ゆっくりいじめ系2119 みょんとの遭遇

下ネタです。
東方キャラがでます。
しかも性格が崩壊気味です。
ゆっくりはあまりでません。




みょんとの遭遇



 今日は中秋の名月。
 今年の十五夜は、薄雲をまとった朧月だ。
 いつも見慣れているお月様とはいえ、特別な満月ともなれば中々趣き深い。
 武辺者の私でも、詩歌を詠んだ古の貴族の心中を推し量れるほどに。
 特に私のお仕えするお嬢様は、ことの他風情を知るお方。
 日の高いうちからの支度を欠かすことはできなかった。
 夕方までに月見団子と栗を盛り、ススキを飾って、今は盆の上に月見酒。
 縁側で待つ主の元へ、しずしずと畳を進む。
 枯山水の庭園を通り抜け、渡り廊下の先で待つ主の下へ。

 しかし、私の見通しは甘かった。
 月見団子らを盛り付け、お酒を用意するために席を外していたのはほんの数分。
 それなのに、戻ってみると座敷には所在無げなすすきが揺れるのみ。
 月見団子も甘栗もどこへいってしまったのか。
 私が丹精こめてこしらえた品々は、もう影も形も残されていなかった。

「むーしゃ、むーしゃ」

 愕然としていた私の耳に届く、縁側からのお行儀の悪い咀嚼音。
 何があったか、もうそれだけで見当がついてしまう。

「しあわせー」

 続いての心から嬉しげな声に、ため息が誘われる。
 声の主について説明の必要もないだろう。
 視線を向けると、縁側でほのかな月明かりを浴びているその姿があった。
 私はちょっとだけ眉をしかめてみせる。

「よろしいですか、幽々子様」
「なあに、妖夢?」

 はんなりとした仕草で私に向き直る幽々子様。
 そう、私が魂魄二代わたってお使えしている西行寺幽々子様だ。
 振り向いたお顔は、実に可愛らしく上品だと思う。
 惜しむべきは、口の端に点々と残る餡子の跡。
「もう、全部食べちゃったんですね?」
「あら、もうわかっちゃたの」
 声色の含み笑いを残して、女性らしいしぐさで口元を隠す幽々子様。
 本当に、どうしてこの方はこれほど食い意地が張っているのですか。
 優美なしぐさも、憧れのシルエットも、月明かりを帯びて透けるように白い肌も、このせいで最近は少しだけかすんで見えなくもないです。
 けれど、改めて節制を説こうとした、そのほんの一瞬手前。
 気がつけば、幽々子様は無邪気とも思える笑顔を浮かべていた。
「ごめんね、妖夢。でも、おいしかったわー」
 爛漫の笑みで、とろんとした声をあげる。
 あまりにもあどけない声色。
 だめだ。
 怒ろうという気力が根こそぎ消えていく。

「美味しく食べていただければ満足です」
「ありがとう。だから、妖夢大好きよ」
「あ、ありがとうございます」

 答えながら、大げさな言葉が気恥ずかしくなって、視線を外してしまう。
 そっぽを向いた視線の先には、十五夜のお月様。
 しばらく、雲間にかすむ月を眺める。
 本当は食べて欲しい人に食べてもらえたのだから、別に構わない。
 でも、一緒に並んで食べたかったなあと思ってしまうのは仕方のないことだ。

 そんな想いを飲み込んで、私は膝を下ろして傍らに侍る。
 雲間に隠れがちなお月様と、月光に照らされて穏やかな幽々子様の表情を眺めていた。
 しばし流れる心地よい沈黙。
 月は狂気を誘うという話もあるが、幽々子様のお傍で見上げる月の光はとても柔らかい。

「ねえ、ようむ。餡子で思い出したんだけど」

 静寂は不意の幽々子様の呟きで破られた。
 しかも、あまり風情のなさげな言葉で。

「なんでしょうか」

 応じながら、私は幾分声を低くする。
 まさか「饅頭と大福とたい焼きも食べたいわねえ」とか無限ループな連想ゲームを始めるつもりではないですよね。
 経験がよからぬ予測をたてようとする。
 とはいえ、私の貧弱な想像の範囲に定まらないのが幽々子様。
 次に口にしたのは、思ってもみないことだった。

