「ついに、ついに完成したぞ!」
薄暗い部屋の中、にとりが声を上げる。
「河童の技術力に夢美とちゆりの科学力。
永琳の薬学に理香子の魔力。
更には里香の設計も加わったこの逸品!!!」
カッ、とスポットライトがテーブルに当てられる。
「その名も、メガゆっくり!!!」
そこには何の変哲も無いゆっくりまりさの姿があった。
「…で、これのどこがめがとかぎがとか大層な名前のゆっくりなのよ」
その光景を見てあきれ返るのはここを嗅ぎつけてきた博麗の巫女。
「それはもう大変だったのよ、いくつもの異なったものを統合するなんて本来無理だもの」
「動力の確保だって問題だったし」
「そこは素敵な力が色々な奇跡を起こすほどに素敵にまとまったのよ」
「どんな方向からでも解明できないゆっくりの餡子がもたらした結果なのかもしれないぜ」
「外側の感触はゆっくりのままに、内部は頑丈さと機能満載で作成したのです」
「更には博麗大結界をネットワークにした位置特定機能も防水機能も完備してるんだよ」
「…危ない連中が集まったからどんな異変かと思ったら単なる暴走だったのね、やってられないわ」
さっさとその場を後にした赤白を尻目に、6人の識者(?)達は早速テストプレイを始めるのだった・・・
ここは人里から少し離れた平地。
辺りには草木はあまり生えていないのだが、これは夢美が事前にる~ことに草むしりをさせていたためである。
土壌は豊かであり、何かを育てるにはもってこいの場所だ。
ここに花を愛するゆっくり達を集め、その中にメガゆっくりも加える。
こうしてしまうと位置を特定しない限りはただのゆっくりにしかみえない。
「さて、皆に集まってもらったのは、ここでみんなにお花を育てて欲しいのよ」
集めたゆっくり達に説明を始める6人。
かくしてゆっくりゆうかを筆頭に花を愛でるゆっくり達とめがゆっくりの花畑作りが始まった。
ゆっくりめーりん、ゆっくりちるの、ゆっくりれいむ・・・
群となるには少ないが家族となるには多いその数で、種を蒔き、水をやり、雑草を取り除く。
時々近くに通りがかるゆっくりは何をしているか聞くが、説明すると
「ゆゆ?おはなさんはかってにはえてくるんだよ?そんなこともしらないの?ばかなの?」
とゲラゲラ笑ってろくに取り合わない。
それでも花を愛でるゆっくり達は一生懸命水をやったり悪い虫を食べたり雑草を抜いたりして花を育てた。
集団に仲間意識がしっかりと根付いたころ、ついに花が咲きそうことに喜んだ矢先の事だった。
次の朝、花を愛でるゆっくり達の花壇は荒らされていた。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」
とてもいい笑顔を浮かべて花を食べるのは前まで花を愛でるゆっくり達をゲラゲラ笑っていたゆっくり達である。
「おはなさんがこんなにたくさんはえててよかったね!」
「とってもおいしかったね!またつぎのときにはいっぱいはえてるね!」
折角一生懸命育てて、あと少しでゆっくりした花を咲かせられると信じていたゆっくり達は愕然とした。
しっかり説明したのに取り合わず、いざあと少しという所で全ての頑張りをかっさらっていったゆっくり達。
去っていったそのものたちに怒りを覚えたのは言うまでも無いだろう。
「あらら、これは酷いわね・・・」
そこに現れたのは皆をここに連れてきた6人―幻想郷の識者(?)達であった。
「後一歩だったのに・・・残念だったわね」
「素敵なお花が見られなくて残念だわ」
花を愛でるゆっくり達は自分達の悲しみを分かってくれるこの6人に涙した。
「また、次は荒らされないように育てればいいのよ」
理香子がそう言い、その場のゆっくり達はそうだね、とお互いに頷きあった。
・・・メガゆっくりであるまりさを除いて。
「まりさはみんなのがんばりをむだにするゆっくりがゆるせないよ、おはなをたべるゆっくりをこらしめたいよ」
勿論それはこの場に残っている誰もが思っていること。
しかし花壇や畑などを襲うゆっくりは数が多く、今回ここで花を蹂躙した数のゆっくりでさえこの場にいるゆっくりでは太刀打ちできないだろう。
それでもメガゆっくりまりさは諦め切れない。
その中には既に優しい心と戦う勇気が灯っていたのである。
「・・・そうだね、まりさ。悪いゆっくりを懲らしめたい?貴方なら悪いゆっくりをきっと懲らしめる事が出来るよ」
