「くずめーりんはゆっくりしんでね!」
「じゃおおーん!!」
森の小道を歩いていると、ゆっくりめーりんがゆっくりたちにいじめられていた。
いじめゆっくりの面子はれいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、さらにみょんにちぇん、さくやまでいた。
「ほんとうにくずめーりんはきたならしいわね!ありすのとかいはなおめめがくさっちゃうわ!」
「むぎゅ、おばかなくずめーりんはそばにいるだけでばかがうつるわ」
「ちーんぽ!」
「わからないよー!くずめーりんのそんざいいぎがわからないよー!」
「もんばんもまんぞくにできないめーりんにはおひまをだしてあげるわ。えいえんにゆっくりやすむといいわ」
「じゃおーん!じゃおーん!」
めーりんは必死に許しを求めているようだが、ゆっくりたちはまったく容赦なくめーりんを弄り続けている。
「おいこら!おまえたち!やめろ!」
俺はめーりんを助けようと、大声を出してゆっくりたちを脅かした。
「ゆゆ!にんげんがきたよ!ゆっくりできないよ!」
「ゆっくりいそいでにげるんだぜ!」
「あら、おぜうさまがよんでるわ!もういかなきゃ!」
ゆっくりたちはゆっくりらしからぬ迅速さでさっと散らばっていった。
「じゃおーん・・・じゃおーん・・・」
ぼろぼろのめーりんが俺の足元に縋り付いてきた。
「よしよし、もう大丈夫だぞめーりん」
俺はめーりんの頭をなでてやる。
「まったく酷いやつらだな。なんだってめーりんばかり差別するんだろうな・・・」
「じゃおーん・・・おーん、おーん」
めーりんの目は涙で真っ赤に腫れていた。俺はめーりんの涙を拭ってやる。
「よければ、俺の家にこないか?食べ物ぐらいはあるぞ」
「じゃおーん!じゃおーん!」
めーりんはこくこくとうなづいた。言葉はわからないが、来るという意味だろう。
「それじゃあ行こうか」
俺はめーりんを抱きかかえて家路を急いだ。
「さあ、ここが俺の家だ。ゆっくりしていってね」
「じゃおーん・・・」
「ごはんの前に傷の具合を見てみようか」
幸いにして、めーりんは大きな傷は負ってないようだった。
「とにかく腹が減っただろう。なにか食わせてやる」
「じゃおーん!じゃおーん!」
「えーっと、めーりんは辛いものもいけるんだっけ?」
「じゃおん!じゃおん!」
「麻婆豆腐の残りがあるな。これをやろう」
残り物を差し出すとめーりんはむしゃむしゃと食べ始めた。
「じゃーおん!じゃーおん!じゃじゃおーん!」
他のゆっくりの“むーしゃーむーしゃーしあわせー”ってやつに相当する鳴き声だろうか。
他のゆっくりの場合は聞いててイライラするだけだが、めーりんのそれは不思議と微笑ましく思える。
「おいしいかいちゅーごく?」
「めーりんはちゅーごくじゃないよ!めーりんはめーりんだよ!おにいさんばかなの?しぬの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・じゃおーん」
「やっぱり普通に喋れたんだな」
「じゃお?じゃおじゃお?」
「もうその耳障りなじゃおじゃお喋りはいらないぞ」
「・・・め、めーりんは、めーりんはね、ほかのゆっくりにおどされて、ふつうにしゃべることを・・・」
耳の錯覚ではなかったようだ。めーりんは他のゆっくりと同様、人語で話始めた。
だがその内容は・・・
「うまい嘘だが、俺には通じないぞ」
「!?」
「おまえは自発的にじゃおーんしか言えない様に装っている。そして、脅されているのはむしろ他のゆっくりたちだ」
「じゃお、おにいさん?めーりんは・・・」
「めーりん種は騎馬めーりんなどを輩出するほど、戦闘力に優れた種だ。なのになぜゆっくり界で地位が低いのか?
