ゆっくりいじめ系2203 れいむだって生きてるんだよ。

『れいむだって生きてるんだよ』








ぽかぽか陽気の春の昼。

こんな日は外で散歩しよう。
そんな訳で俺は近所の公園を歩いていた。
辺りには子を連れた親。ペットを連れた飼い主がちらほら見える。
もうしばらくすればこの公園は桜が咲き乱れ、たくさんの人で溢れるだろう。
その時は友人でも誘って花見に来ようかな。

なんて思っていると茂みから何かが飛び出した。

「ゆっくりしていってね!!!」
「していってね!!!」

あ、野生のゆっくりが飛び出した。
いや、野生と言うよりも野良と言った方が言葉のイメージとしては合っているな。
薄汚れたゆっくり、れいむとまりさは俺を笑顔で見上げている。

こいつらゆっくりは饅頭だ。
明治だか昭和だかの時代に世界に現れた動く饅頭。
饅頭のくせに食事をし、繁殖をし、そして物を考えて言葉を喋る。
大きさは成体で30cm程度。世界には5mなんて巨体もいるらしい。
これは品種改良のすえに巨大化したゆっくりで、味は薄くて食えたものじゃないとか。

こいつらはまだ小さい。未成熟の個体のようだ。
まあ成熟してようとしてまいと、実になったばかりのミニでも野良は野良だ。
洗っても食べられるものじゃない。
その体には汚れが染みついてるし、何を食べているかも分からない。
それに野良はどうしても不味いらしいのだ。

「ゆっくりしていってね!!!」
「はいはい、じゃあこっちおいでね」
「ゆっくりついてくね!!」

俺は歩いて公園の入口へと向かう。
しかしいつも思うがこいつらは全てに対して警戒心をまるで持っていないな。
よくここまで育ってこれたものだ。

「ゆっ、ゆっ、ゆっ」
「おにーさん、ゆっくり、ゆっくりあるいてね!」

二匹のゆっくりはピョンピョン跳ねて俺を追ってついてくる。
普通に歩いていてもゆっくりには速いらしく、息を荒くしながら必死についてくる。
そんなに俺とゆっくりしたいのか。
それが出来ない事をどうして分かっていないらしい。

今まで見たことがないのかな。
人間に会ったゆっくりがどうなるのかを。

「ほらついたぞ」
「ゆっ、ゆっ、ゆっくりー…」
「つかれた! でもゆっくり!!」
「ああ、ゆっくりしてくれ」

俺は二匹を持ち上げて公園の入口に設置されたゴミ箱の上に掲げる。
えっと…どれだっけな。
ちゃんと分別しないといけないからね。

可燃ゴミ。
不燃ごみ。
空き缶。
空き瓶。
ペットボトル。
そして…ゆっくり。これだ。


ゴミ箱の蓋の上にまりさを乗せる。
すると蓋はくるんと回ってまりさを中へと落とす。

ボチャン
「ゆぶっ!?」

ゆっくり用のゴミ箱は水で満たされている。
満たされていると言ってもせいぜいゴミ箱の70%程度の高さまで。

「ゆっ! ゆぅっ! ゆーっ!!」

まりさは数秒水に浮いて足掻いていたが体が水を吸うとすぐに水の底へと沈んでいった。
もう悲鳴を上げることすら出来ない。
後は水の中で体を溶かして消えていくだけ。
次はれいむの番だ。
まりさがどうなったのかをよく見ていたれいむは顔を真っ青にしていた。

「ゆ、ゆっくりやめて…ね?」
「じゃあな」
「ゆゆ! ゆっくりしてね!
 れいむゆっくりしたい! なんでゆっくりしてくれなっ…あぁっ!?」

ボチャン

「ゆっ! ゆぶぶっ…ゆ…」

れいむもすぐに沈んでいく。
あっけないが苦しませるのが目的じゃない。
これはゴミ箱なのだから捨てられたゴミが叫んだり暴れてはゴミ箱として失格だ。
すぐに沈んで死ぬから煩い悲鳴は上がらないし、暴れないので騒音にならない。
さらにこのゴミ箱はセンサーで水中の糖度をチェックして、糖度が一定以上になったらコンピューター制御で水を取り換える。
ゴミ箱の底にあるスクリューでかき混ぜながら餡子水を流し切り、消毒液を撒いてから再び水で中を満たす。
完全にゆっくり専用のゴミ箱だった。
数年前に開発されて大抵の都市には設置されている。


ゆっくりは饅頭。
食べ物は食べられるための物。
加工場産やゆっくり園産ではない汚れた野良ゆっくりは生ゴミ扱い。
これは俺が産まれるよりもずっと昔にそう決まっていた。
だから当然俺もそういう物だと教わってきたし、常識に対して疑問を抱くこともなかった。

ゆっくりが現れた当初はゆっくりを生物として認めるか認めないかで意見が2つに分かれていたらしい。
だが生物学的にどうこうとお偉い学者さんが言ったらしく『ゆっくりは饅頭』として認定された。
しかし饅頭だと人間に定められてもゆっくりはゆっくりだ。
ご飯は食べるし交尾をして繁殖もする。
それでまあ数を増やした野良ゆっくりが色々問題を起こして社会問題になると『野良ゆっくりは生ゴミ。駆除すべき』なんて意見が出始めた。

