
 その上で、加工所に衆人環視の中、引き渡してやりましょう」
「ああ、それはいいですね!」
「もちろん皆さんのショップが忙しいことは承知しております。
 ですが、皆さんほど、この問題に対処するにふさわしい方々もいないのです。
 失礼ながら、皆さんの経歴もある程度調べております。皆さんがゆっくりに関して高い知識を持っていると、確信しています。
 そのお力を、業界の未来のためにお貸し願いたいのです。それが引いては皆さんの未来にもつながると思います。いかがでしょうか?」
 いかがも何も、もうこのおっさんの作り出した流れにみんな飲まれている。例え私一人が抗っても、どうしようもない。

 全員がやろう、と声を上げる。最後に私が肩をそびやかして、いいですよと言った。
「ありがとうございます。それでは今後の予定ですが……」
 ようやく終わりそうだ。私は小さく肩を回して深く息を吐く。
「いや、せっかく人数が集まっているんだし、今後、会合があったときに、参加できないと言う人もいるだろうから、
 今この場で大切なことはあらかた決めておくべきじゃないですか?」
 この若造、余計なことを――!

 その後、どうにも抜け出せない雰囲気の中、心底どうでもいいことをぐだぐだと話し合った。
 解放された頃には、日がビル街の下に隠れようとしていた。
 帰宅した私を待っていたのは、産まれた子供とともにのんきに眠りこけているゆっくり達だった。



第二章へれいぱー王ボロ
ありす

前書き

筆者の東方の知識は、ニコニコ、pixiv、エロ同人、体験版レベルです。
ゆっくり関連の認識は、虐スレ、愛スレ、ガ板、ふたばをそこそこ見て……るはず。
物語への興味を損なうのが嫌なので、○○注意などの前置きはしません。
txtデータの改行とか考えずにワープロで書いたので、一太郎、word、
その他テキストエディタ等にコピペした方が読みやすいかも知れません。
色々と筆が滑って、ちょっと矛盾してる部分もあるけど、でもそんなのかんけえねえ!







第一章


 ある日、ゆっくりペットショップを経営する私の元に、一通の手紙が届いた。
「急啓 貴殿におかれましては、ご事業も益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。平
素より大変お世話になっております。
 さて、このたび当組合におきましては、下記の要領で緊急集会を開催させていただく
ことと相成りました。
 つきましては、ご多忙の折、誠に恐縮ではございますが、是非ともご来場いただきた
くお願い申し上げます。
 当日は、飼いゆっくりの安全について会合を開くことを予定しております。
 取り急ぎ用件のみで失礼いたします。
                                     草々」

 ゆっくりペットショップ協会からの連絡だった。
 記されていた日時は明後日の木曜日午後一時。
 うちも含むおおよそのゆっくりショップが木曜を定休日にしているとはいえ、ずいぶ
んと急な用事だ。
 緊急集会とあった。そしてその内容は飼いゆっくりの安全について、とある。すぐに
具体的な用件は推測できた。
 このところ、街の飼いゆっくりが何匹も殺されているという。私のところにも、飼い
主からの被害報告が寄せられていた。


 その飼い主のことはおぼろげに覚えている。
 確か、娘さんの小学校の入学祝いに何かペットを飼おうということで来店されたのだ。
 およそ二年前のことだった。
「ゆっくりしていってね!」「れいむをかってね! おうたをうたえるよ!」「まりさ
おねえしゃんとゆっくちちたいな!」
「だれにきめたの? わからないよー」
 と、それぞれの方法で自分たちを買ってくれとアピールするゆっくりたち。
 もちろん、しつけ済みのゆっくりたちが人間に無礼な口を利くことはない。

「結構高いな、十万円だって?」と父親が、しつけ済みのらんを見て言う。
「それはなかなかのレア種なんですよ。この間、山の中で見つけたんです。ちぇんと一
緒に飼うのがおすすめですよ。
  ちぇんを一体、三割引でお付けできますが」
「……もっと安いのは? ネットだと、安いのはワンコインで買えるらしいんだが」