「妖夢は、『ゆっくり』って、知っているかしら?」

 ゆっくり。
 副詞としてのゆっくりなら聞くまでもない質問だ。
 あえて聞くのだから、対象は名詞としての「ゆっくり」だろう。
 聞いたことはある。
 特徴のある髪飾りや帽子を身に着けた、喋る饅頭という怪異。
 とはいえ、脅威となる力も悪さもないため放って置かれている存在であり、私も詳しくは知らない。
 ただ、その格好が特定の有名人に似ているために妙に印象に残る連中ではあった。

「妖夢。実は特定の有名人に、どうやらあなたも入っているみたいなのよ」
「私が、ですか!?」

 驚きで腰が浮きかけてしまう。
 私に似たゆっくりというのは、初耳だ。
 しかし、同時になぜ私などを……と、疑問が生じずにはいられない。
 幽々子様を始め、幻想郷の著名人はいくらでもいるだろうに。
 腑に落ちないでいる私を見据えながら、幽々子様はわずかに口元に微笑を浮かべる。

「ねえ、妖夢。あなたのゆっくりがみてみたいわ。だめ、かしら?」

 小首を傾げてのあどけない仕草。
 私が、魂魄妖夢が断れるわけがなった。

「わたりました。明日にでも捕まえてまいります」

 どうせ、ゆっくりなんて探せばすぐ見つかる。
 そんな気安さから、私は頷きを返すのだった。




 魔法の森のほど近く。
 スカートやら髪の毛やらにひっつき草を盛大につけたまま、私は立ちすくんでいた。
 「ゆっくりようむ」とやらを探しに白玉楼を出てから二時間。
 藪やら林道やらを駆け巡った末に、ついに見つけ出した。

 背の高い草が生い茂る一角、切り株の上にそいつは眠っていた。
 片手で抱え込めるぐらいのまん丸の顔に、額で切り揃えられた白い前髪。
 トドメは、秋口の爽やかな風に揺れる黒いリボン。
 たぶんこいつだ。
 認めたくないけど、みょんな精度で一致している。
 こんな何かもの言いたげな名状しがたき面をした覚えはないが、それはゆっくり共通なので仕方ない。

 ともかく、後はこいつを起こして白玉楼へご同行願うだけ。
 安らかな寝息を吐き出して幸せ気分なそいつの頬を指先で突いてみる。
 もちっと指先にかかる柔らかすぎる圧力。
 ほっとするような温もりが伝ってくる、ふくよかな感触だった。
 同時に、そいつの寝息が息苦しいものに変わる。
 ゆっくりの眉間に一本筋が入っているのを見ると、不快を感じているのかもしれない。
 ぷひゅーと息を吹いて、なにやら不満げにむずがっている。
 その様子が可愛らしくて、思わずちょいちょいと押したり引いたりしてしまう私。
 しばし熱中してしまったが、さすがに暢気そうなその生き物もたまらなかったのだろう。
 次第に寝息が小さくなって、やがてうっすらと目を開けていく。
 刺激の元である私の指先を横目に見る眠たげな眼。
 ゆっくりの視線は指から腕を辿って私の顔へと。
 そのまま交差する視線。
 思わず、じろじろとそいつを観察してしまう。
 こうして間近で目を合わせると、顔だけの楕円の生き物はなんとも面妖。
 ゆっくりはただ困惑したような瞳で私を見上げていた。
 いけない。
 このままだと怖がられて、逃げられるかもしれない。
 私は、かろうじて用意していた言葉を口にする。

「ゆ、ゆっくりしていってね」 

 ゆっくりしていってねと、声をかけあう習性があるとは聞き及んでいた。
 これで私もゆっくりできる存在と認識されたのだろうか。
 私の言葉のぎこちなさが不安だったが、どうやら成功したらしい。ゆっくりの瞳に喜色が浮かんでいた。
 ゆっくりようむは飛び跳ねながら、挨拶を返そうとしてくれる。
 そう、恐らくは「ゆっくりしていってね」と……