「ほんと!?」
にとりが優しく声を掛けるとメガまりさは目を輝かせる。
既にやる気満々のようだ。
「みんな、これからまりさは悪いゆっくりを懲らしめるために頑張る事を決めたわ。あなたたちはまりさが戻ってきた時に立派な花が咲いているようにここを守りなさい」
永琳の呼びかけにそれぞれがしっかりと頷いた。
「私達も時々ここに来てお手伝いしてもいいですか?」
「もちろんだよ!おねーさんたちもいっしょにはなをさかせようね!」
里香の申し出に元気を出して答えるゆうか。
「まりさ、かえってきたときにゆっくりしたおはながさいているようにしてるからね」
「うん、まりさはぜったいかえってくるよ。だかられいむ、まっていてね」
一方ではメガゆっくりまりさの旅立ちに別れを惜しむれいむ。
こうして、メガゆっくりは悪いゆっくりを倒すために立ち上がったのだ。
翌日、メガゆっくりの封印していた各種機能を開放させた後に簡単なレクチャーを行う。
「いいか?これからまりさはスーパーファイティンブゆっくり、その名もメガゆっくりとして悪いゆっくりと戦うんだぜ」
「まりさはすーぱーふぁいてぃんぐゆっくりのめがゆっくりなまりさなんだぜ!」
名前は・・・多分夢美が決めたのだろう、棒読み調でちゆりが名前を教える。
「私たちは貴方をここから手助けするわ」
「でもまりさはここからとおくにはなれるぜ、てだすけできるの?」
「貴方が何処にいるか分かるようにしたのです!」
「ゆっ、それならだいじょうぶだぜ!ゆっくりりかいしたぜ!」
記憶管理機能には問題はないようである。
次は武装チェック。
「後、貴方にいくつか力をあげたわ。まずはあの的に向かって口を空けなさい」
「ゆっくりあけるぜ!」
「次は息を思いっきり吐くようなイメージをしてみて」
「ゆっ!」 バスンッ
メガゆっくりが見ていた的に穴が開く。
「これが貴方の力、メガバスターよ」
よく弾幕に使われる動きの早い米弾をメガまりさの意識通りに撃ち出せる機構。
メガゆっくりを作る際、2番目に苦労したものである。
「これで悪いゆっくりを懲らしめられるぜ!」
強い力を得た(元々着けていた機能であるが本人はそう思っている)メガゆっくりは熱い心を胸に抱き出撃していった。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!!!」
早速一匹の野良れいむを見つけたメガまりさ。
「れいむにきくけど、れいむはおはなさんはすき?」
「もちろんすきだよ!!」
「おはなさんはゆっくりできるよね」
「ゆっ、おはなさんはとってもゆっくりできるよ!」
「とてもきれいで、みているとゆっくりできるよね!」
「ゆ、なにいってるの?おはなさんはたべものだよ?ばかなの?」
―なんだ、おはながすきって、たべるほうがすきなんだ。
「れいむはわるいゆっくりだったんだね」
「ゆゆ?れいむはいいゆ―ゆぶっ!?」
メガバスターがれいむを直撃する。
そこには餡子の花が咲いた。
一瞬罪悪感のようなものが沸いたが―
「みんなをまもるためだぜ」
そう呟いて森の奥に進むのだった。
メガゆっくりが入った森のとある群は大騒ぎになった。
花を食べたゆっくりが爆発し、また花は食べ物だと答えたゆっくりもまた同じようになっていたからである。
「とてもつよいまりさがおそってくるよ!!!」
それが分かっただけで群は天地がひっくり返ったような状況に陥り、この群のリーダーである大れいむですら収集がつかなくなってしまった。
そして遂にその強いまりさ―メガゆっくりが、その姿を確認できるまでに迫っていたのである。
「ゆゆゆ、みんなでそのゆっくりにとつげきすればきっとつぶれるよ!!!」
「わ、わかったよ!!!」
「ゆけ、わがけんぞくたちー!!!」
真っ白になった頭でやっとこさ口に出せた命令を受け、群の面々が一塊のように突撃していった。
普通のゆっくりであれば押しつぶされて終わりである。
しかしメガゆっくりは連続してメガバスターを放ち、その塊の前方を怯ませる。
「ゆゆ、とつげきす―ゆぎゅ!?」
「ゆっくりおさないd―ゆぎゃん!?」
あれよあれよと押しつぶされ自滅する塊。
残ったゆっくりも打ち抜かれ、遂には大れいむのみが残った。
「よぐもみんなをごろじだなぁぁぁぁぁ!!!」
「・・・みんなはゆっくりできなかったんだぜ、だからしんだんだぜ」