 私はご両親を、中級品以下のコーナーへ連れて行く。上級よりも遙かに姦しい。
「ゆ? おじさん、ようやくれいむのほうにきたね。ゆっくりしすぎだよ! あまあま
くれたらゆるしてあげるかられいむをかってね!」
「れいむなんかより、このまりささまのほうがはるかにゆっくりできるんだぜ!
  あまあまなおかしをたらふくくれるなら、おっさんのいえをまりさのゆっくりプレイ
スにしてやってもいいんだぜ!」
「ふん、いなかもののにんげんも、ようやくこのとかいはなありすのみりきに気づいた
のね、
 わたしをだんでぃなまりさといっしょにかってくれるなら、ありすとくせいのとかい
はこーでぃねいとを、
 にんげんのおばばさんにもひろうしてあげないでもないわよ!」
「ゆ!? うんうんでりゅよ!」
 以下省略。

「……戻ろうか。安物買いの銭失いになる前に」
「はい」
「ゆっくり、ってのにも、ピンからキリまでいるんですね」
「そうですね、ピンだけをそろえた店もあるんですが、キリの方を安く求めるお客さん
も多くいるんですよ」
「物好きなもんだな」

 ご両親は、ある水槽の前に娘がじっとしているのを見つけた。
「これがいい!」と彼女が指さしたのは――
 二つの水槽がある。まりさとぱちゅりーがそれぞれ入っている。もちろん、勝手にに
んっしんっしたり、
 けんかしないように分けているのだが、その二匹は自分たちを隔てている壁越しに、
体をすりあわせていたのだった。
「どっち?」と念のために両親が尋ねる。
「どっちも!」と娘が答えた。

 子まりさと子ぱちゅりーのつがい、まりさ(三ヶ月、未去勢、銀)が一万八千円、
  ぱちゅりー(四ヶ月、未去勢、銀)が三万六千円である。
 水槽や飼育セットに飼育の手引きもつけて、計六万円のお買い上げ、ありがとうござ
いました。
 去勢しておきますか? と尋ねたら、それはあまりに可哀想だろう、というので去勢
はしなかった。
 子ゆっくりが増えすぎて手に負えなくなったときはこちらで引き取ることになった。
 きょせいって何? と娘さんが不思議がっていた。君、何て言葉をうちの娘に教えて
くれるんだね。
 いや、まだ教えた訳じゃないんですけど。

 配送の前にまりさとぱちゅりーには、口を酸っぱくして飼い主に無断ですっきりする
な、と何度も何度も言い聞かせた。
 もし、増えすぎてゆっくりショップに戻ってきたら、れみりゃの餌にするぞ。
 子供を産みたいのなら、飼い主、特に両親にお伺いを立ててからにしろ。そしてすっ
きりしているところを娘さんには絶対見せるな。
「むきゅう、わかったのだわ」
「ぱちゅりーとふたりでずっとゆっくりするよ!」

 そして二体は引き取られていった。
 律儀な娘さんで、子ゆっくりが産まれたときは、絵を描いたはがきを送ってきてくれ
た。
 親ゆっくりはそれぞれ金バッジに昇格したという。
 そのころには飼いゆっくりブームも沈静化しており、捨てられて野良と化したゆっく
りが、
 あちこちで迷惑行為を行っていたのだが、そのはがきの中には、悲劇とは縁遠いとて
もゆっくりとした一家の姿があった。

「うちの、うちのゆっくりたちが、黒ずんで動かないんです! 頭から変な枝を何本も
はやして……」

 それが、一家全滅。水槽から出して、一階の小さな庭に面したリビングで放し飼いに
していたのだが、
 ある日、飼い主一家が遊園地に遊びに行って帰ってくると、窓ガラスが割れ、部屋の
中は荒らされ、
 物言わぬゆっくり一家の黒ずんだ亡骸だけが残っていたという。どの個体にも、虚ろ
な顔に、砂糖水の涙が乾いた跡があった。
 床は一面、水っぽいクリーム色の粘液で汚れ、ゆっくりの子供達は、黒ずんだまま食
い散らかされていた。
 一家全滅の損害はもちろん、部屋が荒らされた損害も大きい。
 そして何よりも、ゆっくり一家との付き合いが一番深かった娘さんの心の損害は、計
り知れない。

 事件の後、娘さんはショックのあまり、一週間は食事も進まず、食べても戻す、と言
った状態だったらしい。
「一体、どこの誰がこんなむごいことを……」
 娘さんの母親もかなりの感情移入をしていたらしく、顔をゆがめていた。
 私は娘さんのお宅で被害状況を聞かされて、ゆっくりを扱う者として至極当たり前の
結論を導き出していた。

