ゆっくりいじめ系1907 品評会

 *警告*

  • 何も悪いことをしていないゆっくりがゆっくりできなくなります。
  • まりさの口調がおかしいですが、人工飼育ゆっくりなのでご容赦下さい。
  • 食べ物を粗末にしているように見えますが、あとでスタッフがゆっくりいただきました。




「ゆっくり〜、ゆっくり〜」
 うららかな昼下がり。つづらを背負った男をもっちりしたなまものが呼び止めた。幻想郷のどこにでもいる紅白まんじゅうのゆっくりれいむである。
「おじさんはゆっくりできるひと?」
男は頷いて腰の包みから小さなまんじゅうを取り出すと、二つに割って片方を放ってやった。れいむはゆっくり種ならではの柔らかい身体をいっぱいに使ってお口で空中キャッチ。一口に頬張る。噛みしめた途端に口いっぱいに広がる、今まで食べたこともない、しあわせーな味に、れいむは涙まで浮かべて歓喜の声をあげた。
「む〜しゃ、む〜しゃ、しあわせー!」
手の中の残り半分、黒い三角帽子は生八ツ橋。しっとりした上品な甘みにこれまでの疲れも吹き飛ぶというもの。男はつづらを背負い直すと、もっと欲しそうな顔をしているれいむに微笑んだ。
「今年で一番ゆっくりしているゆっくりを決める大会があるんだが、一緒に行くか?」
「れいむはもりでいちばんゆっくりしているよ! れいむがいけばゆうしょうだよ!」
つづらを背負った男の脇を、ぽよんぽよんとゆっくりが跳ねながらついていく。
「さっきのあまあま、もうひとつちょうだいね!」



 一人と一匹の奇妙な道行きは小半時ほど続き、やがて里の外れの特設会場に辿り着いた。
受付の娘が男の差し出した書類に判を押し、かわりに参加証を渡す。
「はい、腋厄食品、鬼意さんですね。今年もご参加ありがとうございます」
「あ、こいつも参加させてやりたいんですが構いませんか?」
男は参加証を首からかけると、足下でゆっくりしていたれいむを抱えてカウンターに載せ
た。ヒャア、と口だけ動かしてみせる男に、ああ、と合点した様子で受付嬢も頷いた。
「可愛いれいむちゃんですね。お名前は?」
「ゆっ、れいむはれいむだよ!」
ゆっへん、とふんぞり返るれいむに、受付の娘は袖口で口を隠してころころ笑う。
「はい、どうぞ。この参加証は大会が終わるまでなくさないでね?」
「とってもゆっくりしたかざりさん! だいじにするよ!」
受付嬢はふてぶてしいクラシックゆっくりのれいむとまりさが描かれた札の、縁のトゲトゲも鮮やかなフキダシに筆を走らせ、絵を夢中で眺めていたれいむのリボンに結わえた。後ろにつけられて本人には見えないが、書かれた《野生でいぶ》の文字に、書いた娘もれいむを連れてきた男も、笑いをかみ殺すのに一苦労であった。
「ゆっ、おじさん、ゆっくりしたふくろさんだね!」