俺はそれが不思議でならなかった」
「め、めりーんはつよくなんかないよ!だからほかのゆっくりに・・・」
「もうひとつ不思議なことがあった。めーりんがいじめられてる現場を、目撃している人間がやけに多いということだ。
しかも、それらの目撃例は人里に近い場所、人間も通る道がほとんどといっていい」
「じゃ、じゃってそれはにんげんが・・・」
「一見当たり前に思えるだろうが、ひとつおかしな点がある。なぜゆっくりたちがそんなリスクを犯すのかということだ。
なんでわざわざ人間に見つかる可能性のあるような場所でいじめる?森の奥まで引っ張っていけばいいではないか。
人間の中にゆっくりを嫌っている者が少なからずいることはゆっくりも知ってるはず。その上にいじめなんかしているところを見られたら、
人間の嫌いなゲスゆっくり認定確実だろう」
「きっと!ゲスだからあたまがわるいんだよ!」
「俺も最初はそう思った。ゲスだからそんなことまで頭が回らないのだろうとな。
だが、事実は違った。おまえらめーりんは、わざといじめられている!」
「!!」
「より性格にいうならいじめられてる風を装っている。他のゆっくりを脅して、自分を攻撃させているのだ。
わざわざ人里近くまで来させてな」
「じゃお!なにいってるの・・・めーりんよくわからないよ・・・」
「そして、通りがかった人間に助けてもらう。助けてくれた人間がついでに食べ物をくれることを期待してな。
あわよくば飼いゆっくりにしてもらえることすらありうる。人間でいうところの当り屋に似ているな」
「・・・・・・」
さっきまで必死に抗弁していためーりんは神妙な面持ちで黙りこくっている。
「めーりん種には“ちゅーごく”と呼ばれると躍起になって否定するという性質がある。
偶然そのことに気がつき、それと同時にめーりんは実際には普通に喋れることが判明された。
そして、めーりんの本性に関して本格的な調査が始まったのだ。
「大方のゆっくりは名前の通り怠惰な性質があるが、その中でもめーりんの怠惰さはずば抜けている。
普通の餌集めなどまずしない。めーりんば他のゆっくりから奪うことしかしない。騎馬めーりんがその代表格だ。
だがそれすらも億劫に感じるめーりんもいた。そして、この手を、人間の同情を引くという手を思いついたわけだ。
いや、よく思いついたものだ。ぱちゅりー種以上の知能があるんじゃないのか?・・・サボることに関しては」
「め、めーりんは!めーりんはかわいそうなんだよ!はくがいされてるんだよ!にんげんさんはめーりんをあわれんでたすけてあげなくちゃいけないんだよ!
じゃおーん!じゃおーん!じゃおーん!じゃおおーんん!」
「黙れ」
俺は平手でめーりんの頬を強めに打った。乾いた音が鳴り響いた。めーりんは黙った。
「あるいは本当に迫害されていた時代もあったのかもしれない。少なくとも騎馬めーりん出現以前の時代には。
人間のめーりんへの哀れみの根は深い。いつしかそれを意図的に利用するようになったわけだが」
「・・・めーりん、めーりんもうおうちかえるぅっ!」
「いいだろう。帰してやる。おまえたちのせいで少なからず被害を受けた人間もいたが、俺自身はおまえらにこれといった恨みはないからな」
「そ、それじゃあゆっくりさような」
「とはいえ同じことを繰り返されては困るからな。それはできないようにしておかないとな!」
「じゃおーん!めーりんもうしないよ!」
「なにを?」
「え?ええーっと・・・」
「ちゅーごくは本当に馬鹿だなぁ」
「だからめーりんはちゅーごくじゃないっていってるでしょ!ばかなじじいはゆっくりしね!・・・あっ」
「他のゆっくりなら即ゲス認定できる台詞だな。それじゃあ始めようか」
「じゃおおおおおおおおおんんん!!!」
「じゃ・・・お・・・じゃ・・・お・・・」
数時間後、そこには変わり果てためーりんの姿があった。
帽子は切り刻まれ二度と被れないようになり、髪の毛は大半をむしられ、残った部分は弁髪風に結わってある。
むしった髪の毛を口元に移植し、ドジョウ髭のように装わせた。額には“中”の烙印が刻まれた。
「もうおまえはめーりんではない。これからおまえはちゅーごくだ」
「めー・・・りん・・・は・・・ちゅーご・・・く・・・じゃ・・・な・・・」
「はははは!闘将ちゅーごくマンって感じだな!これでもう余程ゆで好きの人間でもなければ騙されて助けたりしないだろう」
「じゃおおおーん!じゃおおおおおおーんん!」
俺は無様なめーりん改めちゅーごくを家の外に蹴りだした。
ちゅーごくは地面に這いつくばって寒さにぶるぶる震えている。
「おら、さっさと俺の目の前から消えないともっと酷い目にあわすぞ?」
「じゃおん!じゃおん!」
ちゅーごくは必死に這いずって俺から遠ざかっていった。
足は半分しか焼いてないのでなんとか動けるようだ。
「これからは真面目に生きていくんだぞちゅーごく!」
「べーびん゛ばぢゅーごぐじゃ゛な゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」
最終更新:2009年02月24日 19:27