「ちーんぽ」

 何か、私の聴覚が狂ってしまったらしい。
 ゆっくりが口走った言葉が理解できない。
 きっと何かの聞き間違いだと……

「ちーんぽ!」

 再度、ゆっくりの声が閑静な森に容赦なく響く。
 ええと、その、それってまさかアレ……
 瞬間、耳たぶまでかあと熱くなる。

「な、なななにをいっているんですかっ!?」

「ちーんぽ!」

 実に的確な答えが返ってきて、泣いてしまいそうだ。

「ちん……って、言わないで下さい!」

 動揺からゆっくりの台詞を復唱しかけて思いとどまる。
 ゆっくりのような珍妙な生き物に嘆願する自分を滑稽と思うよりも何より、ひたすらやめてほしかった。
 それなのに。

「ちーんぽ!」

「ちーんぽ!」

 親しげな素振りで私の足元をボインボインと跳ね回るゆっくりようむ。
 なんだろう、この嫌がらせを超越した犯罪臭さは。
 この公然わいせつ物を、幽々子様の元へ連れて行かねばならないのだろうか。

 あらあら、妖夢ったらおませさんねえ。扇で口元を隠す幽々子様。その隠された扇の奥には、ひそやかな微笑みが。

 そんなことになったら、死んだほうがましだ。半身ごと成仏しよう。
 悲壮な想いをこめて、そのゆっくりを見下ろす。
 眼下には注目されて楽しげに弾むゆっくり。
 台詞さえまともなら、そこそこ愛嬌あるのに……

「いいですか、私の言うことを繰り返してください。ゆっくりしていってね!」

「ちーんぽ!」

 一縷の希望にすがりつくように、私はゆっくりようむの矯正を始める。



 日も大分傾いてきた頃、私はようやく悟った。
 このゆっくりようむは、本当にこれしか喋られない。
 後に残されたのは、構ってもらって嬉しげに懐いてくるゆっくりようむと、途方に暮れた私。
 それにしても、なんで、よりによって私を模したものがコレなんだろう。
 ゆっくりみすちーとか、そっちの担当ではないだろうか。

「ちーんぽ?」

 黄昏ていると、心配げによりそってくるゆっくりようむ。
 恐らくは「どうしたの? もっと構ってね!」といいたいのだろう。
 三文字しかしゃべられない癖に、そのニュアンスで何となく言いたいことがわかってきた。
 もしかしたら、この三文字で日常生活を営むことも可能なのかもしれない。

「私は、何を考えているんだ」

 呆然と呟く。
 いけない、少しずつ感化されてきた。
 気の迷いがなんだかとんでもないことにつながりそうだ。
 ばっさりと迷いを断たなければ。
 ……ばっさりと?
 瞬間、私はひらめいた。

 よし、斬ろう。

 斬れば、きっと解決するはずだ。
 いつだって、どんな異変だって斬りかかったらいつの間にか解決したじゃないか。

「ちーんぽ!」

 ゆっくりようむも私の決断を後押ししてくれる。主に感情的な側面で。
 白楼剣を構え、間合いにゆっくりをとらえる。
 幽霊の迷いを断つこの刃で、まさか饅頭を切り分けることになるとは思っていなかったが。
 ふうと、息を吐き緊張を抜く。
 後は、いつもの稽古の通り。
 興味深そうに見上げていたゆっくりみょんの眉間に、一息に落とす。
 手首に伝わる、重い感触。

「びっくまらっ!]

 おおっ!?
 初めて聞いた、例の三文字以外の言葉!
 意味はよくわからないが、案ずるよりも斬るが易しとはこのことだ。
 が、勢いをつけた刀がよりゆっくりにめりこみ、内部の湿った感触に触れた瞬間、反応が変わった。

「ぺにすっ!」

 いきなり意味のわからない言葉を叫んで苦しみだす。

「ぺにすっ! ぺにすっ! ぺにすうううううう!」

 熱いものに触れたかのように不意に飛び跳ねていたが、やがて一際大きく叫んで、その動きを止めた。
 そのまま、真っ二つにぱかっと割れる。
 こんな輪廻から外れていそうな生き物にも死はあるのだろうか。
 屈みこんで、どんな様子か観察しようとしたとき、さらなる変化が起こった。
 ゆっくりようむの死骸から、凍てついた朝の吐息のように、もやもやと白いもやが立ち上る。
 それがなんであるのか、半人半霊の私には即座にわかった。
 ひんやりと初秋の穏やかな空気に涼しげな冷気が降りる。
 霊魂だった。
 それも、普通の霊魂ではない。
 白い霊魂の表面に浮き上がっていたのは、見覚えのあるゆっくりの顔。
 白玉楼の庭師を務めて長い間たつが、こんな腹が立つ魂は初めてだ。