「中身はもっとゆっくりしているぞ。なんせ、一年かけて育ててきたんだからなあ」
 広間の長机につくと、男は後生大事に背負ってきたつづらを下ろすと、中から風呂敷包みを取り出した。風呂敷に興味津々で、隣で跳ねているれいむににやりとすると、男は結び目をほどいて広げた。その頬の色つやといったら。さらさらの髪の綺麗なこと。柔らかそうで、汚れ一つない黒いとんがり帽子のゆっくりしていること。森で育ってきたれいむは、眼前でゆぅゆぅと寝息を立てている、信じられないほどゆっくりした美ゆっくりに白目を剥いて固まった。プロの手で育てられたゆっくりと野生の違いであり、野生のゆっくりが人間にゆっくりさを求めて人里に引きつけられるのも当然のことである。まりさは、包みから開放されたことにやっと気付くと、目をぱちぱちさせてゆっくりモーニングの声をあげた。男も鷹揚に頷いてゆっくりおはようの挨拶を返す。
「おじさん、おはようなんだぜ! きょうもゆっくりしているのぜ?」
「おはようまりさ。今日は大会だから、俺の分も存分にゆっくりしていってくれよ」
「ゆっゆっゆ、まりさはおじさんのためにゆっくりするのぜ!」
「すっごくゆっくりしたまりさだね!」
「おじさん、このれいむはだれぜ?」
「れいむだよ! ゆっくりしていってね!」
 気持ち悪く頬を染めてゆにゆにともじもじしているれいむに、きょとん、とした顔のまりさ。プロによって育成されたまりさにとって、刷り込みや躾で何度となく見てきた野生ゆっくりは、同じゆっくりであってもゆっくりできないもの。直に見る野生れいむに、まりさはもにょりと男を見上げた。構わず男はすっと会場の中央を示す。
「ライバルがいたほうがいいだろう?」
男が指さした先、会場中央には、畳一畳ほどのパネル。劇画タッチで描かれたゆっくりれいむと、燦然と輝く「ゆっくりできるけん いちねんぶん!」の文字。
「あれこそ一番ゆっくりしているゆっくりに与えられるゆ〜勝の賞品」
「ゆゆぅ! れいむがいちばんゆっくりしているよ!」
「あのすてきなおさつはまりさがいただいていくのぜ!」
「あら、何を騒いでいるかと思えば、万年四位の腋厄食品さんじゃありませんこと?」
「わかるよー、こそどろとでいぶはゆ〜しょうできないんだねー」
手提げ籠にちぇんを入れて通りがかった女の声に、男は顔を歪めて振り返った。扇で口元を隠し、女は目を細めて笑う。
「今年のまりさはひと味違う、そうでしょう? 去年も伺いましたもの」
「わかるよー、つぶあんなんだねー」
せいぜいお足掻きなさいな、と言い残し、ぱちりと扇を閉じて立ち去る女の、甘やかな香
りだけが後に残されていた。
「ぷんぷん! とってもしつれいなおばさんだね!」
後ろ姿を膨れて威嚇しているれいむに、男は苦笑する。
「何が何でも、あのちぇんに勝たないと優勝できないからな」



