昼。
仕事を終えて家に帰る。
鍵を開けようとしたところ、もう開いていた。
泥棒かと思って中に入れば、ゆっくりがいた。
「ゆっ! おにーさん! ここはまりさたちがみつけたおうちだよ! ゆっくりでていってね!」
「「「でていってね!」」」
数えて四匹のゆっくりまりさがそこにいた。
何をしているかと思えば、食料庫に置いておいた食べ物を全部食われている。
ご丁寧に貴重な胡椒や塩もだ。
しかし、俺はこいつ等を無視して台所へ向かう。
台所も荒らされており、鍋やらヤカンやらが散乱していた。
俺はそれをかき分けて椅子に座る。
そこで近所の子から貰った昼飯の握り飯を頬張った。
「ゆ! なにしてるのおにーさん! はやくでていってね!」
台所にいる俺を見つけて親まりさがぷくっと膨れて怒る。
子供たちも真似するように小さく膨らんだ。
「別にお前達の邪魔をしてないからいいだろう、ここはお前達の家なんだから俺は家具だとでも思えばいいさ」
俺はそう言って飯を食らう。
まりさ達はそれが気に食わない様子だった。
「いいかげんにしてよ! ばかなの? おにーさん!?」
「ばかなの?」
「しぬの?」
非難を浴びるが、俺は冷静に返す。
「ああ、馬鹿だよ」
その言葉に、俺が自分達より格下だと判断したらしくまりさは調子に乗る。
「さすがばかだね! ここがだれのいえかわからないなんて! いきてるかちないんじゃないの!?」
普通、並みの精神の人間だったらここでどうしていただろうか。
間違いなく引きちぎって殺していたに違いない。
「そうかもな」
「ゆふん! ばかなおにーさんはここでのたれじんでね!」
俺をせせら笑ってまりさ達は自分達がいた部屋へ向かった。
飯を食い終えた俺は、取り合えず眠りにつく事にした。
夜。
目が覚めるとゆっくり達がぷるぷると震えていた。
饅頭らしくおしくら饅頭をして暖を取っているようだ。
春になったばかりの夜はとてつもなく寒い。
「ゆうぅ……ここでさむさをしのごうね!」
「あったかいよおかーさん!」
「だいじょうぶだよ!」
「ぬくぬくだよ!」
まりさ達はみんな親を心配させないように言う。
家族愛って奴だろうか。
俺は台所にしまってある毛布を使い、それを服の中に仕込んだ。
そのまま掛けて寝れば、ゆっくり達に奪われるかもしれない。
多少動きづらかったが、晩御飯の準備をした。
今日は鹿のスープだ。
言い忘れていたが俺の職業は狩人で、山の近くで暮らしている。
そんな事はともかく、作業に移る。
調味料は食われていたため、お湯の中に山菜と鹿の茹でた肉が入ったような質素なものとなった。
しかし、それでもうまそうな匂いがするらしく、まりさ達が俺の元へやってくる。
「ばかなおにーさん! それをまりさによこしてね!」
無視。
するともう一度まりさが叫ぶ。
「おにーさん! それをまりさによ・こ・し・て・ね!」
よこせを強調するが、無視。
俺は体当たりされてスープを零されてはたまらないので、一気に飲み干す。
「どうしてくれないの!? なんで? いいかげんしんでよ!」
「俺はお前の家の一部で家具だ、家具はお前のためにご飯を作らないしあげもしない。それにお前はゆっくりだろ、自分で狩りくらいできるだろ」
その言葉にぐっと歯を食いしばるまりさ。
確かにその通りである。
まりさはゆっくりの中では知能があるほうで、狩りは得意なはずだ。
「おかーさん、おなかすいたよ……」
さむそうにしていた子まりさの一匹が親に言う。
親は憎しみの表情を浮かべて俺を睨んだ。
だが、無視。
「まぬけなおにーさんがごはんをくれなくてごめんね! あしたたくさんごはんをとってきてあげるからね!」
子供達は不服そうだったが、やがて親に従った。
(あの様子だと食料庫の中身全部なくなってるわけか)
俺はそう考える。
まりさ達的にはもう春が来ているようで、ご飯を溜め込むなんて事はしなくなる。
食べられるだけ食べる、というのがゆっくりの習性だ。
俺は早めに家を出る事にした。
朝。
俺が目を覚まし居間へ行くと、寒さに震えながらもすやすやと眠っているまりさ達がいた。
起こさないように猟銃を持ってすべての部屋の鍵を閉める。
そして俺は狩りへ向かった。
お昼ほどになって、俺は狩りをやめる。
そして、食料を調達するために里へ向かった。
里は相変わらずにぎやかだった。
そこで俺はあるお店を見つける。
店の名前はゆっくり屋という名前だった。
中に入ってみると、ゆっくりれみりゃがお迎えをする。
「ごんでぢわ! おぎゃぐざまはなんべーざまでづが!?」
鼻にかかる声で人数を聞かれたので俺は一人だと答える。
すると、ゆっくりれみりゃが少しほっとしたような顔をした。
「あ、いらっしゃいませ! こちらへどうぞ!」
後から店員がやってきて、俺を席へ案内する。
メニューを渡されて、俺は目を通してみた。
ゆっくりれみりゃの腕のハンバーグ。
子れみりゃの肉まん。
奇形子れみりゃの踊り食い。
ゆっくりれみりゃの足の丸焼き。
等と書かれていた。
俺はとりあえずハンバーグと肉まんを頼んでみる事にした。
