冬も間近の寒い都会の夜、身を縮こまらせて家路を急ぐ人々の行きかう大通りの裏の薄汚れた小路。
そこにわりと最近子どもを作ったことが原因で捨てられてしまったゆっくりれいむの一家の姿があった。
運よくスーパーの裏で見つけた大きなダンボールを石で固定して、その中で身を寄せ合っている。
「おきゃーしゃん、しゃむいよ~。しゅ~りしゅ~りちてね!」
「まりしゃもしゅ~りしゅ~りちたいよ!」
「ゆゆっ!ゆっくりすりすりしてあげるね!」
「「「れーみゅもしゅ~りしゅ~りちてね!」」」
「「まりしゃも!まりしゃもしゅ~りしゅ~りちたい!」」
生まれて間もない赤ちゃんが7匹。4匹がれいむ種で、3匹がまりさ種だった。
言うまでも無く彼女らのもう一方の母親はゆっくりまりさであるが、彼女の姿はここには無い。
理由は当時飼いゆっくりだったれいむをすっきりさせたせいでれいむの飼い主を買い、潰されたから。
合意の上でのすっきりだったし、飼い主は赤ちゃんを見ればきっとゆっくりしてくれるだろう、れいむはそう考えていた。
更に子ども達の親であるまりさも飼ってくれるだろうから、ずっとまりさと一緒にいられる。
れいむはゆっくり特有の楽観的な思考で明るい未来を夢想していた。
が、飼い主はまりさを紹介するやいなや彼女を踏み潰し、れいむを乱暴に車に乗せた。
何を言っても返事一つしてもらえず、叫び疲れて眠りにつき、目を覚ましたときには見知らぬ場所。
右を見ても左を見ても飼い主の姿は無く、最初は悪い夢だと思い込もうとした。
しかし、頭の上で揺れるまりさの忘れ形見がそれを許してくれなかった。
「「「「「「「しゅ~りしゅ~り♪」」」」」」」
「す~りす~り♪」
しばらくして捨てられたことを理解したときはとても悲しかった。
大好きなまりさにゆっくり出来ないことをした飼い主が憎たらしかった。
可愛いれいむをゆっくりさせてくれない飼い主が許せなかった。
とっても不幸な境遇にある自分が可哀想で可哀想で涙が止まらなかった。
「おきゃーしゃん!おうちゃうちゃってよ!」
「ゆゆっ!おうたさんがききたいの?」
「しょーだよ!こーえんであしょんだまりしゃがとってもゆっくちできりゅっていってたよ!」
「「「れーみゅゆっくちちたいよー」」
「「まりしゃもおうちゃききちゃいよ!」」
けれど、とってもゆっくりした自分とまりさそっくりの可愛い赤ちゃんがいたから何とか頑張ろうと思えた。
この子達のおかげで地獄のような終わりの無い、長い長い辛い日々を生き抜くことが出来た。
実際には捨てられて1週間ほどしか経っていないのだが、元飼いゆっくりでこらえ性の無い彼女にしては頑張っていた。
だから、可愛いれいむの赤ちゃんに自慢の素敵なお歌を聞かせてあげてゆっくりさせてあげようと思った。
通りを行く人間さん達はお馬鹿で、れいむ達にご飯をくれないせいでお腹が空いていた。
ゴミ袋を漁ったりして何とか食いつないでいるけれど、赤ちゃん達にはまだ本当に美味しいご飯を上げたことがない。
意地悪な人間さん達のせいでゆっくり出来ない可哀想な可愛いれいむの赤ちゃんをゆっくりさせてあげたい。
その一心でれいむはかつて飼い主の下で覚えた歌を口ずさんだ。
「ゆっくりはあるいてこない~ だ~から、あきらめねるんだね~♪」
「いちにちいっこ!みっかでさんこ! けっきょくみ~んなつぶされる~♪」
「おきゃーしゃん!しょのおうちゃはゆっくちできにゃいよ~!」
「ゆゆっ!ごめんね、あかちゃん!それじゃあ、ほかのおうたをうたうね!」
「あかいりぼん~つ~け~た~かわいいれいむ~♪」
「おにいさんにつ~ぶされてい~ちゃ~った~♪」
「ゆぎぃ!?しょれもゆっくちできにゃいよ~!」
「もっちょゆっくちちたおうちゃをうたっちぇね!」
「ゆぐっ!・・・それじゃあ、これはどう!」
「れいぷされ~て~ いかされて~ うまさ~れて~♪」
「きょうもなぐられけられふまれたべられ~ つぶされる~♪」
「ゆえーん!どほぢでゆっぐちできにゃいのおおおおお!?」
「おきゃーしゃんのばきゃあああああ!?」
「ゆ・・・!?ゆぅ・・・じゃあ、とっておきだよ!」
「あ~る~はれた~ひ~る~さがり~ かこうじょ~に~つづ~くみち~♪」
「すぃーが~ごと~ごと~ こまりさ~のせてゆく~♪」
「かわいい~こまりさ~ うられてゆ~く~よ~」
「ゆっくりでき~ず~に~ な~いてい~る~よ~♪」
「ゆくゆくゆ~く~ゆ~く~ こまりさの~せ~て~♪」
「ゆくゆくゆ~く~ゆ~く~ すぃーはゆ~れ~るぅ~♪」
「ゆっへん!おちびちゃんたち、ゆっくりできたでしょ!」
「「「「「「「・・・・・・・・・もう、ゆっきゅりはいいよ・・・」」」」」」」
こうして、この街に7匹のさとれいむが誕生したそうな。
最終更新:2008年12月07日 14:05