「それでは幻想ゆンクール、審査開始です」
 かくして、ゆっくりコンクールは幕を開けた。第一審査は皮の弾力性。生地の食感なくして、美味しいまんじゅうなどあろうはずがない。前年度優勝のデータをもとに作り上げられた、驚異の審査用マシン『スーパーのびーるくん?号ダッシュターボ』がその魁偉な姿を現す。軽快な駆動音とともにアームが伸び、次々にゆっくりの頬をつまんでは捻り上げる。会場には和やかな談笑と、頬を引きちぎられて脱落していくゆっくりの絶叫が響く。
「ゆっくりひっぱあえうよ!」
「おお、のびるのびる」
もっちりしっとり生地であれば、この通りほっぺが伸びるだけで、ちぎれたりはしない。
「ゆ゙ぎゃ゙あ゙あ゙あ゙っ」
だが、質の悪いゆっくりの皮は簡単に破れてしまい、このありすなどは、頬が三分の一ほどちぎれて、流れ出た中身のカスタードに目玉が浮いて恨みがましい視線を送っている。
「ゆ゙、ゆ゙っくりできないよ!」
引っ張られるうちに皮が破れ、具が溢れて痙攣している隣の机のゆっくりゃを目の当たりにし、ガタガタ震えるれいむを男はがっちり掴まえる。この怯える姿を見るためだけに、わざわざ野生のゆっくりを連れてきたのである。逃がす筈などあるものだろうか。次第に近づいてくる機械の腕に、れいむの恐怖は有頂天。
「ほら、まりさは平気だろう?」
「ゆふぅ、もっちりー!」
アームから開放され、ぶるん、と震えるまりさ。雪辱を期して、持てる知識と技術の全てを注ぎ込み、丹誠込めた自慢のゆっくりまりさが一次審査などで脱落するはずもなく、男は顔をほころばせる。しっかり頭を掴まれて身動きできないれいむの頬を、機械が無慈悲に抓み、ぎりぎりとひねりながら引き延ばしていく。生まれて一度も体験したことのない痛みに、れいむは滂沱の涙を流して悲鳴をあげる。その愉快な悲鳴に、会場から惜しみない拍手が送られた。
「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! い゙だい゙い゙だい゙ぃ゙!」
男の見立て通り、れいむの生地は野生にしては上質のようで、幸か不幸かちぎれることはなかった。赤く腫れ上がって涙をぼろぼろこぼすれいむを、男は優しく撫でてやる。
「おじさん、ひどいよ! れいむとってもいたかったよ!」
「ははは、でもまりさはゆっくりできているぞ?」
「ちょっとのびちゃったのぜ」
「ゆぐぐ……」
少し伸びてはいるものの、次の審査までには治りそうなほっぺのまりさを睨みながら、れいむはひりひり痛む頬に苛まれるしかなかった。参加全ゆっくりをつねり終えて職務を果たした『スーパーのびーるくん⑨号ダッシュターボは会場の袖に片づけられ、次の審査用具が運び込まれた。第二審査は皮の強度。前年度優勝データをもとに改良された、特殊な素材の板で、最適な力と角度で対象を殴打する素晴らしいメカ『スパン☆KING'09』である。見るからにゆっくりできそうにないその姿に怯え、泣き始めるゆっくりもいたが、優勝賞品のゆっくりできるけん いちねんぶん! はその恐怖を乗り越えるに値する餌だった。ゆんゆん泣いていた何匹かのゆっくりが泣きやむ頃に、大会準備委員がグッ、と親指を立てた。第二審査の開始である。次々に小気味よい音が上がり、会場にゆっくりたちの絶叫が響く。保持具で固定されたゆっくりに、勢いよく板が叩きつけられていく。これは柔らかいだけで伸張試験を通った質の悪い生地や、柔らかすぎて食感の悪い具材を使ったゆっくりをふるい落とすための審査である。ばぢん! と鈍い音をたてて、向こうでゆめーりんが爆ぜた。肩を落とす職人をよそに、衝撃で射出される目玉に、やんややんやの大盛り上がり。だが食材に貴賤はない。その隣のゆっちゅりーは苦心の程があったようで、目こそ回しているものの、見事に第二審査を通っていた。あの柔らかい生地をよく作り上
げたものだと、男はパティシエールの手腕に舌を巻いた。
「ゆべし!」
したたかに打ち据えられるまりさをよそに、机から飛び降りて逃げようとするれいむを、男は準備委員に手渡した。暴れるれいむを粛々と機械の保持皿に置き、手早くこめかみと頭頂部を万力の様にがっちり固定。
「や゙め゙でね゙! でい゙ぶを゙ぶたな゙い゙でね゙! いたさん、ゆっぐりじでゆ゙ぶ!」
哀願虚しく、その顔に正面から板がめりこんだ。板が戻ると、れいむの顔には見事な赤い長方形が刻まれていた。
「ここはゆっくりできないよ! もうおうちかえる!」
「ゆ、ゆふぅ、れいむがかえれば、ゆっくりできるけんはまりさのものなんだぜ」
少し平べったくなっているが、生意気そうににやりとするまりさ。ゆっくりできるけん!その魅惑の単語には、顔面が凹んだれいむも黙らざるをえない。
「れいむがゆっくりできてないだけじゃないかな? 見てごらん。あの人はあんなにゆっ
くりしてるだろ?」
「おふぅ! んほぉおおおお!」
全ゆっくりの試験を終えた『スパン☆KING'09』に尻を突きだしてヘブン状態の審査委員長もまた、粛々と片づけられた。その間に、審査に通った参加者の机に、白い皿が並べられていく。
「ゆっへん! ゆっくりできるけん いちねんぶん! はまりさがいただくのぜ!」
「ゆぐぐ……もうゆっくりできないこと、ない?」
「よしよし、がんばったなまりさ。れいむ、次で最後だぞ」
「ゆ〜っ、ゆっくりがんばるよ!」
ゆっくりまりさは皿にぽいんと飛び乗り、誇らしげに振り向く。男は満面の笑みでまりさを撫でてやると、れいむをつかまえて皿に載せた。
「最終審査は試食です」




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最終更新:2009年01月08日 23:36
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