 私は独り言のような小さな声でつぶやく。
「ありすですね」
「あ、あきす?」
「いや、空き巣じゃなくてありすです。ありすのなかには、このような被害をもたらす
やつがいるんです。
 我々はれいぱーと呼んでいます。しかもかなり大勢の群れのようですね」


 木曜日、定休日のプレートを入り口に下げて家を出た。
 なるべくなら今日は早く集会を終えて帰ってきたかった。
 一体の上級れいむが、にんっしんしているのだ。時期で言えば、今日あたりに新しい
子供が生まれそうなのだ。
 相手はありすだ。もちろん野良やれいぱーではない。「とかいは」を自慢する程度の、
普通のありすだ。
 最近はさっぱり、ありすが売れなくなっている。飼いゆっくり暴行致死事件の裏にれ
いぱーありすあり、
 と噂が広まってしまっているためだ。仕方なく、売り物のありすを他のゆっくりの交
配用に使っているのだ。
 赤ん坊のありすは供給過剰なので……れみりゃのご飯だ。
 そういった風評被害を何とかしなければならない。
 とはいえ、ゆっくりの出産というイベントが、常に頭の中でちらついて、どうにも気
が散って仕方がなかった。

 無駄にでかくて新しいビルの一室で、集会は行われる予定だった。このテナントには
ゆっくりペットショップ組合の本部があった。
 時間ぎりぎりで会議室にはいると、その部屋にいた数人が私を見て、怪訝な顔になっ
た。
 私は、十指にも満たない会議室の人口の少なさに面食らっていた。
  いくら何でもゆっくりショップの組合員がこんなに少ないはずはない。
  もっと広い会議室が必要なのではないか。
 だが、そんな私の心配をよそに、組合の幹部がのほほんとした顔で部屋に入ってきた。
「みなさんおそろいのようですね。では、始めましょうか」
 時計の針は、ゆっくりすることなく、会議の開始を告げた。

 円卓を囲んでいる面子を、一通り見回す。気づいたことは、ここに集められた者は、
 この地方にあるゆっくりショップの中でも売り上げ成績が良かった者や、
 ゆっくりの生態について新発見をした者であるということだった。つ
 まらない街のつまらないゆっくりショップで、いつが店の閉め時だろうと考えている
私とは縁遠い人たちだ。
「まずはお手元の資料をご覧ください」
 私はレポートを見る。
 題名は「昨今のれいぱーありすによる飼いゆっくりの一連の被害について」
 そこには、最近の事件についての概要がつらつらと連ねられていた。

 ある家では、胴付きのれみりゃ親子三体(金)が服をぼろぼろに破り取られ、体中の
傷から肉汁を垂れ流していた。
 またある家では、一メートル近くまで育っていたまりさ(金)が十センチ代までひし
ゃげていた。
 親(金)の犠牲によってかろうじて難を逃れた子れいむ(銀)がいたが、完全に精神
が壊れていた。
 犯し尽くされたみょん(銀)から生まれ落ちた赤ん坊が、精子カスタードの海で溺死
していた。
 以下、一部の人間が垂涎しそうな飼いゆっくりの惨状が続く。
 もちろん被害はゆっくりにとどまらず、住居を荒らされた人間にも及ぶ。
 が、これらの被害はほとんど似たようなもので、私はとばし読みした。

「質問、いいですか?」
 と出席者の一人が口を開く。
「はい、何でしょう」
「確かにこれはひどい事件だと思いますし、飼いゆっくりを扱う者として強い憤りを感
じますが、
 こんなところに呼び出してまで報告されるほどのものでもないと思います。
 どちらかといえば、警察や、地域の野良ゆっくり対策課が対処すべきじゃないでしょ
うか?」
「ははは、まあ、そう言われてしまえば実も蓋もないんですが、ところがね、ちょっと
そういう、
 傍観者的な立場を決め込むわけにもいかない事情なんですよ」
 幹部は苦笑する。が、いきなりぐっと表情を引き締めた。
「これから理由をお話しします。どうしてこの件に関して、数多くいる組合員の中から
皆さんを選んでここに呼んだのかをね」
 先ほどの柔らかい雰囲気がすっと消える。何の感情も浮かんでいない目で、笑顔のま
ま、出席者を一瞥した。