それが30年も前の話。
そして現在は完全に野良は生ゴミとして扱われ、「見つけたらゴミ箱に捨てましょう」なんて看板すらある。
なのに不思議だ。どんなに駆除しても今みたいにゆっくりは姿を消さない。
「ゆっくりは異世界から来たんだ。幻想の世界の入口が何処かにあるんだよ!」なんてとんでも説も出るぐらいだ。







俺は公園を出て近所のマンションを横切っていた。
すると「ゆー! ゆー!!」と喧しい鳴き声が聞こえた
声のする方を向くとそこはマンションのゴミ捨て場。

あー、なるほどね。

マンションのゴミ捨て場も当然分別はあるし、ゴミの種類ごとに捨てる日が決まってる。
ゴミ捨て場を覗きこむと案の定ゴミ袋に詰め込まれたゆっくり達が鳴いていた。
さらにはそれを助けようとする二匹のゆっくりまでいた。
ゴミ袋は可燃ゴミの場所に置かれ、しかもゆっくりゴミの日は明後日だ。
それにちゃんと殺してから捨てていない所を見るとマナーの悪い住人が捨てたのだろう。

「ゆっくりしようね!!」
「すぐにゆっくりさせるからね!!」

ちゃんと殺してから捨てないとこうして他の野良ゆっくりが寄りつく。
そうなると他のゴミを荒らしたり、住みついたりするのであまり気分のいいものではない。

「やれやれ」

「ゆっ! ゆっくりしていってね!!」
「ゆっくりたすけてね!
 みんなをゆっくりさせたいよ!!」

「はいはい」

俺とは関係の無いゴミだけど見たからには放って置く訳にはいかない。
せっかく暖かく天気の良い日だから良いことをしよう。
俺は二匹が助けようとしているゴミ袋に近づく。

「ゆゆ! おにいさんありがとう!!」
「これでゆっくちできるね!!」
「ゆ? れいむを、たすけてくれるの?」
「……ゆ"」

全部で10匹近く袋に詰められているが生きてるのは3匹…いや4匹か。
他は潰れているか餓死しているらしい。

「ゆっくりはやくたすけてね!!」
「そのあとはみんなでゆっくりしようね!!」

俺の足元の二匹は俺が助けてくれると思ってるらしい。
ああ…饅頭が相手なのに罪悪感を感じてしまう。俺も変わり者だなぁ。
まあ悪く思うな。
俺は袋に向かって手を伸ばす。
まずは小さいのからだ。

「ゆぎゅび…」

袋の上から小さいゆっくりを握ってくしゃりを潰す。
まりさ、いや飛びだしたのがカスタードクリームだからありすか。
まだ未成熟な小さな体はあっけなく潰れた。

「ゆ…? ゆっくり? ゆっくりしちゃったの?」
「そうだよ。なるべく痛くないようにするから暴れるなよ」

次の一匹は握るとぐにゃりと嫌な感触で潰れて死んだ。
最初見たときから死にそうだった奴で、どうやら腐っていたらしい。
さて次だ。今度は少し大きい奴だ。
この大きさだと袋の上からじゃ片手で潰せないな。
両手で潰そう。

「ゆー!! やめてね! やめてぇぇ!! ゆぎゅぅぅぶ」

身動き取り辛い袋の中で必死にもがくゆっくりを左右から両手で押さえつける。
後は左右からぎゅーっとプレスして緩やかに押し潰す。

「ゆっくりやめてね! やめてあげてね!!」
「いたがってるよ! ゆっくりできてないよ!!」

足下の二匹がうるさい。
踏んで潰そうと思ったがそれでは靴が汚れるしゴミ捨て場も汚れる。
そうすると衛生的に宜しくない。中身が甘い餡子なので虫がすぐ湧くんだよなぁ。

「や、やべで…ゆぶぶぶぶぅ…ゆびゅっ」

三匹目死亡確認。
残る一匹は西瓜ぐらいある成熟した個体だ。
これだけ大きいとそれなりにタフなので殺し辛い。

「なんでゆっくりしてくれないのぉ。ゆっくりしようよぉぉ!!」
「もうやめてね! ゆっくりしていってぇぇ!!」
「うわっ、泣きつくな! 汚ねぇ!」

そうやって悩んでいると足下の二匹が俺に泣いて縋りついてきた。
ああもう。昨日洗濯したばかりのジーパンが汚れてしまった。
ショックだ。こうなったらこの二匹から処理しよう。
都合よくゴミ捨て場にはコンビニの袋がいくつか落ちていた。
俺はそれを拾う。

