ゆっくりいじめ系1442 ちぇんと猫

書きたかった事(設定)
  • 幻想郷の猫は賢いよ
  • 阿求はゆっくりちぇんには甘いよ
  • ゆっくりちぇんは猫と会話できるよ(ニャーリンガルだよ)
  • ゆっくりは単純な生物(なまもの)だから対外的要因であっさり形質変化するよ
  • ZUN帽ならぬゆっくり帽は植物型増殖ではヘタが変化したものだよ





獣は夜の森を行く。
しなやかな体をバネにして木々の間を颯爽と擦り抜けていく。
時々足を止めては耳を立て、満月の瞳で様子を伺う。
誰かの許しを請う叫びを聞いてから一刻は経っただろうか。
同種の生物の危機を感じて主人の家から飛び出たものの、
既に助けの声が聞こえなくなったことに焦りを感じていた。

それからまもなく開けた場所に出た。正しくはこじ開けられた場所だろうか。
月の光が差す夜にしては重い影に包まれているこの場所こそ目的地であった。
その獣にはあまり理解は出来なかったが、この広場はまさに地獄と呼べた。
絶望的ではあったが質量のある影を踏みしめながら声の主を呼ぶ。

すると広場を吹き抜ける風に弱々しい呼吸音がのって流れてきた。
獣はその方を向き、蠢くものを確認すると飛んで近寄った。
クヌギの根元に転がっていたのは黒ずんだ塊だ。
獣は声の元に鼻を近づけて相手を識別してみた。
自分とは随分違う匂いではあったが、尻尾をみるにやはり自分の仲間のようだったと思った。

「…そ、そこに、だれ…かいるの?……」
ようやく出された言葉で既に限界であることは容易に感じ取れた。
「ち、…ちぇんのからだのしたにちぇんのこどもたちがいるよー……」
そういうと黒い塊は黒い物を吹き出しながら動こうとするが動けていない。
獣はその様子を判断して前脚で塊をどかしてみて驚く事になる。

子供!これが子供なのか。なんと弱い。なんと儚い。鼠の子供より小さいじゃないか。
頭に植物のヘタを付けて、かろうじて目と口だけが見て取れた。まるで笑っている穏やかな表情だ。
「ちぇんのこどもを…ゆっくりさせてー……ゆっくりわかってほしいよー」
それ以上の言葉は必要なかった。
理解の印に親の頬を舐め、潰さないように子供らを口に入れて主人の家に戻った。
獣は今夜味わったざらざらとした塩辛い涙をずっと覚えていようと誓った。



翌朝、幻想郷のある集落ではいつもの一日が始まった。
昨晩多くの者は森の中で惨劇があった事を知らない。
知ったところでそれを酷い事だと思う人も多くはなかろうが。
そのうちの一人が住む、集落でも一際大きい家にも新しい朝がきた。
この家の現当主、稗田阿求は側近の女中に起こされて眠い目をこすった。

寝間着のまま縁側に出て庭の様子を伺っているとどこからとも無く飼い猫が集まってきた。
あちこちから飛んでくる朝飯を催促する鳴き声に笑顔で返しながら、
各々の顔をじっくり覗いていく。これが彼女の朝の日課だった。
ふと一匹の猫が顔を出していない事に阿求は気が付いた。
「またあの子は迷子を拾ってきたのかしらね」と彼女は顔を綻ばせた。
飼い猫の一匹に親のいなくなった仔猫を育てる変わった雌猫がいるのだ。
給仕係の女中に自分の朝御飯も少し遅らせるように頼み、敷地内の蔵に足を向けた。

少し埃っぽい蔵の中に藁を敷き詰めた木箱を阿求は設置してあった。
床下ならまだしも屋根裏で出産してしまう飼い猫がいたため、
慌てて静かに産める場所を用意したのだ。
結果件の雌猫がよく利用するようになったというわけだ。
「サク、ここにいるのかしら?」
そう呼ばれた黒猫は主人にニャァと返事した。
今回の仔猫はどんな子かしらと覗き込んだ阿求は目を丸くする。