「飼いゆっくりの現状について皆さんはどれほどのことを知っていますか? 
 また、都会のゆっくり全体の概況がどのようになっているのか、皆さんはどれほどの
ことを把握していますか?
 この業界に差し込んでいる影に、敏感な皆さんならお気づきになっているでしょう」
 私以外の全員が、小さく相づちを打つなどの反応を見せる。

「先頃まで続いていた好景気に乗っかる形で、ゆっくりを飼うことがブームとなりまし
た。
 皆さんもブームの頃は、ゆっくりペットショップで好景気を感じられていたことと思
います。
 ですが、ご存じの通り、その好景気も終わりを告げました。
 間の悪いことに、ゆっくりの生態で人間に嫌われる要素が、ちょうど目立って噴出し
た時期とも重なってしまいました。
 街には捨てられたゆっくりが野良と化して跳梁跋扈し、今まで愛でられていたゆっく
りは一転、害獣、
 いや害饅頭としても見なされるようになったわけです。
 それからゆっくりペットショップの側でもゆっくりへのしつけがより一層、重要視さ
れるようになりました。
 当然、皆さんの負担も増えることになったわけです」
 これには私も頷いた。

「驚かないで欲しいんですが、それでもゆっくりペットショップの数は増えているんで
す」
 私だけ驚いた。そーなのかー、と思わず口走りそうだった。
「日々、ゆっくりの研究は進み、飼い方についても深い理解がなされるようになってい
ます。
 同時に、ゆっくりの種類や性格も千差万別であることが明らかになり、
 ライトユーザー向けからマニアックユーザー向けまで、
 飼いゆっくり産業はこれから、ふくらむことはあってもしぼむことはないでしょう」
 本当にそうならいいんだが。うちの店を見てるとどうもそうは思えないのだが。

「で、その前置きが今度のれいぱーありす事件とどう結びつくんですか?」
 しびれを切らしたのだろう、出席者の中で一番の若年とおぼしき一人が口を挟んだ。
「まさか、そのれいぱーありすたちがマニアックユーザー向けのレアものだから捕まえ
てくれっていうんじゃないでしょうね?」
 一同が嫌な予感を覚えると同時に、幹部が答える。
「ええ、その通りです。ここにいる皆さんで、そのれいぱーありすたちを捕まえて欲し
いんですよ」

 当然、不満の声が上がる。
「どうして我々がそんなことを?」「あなたが先ほどおっしゃったように、私たちは自
前のショップのことで忙しいんですよ」
「それに、探すと言ったってこの少人数で何をどうしろと言うんです?」
 幹部は「まあまあ」と手で空気を押さえつける。
「なぜ皆さんにそのようなことをして欲しいか、にも訳があるんです」
 そして、彼はその理由として、ある一言を告げる。
「皆さんは、ゆっくり加工所が永遠亭ゆっくり研究部と手を組んで、新たなゆっくりペ
ットショップ団体を立ち上げようとしている、
 という噂を聞いたことはあるでしょう」
 私は聞いたことがなかったので、皆さんと同様、黙りこむしかなかった。

「先ほども申し上げたとおり、ゆっくりに対する世間の目が厳しさを増しているのに伴
って
、我々に対しても、批難の声が大きくなっています。
 そこへ、新たな団体が、新たなゆっくり飼育技術を持って参入してきたらどうなりま
す?
 技術革新は喜ぶべきことだの、商売に競争はつきものだの、そんなきれい事では済ま
されません。
 全国数千の、もちろん皆さんのゆっくりショップも、倒産の危機にさらされるんです」
 そうなったら、私も野良ゆっくりみたいに公園で残飯漁って住まうのかな、と考えた。
「問題視されるのは、倒産の危機だけではありません」
「と言いますと?」
 この幹部のおっさんはとんでもなく嫌らしい策士だ、と思う。他の出席者達がすっか
り彼の話に聞き入っている。
「その新しい団体で売り出されるゆっくりは、ゆっくりでない可能性があるんです」

「は? ゆっくりを売るのにゆっくりでない? ……新種ということですか?」
「いえ、我々が小耳にした情報によりますと、姿形は従来のゆっくりと大差ないという
ことです。
 れいむやまりさ、ありすにぱちゅりー、その他、これまで確認されてショップで売ら
れているものと同じものらしいのです」
「それなら、ただのゆっくりじゃないですか。恐るるにたりない」
「問題は、そのれいむやまりさの皮をかぶった連中に、何が入っているかなんですよ」
「何なんですか?」
「まだ分かりません。ですが、出てくるゆっくりにはある特徴があるようです」
「特徴?」
「そのゆっくり達は、完全に個性を潰されているようなんです」