「ほら、こっち来い。入れ、ほら」
「やめてぇぇ、いやだよぉぉ!! おにいさんがゆっくりできないよぉぉ!!」

逃げればいいのに逃げずに泣くだけだったので簡単に捕まえられる。
後はコンビニの袋に入れて口を縛って落として踏み潰してポイッだ。

「ゆぐー! ゆっくりできないよ! ゆぎゅっ!?」
ぐちゃ
「ゆ"…」

ここまで僅か5秒。
もう一匹も同じように手早く済ますとしよう。

「やだぁぁ…
 まりさまだゆっくりしたいよぉぉ。たすけてよぉ…」
「はいはい、ゆっくりしような」
「ゆ? ゆっくり、してくれるの…?」
「うん」

袋に入れて袋の口を縛る。

「ゆっ!? ゆーっ!!! やめてっ! やめてね!!
 ゆっくりさせてぇぇぇぇ!!」

このまりさは袋の中で暴れだした。
目の前でもう一匹が同じ方法で死んだのを見たからこの反応も当然か。
俺はまりさの入った袋をぽてっと床に落とす。

「ゆぐぇ!? ゆ、ゆー…いたいよぉ。
 まっしろでなにもみえないよぉ…」

後は袋の上から踏み潰す。躊躇しないのがコツだ。

「ここどこー? ゆぎゅびゅっ!!?」

真っ白なコンビニの袋が黒く染まる。
これで良し。後は2つの黒いコンビニ袋をゆっくりゴミ用の籠へ捨てておく。
後はあの大きいゆっくりだけだ。

「ねぇ…」

と、ここで当のゆっくりが話しかけてきた。
驚くほど落ち着いた口調だった。

「どうしてこんなことするの」

妙な事を聞く。
野良ゆっくりは生ゴミ。
だから捨てられて当然だし、騒ぐと迷惑になるから殺してから捨てるのもマナーだ。

「れいむ、わるいことしてないよ。
 いっしょにゆっくりしたかっただけだよ。
 なのになんでにんげんさんはれいむを"なまごみ"ってよぶの」

ゴミ袋の中のれいむは涙を流しながら話を続ける。
しかし珍しい。
能天気でポジティブなゆっくりがこんな話し方をするなんて。
涙を流しつつも努の感情を露わにするゆっくりを見るのはこれが初めてだった。

「れいむだっていきてるんだよ。
 ごはんもたべるしおかーさんもいたよ。
 ともだちがしんだらかなしいよ。
 おにいさんともこうしておはなしできるよ。
 だから"なまごみ"ってよばないで。
 おねがいだからゆっくりしていってね」

ゆっくりは饅頭だ。
俺は産まれた瞬間からそんな世界で生きてきたし、親や教師にもそう教わった。
ゆっくりは生き物だって言われればむしろ疑問を覚えてしまう。
だからゆっくりを殺すことに躊躇なんてない。
そもそも"饅頭を殺す"という表現自体おかしい。

「ああ、そうか。
 間違ってた」
「ゆっくりしてくれるの…?
 れいむうれしいよ。
 じゃあゆっくりしようね!」
「殺すじゃなくて潰すか」
「ゆ?」

俺は袋の中の大きなれいむに思いっきり踵落としをぶつける。
だが格闘未経験者の踵落としでは威力に欠けるようでれいむは頭半分を凹ませるだけだった。

「いたい! いたいよぉぉぉ!!
 な、なんでっ! なんでなの!! なんで…ゆぎゅぅうぅぅぅぅ!!!」

今度は袋越しにれいむを踏んで思いっきり体重をかける。
叩き潰すのではなくて押し潰す。時間は多少かかるがこっちの方が確実だ。

「ゆっくりしたかったのに…
 れいむは、れいむだよ。なまごみじゃ、ないのに…ゆげぇ……」

れいむは最後に小声で呟くと俺の足に押し潰されて弾けて死んだ。







散歩の締めにスーパーに買い出しへ向かう。
今日見つけた野良ゆっくりは「れいむはれいむ、生ゴミじゃない」とそう言った。
でも違うんだ。
もし地面にマシュマロが落ちていたら食べる人はまずいない。
普通は汚いので食べずに捨てるし、もしくは見て見ない振りをする。
じゃあ饅頭であるゆっくりなら? やっぱり汚いから捨てる。

「ゆ、ゆっくりしていってね…!!」

道端にまたゆっくりがいた。今日はよくゆっくりを見るなぁ。
陽気に誘われたのかな。
ゴミ箱も近いのでひょいっと掴んで持ち上げる。

「おそらをとんでるみたい!
 ゆっくりできるよ!! おにーさんゆっくりしてる!!」

歩みを止めずにゆっくり用ゴミ箱に捨てる。

「おにー…さん? なんで…」


あっちでもこっちでも色んな人がゆっくりを捨てていた。
スーパー前にはゆっくり焼きが売られていて子供が親に買ってとせがんでる。
ほらね。やっぱりゆっくりは饅頭なんだ。
決して生き物じゃない。そう認められていない。

もしゆっくりが生物として認定されていたもう一つの未来があったとして、
その世界でのゆっくりはどうなっていたのだろう。
幸せになれるだろうか?
もしくはこの世界と対して変わらないだろうか?

少なくともこの世界の生存力に乏しいゆっくりを見る限りでは、
どんな世界でもゆっくり出来ないと俺は思う。



















by 赤福

思い付いたネタをさらっと書いてみました。

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最終更新:2009年02月24日 19:03
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