横たわるサクと呼ばれた猫の乳を吸っていたのは仔猫ではなく大豆の様なものだった。
虫、かと一瞬思ったがこれは、
「ゆっくりじゃないですか」そう呟くと阿求はゆっくり狂モードに入っていた。
こうなればもう誰にも止められない。無論本人でさえだ。
阿求は一気に拳を振り落としていた。
あの潰れる感覚を既に拳に覚えて、ドーパミン全開でヒャッハー。

その凶行を寸前で止めたのはサクだった。
引っ掻く事も噛みつくことも間に合わぬと判断したサクは、
赤ゆっくりらを自分の腹にくるむようにかばった。
危うく飼い猫を殴ってしまうところだった阿求は想定外のことで固まってしまう。
その猫は我が子に手を掛けようとした主人に険しい表情を向け激しく威嚇した。
さすがの猫狂い、こちらは好物という意味だが、もこれには相当まいったようだ。

凍り付いたその場に呑気な声が割り込んできた。
「わかる、わかるよー。ごしゅじんさまはここにいるんだねー」
何匹もの猫の鳴き声と共に飼いちぇんがやってきたようだ。
ゆっくりが嫌いな阿求も猫が好きな気持ちが勝り、
このゆっくりちぇんは特別に稗田家のペットになっていた。
またここに住む猫達の言葉も理解できるようだからそれなりの待遇であった。

「あら、ちぇんじゃない。こんな所までどうしたの?」
「おねえさんがさがしてたよー。しんぱいしてるのわかるよー」
なるほど、女中達は自分で探さずにちぇんにまかせて、ちぇんは後ろの猫達に
私の居場所を知って駆けつけたわけか。
「丁度良かった。ちぇん、この子達はどのゆっくりか見て頂戴」
ん?と首を体全体で傾げるちぇんを抱いて木箱の赤ゆっくりを見せてみた。

腕の中でちぇんは悩んでるようだ。何せ小さすぎる赤ゆっくりは目と口しか見て取れず区別が付かないのだ。
「わからないけどわかるよー。みんなあかちぇんだねー。ゆっくりしていってねー」
見た目ではわからないけどオーラというか雰囲気でちぇん種だとわかるということか。
阿求に悩みの種は尽きないがとりあえず様子を見てみることにして、
今は皆の空腹を満たすために母屋に戻る事にした。



サクが赤ゆっくりを拾ってきてから一月が経過した。季節は夏真っ盛りで庭の木から蝉の合唱が毎日聞こえてくる。
順調に赤ゆっくり達も成長して今やソフトボールサイズになっていた。
親代わりのサクや自分たちより年上のちぇんと一緒に遊べるようになってから
持ち前の活発さを披露している。
しかしこの子ゆっくり達はかなり普通のゆっくりとは違っていた。
サクにはどうでもいいことではあるが、ゆっくりちぇんは少し憂慮しているようだった。
そのちぇんの心を読んだように都合の良い客が訪れた。
この日は稗田家の珍しいゆっくりの噂をどこからか聞きつけて永遠亭の調査チームが来ていた。

「おねえさんはゆっくりできるひとだねー。わかるよー」
「ゆっくちしてるねー」「こっちにきちぇにゃー」「かけっこするにゃー」
「師匠見てくださいよこの子達!今までこんな子見た事無いですよ」
とはしゃぐウサ耳娘をよそに、月の頭脳と生きる幻想郷は複雑な顔をしていた。
「まさか貴方ともあろう人がゆっくりブリーダーになるとは思ってもみませんでした」
と永琳は肩をすくめつつ手元の資料をめくる。
「しかもちぇん種の変種を生み出すとは……。これが経験の差というものかしら」
「皮肉は結構ですから、早速八意様の意見を聞かせてくださいな」