数分経ってから、店員とれみりゃが俺の前にやってくる。
しかし、料理はなかった。
「いまからお客様の前でれみりゃの調理をします、ごゆっくりとお楽しみください。ほら、やれ」
店員が言うと、泣きべそをかいているれみりゃが自分の腕を台の上に置いた。
そして、あろうことが自分の腕を引きちぎったではないか。
「う゛ぐぎぎぎぎぎぎぎ!! い゛だい゛ー! ざぐやー! ざぐぐぇっ!?」
泣き叫ぼうとしたところ、店員に殴られるれみりゃ。
さらに指示されると、自分のもう片方の腕で腕を叩き潰した。
いい感じに余計な肉汁がこぼれる。
店員は満足そうな顔をしてそれを焼いた。
「はい、お待ちどうさまです」
「どうも」
俺はそれをいただく。
餃子の中身を食っているような味がした。
たしかにハンバーグといえばハンバーグだが。
次に用意されたのは踊ってやってきたれみりゃだった。
その上にはぱたぱたと子れみりゃがいる。
「う~☆ れみりゃのこどぼがわいいでそ~?」
俺がああ、と答えると腰に手を当てて尻を振る。
ダンスのつもりなのだろうか。
はたから見れば挑発してるようにしか見えない。
「いまですお客様、尻をはがしてください」
店員が言うので、俺はとっさにれみりゃのスカートを引っ張り、尻を丸出しにする。
別に子供と変わりないような尻だった。
かといって欲情したりしないが。
「う゛~なにするどぉー! れみりゃのぷりでーなおしりっがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
行ってる途中で悲鳴を上げる。
なにせ店員がナイフで尻の皮を切っているからだ。
一定の大きさに切り終えると、今度は親の前で子を叩き潰す。
「う゛ぎゅ!?」
「ぶぎゃっ」
間抜けな悲鳴がしたあと、台の上に肉の塊があった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! れ゛み゛り゛ゃのあがぢゃん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!」
それを無視して切り取った尻の皮に先程の子れみりゃの残骸をつめ、蒸篭に入れた。
しばらくたって、ほかほかと湯気が立ち上る蒸篭を開けるとなんと肉まんが完成しているではないか。
とても不思議だ。
そして何より吃驚したのがこれだ。
「ぅー ぅー」
小さな声だが、小刻みに震えながら声を出す肉まん。
かろうじて生きていた子れみりゃが再生し始めていたので、こんな風になるらしい。
よくかんで食べれば腹の中で再生することはないらしい。
俺はそれを美味しくいただき、勘定を払って店を出た。
また夜。
返ってくると瀕死のまりさがいた。
やせ細っていて、今にも死にそうである。
一日半食べなければ餓死するのか。
「おに、さん……ごは、ん、ちょうだ、いね……」
弱弱しい声を出すが、俺は無視する。
「このまま、じゃ、まりさたち……しんじゃう、よ……?」
「だから?」
俺は買ってきた物で料理を作る。
匂いに釣られて子供達もやってきた。
「それ、ちょ……だい」
「……」
俺は無視して飯を食う。
まりさたちは血眼になってそれを見ていた。
「お前達は自分で狩りができるんだろ? なら必要ないじゃないか、あと食料庫から食べればいいだろう」
鍵を閉めたのは俺だなんて眠っていたこいつらには分からない。
ただ、部屋から出られず、ただ衰弱していった。
「おかーさん……おなか、すいたよー……」
その言葉にまりさも限界が来たらしい。
歯を食いしばり、俺に飛び掛ってきた。
「えざよごぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
俺は銃を取り出し、飛び掛ってくるまりさの口に突っ込んだ。
「別にいいぞ、黒胡椒の飴を食わせてやってもいい」
黒胡椒の飴、つまり弾丸の事だ。
まぁ胡椒は発火に使うものだが。
「ゆぎぎぎ! よごぜ! よごぜぇ!」
喚くまりさを無視して、俺は飯を食い終える。
そして毛布を服に仕込んで寝た。
最初は、喚きたてるゆっくりがうるさかったが、段々と静かになる。
朝。
起きると、一家は死んでいた。
餓死と凍死だろう。
皆、死への恐怖に目を見開いている。
俺は、一匹を釘で指して壁に張り、ゆっくりが来ないようにする。
さすがに何度も来られては、こっちの身ももたない。
そして残った方は、今日の昼飯となった。
別に殺そうと思えば殺せる。
だが、こいつらのために体力を消耗したり、貴重な弾丸を無駄にしたくはなかった。
ゆっくりなど、所詮閉じ込めてしまえばいずれ死ぬ。
だから、余計な手は加えない。
俺はそう考えている。
居座ったゆっくりなど無視して生活すれば勝手に死ぬのだ。
俺は鹿を狙い打って、今日の晩御飯を手に入れた。
あとがき
皇国の守護者のパロディでもやろうかと思ったけど辞めた。
サーベルタイガーにでも食わせるかな?
新城ォォッ!
最終更新:2008年09月14日 05:27