 ショップの店員達が、一様に困惑の表情を浮かべる。完全に個性を潰しているのはあ
んたの方だよ、とこの幹部につっこみたくなる。
「それは……どういうことですか? 個性がないという特徴がある?」
「ゆっくりにはそれぞれの種類に特徴があることはご存じでしょう?
 まりさなら、やや少年的な口調で生意気を言う。ありすは都会派を自称し、気位が高
い。
 ぱちゅりーは何でもいいから文字のついた「ほん」を読みたがる、病弱のゆっくりで
ある。
 そういった特徴を均一化されているらしいんですよ。
 あのまりさはやけに小食で言葉遣いがお嬢様みたいだ、とか、ほんを読むのが嫌いな
活字離れのぱちゅりー、
 などといった一切の例外が現れないそうです。
 先ほど姿形は従来のゆっくりと大差ない、と言いましたが、実はそれにも、例外が現
れない――つまり、全く同じ生活条件であれば、
 全く同じ大きさや形のゆっくりに育つということです」
「つまり、ゆっくりのクローンというわけですね」
 私が初めて口を開いた。「然り」と幹部が頷く。

「クローン!?」
「信じられない、ゆっくりに遺伝子があるのかどうかすら怪しいのに!」
「いや、永遠亭ならまだ分かっていないゆっくりの生態をすでに発見しているのかも」
「なんでよりによって加工所なんかと手を結ぶんだ?」
「そんなのがうちの業界に流れ込んできたらどうなる?」
「少なくとも、苦労して捕まえたレアものは大暴落だ……」
「もしそれが従来のより形が良くて育てやすいとなったら、やばいじゃないですか!」

「ですから、我々は何とかして我々の立場を固めないといけないんですよ」
 と、幹部が言う。
「我々が都市部に持ち込んで売った飼いゆっくりが、心ならずも捨てられて野良となり、
 人間の生活圏を荒らしたのであれば、どう言いつくろおうと、我々への視線が冷たく
なるのは仕方のないことです。
 だが、今まで我々が飼いゆっくりの市場を艱難辛苦の末に広げてきたことも事実です。
 新団体のやろうとしていることは、それを労せずして乗っ取ろうとする……ゲスのゆ
っくりと同じです。
 これを傍観することなどできない」

「それで、今回の件で大騒ぎとなったれいぱーありす達を捕まえることで、衆目の歓心
を得ることが目的なんですね」
「左様です。マスコミを集め、れいぱーありす達をさらしものにして、
 犯罪を犯したゆっくりたちを我々のノウハウで捕まえたことをアピールします。
 その上で、加工所に衆人環視の中、引き渡してやりましょう」
「ああ、それはいいですね!」
「もちろん皆さんのショップが忙しいことは承知しております。
 ですが、皆さんほど、この問題に対処するにふさわしい方々もいないのです。
 失礼ながら、皆さんの経歴もある程度調べております。皆さんがゆっくりに関して高
い知識を持っていると、確信しています。
 そのお力を、業界の未来のためにお貸し願いたいのです。それが引いては皆さんの未
来にもつながると思います。いかがでしょうか?」
 いかがも何も、もうこのおっさんの作り出した流れにみんな飲まれている。例え私一
人が抗っても、どうしようもない。

 全員がやろう、と声を上げる。最後に私が肩をそびやかして、いいですよと言った。
「ありがとうございます。それでは今後の予定ですが……」
 ようやく終わりそうだ。私は小さく肩を回して深く息を吐く。
「いや、せっかく人数が集まっているんだし、今後、会合があったときに、参加できな
いと言う人もいるだろうから、
 今この場で大切なことはあらかた決めておくべきじゃないですか?」
 この若造、余計なことを――!

 その後、どうにも抜け出せない雰囲気の中、心底どうでもいいことをぐだぐだと話し
合った。
 解放された頃には、日がビル街の下に隠れようとしていた。
 帰宅した私を待っていたのは、産まれた子供とともにのんきに眠りこけているゆっく
り達だった。



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最終更新:2011年07月28日 03:44
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