永琳は頭を抱えながらどこから話せばいいものかと呟く。
「まず、貴方は猫の出産を見た事はありますね。かの子供達はほとんど親の柄と
 異なった物になることは承知ですわね。これは遺伝と呼ばれるものの仕業なん
 ですが、あのゆっくり達に現れたのはまさにそれでしょう。」
その辺りは阿求でも察しが付いていた。しかしサクの遺伝の影響を受けた事はどうも腑に落ちなかった。
「確かにあのゆっくりから通じて聞いたサクちゃんの話では、あの子達はすでに生
 まれていた。普通の動物なら生まれた後から遺伝することはありえないでしょう。
 だがゆっくりにはその常識が通用しなかった。ここからは私の推論ですが聞いて
 もらいましょうか」

ゆっくりの植物型妊娠では産み落とされるまでの間に茎を通して親の餡が子供に移動する。
その餡の影響を受けて未熟なゆっくりの実は次第に親に似た形に変化していくのだ。
しかしこの子ゆっくり達は産み落とされるのが何らかの原因で早すぎて、
ちぇん種になることだけしかその身に刻まれなかった。
普通ならこの状態では栄養が足りずすぐに枯れてしまう。
だがゆっくりの餡の代わりにサクの乳が与えられ、その命を無事繋げる事ができた。

「つまり授乳の行程でサクちゃんの遺伝要素を引き継いだ、と考えました」
「ということはあの子ゆっくり達はゆっくりちぇんとサクの子供みたいなものですか?」
「そうね。さらにちぇん種だったのがより一層サクちゃんの影響を強めてる結果になっているようね」
二人が見つめる方向には、すっかり調査を忘れて遊んでいるうどんげと黒猫のサク、普通のゆっくりちぇん、

そして髪の毛から尻尾の先まで真っ黒な子ちぇん、猫目の子ちぇん、耳が垂れた子ちぇんがいた。

「他にも普通のゆっくりと違う点が……」永琳の顔を覗き込むように阿求が言うと
「全くここまでゆっくりがでたらめな生き物とは思ってもみなかったわ」
と阿求の言葉を遮るように永琳は匙を投げたような台詞を吐く。
「えぇ、分かっています。まずはあの身体能力ですわね。通常の子ちぇんに比べて
 遙かに高いポテンシャルを持ってるでしょう。あとはゆっくりのどの種も持ち合
 わせてない語尾の"にゃー"。これら二点はサクちゃんの遺伝ということでいいで
 しょう」あくまで推論だがほぼ結論とみていいだろうと永琳。
「なんと適当な……」
「あとはあのゆっくり達は帽子を被っていない。貴方が故意に外したわけでも何者
 かに奪われたわけでもないのよね?」その問いに阿求はうなずく。
「となると考えられるのは植物型妊娠の時に実についている"へた"がどうやらポイ
 ントになりそうね。つまり、あのへたは親の餡の影響を受けて彼らの個体識別に
 用いられるパーツに次第に変化していくのでしょう。それが今回の場合……」
これ以上の情報は阿求には必要なかった。後は永遠亭のメンバーの仕事だ。
ゆっくりの遺伝継承や成長過程の調査の仕事まで関わる必要は彼女にはない。
わかりました、と永琳の話を切り上げゆっくり達の元へ向かう阿求。
「とりあえずこの子達はこれまで通り世話をしていきますので気になる事がありま
 したらいつでもいらっしてください」
永琳は頷くと未練がましい弟子の耳を掴み引きずりながら稗田家の庭を後にした。

門のところまで来たとき見送りにきた阿求に永琳はそうそうと言って
「最近この集落の近くにゆっくりの群れが近づいてるそうよ。」と続けた。
「それは大変ですね。気に留めておきましょう。それではお二人ともごきげんよう」
このとき浮かべた永琳と阿求の黒い笑顔にうどんげはガクブルするだけだった。


続きかこうかと思ったけど書きたかった事書いちゃったからいいや(*´∀`)


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最終更新:2022年01月31日 03:36
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