 ゆっくりの魂は、しばらくふよふよと秋風に浮かんでいた。
 が、やがて思い出したように私の元へ、空を泳ぐように近づいてくる。

「ゆっくりようむだよ!」

 開口一番に、なぜだか友好的なご挨拶。
 しかも普通の言葉じゃないか。どういうことだ。
 それに、斬り殺した当人としてはどんな言葉を返せばいいのだろうか。

「ええと、つい斬ってしまってごめんなさい」
「ゆっくり許すよ! でも、ゆっくりみょんをきちんと食べてあげてね!」

 いいながら、地面に転がる自分の亡骸をみやるゆっくりようむ。
 あれは、ゆっくりみょんなのか。別物か。
 というか、みょんってなんだ。
 しかし、そんな疑問を口にする暇もなかった。

「それじゃあ、ゆっくり成仏するよ!」

 あっけらかんと言い放つなり、空気に溶け込むように消えうせるゆっくりの魂。
 最後の言葉はなぜだか嬉しげな声だった。
 あっさりすぎる。
 白楼剣で斬ったせいだろうか。
 この白楼剣は斬る相手の悩みを断つ刀。
 斬られた相手が霊ならば、迷いを断ち切られて成仏するほかはない。
 まあ、元から何の悩みも無さそうだったので、白楼剣は関係ないかもしれないが。
 とにかく、成仏しならばいつかまた、ひょっこりと輪廻にのって現世に現れるかもしれない。
 真っ二つに割れたゆっくり饅頭を抱えながら、そんなことをぼんやりと考えていた。

 が、どうしても心に残った疑問が二つ。
 ゆっくりみょんの言い残した、「びっくまら」と「ぺにす」ってなんだろう。
 あの化猫の妖怪ではないが、知識にない以上、誰かに聞くしか理解の方法はない。
 とはいえ、空の端はすでにほんのり茜色。
 夕暮れ時には白玉楼に戻らなくてはならないだけに、知識人の阿求や上白沢慧音の住む人里まで行くのは不可能だ。
 ここ、魔法の森近辺に住んでいる知識人がいればいいのだが。

 ……あ、一人だけ、いた。




「それで、僕のところにきたのかい?」

 森近霖之助が興味深げに私を見つめている。
 ここは香霖堂。
 以前、私は幽々子様か預かったとても大切なものを落としてしまったことがあった。
 落としたものが流れ着いたのがこの香霖堂。
 そのせいで買い戻すために、真冬の香霖堂でこき使われることになったという因縁の場所だ。
 ……幽々子様からの戒めもあって、そう扱われていたことは後で知った。

「あー、だめだぜ。香霖の知識は明後日の方を向いているからさ」

 からかうような声色が、店の奥からかけられる。
 霧雨魔理沙。
 本棚の前に安楽椅子をもってきて、いつものように店の一角を占拠していた。
 何でも、幼い頃からの腐れ縁とのことで、香霖堂では見慣れた光景。

「失礼なことを言わないでくれないか」
「はいはい」

 魔理沙は台詞に適当すぎる返事をして、再び手元の本に視線を落とす。
 茶々入れの声を追い払った店主さんは、改めて私に向かい合う。

「それで、聞きたいことってなんだい?」

 いつ、この二人がまた乳繰り合うか知れたものではない。
 私は急いで森近さんに疑問をぶつけてみた。


「私に、ぺにすについて教えてほしいのです」


 なぜだか、店主がぴしりと固まった。
 気がつけば、魔理沙が見開いてこちらを見ている。
 心当たりがあるのだろうか。
 それならば、ここは思いもよらぬものがある道具屋、香霖堂。
 実物が、ここにあるのかもしれない。


「森近さんは、びっくまらというものをもっていますか?」

「お、お前はなにをいってんだぜー!」

 続けけての質問は、魔理沙の絶叫で遮られた。
 相変わらず、騒がしい魔法使いだ。
 それに私は森近さんに聞いている最中だというのに。
 店主は、ため息を吐き出しながら首を横に振っていた。
 が、やがて真剣な眼差しで私の全身に視線を走らせ、静かに語りだす。