「ぞんなごどないぃぃぃぃぃ!!!むでのびんなはゆっぐりじでだぁぁぁぁぁ!!!」
「はなをめでるこころもないくせにゆっくりできるとはおろかだぜ」
「おはなさんなんがどおでもいいぃぃぃぃぃ!!!おばえをごろずぅぅぅぅぅ!!!」
真っ直ぐ突進してくる大れいむ。
メガゆっくりはメガバスターを打ち出して当てるが、それでも大れいむの前進は止まらない。
「ずがまえだぁぁぁぁぁ!!!」
「ゆ!?ぐ!?」
がっちりとメガゆっくりを口に加えた大れいむ。
そのまま後ろに2回、ジャンプしてメガゆっくりを地面に叩きつける。
そして大きく跳躍すると―
「ぢねぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ゆがぁ!?」
そのまま地面に叩きつけられ、メガまりさは8方向に光の弾を散らしながら砕けた。
「みんな、ゆっくりできないまりさはたおしたよ・・・てんごくでゆっくりまっててね・・・」
傷だらけになりながらも勝利を噛み締めた大れいむ。
「いまのがれいむのわざだったんだね」
おかしい。
大れいむは自分が聞いた声を疑った。
なぜならそれは、さっきまで戦っていた、しかも自分が殺したはずのメガゆっくりの声だったからだ。
そして振り向いた時、今度は自分の目を疑った。
砕け散ったはずのメガゆっくりの姿があったのだからだ。
「まりさのざんきは108まであるぜ!!!」
そう言うや否や、メガゆっくりは大れいむの一部を食いちぎり、飲み込と。
「げっとだぜ!」
帽子の色が赤になる。
ラーニング、他のゆっくりの特技を自分のものにする力。
これは実現させるのに一番手間が掛かった機能である。
「でいぶのおべべがぁぁぁぁぁぁ!!!!」
さっきまで勝ったと思っていた、いや、間違いなく勝っていたのに。
ありえない。ありえない。
れいむの脳内がぐにゃぁ~となる中、メガゆっくりは口に大れいむを加える。
「おかえしだぜ!」
先ほど大れいむが自身に行ったように、二回叩きつけられ、大きく空中を舞う。
「ひぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
恐怖に顔を引き攣らせる大れいむ。
そして。
「はいぱーぼっ!!!」
「ん゛ん゛ん゛ー!!!」
断末魔の声を上げ、大れいむは完全にその命を絶たれた。
これで分かった事がある。
「ゆっくりできない群とリーダーをたおさないと、みんなのために」
メガゆっくりの目はこれだけの返り餡を浴びてもなお、強く光り輝いていた。
戦いはまだ、始まったばかりだ。
かんぱーい!!!
その頃、あの識者(?)6人は祝杯を挙げていた。
「バスターにラーニング、残機システムもちゃんと稼動したわね」
「一回ティウった時はどうなるかと思ったぜ」
システム班の夢美とちゆりは未成年のためジュースで乾杯しつつ。
「ゆっくりできる仲間と花を守る、という目標もしっかり覚えさせる事が出来たし」
「全部の性能がちゃんと発揮されていてよかったです!」
魔力班の理香子と設計班の里香は先に料理に手を付けながら。
「後は博士ポジションらしく素敵に指示を出せばいいんだね」
「私としては薬による色彩変化が不安だったけれどね、ちゃんと変わってよかったわ」
組立班のにとりと薬学班の永琳はお酒を片手に微笑みながら。
今回の成功を喜んでいた。
そう、これは数々の突飛した力を持つ暇な面々が起こした壮大なごっこあそびである。
最近ちょっとだけ幻想郷に入ったソフトをリアルに真似してみた、"MEGAMAN"ごっこというなの。
「しかし、メガゆっくりはどうやって復活したんだ?」
「内部が生きていれば周囲の餡子と皮を再利用して元の姿にもどるです」
「エコね」
「お花畑はどうする?」
「ちゃんとやることはやってあげましょ、花を愛でるゆっくりは貴重ですし」
「ま、何にせよこの素敵な出会いと実験の成功を祝いましょ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
所謂”岩男”のパロです。
まぁ、幻想郷の面々ならこれ位できるのではないかな、と。
当方の面々はどちらかというと悪巧みが好きそうで機械とかに秀でてそうな方々を選びました。
今まで書いたもの
博麗神社にて。
炎のゆっくり
ゆっくりを育てたら。
ありす育ての名まりさ
長生きドスの群
最終更新:2008年11月08日 13:03