「あと十年ほど成長して、頬を赤らめながら伏し目がちに同じ質問をされたならご用意できるかもしれない」

「お前も何言ってるんだああああああ!!」

 どすどすと凄まじい歩調で歩み寄るなり、霖之助さんの襟首を締め上げる魔理沙。
 店主の顔色が、見る見る青紫に染まっていく。
 半人半妖が全霊にランクアップしていく決定的瞬間が見られそうだったが、そのまま香霖堂の奥に連れて行かれてしまう店主さん。

 結局、何やら大騒ぎになってしまって、結局教えてもらえずじまい。




 幸いにして、ゆっくりようむの件はあっさりと片がついた。
 幽々子様が知りたかったのは実は中身だけだったらしい。
 「これがゆっくりようむでした」と渡して完了。これだけだ。
 今度から、いつものように悩む前に斬ってしまったほうがいいのかもしれない。
 とはいえ、今現在抱えている悩みは斬って解決するものでもない。
 一体、びっくまらとは何か、ぺにすとは何か。
 疑問が解決しないと、やはり心にもやもやがたまってしまうし、悩んでいると時間の経過も早い。
 いつの間にか、もう深夜となっていた。

「ようむ、そろそろ寝るわよー」

 背後からの声に振り向けば、白襦袢姿の幽々子様。
 ゆるく帯を結んだだけの寝姿は幽々子様の理想的な体の線を浮き上がらせて、同性ながらちょっと息をのんでしまう。
 とはいえ、幽々子様の真の魅力はおっとりとした表情に隠された知性と知識だと私は信じているのだが。
 ……知識?
 そうだ、幽々子様ならご存知かもしれない。
 私は正座でぺこりと一礼した後に今日の疑問を口にする。

「申し訳ありません。幽々子様は、『びっくまら』と『ぺにす』というものをご存知ですか?」

 不躾な私の言葉が驚かせてしまったようだ。
 幽々子様の瞳が心持ち見開かれる。
 だが、それも一瞬のこと。
 幽々子様の声色は相変わらず落ちついたものだった。

「もしかして、妖夢はそのことを私の他にも聞いたのかしら?」
「はい、香霖堂の店主さんに」
「それでも、教えてもらえなかったのね」

 くすくすと、声もなく笑う幽々子様。
 が、やがて笑いを収めて私をじっと見つめてくる。

「妖夢。私にもわからないけど、それは外の世界の言葉のようね」
「外、ですか」
「そうよ。だから、博麗大結界に深い関わりのある人でなければわからないかもしれないわ」

 時折紛れ込む物でしか推測できない外の世界。
 だからだろうか、店主が知ったような素振りを見せたのは。
 だったら、すぐに教えてくれてもいいだろうに、何で十年後なのだろう。

「でもね、妖夢安心しなさい。妖夢が大人になったら、きっとみんな教えてくれるわ。先を争って」

 知らないはずのことなのに、断言なさる幽々子様。
 とはいえ、きっと幽々子様のことだから深い考えがあるはず。
 いまいち諦めがつかないが、逆らうことはできない。

「わかりました。今は聞かないことにします」

 私の返事に満足したのか、楽しげな頷きを残して幽々子様は寝所へ入っていく。
 私も、この疑問を眠らせなければならない。
 しかし、寝床に入るとせん無きことを考えてしまうものだ。
 結界に関わりのある博麗霊夢を不意に思い出してしまっていた。
 よし、最後に明日、霊夢にだけ聞いてみよう。
 それで教えてもらえなかったら、この疑問はお開き。踏ん切りがつく。
 そう心に定めると、気分は幾分安らかになってきた。
 私は明日、霊夢に問いかける言葉を思い返しながら眼を閉じる。

「幽々子様から、『ぺにす』と『びっくまら』と関わりが深いと聞いたので、教えてください」


 忘れないように記憶に反芻すながら、私はゆっくりと眠りのまどろみへと落ちていった。




 おしまい










あとがき

マージャンのお題:みょんが不幸になる話。

不幸になる対象がみょんか、ゆっくりの方か説明がなかったので、両方とも不幸にしておきました。
なお、ゆっくりみょんがちーんぽしか言えないのはこのSS独自の設定です。


書いた人:小山田

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最終更新:2009年02月03日 22:08
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